開催の議
店主の案内を聞き終えたラーナは、少し離れた場所にいたリシアのもとへ、駆け足で近寄った。
「リシア。店主から広場への最短ルートを聞いてきたわ。開始まで時間がないから、急ぎましょう。私についてきて」
「あ、うん」
ラーナはリシアを連れ、人気のない路地へと導いた。
やや足早に歩みを進める。
「リシア、広場はこの国のちょうど中央にあって、ここから少し遠いのよね。それに、もう少しで星紬の祭りが始まってしまうの。だから、少し速度を上げてもいいかしら?」
ラーナはメモを片手に、やや焦りの浮かんだ表情をしていた。
次第に疲れが見え始め、汗をにじませるラーナとは対照的に、リシアはすがすがしい表情のまま走り続けていた。
(相変わらず、化け物じみた体力ね……)
ラーナはリシアの顔を覗き込むように見つめ、わずかに冷笑を浮かべた。
一方でリシアは、ラーナの焦りを、わずかに気にかけていた。
(ラーナ、疲れた顔をしてる。やっぱり、このまま走り続けるのは無理があるな……。私に何かできることがあれば……)
リシアは体力こそあるが、一人を抱えながら走るほどの余力はなかった。
風魔法でラーナを運ぶことはできるが、ここは人間界だ。
魔法を使っているところを誰かに見られれば、少々面倒なことになるだろうと、リシアには想像がついた。
(それなら…)
リシアはラーナに声をかけた。
「ラーナ、いい案があるんだけど……」
ふむふむ、とラーナは走りながら頷いた。
リシアの話を聞き終えると、ラーナの目はぱっと輝いた。
「それ、いいじゃない! それなら、私もあまり体力を使わずに済むわ」
ラーナは間を置き、ひと呼吸ついた。
「じゃあ、お願いしてもいいかしら……?」
リシアは、無言で頷いた。
* * *
王都ステラージュの広場にて。
広場の中央には、大きな高台が建っていた。
その上に立っているのは、きっと高貴な方だろう。
貴族らしい服装をまとった人物が一人、そして護衛らしきスーツ姿の者が一人立っていた。
手には、シャンパンのような飲み物を持っている。
荷台の下には、この国の国民や、他国からやってきた旅人たちが大勢集まっていた。
皆がわいわいと話す中、どこからか祭りの音楽も流れている。
そのとき、突如として護衛らしき者が声を張り上げた。
「静粛に!」
護衛の張り切った声に気を向けられ、お祭り気分でわいわいしていた群衆は静まり、立派な高台の方を見上げた。
「これより、星紡ぎの祭りの開催の議を、リュミナールの一番星――第一王子フェリクス殿下によって始める!」
「それでは、殿下。よろしくお願いいたします」
護衛らしき者が後ろへ下がると、後方に立っていた第一王子が前へ進み出た。
高台の上で第一王子フェリクスは深く息を整え、胸を張った。
視線は広場に集まった民や旅人たちに向けられている。
「民よ、旅人よ! 本日、このリュミナールのフェリクス・ローレン・リオネスにより、星々が紡ぐこの祭り――『星紡ぎの祭り』の開幕を、ここに宣言する!
私は、この祭りの開幕を告げる役を担えることを誇りに思う。
星紡ぎの祭りは、百年以上にわたり私たちの国で受け継がれてきた、光と希望の象徴である。
かつて祖王が星々の加護を祈り、この日に民と共に喜びを分かち合ったのも、今日と同じこの広場であったという」
王子の声に合わせ、空には光の花火が舞い上がり、旗が翻る。
広場に集まった人々の歓声が一斉に上がり、祭りは正式に幕を開けた。
「さあ、皆、心ゆくまで楽しむがよい! 星々の祝福に感謝し、こ3日間を共に喜ぼう!」
彼が宣言を放った瞬間、広場に集まった国民や旅人たちは、思わず「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」と歓声を上げた。
今日この頃、夜空は煌めく星々によって王都ステラージュを照らしていた。
数多の星を身にまとった空には、火魔術の応用による火の花が何度も何度も舞い上がっていた。
(今宵は、思いっきり楽しめそうだ――)
彼はそう思った。




