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日野葵との再会

「よーし、車の操作もかなり慣れてきたかな。何とか葵のいる場所まで来れたし早く会いに行こう。」


このかはそう口にしながら誰もいない道路を駆け抜けていた。時速百二十で走っても誰もいない為、とても心地の良い快適な運転ができる。


このかは松江から葵のいる出雲までやって来た。葵は出雲に移住して就職しているから出雲の避難所を巡れば会えるはずだった。


「それにしても葵と会うのも久しぶりだな。本当はもっと早めに会う予定だったんだけど。」


島根県というド田舎からこのかの親友達はほとんど上京してしまったがこのかと葵だけは地元に残っていた。そのため葵とは会おうと思えば気軽に会えるのだがお互いに忙してくて結局そのまま離れたままになっていた。


日野葵はこのかと同じ同級生で小さい頃から一緒にいる親友だった。そしてこのかのずっと大好きな人だ。

いつも元気で明るくて一緒にいるだけで楽しくなれる。そんな葵と再会できることを楽しみにしながらこのかは車を運転する。


「それにしても出雲にも久しぶりに来たかな。出雲大社くらい寄ろうかな。」


島根県出雲市といえばやはり日本神話にゆかりのある場所だ。今後の旅がうまくいくように神様に願うのもありかもしれない。まあ、出雲大社は縁結びの神社だが。それはそれで葵との関係を深めるために祈るのもいいな。


とりあえずこのかは出雲の中心部に車を停めて葵の家から探すことにした。葵の家のアパートは小さいし流石に避難しているとは思うがそれでも心配だった。


「うーん、葵と会ったら二人で色々とお喋りしたいな。彼氏と出来ていないよね?」


葵は可愛いから彼氏くらいいてもおかしくはない。ただ、もしそうだとしたらこのかは耐えられる自信がない。このかはそんなことを考えながら誰もいない静かな道を歩いていた。


この辺りにはまだゾンビがおらず死体もあまり見つかっていなかった。葵さえ無事なら何でもいい。葵が死んでいたらもう立ち直れないかもしれない。


葵は少し抜けてるところもあるから逃げ遅れてゾンビに襲われている可能性もあった。それに葵はお人よしで誰かを助けるために自分を犠牲にする様な子だ。そうなる前に何としても見つけ出さないといけない。


「おーい葵、いるなら返事して。」


このかは葵の家のチャイムを鳴らすが一切返事は返ってこない。念のためガラスを割って家に入るが誰もおらず物だけが散らかっていた。


「もう、葵ってば相変わらず整理整頓が出来てないじゃん。ほら、下着だって散らかってるし。」


このかは葵の下着を一枚ポケットに入れながら葵の家を出た。ここに葵がいないということはおそらく避難所に逃げているはずだ。


このかは深呼吸をしながら葵の家を出るとそのまま避難所へと向かった。


「確かこの辺りに避難所があるはず。って誰かの声がする。」


このかが町を歩いていると誰かの叫ぶ声が町に響き渡る。このかは急いでそこに向かった。


『ヴァァァァ』

「くそ、何でこんなにゾンビがいるんだ。誰か助けてくれ!」


このかが声のする方に向かうとそこには一人の男性がゾンビに襲われていた。さっきまでいないと思ったゾンビはここに集まっていたようだ。このかは慣れた手つきでバールを振り回してゾンビの頭を潰した。


