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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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やみのなかのさけび

夜明けの光が差し込む頃、新設された特別部隊の面々は帝国要塞の中庭に一列に並んで立っていた。

冷たい空気が漂い、緊張と高揚が張り詰めるように満ちている。


軍の監督官がゆっくりと歩み寄り、硬い声で告げた。

「この瞬間から、お前たちは新たな階級“少尉(F)”として、初の正式任務に就く。」


数秒間の重い沈黙が流れる。

「任務は――黒い暁(ブラックドーン)組織の東部国境地帯での動向の追跡と調査だ。これは訓練ではない。本物の任務だ。全員が生きて帰れる保証はない。」


イェザン、マヤ、シーグランは無言で視線を交わした。

彼らはもう学生ではない。帝国軍の正式な兵士となったのだ。

ラーカンはイェザンの肩に手を置き、自信に満ちた声で言った。

「今からお前たちは訓練生ではない。精鋭部隊だ。」


ラーカンを隊長に、特別部隊は出発した。

共に行くのは、かつてアルダとアドナンの下で鍛えられた9人の仲間――

シーグラン、マヤ、イェザン、アミール、アナス、ナダ、ラエド、ワエル、アスマ。


彼らは巨大な滝の近く、ある地点に到着した。

ラーカンが紙の地図を広げ、真剣な声で言った。

「情報部によると、この滝の奥にブラックドーンのアジトがある。三方向から包囲する。ラエド、ワエル、アスマは右。アミール、アナス、ナダは左。残りは俺と中央から突入する。不意を突き、一気に制圧する。」


さらに厳しい声で続ける。

「目標は敵全員の生け捕りだ。単独行動は禁止。ひとつのミスが全員の死に繋がる。いいな?」


「了解!」全員の声が響いた。


静かに三つの班がそれぞれの方向へと進む。


――その頃、アジト内部。

ひとりの少女が退屈そうに椅子に座っていた。

「ねえ、兄さん。なんでボスは私たちに任務をくれないの?退屈で仕方ない。」


冷たい目をした青年が静かに答える。

「心配するな。向こうから来るさ。」


その言葉通り、特別部隊が三方向から潜入を始めた。

青年は小さく笑った。

「来たな…面白くなりそうだ。」


少女は妖しい笑みを浮かべる。

「10人か。いいね…しかも、ひとりカッコいい子がいる。私、イイ男を痛めつけるの大好きなんだ。」


二人は静かに前へ進み出た。

青年が名乗る。

「俺はカイン・グリーン。こいつは妹のイラだ。」


ラーカンが低く呟いた。

「グリーン…聞いたことがある。」


カインは鼻で笑う。

「お前たちはアルマザ帝国の人間だな。調べ上げてある。」


ラーカンは拳を握りしめた。

「グリーン兄妹…カグラ帝国出身。世界中で指名手配されている凶悪犯。」


マヤが小声で言う。

「カグラ帝国は禁術を使うって噂がある…」


イラは冷たい笑みを浮かべた。

「よく知ってるじゃない。お兄ちゃん、始めてもいい?」


カインが頷く。

「やれ。」


イラが片手を上げ、囁くように唱える。

「闇幻術。」


ラーカンが叫ぶ。

「見るなッ!!」


だが、すでに遅かった。

イラは禁術――“絶望の幻”を発動。

全員が心の奥底に封じ込めていた悪夢の中へと引きずり込まれた。


ラエド


血の臭い、母の悲鳴、燃え盛る家。

幼い手に握られた血まみれの刃。

「なぜだ…ラエド…なぜ…!」

ラエドは膝をつき、叫び声を上げる。


アスマ


少女たちの嘲笑。

「見て、赤い髪…血みたい!」

「こんな奴、貴族にふさわしくない!」

髪を引きちぎられ、アスマは涙を流しながらうずくまる。


ワエル


父の怒声が頭の中で響く。

「怠け者…無能が!」

膝をつき、自己嫌悪に飲み込まれる。


アミール


暗い隅で震える少年。

「臆病者!」

「自分の影にも怯えるなんて!」

叫びたくても声が出ない。


ナダ


血まみれの妹の亡骸。

あの日の悲鳴が蘇る。

「いやぁぁぁぁぁっ!」


アナス


幼なじみが倒れる。

「俺が強ければ…死ななかったのに。」


マヤ


一族の前、兄の前。

「家の恥さらし。」

「弱い娘だ。」

冷たい視線が全身を刺す。


シーグラン


父の冷たい眼差し。

「お前は弱い。恥さらしだ。」

血塗れの手。孤独。

彼は強さを誓った夜を再び見る。


イェザン


村人の怒号。

「出ていけ、呪われた子!」

「魔女の息子!」

祖父マルワンが血を流して倒れる。

幼いイェザンの叫びが空間を引き裂く。


全員が闇の中で過去に囚われ、目は虚ろに、身体は震えていた。

だが――一人だけ、倒れなかった者がいる。


ラーカンは闇の中で立ち上がり、拳を握りしめる。

「……こんなところで、終わらせない。」


咆哮が響く。

「目を覚ませぇぇぇぇぇぇぇッ!!」


幻を突き破り、現実へと飛び出す。

外では、カインが巨大な鎖を振るい、地面を叩き割っていた。


「一人耐えたか。面白い。」カインは嗤う。

ラーカンは低く呟いた。

「早く終わらせる…こいつらを死なせるわけにはいかない。」


彼は一気に踏み込み、剣と鎖が激しくぶつかり、火花が散る。

背後ではイラが不気味に笑う。

「お前の仲間は自分の絶望の中で死ぬの。逃げられない。」


激しい戦闘の最中、突然閃光が走る。

「……なっ!」カインが目を瞬く。

「な、何も見えない…!」イラの声が震える。


一瞬の刹那、ラーカンはイラの背後に現れた。

その手は彼女の首に添えられ、空気が刃のように張り詰める。

細い血筋がイラの首筋を伝う。


「イラァァァァァ!」カインが叫ぶ。

ラーカンは冷たい声で言い放つ。

「幻術を解け。さもなくば…ここで首を落とす。」


震える手でイラが術を解く。

闇が砕け、全員が現実に引き戻された。

荒い息、震える体、流れる涙。

全員の心臓が、激しく鼓動を打っていた。


ラーカンが鋭い声を放つ。

「立て。戦いは、まだ終わっていない。」

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