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#Fin 最終決戦

 最終回です。

 ~家~

 朝早く目覚めたタク。


 朝ご飯を食べようと下に降りていくと、置手紙と共に朝食が作られて用意されていた。

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 ~置手紙~

 おはようございます。執事のシルバスですぞ。

 朝食困るだろうと、勝手ながら簡単なものを作らせていただいたのですぞ。

 主のことです。もはや遠足気分なのでしょう。()()()()()()()ことは。

 ご安心を。このことを知っているのは私しかおりませんゆえ。

 おにぎりですが、旅途中にでもお食べください。昼前に帰りそうですがな。

 では、ご武運を。

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 ~玄関先~

「我ながら、よくできた執事だ。優秀な機械は観察眼が優れているといったが、それでも、あまりに高いスペックだ。…。行ってくる。」


 そう呟いたタク。

 タクには、「行ってらっしゃいませ。」と聞こえた気がした。


 タクは、あの【魔王城での記憶】を使用したのち、【転移(テレポーテーション)】を発動した。

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 ~魔王城~

 タクの転移した先は、衝撃的なことに魔王城の魔王の間のど真ん中だった。


 タクが、魔王の前だと認識する前に、首に突き付けられた槍。


「何者だ。堅牢な魔王城の結界内をいともたやすく転移してくるとは。」


 タクは、この時、割とガチで死んだと思っていたのだが、何とか震えず声を出すことができた。


「魔王様に会いに来た。決して敵ではない。」


「ふん。小僧が何を言うか。どうせ碌なことを考えておらんのだろう。ここで始末してくれるわ。」


 返答間違えたか…?と思いながら、[神剣バリアブル]のカードを出そうとしたときに、その声は響いた。


「そのものは、私への訪問者だと言っている。勝手な真似をせず下がれ!」


 どこか幼さの残る声に思えるが、強制力をはらんだ声が飛ぶ。

 その声は他でもない、魔王自身のものだった。


「はっ!申し訳ありません。出過ぎた真似を。」


「いいだろう。護衛としては素晴らしい。だが、近くに来て護れ。」


「はっ!」


「よい。で、人間がどうしてここにきている。討伐依頼か?人間もつくづく約束を守らんな。」


 勝手に話が進んでしまいそうだったので、覚悟を決めて口をはさむことにしたタク。


「討伐ではなくてですね…。少々お話を伺いに来ました。」


「ほう?人間が私と話を?面白い。恐れてはいないのか?」


「あ、いや、え~と、恐ろしいのは恐ろしいのですが…、かわいいので…。」


 まさか、ステータスがタクよりも低いことなど、この時のタクが考えることができるはずもない。いきなり、槍を首に突き付けられた恐怖心が強すぎたのだ。


「この私に向かって、かわいいとは命知らずだな。といっても、まぁ、魔王に向かってかわいいと言えるのは勇者だけだという伝説が魔王の一族にも残っている。貴様は勇者か?」


「あ、違います。」


「即答だな。では、何者だ?」


「勇者よりも強い力を持っていると自負する、優しい人です。」


 タクは、もうまともなことを言えなくなっているだけなのだが、意外と話が通じているうえに、むしろいい方向に話が進む奇跡が起こっているのだ。


「それを自ら言うのは、あまり褒められたものではないぞ?」


「いいのですよ。それよりも、尋ねたいことがあってですね。」


「そうだったのか。して、何用だ?」


「魔人が、魔神を復活させようとしているらしいのですが、知りませんか?」


「…事実か?」


「はい。そこで、管理されているかもしれない魔王様を尋ねました。」


「そういうことであったか…。すまない。私もすべての魔人を見れているわけではないのだ。そういうことをする魔人であれば、私も対処しなくてはいけない。そもそも、魔神の復活は魔界でさえも禁止されている。」


 意外にも、しっかりとした整備がされているようだと思ってしまったタクであった。


「すみません。では、魔王様はその魔人たちが、その…、死んでもかまわないと?」


「…仕方がないだろう。それほど大きなことなのだ。」


「では、私が倒してしまってもかまわないのですか?」


「むしろ頼みたいくらいである。」


「では、失礼しました。」


「む?ほんとにそれだけだったのか?」

 困ったような、あきれたような顔になる魔王様。


「そうですよ。危うく死にかけましたが。」


「終わったら、顔を見せに戻って来い。」


「…分かりました。」


 なぜか、頬が赤く見える魔王様を見て、首をかしげるタクだった。

 その後魔王城を後にする。

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 ~SHOP~

「魔人たちの居場所を。」


 作者は居なかった。しかし、目の前には【魔人たちの居場所】と、丁寧に書かれたアイテムが浮かんでいた。


「ついに閉店か?」

 そう呟いたタクだったが、返ってくる声は何もなかった。

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 ~魔王城前~

 タクは、先ほどのアイテム、【魔人たちの居場所】を使用した。

 頭に流れてくるのは、おそらく遺跡のような場所。即転移した。

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 ~遺跡~

 タクが遺跡に跳んだとき、巨大な力が周囲に存在していた。

 その場に新たな重力を発生させるほどの、力の奔流。


 まさに、魔神が復活しそうな雰囲気を醸すその遺跡。

 その傍らに、実行したと思われる魔人の集団を認めた。


 魔法陣は起動した後なのかもしれない。通例通りなら…、止めることはできない。


 タクはとっさの判断で、その集団を[神剣バリアブル]の刀形態[神刀バリアブル]…第一奥義[絶幻斬(ファントムデス)]で切り払った。確認したが、生き延びたものは一人もいなかった。この奥義の効果は、幻のように見えて実体を伴う、急所(命を確実に奪える場所)への確定攻撃だ。見えていたとしても、避けられないし、避ける必要すら本人は感じない。仮に避けたとしても、当たるまでは攻撃が自動で続く。つまり、確定で死ぬ。(この時、とある国で人間を少し操って悪いことしようとしていた魔人も死んだとかなんとか)


