21悪 悪なりの教育
「ど、どういうこと⁉本当にこいつが私のお兄ちゃんなの⁉」
「あ、ああ。その通りだ。名前をアークと言って、お前より1つ上の兄に当たる」
「……う、嘘⁉信じらんない!」
俺が兄だとは思えないらしい。こいつがただの妹であれば、俺もそうかとしか言わなかっただろう。
だが、こいつはヒロイン。傲慢で面倒なヤツでもヒロインなのだ。だからこそ、俺は、
「色々言っているが、それはただのお前の情報収集能力が低いだけだろう?自分の無能さも分からないとは、俺の妹とは思えないな」
「なっ!……はぁぁ⁉死刑!あんたやっぱり死刑!!」
俺の煽りを受けて騒ぎ出すドーエム。その様子を見ながら、
「……はぁ。礼儀のなってないヤツだな。俺は派閥のトップとも言えるイヤミーの婚約者だぞ?立場的には公爵家の令嬢でしかないお前と比べれば圧倒的に上だ。お前は俺に命令できる立場になく、逆に俺に頭を垂れる立場だぞ?」
「ふ、ふざけないで!私がここで1番偉いの!!」
ドーエムは、父親であるスネールさえ差し置いて自身が偉いと叫ぶ。ちょっと煽っただけでこれとは、さすがは3歳児だな。
俺はそう考えつつ、オロオロと俺たちの様子を見ているスネールに向かって、
「こいつの教育は俺がして良いか?」
「え?教育⁉」
俺の言葉に驚愕するスネール。俺の口から教育なんて言葉が出てくるとは思わなかったんだろうな。……まあ、俺自身が教育の行き届いていないようなところがあるし。
「ああ。しっかり上下関係を教育しておかないとマズいだろ?自分が1番偉いと勘違いしたままでは、王城のパーティーにすら連れて行けないじゃないか」
「お、おう。確かにそう言われるとそうなんだが……任せて良いのか?」
不安そうなスネール。気持ちはよく分かるぞ。俺って教育者には向いていなさそうな性格だからな。だが、俺は自信ありげに、
「とりあえず3日間やってみる。それでダメならメイドにでも教育させてやれ」
「わ、分かった。良い結果が出ることを期待しておく」
こうして、期間限定で俺が教育者になる事が決まった。勿論教育を受ける本人の意思は完全に無視だ。置いて怒れたドーエムは会話について行けず、ぽかんとしていた。
そんなドーエムの首根っこを掴み、
「いくぞ。俺の部屋に移動だ」
「え?ちょっ⁉離して!」
俺の手の中で暴れるが、俺は容赦なく引きずっていく。途中から泣きわめいていたがそれも完全無視だ。そして無理矢理ドーエムを俺の部屋に引きずり込み、
「メイドと騎士達は部屋を出ろ。あまり貴族の淑女が泣く様は見せるべきでないからな」
「「「わ、分かりました」」」
俺の指示に従い、部屋を出て行く大人達。こうして俺とドーエムは2人きりに。
因みに数名のメイドが俺と泣きわめくドーエムとを交互に見て笑みを浮かべていた、アレは何を期待していたのか気になるな。俺に泣かせて欲しいのか、それとも俺を泣かせたいのか。
俺を泣かせたいヤツに関しては、絶対に相手をすることを拒否したいが。
「……さて、じゃあ教育を始めようか。まず俺のことはお兄様と呼ぶこと。良いな?」
「はぁ?誰があんたなんかを」
パシンッ!
「いっ⁉」
俺はまたドーエムを叩く。今回は頬ではなく腰だ。子供のけしつとかで、尻叩きとかいうイメージがあったからな。まあ、教育で体罰を使うのは俺としては好きではないんだが。
え?どの口が言ってるのかって?……この口だ。べつに俺だって好きで体罰を加えているわけではない。ただ、この俺の妹が主人公のヒロインとして俺の邪魔になるのが嫌なだけなのだ。
「話し方もメイドがやるように、敬意を持つようにしろ」
「だ、誰が!」
パシンッ!
「あぅっ⁉」
反論しようとするのを叩いて黙らせる。
さて、こうして教育というか調教をしている間に、こいつがヒロインとなる理由を説明しよう。
まず前提として、主人公と会うときもこいつは傲慢なままだ。しかも、今の俺のようにこいつを叱りつける人間もいない。そんな彼女はとある理由で反抗的な主人公と戦うことに。そこで始めてドーエムは敗北し軽い暴力を振るわれ、俺に平手打ちされたときのように失禁してしまうのだが、
「あっ⁉出ちゃう!!」
こんな感じでな。
そしてドーエムは感じてしまうのだ。この未知の感情を。
公爵家で我が儘に育てられたドエームには、全てのものがありふれていて既知のものである。そんな彼女にとって、恐怖と暴力というものは初めての感覚だったのだ。そして彼女は、主人公に対して更にそれを与えられることを求めるようになる。
「あぁぁ!良い!もっと!もっと叩いて!」
こんな感じで。
そして、ドーエムは無事主人公の女として落ちるのだ。主人公に軽い暴力を受けることを求める、変態として。
その後は俺と次期公爵の地位を巡って争うことになる。男主人公の場合の悪役は俺だから、悪役の地位をヒロインが奪うようなイメージだ。そうしてドーエムは公爵となって後は主人公への好感度とか諸々でエンディングは変わるって感じだな。
だからこそ、俺はそれを止めたいのだ。俺と争うのは良いのだが、主人公と手を組まれるのは面倒。ということで、こいつに先に手を挙げておくことにしたのである。主人公から与えられる痛みを快楽に感じないように。
「あ、ああぁぁぁ!!!止まらないぃぃぃ!!!!」
こんな感じ、……で、って、
「ちっ。また漏らしたか」
「ふぇぇぇぇぇ!!!!!止まらないよぉぉ!!!!!!」




