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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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日本語: 帝国部隊の誕生

第3班は「オルタ村」での任務を終え、重苦しい沈黙の中で学院へ戻ってきた。

夕焼けが空を赤く染める中、教官ラカンは穏やかな笑みを浮かべて立っていた。

しかし、その瞳には今まで見たことのない光が宿っていた。


「ああ……忘れるところだった」

「明日はお前たちにとって大きな日になる。

人生を変えるかもしれない日だ」


ラカンはヤザン、セイグラン、マヤを順に見つめた。

「帝国が新しい特別部隊の選抜を発表する。試験は厳しい……だが、お前たちを信じている。」


翌日。

学院の大広場に3つのチームが集まった。

冷たい風が吹き、張り詰めた静寂が漂う。足音だけが響いていた。


第1班 – アルダ・ツシマ

・アスマ・カザミ

・ラエド・カグチ

・ワエル・ユキナラ


第2班 – アドナン・カグチ

・アミール・リコザ

・アナス・コラミ

・ナダ・ヒカリ


第3班 – ラカン

・ヤザン

・セイグラン

・マヤ


緊張が場を支配する。

アミールが鼻で笑い、「ラカンの負け犬たちが来たな」と言う。

アナスがニヤリと笑い、「ブラック・ドーンの一員を倒したって噂だぜ」と返す。

ナダが加える。「第1班より任務の成功数も多いらしいわ。」

ラエドが拳を握りしめる。「くそっ…どこまで成長したんだ…?」

アスマはセイグランを見て頬を染め、「セイグラン…やっぱりかっこいい…」と呟き、続いてヤザンを見て「彼も…変わった」と心の中で呟く。


突然、圧倒的な圧力が広場を覆った。

ラエドが一歩下がり、アスマが口を押さえる。

黒いローブを纏った男が校舎から現れ、一歩踏み出すごとに地面が震えた。


「あいつだ……」ヤザンは呟いた。

入学試験の日に感じた、あの圧と同じだ。


セイグランは顔を伏せ、

ラカンは低く呟く。「恐ろしい力だ……」

アルダは「試験前に怖がらせるつもりか…」と漏らし、

アドナンは黙って笑う。


黒衣の男の声が剣のように空気を裂いた。

「本日――帝国特別部隊アルマーズ選抜試験を開始する。」


そして彼は霧のように消えた。

地面が割れ、黒い迷宮が姿を現した。


魂の試練 ― 黒い迷宮


試験は三段階で構成されていた。

第一は「知覚」。

第二は「肉体」。

第三は「魂」。


ラエドが最初に入る。数千もの扉が並ぶ部屋の中で、唯一の正解の扉を見つける。

炎を纏った拳で試し、燃えない扉を見抜いた。

ワエルは氷の槍を放ち、反応の違いで見抜いた。

アスマは風で部屋を揺らし、動かなかった扉を見つけた。


アミールは雷で突破し、ナダは光で隠れた扉を暴いた。

アナスは影を地面に伸ばし、影そのものが出口を探し出した。


セイグランはあの黒衣の男の気配を感じ、心が揺れる。

だが「逃げない」と叫び、青と赤の炎を混ぜ、全扉を包んで真の扉を見破った。

マヤは水滴の揺らぎを見つめ、揺れなかった扉を選んだ。

ヤザンは素手で一枚ずつ殴り、血を流しながらも、唯一反応の違う扉を見抜いた。


第二段階「肉体」では、崩れ落ちる天井と動く床の中を突破しなければならなかった。

アミールは素早さで、ナダは光となって、ラエドは炎で突破する。

セイグランは二色の炎で押し切る。

マヤは水の球体で罠をしのぐ。

ヤザンは全てを正面から受け止めた。拳から血が流れても、彼は一歩も引かなかった。


第三段階「魂」。

全員の前に鏡が現れ、それぞれの過去が映し出される。

セイグランは黒衣の男の前で震えていた自分を見る。

マヤは守れなかった仲間の記憶を見る。

ラエドは仲間の影に埋もれる恐れを、

ナダは空虚な自分を、

アナスは影に飲まれる自分を見つめる。


ヤザンの鏡には、村人たちが石を投げる姿が映った。

「出て行け!」「お前は呪いだ!」

少年の頃、雨の中で一人震えていた自分。

しかし彼は静かに笑った。

「この過去が、俺を決めるわけじゃない。」


拳で鏡を砕き、光の道を進む。


試験を終え、生徒たちは一人ずつ迷宮から出てきた。

ラエド、アスマ、ワエル、アミール、ナダ、アナス、セイグラン、マヤ。

最後に出てきたのは、血まみれのヤザンだった。だが、彼は堂々と立っていた。


ラカンが駆け寄る。

「ヤザン!」

マヤが息を呑む。

ヤザンは手を上げて微笑んだ。

「俺は…倒れなかった。」


黒衣の男が上空に現れ、その声が広場に響いた。

「迷宮を抜けた者――全員、合格だ。ここからが精鋭への第一歩だ。」


アルダ、アドナン、ラカンの三人の教官が前に進む。

黒い宝箱が開かれ、中には銀と金の糸で刺繍された黒いローブが入っていた。

背には一つの紋章が刻まれている。


ザラン一族の紋章――炎、水、影を戴く竜の頭。


監督官が厳かに告げる。

「今この瞬間から、君たちは《アルマーズ精鋭部隊》だ。帝国の隠された盾、そして最も鋭い刃となる。」


一人ずつローブを受け取り、その瞬間、熱が体の奥に走る。

不思議な力が全身を包んだ。


ラカンはザランの紋章を見つめ、目を細める。

「俺たちは…あいつのために戦うのか? それとも帝国のために…?」


風が吹き、ローブがなびく。

太陽が紋章を照らし、広場全体を黄金色に染めた。

黒衣の男は再び姿を消した。


この日始まった物語は、試練を超える重さを持っていた。

アルマーズ精鋭部隊の誕生だった。

そして、運命の歯車が静かに動き始めた――。

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