第26話.Re:幻相
「君の意見は私の逆鱗に触れた。ありがたいことに、トランシーバーも破壊してくれたことだし、愉しむこととしよう。」
立ち上がる暇もなく、蹴りを入れられる。
今まで警察官にしてきた仕打ちを考えると、当然なのかもしれない。
「いいよなぁ!子供は!こんなことをしてもせいぜい禁固が限度で!自由が保障されてるんだよ?それなのにまだ自由を追い求めるの?バカなんじゃないの?」
「……っ、何が自由だ……!」
何もしゃべるな、反抗するな、と目で伝えて──脅してくる。
「明確な殺人の意図があった、国家に反逆する意思があった。……さぁて、警察官の一言がどれだけの力を持っているか理解してる?裁判であることないこといっちゃうかもだよ?──ねえ?本当にこのままでいいの?」
権力を引き合いに出されると弱る。
対抗手段がないし、本気で裁判を左右してしまいそうな威圧感を発している。
「降参する?」
「しない。」
警察官は驚いた顔でこちらを見る。ここで乗っかるとでも思っていたのだろうか。
──どうせこいつが何を言ったって判決などかわるはずがない。一介の警察官が持てる権力など知れている。
数秒後、ようやく否定の言葉を理解したようで、表情からも怒りが読み取れる。
「お前、どこまで愚弄すれば気が済むんだ?」
「さぁ?愚弄したつもりなんて一ミリもないけれど?」
少なくとも馬鹿にはしていない。ちょっと意見が合わなかっただけだろう。思想の違いを馬鹿にするほど落ちぶれた人間ではない。
「……まあ、いい。今ここでお前を捕らえれば私の勝ちだ。」
想定していたよりも冷静になるのが早い。
体力がもうすでにないに等しいので、向こうから仕掛けてくれた方が嬉しかったのだが……冷静になられると、そうも言ってられないかもしれない。
警察官が持っている拳銃の残弾はおそらく数発。切れるまで避ける……のは現実的でない。ちゃんと狙って撃たれれば、それこそ一発で事が片付くだろう。
すると警察官は銃を仕舞った。
「っち。仕方ねぇなぁ……気絶するまで殴るか。」
なるべく体制を低くして、下から潜り込めるように待機する。
手を突き出した勢いを活かしてカウンターをする算段だ。
予想どうり顔面目掛けて拳が飛んでくる。腰を少し落として避け、腕をつかんで後ろに投げ飛ばそうとする。……が、いつの間にか腕は運動を止めていた。
その代わりに蹴りが飛んできた。
──避けられない──
痛み、ただ、それだけが思考を支配する。
二発、三発、四発。殴られ、蹴られ。引きずり回され、好き勝手にされる。
「ははっ、中学生ごときが大人に楯突けるなんて考えて、己惚れるなよ!」
──自ら勝ちだけでなくちっぽけな正義感までをも守ろうとした結果がこれか。
銃を奪い取った時、そのまま打ち込んでいれば確実に勝てていた。今の状況と真逆だったのだ。
一線を越える気がする、たったそれだけの理由で人に撃てなかった。
何をしてでも自由を掴み取る、そう覚悟したはずだった。──どうやら、覚悟したつもりだったらしい。
どれだけ時間が経ったかはわからないが、攻撃の手が止まった。
今にも意識が離れそうだが、痛みが現実に引き戻してくる。
まだ抵抗していたい、がもう終わりだろう。だってもうまともに動けやしないのだから。




