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我慢の限界です!

 全てが停止した部屋で、ロココ調の豪奢な深紅のソファーに座ったままの可愛らしい少女。


 彼女の名はオキシジェンヌ。


 そして彼女はありえないような嘘みたいな偶然により太古の異世界から召喚され、勇者ベリリアムと出会い、そして仕えることとなったハイスキルなヒーラーであり聖女だった。


 その勇者ベリリアムも、ある偶然なる不幸な出来事の後、異世界に転生し、前世の記憶もそのままにこの地で第二の人生を送る事となったのは言うまでもないだろう。



「もうわたくし、我慢できないのです! ねえ、みなさんもそうじゃないのかしら?


 オキシジェンヌはおもむろにソファーから立ち上がった。



 聖女オキシジェンヌの座っていたソファーの横で、ただただずっとつっ立っていたセクシーなデコルテのミニドレスを纏った美少女、ハイドロジーナ。


 スラリとした長い脚をさらしながら聖女オキシジェンヌの前まで進み出た。



「その通りだよ! オキシジェンヌ様! あたしなんてずっーと立ちっぱなしだったんだよ? どういうことなのかな? この仕打ち!」



 ハイドロジーナは勇者ベリリアムの取り巻きの1人だ。


 彼女は年若くも既に長老級の大魔法を司るハイスペックな魔法使いだった。


 彼女は自分でも良くわからないのだがその勇者ベリリアムにぞっこんなのだった。



「わたくしたち、今すぐ何らかの対処を求めに行くべきですわ!ハイドロジーナ様」


 聖女オキシジェンヌはまだ幼さの残るふっくらした頬を赤らめながら大魔法使いハイドロジーナに訴えた。




「待て! それなら自分だって!」


 窓辺にて、憂いた瞳で外を見つめたままじっと佇んでいた乙女戦士ニトロアも遂に動き出した。


 彼女もまた勇者ベリリアムを慕い、無償の愛を捧げていた超戦闘力を誇る美しき剣士だった。


 なぜだか自分でも不思議なのだが勇者ベリリアムを愛さなければならない宿命を感じていた。



「でも、待って? 一体あたしたちどこに抗議に行けばいいのよ?」


 大魔法使いハイドロジーナは両腕を広げて二人を交互に見ながら途方にくれた。


 乙女戦士ニトロアも同調し、聖女オキシジェンヌに八つ当たりとも取れる鋭い視線を向けた。


「そうだ! 我らはどこに行けばいいというのだ? 勇者ベリリアムと正妻ボローナ、家臣の男どもは辺境の魔族討伐に出掛けたっきりで、もうリアル時間で10年以上経っているはずだ。その間ここの時間は止まったままだ!」



 そう、この3人の美少女たちはもう10年間も人形のように同じポーズをし続けたまま、この城の一室で待っていたのだった。




 聖女オキシジェンヌが乙女剣士ニトロアの前でスカートの裾を摘まみながら、一礼した。


「そんなことはカンタンなのですわ。戦士ニトロア様。これは妄想戦線ですもの。わたくしたち "誕生起源の地" に移動すればいいだけのことですわ」


「そういうことなら初等魔法で超簡単に出来るよね。はんっ、大魔法使いのあたしにとっては朝飯前の前の前ってか」


「朝飯前の前の前・・・・・それは昨日の昼食のことですわね」


「・・・何食べたっけ? あたし、全然記憶無し!」


「ええ、私たちの昨日は10年間も前のことですもの。無理もありませんわ。ちなみにそれは、食べるラー油 on ライスでしたのよ」


「そういえばそうだったかも。思い出したよ! 食べるラー油ってゆうの!でさ、あれって今もあ・・・」


「お前たち! 無駄話している暇はない! 大魔法使いハイドロジーナ! 朝飯前と言うのならばさっさと実行したらどうだ?」



 始まろうとしていた聖女オキシジェンヌと大魔法使いハイドロジーナの井戸端会議は乙女剣士ニトロアの厳しい一言によって阻止された。



「っち、せっかちなんだから! そういえばニトロアはあのほぼ98%炭水化物の昼食、おかわり5杯はしてたよね? それって美容的にどうなのかな? ま、いいや。さっそく移動用魔方陣出すからそこ、どいてくんない? 邪魔よ」


 大魔法使いハイドロジーナはぶしつけにも、乙女剣士ニトロアの爪先から頭のてっぺんまで目線を這わせたのだった。



 側室となり、勇者ベリリアムを同じく愛する者同士。


 こんな立場の二人が通常、仲良くパーティーを組むなどありえない。



 目と目で牽制し合う二人。



「・・・くっ・・・今は非常事態。耐えるしかない」


 乙女剣士ニトロアはそう口の中で呟きながら隅に寄った。


 そう、今必要なのは武力では無く魔力なのは明白だ。


 彼女は超戦闘力を誇る剣士としての自制心コントロールは会得済みだった。


 間でおろおろしていた聖女オキシジェンヌはほっとして息を吐いいてから二人に清らかな笑みを送りながら言った。


「さあ、大魔法使いハイドロジーナ様、乙女剣士ニトロア様、いざ共に参りましょう!」


 もちろん彼女も言わずと知れず例外ではなく勇者ベリリアムを慕っているのだが、まだ幼さが残る故に想いは内に秘めているという設定だった。





 ハイドロジーナが床に映し出した魔方陣の輪に、青く輝く光が一周ほとばしる。



「さあ、早くみんなここに入るのよ!」


 大魔法使いハイドロジーナは二人を(いざな)った。



 ごくりとつばを飲み込んだ乙女剣士ニトロア。


 ニトロアは聖女オキシジェンヌをエスコートしながら、魔方陣に入った。



「さあ、行っくよー! ついでに大暴れしてやるわ! もうあたし、ストレスマックスだよ!」



 室内に風が吹き荒れ大魔法使いハイドロジーナの金色の髪が逆立つ。


 乙女剣士ニトロアの胸に顔を埋め抱きつく聖女オキシジェンヌ。


 ニトロアは不安を露にしているオキシジェンヌの背中をきつく抱き締めた。



 魔方陣は青い光から金色の光へと色を変え、外輪は線から天井に向かって垂直に伸びるまばゆい光を放ち、3人の姿は外側からは光に包まれ見えなくなった。




 その光が急激に収まった後には何ひとつ残されてはいなかった。



 はてさて、3人の美少女は無事目的の地に移動出来たのだろうか?


 一体どこに向かって行ったというのだろう。


 小説を書くあなたにならおわかりだろうか?






                      後編へ続くっ!






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