ゾンビはあっという間にぐちゃぐちゃになり、男は驚いた表情でこのかを見ていた。このかには既にゾンビを殺すことに躊躇がなかった。この程度朝飯前だ。


「もう大丈夫ですよ。怪我はないですか?」

「お、おう助かったよ。それにしてもあの数のゾンビを相手にするなんて凄いなお前。」


男性はこのかの差し出した手を強く握った。見た目からしておそらくこのかの二つ上くらいだろうか。明るい髪色に派手なピアス、顔も少し葵に似てる様な気がする。


「それにしてもどうしてこんな場所に?避難所はどうされたんですか?」

「ああ、それが少し問題があってな。妹を追ってここまで来たんだがゾンビに襲われちまった。本当に助かったぜ。」


男性のその言葉にこのかは顔をパッと明るくする。


「妹ってもしかして葵だったりしませんか?葵は私の親友なんです!」


このかは心臓を抑えながら男性の目を見つめた。もし、この人が葵のお兄さんだとすると葵が危ない目に遭ってる可能性がある。そう思うと吐き気がする。


「何でアンタが葵のことを?確かに俺は葵の兄だが。」


葵のお兄さんは驚いた顔でこのかを見ていた。どうやらこのかの勘は当たっていたようだ。


「やっぱり。とりあえず葵が今どうなっているか教えてください!葵は無事なんですよね?」

「ああ、とりあえず今は時間がねえ。説明は後でするからこっちに来てくれ。」


後ろを振り返るとさっきの大声のせいかたくさんのゾンビが集まっていた。このかと葵のお兄さんは急いで安全な場所へと向かった。










「はあ、ここまで来ればとりあえずは安心か。それにしてもさっきは助かったよ葵の友達さんよ。」

「私は水瀬このかと言います。それで葵は今どこにいるんですか?葵は無事なんですよね?」


今のこのかには葵のことしか頭になかった。ただ葵さえ無事なら何でもいい。


「一旦落ち着いてくれ。俺は日野彰。葵ならおそらくお母さんを探しに行ってるはずだ。」

「お母さんをって、皆さんは避難所に逃げてないんですか?というか葵は一人暮らしのはずじゃ。」


葵は一人暮らしのはずだがどうやら家族と合流していたらしい。それにしてもゾンビだらけの町に出るなんて危なすぎる。


「それがなあ、避難所の中でも食料を取り合って大変なことになってるんだ。みんな生きるために必死なんだよ。」

「それで葵のお母さんは食料を探しに外に出たということですか?」

「そういうことだ。そしてお母さんが昨日から帰ってこなくて葵がお母さんを探しに行ったんだ。」


それで彰さんも葵を探しに外に出て、このかと出会ったという訳か。ただ昨日から帰ってないとなると葵のお母さんはもう。


「とりあえず葵がどこにいるか分かりますか?今すぐ葵の元に向かいます。」


このかの問いに彰さんは大きな建物に指を差しながら答える。


「おそらくだがあそこのショッピングモールだと思うぜ。ただあそこにはたくさんのゾンビがいるから近づかない方が。」

「関係ありません。葵が危ない目に遭う前に助けます。お兄さんは先に避難所に戻ってください。」


このかは彰さんの言葉を遮って走り出した。一秒でも早く葵に会いたかった。葵には怪我一つさせたくなかった。


「分かった、ただアンタも絶対に死ぬなよ!」


このかは彰さんに頭を下げつつすぐに駐車場へと向かった。このかは車を運転して十キロほど離れたショッピングモールへと急ぐ。


途中にたくさんのゾンビが現れるが最高速度でゾンビをグチャグチャにする。速度を守らずに進むとすぐに目的地に着いた。


「はあ、やっぱりここもダメになってるよね。早く葵を探さないと。」


ショッピングモールの周りにはたくさんのゾンビで溢れかえっており、このかはゾンビを潰しながら大きなショッピングモールを探し回った。おそらく葵のお母さんは食品コーナー辺りにいるはずだ。


「おーい、誰かいるなら返事して。って、いくらなんでも多くない?」


一階の食品コーナーにはさっきまでとは比べ物にならない程のたくさんのゾンビが集まっていた。食品の影響か分からないが今は流石にこの数を相手には出来なかった。しかしゾンビは人以外基本的に食べないとお姉さんは言ってた筈だが。


「はあ、こうなったら何処かに隠れないと。一度ここから離れよう。」

『グヴァァ』


ゾンビは動きが鈍い為、焦らずに行動すれば逃げることは容易だ。だが流石に数が多く、囲まれてしまうと逃げるのも難しい。


「しょうがない。とっておきの技でも使うか。」


このかは鞄から油とライターを取り出してゾンビに火をつけた。これがゾンビの弱点の一つだ。ゾンビは一気に燃え上がり大きな声を出す。


『ヴァァァァ』


火をつけるとゾンビは一気にどこかに逃げていく。やはりこの量のゾンビには火が効果的だ。このかは一度深呼吸をして地べたに座った。お姉さんの助言はやはり頼りになる。


お姉さんはゾンビの弱点は主に二つあると言った。一つは頭だ。ゾンビば頭を潰せば行動不能になるという。この方法が一番手っ取り早く普段はこの方法で殺している。


そしてもう一つがさっきも使った火だ。ゾンビは火が苦手らしく火があるところには近づかない様だ。

ただ火を出すのは危ないし基本的には頭を潰して殺した方が楽で火を使うのは今回みたいに囲まれた時だけだ。


「ふぅ、お姉さんのおかげで何とかなった。ただ、これだけじゃあ無理かあ。」


安心したのも束の間、何体かのゾンビが火に動じずに向かってくる。それに奥にもまだたくさんのゾンビがいた。


「はあ、この油とライターも無駄には出来ないし結局逃げるしかないか。」


ゾンビの群れにも怯まずにこのかは二階に上がって人気のいない場所に隠れることにした。


まだゾンビはたくさんいるし、このか以外の人も見つかっていない。この状況は非常にまずい。


このかは冷静に次の行動を考える。しかし後ろから何かの音がする。ここまでゾンビが攻めてきたのだろうか?


「こ、このちゃん?このちゃんがどうしてここに?」


久しぶりに聞く優しくて温かい声にこのかは幻かと思った。後ろを振り返るとそこにはこのかの大好きな葵の姿があった。


葵は相変わらず可愛くてドキッとしてしまう。ただ青葉は顔色が悪く体も小刻みに震えていた。


「葵?本物の葵なの?ずっとずっと会いたかったよ。」


このかは泣きそうな表情で葵を見つめる。久しぶりに会えて心が踊る。さっきまでの不安も全て吹き飛んでいった。


「うん、私もずっとこのちゃんに会いたかった。大好きだよこのちゃん。」


このかと葵は出会った瞬間にお互いに抱きしめ合った。葵の温もりが心地よい。この感触も懐かしくて泣きそうだ。


この暖かさが今はずっと続いて欲しかった。


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