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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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18/76

戦いの後で(たたかいのあとで)

アズロンが消えた――

マイヤは膝から崩れ落ち、荒い息を吐きながら胸に手を当てた。

「行った……神様、危険は去ったのね……」

イェザンはその場に立ち尽くし、敵が消えた空間を見つめながら低く呟いた。

「もっと……もっと強くならなきゃ……」

その隣で、シグランは拳を強く握りしめ、悔しそうに顔を歪めた。

「くそっ……自分に満足できない……!」

沈黙の中、ラーカンがゆっくりと前に出た。

真剣な表情で弟子たちを見回し、静かに言葉を紡ぐ。

「……弟子たちよ。すまない。私はお前たちを守れなかった。

師として、お前たちを大きな危険にさらしてしまった。

今日の相手は……熟練の戦士である私でさえ容易なものではなかった。」

彼は一瞬、目を伏せると、再び顔を上げた。

「……行こう、先へ進むぞ。」


第三班は任務――重要な伝達書を届けるための旅を続けた。

長い道のりの末、彼らはついにある戦闘部隊の野営地へとたどり着く。

門の前に立つ警備兵が警戒の目で問いかける。

「何者だ?」

ラーカンが一歩前へ出て、銀色の証章を掲げる。

「私はラーカン・ヒカリ。アルマザ帝国本部ギルドからの使者だ。

こちらは私の任務仲間であり、弟子たちだ。」

兵士は証章を確認し、頷いた。

「……よし、通れ。」

案内兵が彼らを司令テントへと導く。

そこでは、隊長である ラシード・コラミ 大尉が出迎えていた。

「ラーカン先生、および弟子たち、ようこそ。」

ラーカンは軽く頭を下げた。

「ありがとうございます、大尉ラシード・コラミ。」

隊長は生徒たちの疲れ切った顔を見て、すぐに状況を察する。

「どうやらここに来るまでに、相当なことがあったようだな。」

彼は兵士の方を向いて命じる。

「食事と飲み物を用意してやれ。まずは休ませろ。

話はそのあとで聞こう。」

食事と飲み物が運ばれ、生徒たちはラカン先生の隣で静かに食べていた。

その沈黙は、彼らの胸にまだ残る戦いの緊張感を物語っていた。

その様子を、隊長の ラシード・コラミ は遠くから鋭い目で見つめていた。

戦いを知る者の目――沈黙の中にある真実を読む男の目だった。

夜になると、第三班のためにテントが張られた。

焚き火の前で、ラカンとラシードは向かい合い、星空の下で静かに語り始めた。

ラシード(真剣な声で):

「ラカン…道中、何があった?」

ラカン(深く息を吸い):

「強力な敵と遭遇した…本当に強かった。」

ラシード(眉をひそめ):

「どの帝国の者だ?」

ラカン:

「正確には分からない。ただ一つ確かなのは、そいつが《黒いダークドーン》の一員だったことだ。」

ラシード(重い声で):

「黒い暁…最近この地域で動きを見せ始めていると聞いている。まさか…幹部クラスか?」

ラカン:

「いや…リーダー本人だ。」

ラシード(衝撃を受けて):

「なに…リーダーだと!?」

ラカン:

「とても強かった。戦い方も異常で、見たことのない技を使ってきた。本当に手強い相手だった。」

ラシード:

「そいつの狙いは…?」

ラカン(静かに):

「ラザン一族の子供だ。」

ラシード(息をのむ):

「まさか…お前のチームにラザンの血を引く者がいるのか?」

ラカン:

「いる。シグランだ。奴のせいで“アズロン”は、Bランク昇格試験の時に3人の部下を送り込んできた。そのうち1人はシグランが倒した。残り2人の死因は今も不明だ。」

ラシード(暗い表情で):

「かわいそうな子だ…。そんな血を持っているせいで、力を狙う者たちに一生追われるだろう。平穏な人生など望めない。」

ラカン:

「…ああ、その覚悟はある。」

ラカンは帝国から預かった封書をラシードに渡した。

それを読んだラシードは、顔を上げて力強く言った。

ラシード:

