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20悪 俺はお前の兄だ!

「アークゥ。怖いよぉ」


「おぉ。よしよし。大丈夫だ。危険性が有るものは騎士に開けてもらえば良いんだからな。安心しろ」


安心させるようにいうのだが、抱きついて離れない。結局その日はスネールに断りを入れて、王城で一泊することになった。王城でお泊まりなんて、貴重な体験だよな。

お泊まりの中では王城の食事を俺も食べたり、イヤミーと一緒に風呂に入ったり、一緒に寝たり。流石に相手が幼女だと何の感情も湧かなかったが、イヤミーの方は満足した様子だった。


「またねぇ~!!」


「ああ。またな」


満面の笑みで俺に手を振ってくるイヤミー。それに軽く手をあげて答え、馬車に揺られて帰った。そして帰宅後、


「アークちゃ~ん。お帰りなさぁぁぁぁい!!!!」


「むぐっ⁉抱きつくな!!」


「大丈夫だった?ママがいなくて寂しくなかった?泣いちゃわなかった?」


「泣くわけないだろ。……逆に、母様の方が泣いてそうだな。


クララに抱きつかれたり。


「アーク様。今日の書類と、昨日サインして頂く予定だった書類です」


「……はぁ。1日分追加か」


「頑張ってください」


いつもより多い仕事をさせられたり。

少し大変な1日となった。だからこそ、俺の活動時間がいつもと変化した。これによって、


ドンッ!

「ぬ?」


人とぶつかってしまった。一瞬メイドだろうかと思う。ただ、相手とぶつかった感触は俺より身長が高いようには感じられず、


「いったぁ⁉……あんた!私にぶつかるなんて死刑よ!死刑!!」


ぶつかったのは少女だった。俺よりも背は低く、3歳くらいではないかと思われる。何か騒いでいるが、俺はその顔を見て言葉は右から左へ流れていく。

なぜならその相手が、


「ドーエム・ワール……」


「はぁ?様をつけなさい!様を!!」


ドーエム・ワール。俺にとっては妹に当たり、ゲームでは俺と違って男主人公の仲間となるキャラの1人だ。そして、ヒロインともなるルートも存在する。

ただ、性格は今のままなんだがな。ゲームの初登場の時は悪役だと思ったほどだ。実際に1度ドーエムとは戦闘になるし。


「……はぁ。貴様こそ俺が誰だか分からないのか?」


「知るわけないでしょ!あんたみたいな下民!」


兄である俺のことを下民呼ばわりである。兄の顔すら知らないらしい。

……まあ、実際に今まで会ったこともなかったしな。というか、スネール達から妹の存在なんていうのも聞いたことがない。こいつも俺の存在自体を知らないのかもしれないな。

というか、設定では俺たちとは別居していたはずなんだが。だからこそ10年以上俺たちに顔を合わせた子はないって設定だったし。確か、別の場所で母親であるマウスと一緒に暮らしてるとか……………………ん?マウス?


そういえば、赤子の頃哺乳瓶に毒を入れて俺を暗殺しようとしたやつの関連で処刑されたのってマウスって名前のやつだったよな?もしかして、俺がシナリオを変えた所為で母親がいなくなってここで暮らすことになったのか?

……まあ、今はそれを考えている場合ではないな。こいつに俺という存在を教えてやろう。


「俺はアーク・ワール。貴様の兄だぞ」


「……はぁ?何言ってるの!私に兄なんていない!私に嘘つくなんて死刑よ!」


俺の説明を受けても逆上するだけのドーエム。腰から何やら長細いものを抜いたな。持ち手はまっすぐだが、途中から重力に引かれて折れ曲がっている。


「……鞭か」


「そうよ!沢山叩いてあげるわ!」


死刑じゃなかったのかよ、と俺がツッコミをする前に鞭を振り上げるドーエム。近くにいたメイドや騎士が流石にマズいと止めに入ろうとするが、それより先に、


パシィンッ!

乾いた音が響いた。何かが叩かれるような音。というか、実際に肌が叩かれた音だ。

ただ、その叩かれた肌というのが、


「ふぇ?え、え、……うえええぇぇぇぇん!!!!!!」


「俺に手を挙げようとするとは愚かな。これで済んだことを感謝するんだな」


俺ではなくドーエムだったという話だ。

俺が鞭が振り下ろされる前に懐へ潜り込み、ビンタを繰り出したのである。俺に大した運動能力は無いがある程度効率的な動きはできるため、3歳児を相手にする分には全く問題なかった。

頬に平手打ちを受けたドーエムは涙を流し、……下からも何か垂れ流しているな。独特のアンモニア臭がする。


「ふっ。俺に刃向かう者にはお似合いの姿だ」


「びえええぇぇぇぇん!!!!!!」


泣き叫ぶドーエム。俺はそれを無視して、目的地へと移動していくのだった。

それから少しして、俺とドーエムの事情を聞きつけたらしいスネールに呼び出され、


「色々言いたいことはあるが、まず、お前達にそれぞれ説明していなかったのは謝る。すまなかった」


スネールが頭を下げる。俺は片眉を動かし、同じく呼び出されたドーエムは驚愕していた。公爵が頭を下げるなど、普通はあり得ないことだからな。しかも、相手は子供だ。

だが、それだけスネールは今回のことが問題だと思っているのだろう。


「俺は構わん。妹の存在は認知していたからな」


「そ、そうか。メイド達にも口止めしていたんだが、……どこで知ったんだ?」


「ふっ。どこだろうな?」


探るようなスネールの視線を受けるが、俺は肩を上げて軽く流す。前世のゲームで知りましたとかは口が裂けてもいわないぞ。

で、俺は許したわけだが、


「ど、どういうこと⁉本当にこいつが私のお兄ちゃんなの⁉」


「あ、ああ。その通りだ。名前をアークと言って、お前より1つ上の兄に当たる」


「……う、嘘⁉信じらんない!」

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