 そしてタクは、目の前で空間が裂け、そこから何かが出てくるところを目を離さずに見ていた。


 ~vs魔神~

 なんだこの化物(これ)は…。


 タクの【秘匿鑑定(シークレットシー)】で分かったことは一つ。


 レベルがLv.Aと記されていたことだけだった。


 ちなみに攻撃をいくつかぶっ放したのだが、0ダメージだった。まるで効いていない。しかし、魔人を先に殺っていたことと、魔法をぶっ放していたことが利いたのだろう。作者を呼び出せるゲージが、99%まで溜っていた。


 しかし、魔神は攻撃を始める。この魔神の攻撃は一発一発が地面を揺らし、空間に一瞬のゆがみを発生させた。タクは避けることしかできない。否、避けることすら出来ていないにも等しかった。


 苦戦を強いられる一方。攻撃に転じることができない今、作者召喚ゲージをためることができない。


 そして、魔神は力をため始める。この構えは見たことがあった。少なくともこの構えから放たれるレーザーに当てってしまえば、間違いなく肉片すら残らない。そんな威力の魔法が放たれようとしていた。


 しかし、こんな時だからこそ、最悪の事態が起こる。避ける態勢に入るとき、近くにある石に躓いてしまったのだ。


 魔神の攻撃が放たれるのも、もう時間の問題。死んだ…。と思ったその時、なぜか作者の召喚ゲージが100%となった。タクはすかさず作者を召喚した。


「危なかったね。あとあ任せてくれ。」


 いつもの優しい声が聞こえた。


「あと、君が踏んでしまった蟻さんに感謝するんだね。」


 そう。石に躓いたとき、体の下に蟻がいたのだ。それも、少しレアな。おかげで、それが作者ゲージの1%分を満たし、奇跡が起こったのだ。


 魔神は、ため終わったその技を発動する。まさしく終焉の光。当たったものすべてを壊しそうなものだった。


 しかし、作者は片手を前に突き出すと、そのすべてを霧散させてしまった。そして、作者は言う。


「『権能召喚(ノベルマスターサモン)』【強制帰還(アブソリュートバック)】」


 その宣言と共に、光に包まれた作者は、空間を裂き、魔神をいともたやすく掴んで、その裂け目に投げ込んでしまったではないか。


「はいっ。終わり。んじゃ、帰るね。」


「…。」


 その光景に唖然としたタクだったが、細かいことは考えないことにした。

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 ~魔王城~

 タクは自分で勝ったというより、作者のおかげだったので、実は釈然としていないのだが、一度報告に戻ってくるようにと言われているので、魔王城へと転移した。


「で…。これは、いったいどういう事でしょう…。」


 魔王様がタクに抱きついて、胸に頭を預けている。という状態になっている。


「この距離からでもわかるほどの大きな魔力が渦巻いたのだ。いくら私といえども、恐ろしくもなる…。」


 それから、しばらくそおのの状態が続いたとかなんとか…。


「では、魔王様が管理されている魔物、魔人たちは、人との不戦を守っているし、破るつもりもないという事ですね。」


「当然だろう。別に、命がかかっているわけでもないのだから。」


「では、そのように報告してきます。多分2度と来ないと思いますが、もし、また何かあればよろしくお願いします。」


「その…、偶には来てくれてもいいんだぞ?」


「いえ、よっぽどでなければ来ないと思います。」


「そうかでは、よっぽどでなくても来い。私が会いたいのだ。」


 頬を赤くしながら、そういう魔王様は本当にかわいらしかった。


「というか、呼びつける。召喚魔法でも練習しておく。」


「…。分かりましたよ。友達からですからね。」


 と、帰る間際になってこうなり、魔王と友達になった人間として有名になるとかならないとか…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ~学園~

「というわけで、話はつけてきましたのでご安心を。」


「お疲れさんでした。」


「では、失礼します。」


 驚かないのも、異常な速さにも突っ込まれないのも、操られているから仕方がないという結論に至ったのだった。

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 ~家~

 いつもと変わらない日常が待っていた。


「早かったのね。用事は終わったの?」


「ああ、終わったよ。」


 いつもと変わらない調子で答えるタク。しかし、その顔には安心の表情と、うっすらと涙が浮かんでいたという。

 気になるところもまだまだ残っているかと思いますが、終わったという方向には持って行けたかと思います。

 ほんの少し、説明というか、本来ならこういう流れにするつもりだった、というのをこの後投稿する予定なので、設定の完結にはしていません。

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