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天刃  作者: 弐式
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愛おしいほど、毒

一方、長月は睦月のもとへと帰ると言う。『卯月、皐月は弥生、文月同様に頭が狂ったのだ』と言った。しかし今の睦月はズヴィアの考えでもなく、元博士の考えでもない、自分の思考で行動しているのだと長月に説明。しかし、長月は『葉月、霜月を殺したのは誰だ』とまくしたてる。『葉月、霜月は外国家の醸し出す甘い毒にやられたんだ。外国家は自身らを殺す毒を振りまいているんだ』と声を荒げる。流頼たちは、ともかくついてきてくれるなら構わないと長月に言葉を返す。


長月を連れた状態でクレウィント・リ・アースへと赴いた一行。そこでカザベラとシエットのことを聞く。町の住民は突然いなくなった二人にたくさんの憶測で言葉を吐いた。長月は『コレが人間の正体』だと言う。

『その正体を決定的なまでに見せつけてやる』とカザベラ、シエットが住んでいたアパートへ向かう。そこには一人の老婆がいた。はずであった。


その老婆は名をエルベラと言った。齢70を過ぎる老婆であったがアパートの管理人をしていた。そしてカザベラ、シエットのことをたいそう心配していた。

二人とも別の国からやって来たということで常識が違うこと、また良い生活環境をしていないとしったエルベラは二人の世話を焼いた。朝起きて朝ごはんを作ったり、洗濯物をするんだよと一緒にしたり。

カザベラ、シエットともに困惑していたようだが、時期に慣れ。傍目から実の親子ともいえるほどに仲が良かった。しかし、同時にカザベラ、シエットが何かに悩んでいることも見て取れたそうだ。

カザベラ、シエットのアパートの一室にはとある報告書があった、しかし、それは途中から報告書ではなくただの日記とかしていた。

『自身らは任務と言われればあの老婆を殺すことができるのだろうか。いや、到底できまい。これが甘い罠。優しい毒。恐ろしい、しかし、暖かい。

流頼のメンバーの一人がクレウィント・リ・アースに到着したとの報告があった。殺そうと、殺されようとこれで自分らがこの町にいる理由は無くなる。もう二度と会うことはないだろう。それでいい。しかし、一つだけ気になることがある。

自身らがいなくなった後、老婆はどうしているだろうか、立ち去るならばまだいい、死んだあと、いったいどうなるのだろうか。

それだけが心配である。それだけが、そう思うことがすでに道具として死んでいるのと同等であることには、もう気づいているのだが…

殺そうと、殺されようと、どちらでも自身らは毒にむしばまれ、そして、死に至るのだろう。この甘く、優しい老婆の毒に――』

老婆はカザベラ、シエットが行方不明と聞き、心労がたたって床に伏していた。アパートの管理人も娘にたくし病院にいるという。

向かった先で『長月はカザベラ、シエットに似ている』と言われる。文月は『兄弟なんだ』と答えた。それを聞いた老婆は『そうかい』と嬉しそうに、しかし『二人を守れなくてごめんね、会わせられなくてごめんね』と悲しそうに長月にいう。

長月はそんな老婆に『カザベラとシエットは死んだ』と告げる。また、『死んだのはあなたのせいだ』とも告げる。告げられた老婆は悲しそうに涙を流す。

『謝罪の言葉ではかたり尽くせないこの思いをどうやって背負えば良いのか。しかし、そんな仇である私に会ってくれたのはどうしてだろうか。私はあなたに会えてうれしいのに』

『何故?自分はあなたに酷い言葉を浴びせていると言う自覚はあるのに』

『あの子らの兄弟が見れた、再びあの子たちに会えたと思った。こんな嬉しいこと、今の私には他にないのよ』と老婆は答えた。

老婆の容体は良くない、長月はそう言った。卯月は老婆をどうするつもりなのだと聞く。

長月は答えないままアパートへとひきこもった。日記とかした報告書には今日老婆としたこと、嬉しかったこと、そして毒にむしばまれていく様が描かれていた。

長月はこういう。『これは恐ろしい毒だ。なぜなら、毒と分かっていても、無性に、狂おしいほどに愛おしいのだから』と。

次の日、老婆に会った長月は『カザベラ、シエットが死んだのはあなたのせいだ』と言う。そして『カザベラ、シエットはあなたといれて本当に幸せだったんだ』と老婆に言い、日記を見せた。

老婆はその日記を見てもう一度涙を流す。長月は言う。『これからとある場所にいかなくちゃならない。でも、それが終わったら私は仇を討ちに現れる。どんな時でも隙を見逃さず、わずかでも酷い行動を確認すれば容赦はしない、だから、だから、自分が戻るまで、一緒に罪を償うその時まで生きているように、その先も生き続けるように、これは、絶対の約束だから』と長月は老婆にそう言った。

そして、老婆は、優しく微笑んだ。


長月は流頼の一行についていくこととなった。睦月のもとへ戻れば人間を殺す道しかないぞ、という弥生達に長月はこういう。『睦月?誰それ?そんなのいたっけ?』と、薄情者の命知らずだ、と一行の考えは一致した。


価値観と言えば常識。それ以上に意識下に刷り込まれている一種の洗脳。の、ような物。でもないとスゲー困る。マジで困る。

『価値観に刷り込まれる毒は優しく、甘く、愛おしい。

それは毒か?それは他者に知りえない、価値観によってのみ決まる』

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