心が喪失の名を叫ぶ時
激しく燃え上がる戦場。
アルマザ騎士団と〈暁の黒い夜明け〉の激闘は、もはや天地を揺るがすものとなっていた。
アズロンが姿を現し、スカイが不意を突いてオス・ハスミを刺したその瞬間、カインが鎖でスカイを縛り上げる。
「兄さん!兄さん、目を開けて!お願い…!」
マヤの悲鳴が響き渡る。
「兄さぁぁぁん!!」
イェザンは俯き、ラーカンが低く呟いた。
「マヤ…落ち着け…。」
だがスカイは冷酷に笑った。
「愛する者を失う痛みは重いな。ハハハ…!」
イェザンはゆっくりと顔を上げる。
祖父マルワンの死が脳裏をよぎり、怒りが爆発する。
「黙れ、この悪に染まった愚か者が!お前に人の痛みが分かるか!」
スカイ:「理解するつもりもない。弱者の感情など、俺には不要だ。」
イェザン:「くそっ…貴様なんかに!」
スカイ:「怒ったか?それでいい、もっと見せてみろ!」
――その頃、アズロンとアルダの激しい肉弾戦が続いていた。
拳と脚がぶつかり合い、空気が裂ける。
アズロン:「見事だ。ここまでの体術使いは久しぶりだ。」
アルダ:「…この戦い、終わらせる!」
アルダは目を閉じ、全身の力を解放した。
アズロン:「どこだ!?」
声:「上だ!」
ドンッ!!
アルダの踵が落ち、地面に巨大なクレーターができる。
「すごい!」「先生!」「やったのか!?」「アルダ様!」
誰もが息を呑んだ。
しかし、煙の中から響く声。
アズロン:「良い一撃だ…だが、俺はその程度で倒れる男じゃない。」
アズロンは片手を空に掲げる。
「――光槍陣!」
無数の光の槍が放たれ、次の瞬間消える。
「どこに…?」「アルダ、避けろ!」
だが遅かった。
槍はアルダの体を貫き、彼を縛り上げた。
「なっ…体が…動かない!」
「くそっ、あの恐るべき術か!」ラーカンが叫ぶ。
――回想――
生徒たちの顔が恐怖に凍りつく。
イェザン:「先生っ!」
ラーカン:「来るな…逃げろ…!」
アズロン:「終わりだ。」
黒いドームが出現し、ラーカンを包み込む。
彼の力が吸われていく。
「な…力が抜けて…いく…。」
アズロン:「お前の師が死ぬ今、来い、ザランの継承者よ。」
――現在に戻る――
「先生を助けるんだ!」
ラーカンを守るため、レイドとアスマが突進する。
だがワイルは叫びながら逃げ出した。
「嫌だっ!死にたくない!ごめん…みんな!」
レイド:「臆病者めっ!!」
黒いドームが再び現れ、仲間たちの力を吸い取っていく。
ラーカンは残った力を振り絞り、アズロンに突進した。
アズロン:「そんな残り火で俺を倒す気か?」
ラーカン:「倒すとは言っていない…ただ――見ろ。」
アズロンが振り返ると、ドームが消え始めていた。
「何!? 糸を断ち切ったのか…!?」
ラーカン:「残りの力を目に集中させ、エネルギーの流れを見抜いた。それを断ったのさ。」
アズロン:「なるほど。だが徒労だ。お前の弟子たちはすでに気絶している。」
遠くでスカイが呟く。
「ラーカン…なかなかの知恵者だ。」
そして、彼の視線がイェザンに向く。
「次はお前だ。」
イェザン:「やってみろ。」
その瞬間、マヤがイェザンの肩を掴んだ。
「イェザン、下がって…これは私の戦い。」
振り返ると、彼女の瞳は真っ白に染まっていた。
スカイ:「ほう…泣いていた少女が今度は復讐者か。面白い!」
大地が震え、水がマヤの周囲で渦を巻く。
ラーカン:「まさか…覚醒したのか!? これがハスミ一族の真なる力…!」
しかし、表情が険しくなる。
「だが危険だ。今の彼女の身体じゃ…持たない!」
アズロン:「見事だ…これがハスミの血か。」
イェザンの目が見開かれ、スカイは狂気の笑みを浮かべる。
「いいぞ…その怒り、見せてみろ!」
「スカアァァイィィ!!!」
マヤの叫びと共に、水の龍が生まれる。
スカイは時空を操ろうとするが、強烈な水の力がそれを封じた。
龍は彼を包み込み、空へ持ち上げ、地へ叩きつける。
轟音。
静寂。
スカイは倒れ伏し、アズロンでさえ息を飲んだ。
マヤは一瞬立っていたが、次の瞬間、崩れ落ちる。
イェザン:「マヤ!マヤ、しっかりしてくれ!」
彼女は答えない。
その頬を流れる水が、まるで涙のように光っていた。
――第◯章 終――




