似合うかな?
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
どうぞと伝えて入ってきたのはカレットさんだ。
さっき話した褒美の件で来てくれたようだ。
「アルス様が今から褒美を手渡しするそうだ、執務室に行くといい。」
「わかりました。」
ではなと、カレットさんはそれだけ伝えると帰っていった。
僕達もアルス様を待たせちゃいけないとすぐに執務室に向かった。
初めて入る執務室は大きな机に書類が山積みになっていた。
アルス様は椅子に座り書類を眺めていた。
王様って思ってたよりも忙しそう。
「おお、トトにウサミ殿、よく来ましたな。さあ、こちらへ。」
アルス様の側に行く。
「先の戦争ではスティリアを勝利に導く大変素晴らしい働きをしてくれました。そこで二人に褒美を与えます。」
アルス様は小さな袋を僕とトトさんに手渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「本当なら皆の前で紹介をして渡したかったのですが、このような形ですみませんな。」
「いえ、頂けるだけで嬉しいです。」
「そうですか、ではまた何かあれば声をかけることもありましょう。そのときはよろしくお願いしますな。」
「はい。」
執務室を後にして、袋の中身を確認する。
袋には金貨が十枚入っていた。
この世界のお金は金貨一枚が銀貨百枚分、銀貨一枚が銅貨百枚分。
一日暮らすのに銅貨五枚あればいいくらいだから、金貨十枚はけっこうな大金だ。
「トトさん、はい。」
僕は金貨一枚をトトさんに差し出した。
「なんですか、ウサミさん?」
トトさんは不思議そうな顔をした。
「いや、今までトトさんにお世話になってて、家賃とか食費とか出してなかったから。」
「いいですよそんな、もう家族みたいなものですから。」
家族みたいって・・・トトさん僕のことは兄弟のように見てるのかな、それとも・・・。
なんて考えると顔が火照ってきた。
「それじゃ、そのお金でウサミさんのベッドとか家具を買いましょうよ。」
「僕まだトトさんの家に居ていいの?」
「もちろんですよ。それともウサミさんは私と一緒は嫌ですか?」
「ううん、そんなことは絶対にないよ、むしろ嬉しいよ。でもやっぱり一緒暮らすなら、食費とかくらい出させて。」
「そうですか・・・じゃあ、ありがたく頂きます。」
トトさんは金貨を受け取ってくれた。
うん、これで申し訳なさが少しは解消されたよ。
「そうだトトさん、今日の仕事終わりに服を買いに行くのに付き合ってもらえないかな?明日のデート用にちょっとオシャレした方がいいかなと思って。」
「いいですよ。なんだか面白そうですし。」
「トトさん、僕を着せ替え人形にしようとか思ってない?」
「あ、バレました?」
「まったく、ほどほどにしてね。」
それから研究室に戻り、夕方までまた薬の調合作業をした。
仕事が終わり、帰りに大通りにある服屋さんに寄った。
正直、僕に服を選ぶセンスはない。
いっつもお母さんが買ってきた服を着てるだけだったし、ファッション雑誌なんか見たこともなかった。
ここはトトさん頼みだ。
店内は鮮やかな色彩の服が並んでいて、あれやこれやと目移りする。
「ウサミさんこういうのはどうですか?」
そう言って持っていたのは猫の着ぐるみだった。
「トトさん、それは・・・無い。」
「ふふ、冗談ですよ。ホントはこっちです。」
今度は黒のスラッとしたチノパンっぽいのに白いシャツ、紺のジャケットだった。
「うん、いいかも。ちょっと試着してみる。」
いつもはジーパンにパーカーだったから、こういうのは新鮮だな。
「トトさんどうかな?」
「うん、いい感じです。でもちょっと無難ですかね?」
「無難が一番だよ。これにするね、ありがとトトさん。」
「どういたしまして。」
会計を済ませて、店を出る。
帰ったらトトさんと作戦会議だ。