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明日は やって来る!

 ヤバい! このままじゃ殺られる!


 俺は俺のアバターである勇者ベリリアムを器用に操っていたのだが、敵のHPは半端なくてなかなか削れないし、こちらの回復アイテムも残り少ない。


 しかも向こうの方が俺より2レベ高い。敵の攻撃によるこちら側のダメージは大きい。



 これは1週間前から始めたばかりのRPG。


 俺のスマホの画面では巨漢の臭気モンスター、サルファマイズドラゴと勇者ベリリアムが闘っていた。


 俺のHPはもうあっという間に1/4まで減っている。



「行けっ! お前なら行けるはずだっ! 勇者ベリリアム!!」


 ゲームに夢中になりながらも俺は、ふと昔の何かを思いだした。


 ・・・俺はなんでアバターに『勇者ベリリアム』なんて名前をつけたんだっけ?


 えーっと、これってずーっと前に・・・・・えっと、なんだっけ?

 たしか宝石のエメラルドをイメージしたネーミングだったよな・・・?




『さあ、着いたよ! 聖女オキシジェンヌ、乙女剣士ニトロア。ここが あたしたちの "誕生起源地" だよ!』


『・・・ええ、間違いございませんわ! 流石(さすが)大魔法使いハイドロジーナ様。ここは神様のおわす聖なる地、妄想戦線のど真ん中、わたくしたち誕生の地なのですわ』


『ここが・・・我らの誕生の地だと? 待て、聖女オキシジェンヌ。・・・・・これが神の声だというのか? 向こうにいるのがあれが勇者ベリリアム様だと? なぜこんな所にいるのだ? 魔族と闘っていたのではなかったのか? しかも姿形が違うぞ!』


『乙女剣士ニトロア様、落ち着いて下さいませ。あれはわたくしたちのお仕えしている勇者ベリリアム様とは名前が同じだけの別人ですわ』



 何だ? この声。



 聖女オキシジェンヌ、大魔法使いハイドロジーナ、乙女剣士ニトロア。


 しかもこの名前、俺、全部知ってるし。でも、なんだっけ? えーっと・・・もやがかかって思い出せない・・・


 いっけね! 集中力が切れてる間にギリまでやられちまってんじゃん。チクショウ!

 大丈夫だ。バッグの中の(きん)のリカブポーション使えばHPは全回復だ。


 さーて、今度こそ!



『聖女オキシジェンヌ。あたしたちここでどうすればいいのよ? ここをめちゃくちゃに破壊すればいいの?』


『いいえ、そうではありません。ここはサンクチュアリなのですよ。破壊などもっての他ですわ。わたくしたちはここで、今までの不満を思いきり叫ぶのです! 心のままに! さすれば何らかの反応があるはずですわ。大魔法使いハイドロジーナ様』


『では、剣士ニトロア、この我がいざ先陣を切って叫ぼうか』


『ええ、今までの理不尽を今こそ訴えるのです!』


『我らを創造せし神だと? ふざけるな! 我は10年間もの間ずっと勇者ベリリアムの無事を願い窓辺にただ佇んで立ちつづけていたのだ! やってられるか! 我は乙女剣士だというのにいまだに何の見せ場もないままだ! いつになったら闘えるのだ! 神とは名ばかりのこの能無しのサルめっ! 』


『そうよそうよっ! あたしなんて何のためにあそこにいたのかも不明だわよ! 大魔法使いって設定なのに10年経ってもいまだ大魔法使ってないじゃん! このヘタレ作家めっ!』



 何だ?


 俺の脳内で何かが騒ぎだした。


 俺の心に もやが立つ。


 聖女オキシジェンヌ・・・大魔法使いに乙女剣士・・・・・


 あ~ん? えっと、えーっと・・・・・ん?



 ・・・・・はっ! 思い出した!!



 そういや俺中2の時、厨病かかっててハイファン小説なんて書いちまって投稿したのはいいけど、すぐエタってそのまま放置してたんだった!


 そん時のキャラの名前だ!




 やばっ・・・ちっ! 



 手元を見ると俺の勇者ベリリアムはいつの間にか巨漢の臭気モンスター、サルファマイズドラゴに殺られていた。


( HPが0になりました。街に戻りますか? "はい"  "いいえ" )


 俺は "はい" を押して街に戻り今日のゲームはここで終了。


 くっそ! ここまで進んだのにくだらないこと思い出してたせいで次もボロニータウンからやり直しだ。




『神よ! わたくし聖女オキシジェンヌの声を聞いてください! どうかわたくしたちを救ってくださいませ! わたくしたちこのままじゃ耐えられませんわ・・・しくしく・・・』




 勇者ベリリアムって・・・そうだよ!そういやそん時の小説の主人公の名前じゃん!


 何だよ、それで俺、それ繋がりで超昔のこと思い出しちまったのか・・・・・



 13才の俺が書いた未完の小説、『世界は元素で出来ている!超元素合成魔法パーティー118(ダブルワンエイト)



 俺の頭ん中では乙女剣士ニトロアと大魔法使いハイドロジーナが俺に向かって罵詈雑言を吐き続けてる。



 くっ、くっ、くっ・・・・・(くち)わりーぞ? お前ら。


 これ、俺が放置した罪悪感から来てんのかな?



 ゲームもひとまず終わったとこだし、ちょい10年ぶりに行ってみるか。


 えっと、どこだっけ? あのアイコン・・・・・


 ああ、これだ。



 隅っこに一つにまとめてあったアイコンたちの中から、水色の懐かしいアイコンをタップ。


 えっと、俺のタイトルは・・・・・『世界は元素で出来ている!超元素合成魔法パーティー118』


 ガチ恥ずい・・・・・何だよこれ・・・


 


 一人で赤面しつつ読み進む俺。




「・・・・・」





 ーーー脳内のざわめきたちに押されちまったんだ。


 


 13才の俺に出会った23才の俺は再び続きを紡ぎ始めた。







                        おしまい!



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