22悪 調教は悪の嗜み
「ちっ。また漏らしたか」
「ふぇぇぇぇぇ!!!!!止まらないよぉぉ!!!!!!」
どんどんシミが広がっていき、俺の部屋には異臭が。こうなるのは予想外だったな。
だが、何も準備がないわけではない。素速く布を使って床にかけ、水分を吸わせる。そして、ついでにそこにドーエムも座らせて拭かせた。
「……はぁはぁはぁ。もっと!もっと叩きなさい!」
全てを出し終わったドーエムは、赤くなった顔で俺にそんなことを言ってくる。………………どうやら、完全に目覚めてしまったようだな。変態に。
こうなるのは10年近い間1度も恐怖を感じないからだと思ったんだがな。まさか、最初からその才能を秘めていたとは。
だが、それも悪いことだと悲観することはないだろう。まず、俺が先に目覚めさせたんだ。例え主人公にいじめられたくなったとしても、ゲームの時ほどの依存度にはならないだろう。
「叩け?お前は誰に向かってものを言ってるんだ!」
パシンッ!
「ひやああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
まだ液体で微妙にぬれているが、気にせず俺は平手をする。そうしながら、
「叩いて下さいおい兄様、だ!その程度も言えないのかこの愚昧が!」
「叩いて下さいお兄様ぁぁぁ!!!」
パシンッ!
……うん。今俺は頑張ってテンションを上げてやっているが、後で相当ブルーな気持ちになるだろうな。俺に全くSっ気が無いとは言わないが、幼女をいじめて楽しむ趣味はない。あと、幼女を求めたりもしない。ただただ複雑な心境になるだけだ。
だが、これも将来のために必要なこと。後で多少ため息を吐くことになるとしても、今は心を無にして役に徹しようではないか!
パシンッ!
「もっと欲しいですお兄様あぁぁぁぁぁ!!!!」
……その後。やはり俺は死んだ魚のような目で夜空を眺めた。きっとメイドには、俺が疲れきっと中年のように見えていただろう。
……え?お前は転生者だから精神は中年だろ?って?
ち、違う!俺は断じておっさんではない!俺はいつまでも現役だ!
なんてことを考えながらも、俺はドーエムの調きょ、ではなく教育を行なった。決して調教ではない。そして3日後。俺の教育の終了日がやってきて、
「お兄様!」
「む。ドーエム。父様の前だぞ。少しは落ち着きを持って、淑女たることを心懸けろ」
「はぁい」
俺は腕に抱きついてきたドーエムを引き剥がす。そんな様子を俺の目の前にいるスネールは何度か目を瞬きさせながら、唖然とした表情で見ていた。
そして、恐る恐ると言った様子で、
「ド、ドーエムなんだよな?」
と、ドーエムに尋ねた。そう尋ねたくなる気持ちも分かるぞ。あまりにも今までとは態度が違うように見えるからな。だが、ドーエムはそんなスネールの問いかけを受けて、
「は?パパは私の顔も忘れたの?」
心底見下したような目でスネールを見ながら言った。確かに娘の顔を忘れるというのはよろしくないが、そうだとしてもなかなかに辛辣である。ここは俺がフォローしてやろう。
「ドーエム。父様もお前より上の存在だぞ。敬意を持った対応を見せろ」
「えぇ~。……分かりましたお兄様。お父様、すみませんでした」
一瞬不満そうな表情を見せたが、すぐにスネールへ謝罪をした。俺に逆らうつもりはないようだな。
「あ、ああ。構わない。……パ、パパには今まで通りの話し方でも問題ないからな」
「そう?じゃあそうする」
戸惑った様子を見せたスネールの言葉に、ドーエムは従った。これは単純にスネールへ敬意を見せるのが嫌だったという可能性があるな。反抗期か?
……いや、単純に家庭内での父親の地位が低いだけか。可哀想だな。俺は何も解決しないが、同情だけはしておこう。
「で?どうだ?一応教育してみたが」
俺の教育の評価を聞いてみる。ここまで変化させたのだから、0点と言うことはないだろう。
「あ、ああ。今のところ何も問題無さそうに見えるな。……何をしたんだ?」
予想通り高評価を得た。が、内容を尋ねられてしまったな。
「秘密だ。が、ドーエムにしか使えないと思うぞ」
「そ、そうか」
内容など言えるわけがない。叩いて調教したなんて、親に向かって言える内容ではないぞ。例え効果抜群であったとしても、だ。
ただ、本当にこの方法での教育は上手くいった。この3日間でかなり敬語も覚えたし、俺にも懐いた。本当にヒロインになるのか?と思うくらい懐いている。今はもう、
「私、お兄様と結婚します!!」
と言うくらいには懐いていた。……本当にヒロインなんだよな?俺に懐くところを見ると別人なのではないかと疑ってしまうぞ。
「ド、ドーエム。パパと結婚は、」
「しない」
俺と結婚するという発言を聞いてスネールが期待した表情を見せたが、バッサリと切り捨てられた。見事に振られて、肩を落としてるな。落ち込んでるのが丸わかりだ。
スネールには落ち込んでいるところ悪いが、ここもシッカリとドーエムに教育しておく必要がある。
「良いか、ドーエム。確かにこの国では兄弟での結婚も認められている。しかし、それをしてしまうのはあまりにも公爵家に利益がない」
「そうなのですか?」




