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白く、白く、どこまでも白い部屋だった。
壁も、床も、天井も。
光を反射する無機質な白。
空調の低い駆動音だけが静かに響いている。
その部屋の中央で、老人は揺り椅子に腰掛けていた。
真っ白な研究衣。
痩せ細った指先。
深く刻まれた皺。
だが、その瞳だけは不思議なほど穏やかだった。
老人は膝の上で手を組み、向かいに座る少年を見つめる。
青白い肌に、銀色に近い淡い髪。
硝子細工のような灰色の瞳。
首輪には黒いコード刻印。
【LION-9】
それが彼の名前であり、識別番号だった。
「リオン-9。星を知っているかい?」
老人が静かに問いかける。
少年はぱちりと目を瞬かせた。
「……ほ、し?」
発音を確かめるように、ゆっくり呟く。
知らない単語だった。
老人は小さく笑った。
揺り椅子が、きぃ……と小さく軋む。
少年は老人を見つめたまま首を傾げる。
老人は真っ白な天井を見上げた。
そこには空などない。
「昔、人間は空を見上げて生きていたんだ」
「そ、ら……?」
「頭の上に広がる世界さ。青くて、広くて、終わりがなくてねぇ」
老人の声はどこか懐かしそうだった。
「夜になると星が"空"に浮かぶのさ」
やがて老人は、ゆっくり身体を揺らしながら続けた。
「少し昔の話をしてあげようか……」
その声は、まるで誰かの遺言のように静かだった。