「明日、私の部下を数名同行させよう。この状況では、敵の奇襲に備える必要がある。特に《黒い暁》が関わっているならな。」

夜は静かに更けていった。

だがこの夜、彼らの心に火が灯った――近づく戦いの炎が。

ヤザン、セイグラン、マヤの三人は深く眠っていた。

彼らの心は、死と隣り合わせだったあの戦いの記憶にまだ囚われていた。

ラクアンは静かに部屋に入り、眠る三人を見つめながら小さくつぶやいた。

「わからない……。この若者たちが体験したものは、精神的に強い兵士でさえも壊してしまうはずだ。

それでも、彼らはまだ立っている……。きっと未来で大きな存在になる。

俺は、これからもっと慎重にならなければならない。」

夜が明け、第三班は出発の準備を整えた。

ラシード・コラミはラクアンに、封印された文書を手渡した。

「では、あの少女は誰だ?」とラシードが問う。

マヤは一歩前に出て言った。

「マヤ・ハスミです。」

「なるほど……そして君はセイグラン・ラザンだな。」

ラシードは静かに笑い、

「全帝国の歴史で最強といわれた一族の子孫に会えるとは、光栄だ。」

周囲の兵士たちはざわめいた。

「何だって?! ラザン一族の人間なのか!?」

ラシードは次にヤザンを見た。

「君は……ヤザン・ファドスか?」

一瞬、彼の表情が固まった。何かを感じ取ったようだが、自分でも理解できない。

「ヤザン・ファドス……そんな一族、聞いたことがない。」

ラクアンが割って入り、

「ある将軍の親族に関係する一族だ。」

ラシードはうなずいた。

「なるほど……光栄だ。」

ラシードは兵士に命じた。

「馬を持ってこい。」

ラクアンが言った。

「厚意に感謝します。」

ラシードは微笑み、

「あれほどの戦いを乗り越えたのだ。援護するのは当然だ。」

第三班は馬に乗り、護衛兵と共に街へ向かった。

ラシードはその姿を見送りながら、

「あの少年は……何だ、この妙な感覚は……気のせいか。」

とつぶやいた。

到着後、彼らはギルドへ向かい、ラクアンは印章を提出した。

「今は宿舎に戻って休め。明日は訓練がある。」

その後ラクアンは情報局へ行き、報告を行った。

「どうぞ」とダルウィス検査官の声がする。

「報告があります。」とラクアン。

「第三班の教官、ラクアン・ヒカリか。わかっている、続けろ。」と検査官。

「移動中、我々は“黒き暁”の襲撃を受けました。」

「なに……黒き暁だと?!」

「はい。辛くも生き延びました。敵は強力でした。名は“アズロン”、通称“消し去る者”。奇妙な技を使い、どの帝国の者かも不明です。」

「貴重な情報だ。しかしなぜ攻撃された?」

「ラザンです。」

「なに?」

「試験のときの事件と繋がっています。あのとき殺された三人は、彼の手下でした。」

「……なるほど。“黒き暁”の目的は力。若いラザン一族の少年は、格好の標的というわけか。ありがとう、ラクアン教官。これからはさらに注意しろ。」

ラクアンは退出し、ダルウィスは小さくつぶやいた。

「今、知らせるべきか……。」

彼は評議会の建物へ向かい、許可を得て中へ入る。

窓に背を向けて座る男がいた。重く威厳のある声が響く。

「何の用だ。」

「“黒き暁”が現れ、Bランクの小隊を襲撃しました。」

「どの隊だ?」

「第三班です。」

「結果は?」

「生存しました。」

「……下がれ。」

ダルウィスは廊下を歩きながらつぶやいた。

「彼は…彼らの安否すら聞かなかった……あの男の考えはわからない。」

一方、男はゆっくりと立ち上がり、窓辺に歩み寄る。

その瞬間、異様な気配が解き放たれ、建物全体が震え上がった。

ダルウィスは背後でその圧を感じながら、

「怒らせてしまったようだ……」

とつぶやいた。

こうして章は幕を閉じる。


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