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今回は短めとなっています。
「ここが…天使の街」
「そうだよ。私のホーム。これからはキャンサーのホームでもあるからね」
久しぶりに、天使の街に帰ってきた。
キャンサーは私と一心同体なので、これからはキャンサーも一緒に住むことになる。
「改めてようこそ。天使都市 グランドフォースに」
【フィールド:天使都市 グランドフォース】
「熾天使様、お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
「ただいま戻りました。すみませんが、少し部屋で休ませてもらいますね」
「承りました」
さて、戻ってきたばかりだけど私はこれから自室に籠る。
その前に、シャルさんには話しておいた方がいいか。
「精霊の方たちの代表者であるリーグ様とコンタクトを取りました。今後、協力していきたいとのことです」
「それはありがたい。是非お願いしたいですね」
「シャルさんにも、参加してもらうことがあるかも知れません。その時は、よろしくお願いします」
「わかりました」
オンリーサンクチュアリの中に入る。
久しぶりに来たんだけど、此処に入るのはまだ二回目だから実感はないな。
「これはすごい効果ですね。癒されます」
キャンサーもこの調子なら馴染んでくれそうだ。
「ところで、何でシャルさんと話してるとき隠れてたの?」
実は街で、カードケースというアイテムを買っている。本来はカード系の回復アイテムを入れるのに使うんだけど、キャンサーを持ち運ぶ(失礼な言い方だけど)のに便利だから買った。
いつもは顔を出して周りを見ているんだけど、何故かシャルさんと話してるときは中に隠れて出てこなかった。
「別にとって食べたりしないよ?それにシャルさんは信頼できると思うけど」
「いや…私…じゃなくって、精霊って基本的に男性恐怖症なんだよね。精霊同士ならそうでもないんだけど、他の種族で男性ってなると…ちょっと無理なの」
…どんな裏設定なんですか、それ。じゃあ私が男性だったらこの状況もなかったのか…あ、でも熾天使は設定上女性だけだったか。いや、どういう設定だよ、それ。
あー、ちなみに精霊同士なら、とは言ったけれど、精霊は女性しかいない。一人だけ例外がいるけれど、本物の精霊という意味では、女性しかいない。
「あー…なら無理もないか。って、だから街中でも出てこなかったんだね」
「そうそう。あっちは単純に見つかると厄介だからというのもあるんだけど、それよりも男性に対する恐怖心が大きいから」
この辺の設定は、結構作りこまれている。
人間のことを嫌う理由と、男性恐怖症が精霊に根付いているのは同じ理由がある。他の種族との関連性も少なからずあるね。
それについて語るとそれなりの時間もかかる。今はまだ、話していい段階でもないからね。
相変わらず優秀なヘッドギアの情報である。
「うーん、そうなると今後のこと、もう少し考え直さないといけないか。うーん…」
シャルさんには申し訳ないけれど、だったら女性の方がいいかな。無理してこっちに合わせてもらうのは忍びないし。
大丈夫。少しずつ慣らしていけばいいさ。誰だって苦手なものはあるものだし、それはしょうがない。
「悪魔の方との連絡もとらないといけないのか…でもどうやって連絡取り合えばいいんだろ?」
「悪魔…あ、なら精霊の何人かが伝手を持ってるはずだよ」
「精霊も悪魔とコンタクト取ってるんだ…」
「うん。ただ、ちょっと属性が特殊な精霊ばっかりだけど…」
キャンサーの様子からすると、おそらく厄介なことになりそうだ。
特殊な属性で思いつくのは、傷・崩・壊の三つ。それぞれ悪魔ともつながりがありそうな属性だし、間違ってはいないと思う。
…この三属性の主は普段、他の精霊の前にも姿を現すことがない。というか何処にいるのかも分からたない。
精霊では最古参に分類される精霊だからね…リーグ様たちよりも、もっともっと深くて大きな傷を負っている。
「暗属性のクロア様も、一応繋がりは持ってると思うよ。最近は忙しそうにしてるから、多分リーグ様に言われて走り回ってるんだと思う」
「リーグ様って…もしかして結構S?」
「ふっ…!」
私が素直に思ったことを口にしたら、思いっきり笑われた。何故?
「いや…仮にも主精霊様に向かってその言い方はないでしょ…!あー、おかしい」
「私だって天使では最高峰の熾天使なんだけどね…」
「ごめんね。もしかして、そうやって接したほうがいい?」
「いや、今のままでいいよ」
うーん、でもリーグ様はSだろう。誠意はちゃんと持ってるいい人だけど。
親しい人に対してはやっぱり素の自分が出やすくなるんだろう。だから他の主精霊はきっとリーグ様には逆らえないって。
私が主精霊に様とつけるのは仕様である。天使としての仕様で、それ以外で呼ぼうとするとなかなか呼べない。普段はそんなことないんだけど、何故か主精霊にのみ反応するんだよね。
…これも運営の仕様なんだろうねぇ…。
「うーん、ごめんね、私はちょっと寝るわ」
ベッドに寝そべる。これから一回ログアウトする予定だ。
「そっか。じゃあ私も一緒に寝るよ」
何故か、通常サイズに戻ったキャンサーが一緒にベッドで寝て抱きついてくる。
「おやすみ」
「おやすみー」
【HORからログアウトします】
【アバターの休眠状態に入ります】
【ネットワークを切断します】
【ヘッドギアの全プロセスを終了】
【システムを終了します】
「…ふぁ」
目を開けると、一瞬ここがどこだか分からなくなる。
…研究所だったな。
「…はぁ…頭が痛い」
現実に帰ってくると、毎度のことながら情報量に頭が追い付かないことがある。
元々VRはバーチャルリアリティの名の通りに、仮想でありながら現実という矛盾した世界である。あるいはもう一つの現実とも言うのだろう。
その影響か、あまりにも現実と離れすぎたVRだと脳がどちらの現実を基準にするのか分からなくなってしまう。あちらが現実でこちらも現実。しかし本来現実は一つであるためだ。
お陰さまで、戻ってくると脳が混乱状態になっている。しばらくは休んでいよう。
………
……
…
「………くしゅん」
*Side ナナ(三人称視点)
「…つくづく驚かせてくれるわ」
ナナの見つめるモニターには、ミレニアの行動記録が映し出されている。
「さすが私の妹ね。不可能を可能にする」
ナナがこのテスターとしてリリを選んだのには、いくつも理由がある。
そして思惑通りに、むしろそれ以上の成果を、リリことミレニアは出していた。
「この調子で行けば、予定よりもかなり早く終わるけど…それはそれでいいデータが取れるわね」
リリのアバターを、慈しむように眺めるナナ。
彼女にとってリリの才能は、嬉しくもあり、悲しくもある。
妹がこうなってしまったことへの責任を、少なからず感じているから。
「…いつか笑顔を…ね」
机の引き出しを開く。中には、かつてリリに影響を及ぼした、いくつものVRMMOが入っている。
「…そうね。奇跡は…希望でも絶望でも…起こってしまうから」
徐々にシリアスになりつつある…?




