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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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炎と影の試練 ― アズロンの消失

突然の衝撃音が響き渡った。

アズロンは後方へ吹き飛ばされたが、地面に倒れる前に体を制御し、空中で姿勢を立て直した。

そして、空を仰ぎながら大声で笑い出す。


「ハハハハ! 虫けらのくせに、なかなかいい一撃じゃないか! まさか俺を驚かせるとはな……面白い!」


イザンはその場に立ち尽くし、汗が頬を伝う。

シグランは歯を食いしばり、嫉妬と怒りが混ざった炎がその瞳に宿った。


「……こんな弱虫に、俺が劣るわけがない!」


頭の中に、過去の声がよみがえる。

『恥だ……お前は族の恥さらしだ……ザランの名を汚すな!』


その言葉が、刃のように胸を突き刺す。

シグランの体が硬直し、空気が震え始めた。

青い炎が渦を巻き、周囲の熱が大地を揺らす。


アズロンは片眉を上げ、挑発的に笑った。


「ほう、それが“怒り”か? ザランの名を背負う者なら、もっと見せてみろ!」


その言葉に、シグランの瞳が燃えるように輝く。

マヤは思わず一歩退き、息を呑んだ。


「……すごい、これが彼の“気”……!」


イザンは震える声で呟く。


「なんて圧だ……!」


次の瞬間、シグランが稲妻のような速さで飛び出した。

炎をまとった拳がアズロンの胸を直撃し、彼を大木へと叩きつける。

大地が揺れ、砂埃が舞う。


「やった!」

マヤが叫ぶ。

イザンは言葉を失い、ただ見つめていた。


アズロンはゆっくりと立ち上がり、唇の端を上げた。

イザンが一歩前に出る。


「シグラン、マヤ! 一緒に攻めよう、今なら――!」


だが、シグランは怒鳴り返す。


「黙れ、馬鹿が! 俺に命令するな!」


マヤが落ち着いた声で口を開く。


「でも……イザンの言う通りよ。」


彼女は目を閉じ、一瞬だけ過去を思い出した。

試験の時――何もできず、ただ気を失った自分。

それでも“弱い”と言われたイザンは、決して諦めなかった。


「もう逃げない……今度こそ!」


マヤは弓を構え、圧縮した水の矢を放つ。

同時にシグランは紅と蒼の混じる炎球を放ち、二つの攻撃がアズロンへ襲いかかる。


轟音と閃光が辺りを包み、蒸気と煙が立ちこめた。


「……やったの?」

マヤの声が震える。


しかし――煙が晴れると、そこには無傷のアズロンが立っていた。


「くだらない。そんな程度の攻撃で俺に傷をつけられると思ったのか?」


シグランの目が見開かれる。

「まさか……拘束から抜け出したのか!?」


マヤも叫ぶ。

「“ドーム”が、私たちのエネルギーを吸収していたはずなのに!」


その瞬間、大地が光に包まれた。

そして――ラカンが現れた。

堂々と立つその姿は、風格と静けさを併せ持つ。


「待て、イザン。よくやった……だが残念ながら、君たちの攻撃は彼に届かない。」


場が静まり返る。

アズロンはゆっくりと笑い始めた。


ラカンは一歩前に出て、穏やかに言った。


「どうやって“ドーム”から抜け出したのか、気になるか?」


彼は二本の指を立て、淡々と告げる。


「理由は二つある。

一つ目――“ドーム”は視認・感知できるエネルギーを吸収する。

だが、速く、静かに、気の脈動を抑えた動きは感知されない。

強さではなく、静寂と精密さこそが鍵だ。」


一瞬の沈黙。

ラカンは微笑みを浮かべて続けた。


「そして二つ目――イザンの奇襲だ。

その瞬間、お前の“気”の集中が乱れた。

それが唯一の突破口だった。」


マヤが息を呑む。

「つまり……イザンの一撃が決め手だったのね。」


シグランは拳を握りしめ、嫉妬と驚愕が入り混じる。

アズロンは逆に愉快そうに笑った。


静寂が流れ、空気が再び震える。

アズロンは周囲を見渡し、低く呟く。


「もう十分だ……。」


彼はゆっくりと顔を上げ、その瞳が狂気にも似た輝きを放つ。


「楽しませてもらった。」


その瞬間、彼の体から異質な波動が放たれる。

空間が歪み、空気が裂ける。


イザンが一歩踏み出す。

「待て……どこへ行くつもりだ!?」


だが次の瞬間、アズロンの姿は掻き消えた。

灰のように、風に溶けて消えていく。


「……消えた?」

マヤが呟く。


シグランは拳を強く握りしめた。

「違う……本気じゃなかった。俺たちを試していたんだ。」


ラカンは静かに頷く。


「そうだ……彼にとって、これは“遊び”にすぎなかった。」


そして空を見上げ、低く呟く。


「アズロン……何を企んでいる?」


三人の視線が交わる。

その胸に残るのは、恐怖と確信。


――戦いは、まだ終わっていない。

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