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光の威力は火よりも恐ろしい


「……()()()、誰?」


その言葉が放たれた瞬間、リシアの背筋を冷たいものが走った。


森の静寂を裂くように、家の周囲にいくつもの影が浮かび上がる。

人とも獣ともつかない輪郭。淡く透ける下半身。

年齢も性別も定かでない姿。


(……精霊だ)


つい先ほど、本で読んだばかりの存在。

だが、すぐに疑問が湧く。


精霊は、精霊だけが住まう国ーールミナリアから出ない。

人間界に姿を現すことはない。そう記されていたはずだ。

それなのに、なぜここに。


「―名乗って」


その一言を合図に、沈黙していた精霊達がざわめき出す。


「ここは精霊の国だ!人間が無断で住める場所ではない!」

「下級精霊なら、王のもとを訪れるのが規則だろう!」


精霊の国。王。

飛び交う言葉の意味が理解できず、リシアは言葉を失う。


(精霊の国……?じゃあここは……)


混乱の中で沈黙するリシアに、少女の精霊が声を張った。


「早く名乗りなさい!」


鋭い声とともに、指先の光の粒がじわりと集まっていく。

リシアは思わず後ずさり、心臓が早鐘のように打った。


(……まずい、これは本気で殺される……)


「私は…精霊じゃ、ありません」


口について出た声は、思いのほか澄んでいた。


「ここに住んでいる理由は……分かりません」


言葉を濁した瞬間、少女の鋭い視線が突き刺さる。


「嘘ね」


断言と同時に、指先から鋭い光の矢が放たれた。

それが、顔を射抜く寸前、リシアの体が反射的に動く。

かすめるようにかわした直後、焦げた土の匂いが鼻を突いた。


リシアは目だけを動かし、背後を見る。

先ほどまで咲いていた花は萎れ、木々は黒く焼け焦げていた。


(……え、当たるとこうなるの……)


リシアは小さく息を整える。

その瞬間、間を与えず、次の攻撃が放たれた。

光の刃が、容赦なく少女の手から解き放たれる。


(―やばっ)


次の瞬間、リシアは並外れのその脳をフル回転させた。


(身体を動かす時間はないっ……魔術を使う?…でも性質を考える余裕なんかっ……)


思考がすっと沈んだ。

リシアはいつもはない動揺も、焦りも、いったん胸の奥深くへ押し込めた。

心の中を、静かに、暗闇に沈めるように。


(……さっきのように…感覚で。邪魔なものを心の奥深くに沈めて……)


そのとき、リシアの目はすっと暗闇に落ちた。

少女の精霊はリシアの目を見るなりヒュッと無意識に喉を鳴らした。


次の瞬間、リシアの周囲の空気が微かに震えた。


音はない。

光は派手には溢れない。

ただ、月明かりのような淡い銀色が、彼女の足元に滲む。


それに押されるように、空気の流れが変わった。

光の刃が迫る―その直前。


リシアの身体は、風に乗せられたかのように横へ倒れた。

刃は空を切り裂き、背後の大地を深く抉る。


―ズン。


鈍い衝撃音。

リシアは数秒先に着地し、膝に肩をついた。

息が少し荒い。


「……っ、あぶなっ……」


思わず、そんな本音が零れた。

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