ヤザンの不意のパンチ
ラカンはアズロンに一撃を放った後、すぐに振り返り、倒れたまま惨めな姿のヤザンを見つけた。
彼は拳を握りしめ、叫んだ。
「くそっ…ヤザンは強烈な一撃を受けた!俺はなんて不注意なんだ…!」
急いで駆け寄る。
「ヤザン!大丈夫か?」
ヤザンは腫れた顔を上げ、苦しそうにしながらも小さな笑みを浮かべた。
「はい…師匠、僕は大丈夫です。」
ラカンの視線はセイグランへ移った。彼は心ここにあらずで立ち尽くしている。
「セイグラン!聞いているのか!?」
ラカンの声に飛び上がり、夢から覚めたように返事する。
「は、はい師匠!」
その瞬間、マヤがヤザンのもとへ駆け寄り、涙をこらえて彼を支えた。
ラカンは生徒たちの前に立ち、鋭く毅然とした声で言った。
「下がれ…この敵は俺の力の限界を試す相手だ。」
アズロンが砂塵の中から立ち上がり、冷たい笑みを浮かべる。
「チッ…来るのが遅かったな。お前の弟子を痛めつけるのを楽しんでいたのに。だが今は…伝説のアルマザ帝国の師、その力を試させてもらう。」
二人は激しくぶつかり合い、拳は稲妻のようにぶつかり、姿が消えたり現れたりする。
三人の生徒は瞬きもできず、未知の世界に目を奪われていた。
セイグランが苦くつぶやく。
「俺たちは…本当にこんなに弱いのか?」
ヤザンは口を開いたまま言葉を失い、
マヤは震え声で叫んだ。
「これは…夢? なんて戦いなの!?」
大地が震え、空気が裂ける。だが両者は倒れない。
ラカンは木の上に跳び、低くつぶやいた。
「奇襲するしかない…」
手を掲げる。
「閃光の閃き!」
眩い光が炸裂し、皆の視界を奪う。次の瞬間、叫んだ。
「雷光の閃撃!」
稲妻のようにアズロンの前に現れ、強烈な一撃を叩き込み吹き飛ばす。
マヤは歓声を上げた。
「やった!師匠は強い!」
ヤザンは痛みの中で笑みを見せ、セイグランは呆然と立ち尽くす。
だがラカンは笑わず、鋭い声で言った。
「喜ぶな…こいつらは簡単には倒れない。」
砂煙の中から重い笑い声が響く。
「ふふ…やはり光の一族、ヒカリ一族か。いいぞ…これで面白くなった。」
アズロンは空へ手をかざす。
「降り注ぐ槍!」
無数の光の槍が現れ、そして消えた。
ラカンは困惑する。
「なに…どこに消えた!?」
次の瞬間、槍が彼の肩と脚を貫き、地に縫いとめた。
「ありえん…!なぜ動けない!?」
アズロンが嘲笑する。
「ふふ…さっきの自慢の速度はどうした?」
弟子たちは凍りつき、恐怖に心を奪われる。
ヤザンが叫ぶ。
「師匠!」
ラカンは途切れ途切れに言う。
「近づくな…離れろ…!」
アズロンはさらに手を掲げる。
「まだ終わっていない…」
巨大な闇のドームが生まれ、ラカンを包み込む。
力を吸い取られ、身体が重くなり、声が消えていく。
「な…力が…抜けていく…」
生徒たちは無力に立ち尽くし、心臓は激しく鼓動し、空気は重くなる。
アズロン: 「師が死にかけている今…ザランよ、私と来い。」
ヤザン: 「師匠…」
(病院での記憶。優しく気遣うラカンの姿。拳を握り、心を燃やし、叫ぶ。)
アズロンは観察しながら、今まで感じたことのない恐怖にわずかに震える。小声でつぶやく。
「なに…?この少年に二度もこんな感覚を…妙だ。芽を摘む前に殺すべきだ。」
ヤザンへ歩み寄るアズロン。しかしセイグランが動いた。
一歩踏み出すが、すぐに止まる。心の奥で叫ぶ。
「これは…?恐怖が戻ってきた…あの深淵の悪夢…だが耐えろ!俺は悪魔に鍛えられた、人間ごときに怯むものか!」
顔は平然としているが、背後の拳は震えていた。誰も気づかない。
マヤ(心の声): 「どうすればいいの…?この恐怖…私を支配してる!」
アズロンが鋭くヤザンに叫ぶ。
「お前は、光年先に強い者と対峙したことはあるか?」
ヤザンは傷だらけでも瞳を輝かせて言い返す。
「ある…お前より強い者に師事した。」
マヤは衝撃でつぶやく。
「まさか…ラカン師匠のこと?」
ヤザンは続けた。
「帝国学園に入る前…俺の最初の師は、ジー階級だった。」
マヤの目が大きく開く。
「ジー階級…!?」
(ヤザンの言葉は雷のように響いた。セイグランは唇を噛み、心で叫ぶ。「この怪物より強い者が…!なぜ恐怖に支配される?俺は悪魔に鍛えられた。もう震えない!」)
突然アズロンがヤザンの首を掴み、高く持ち上げる。
「くだらん戯言はここまでだ。」
(力を込める。)
セイグランは怒りに燃え、力を集める。
アズロンは冷たく笑い、視線を向ける。
「いいぞ…その力を見せてみろ!」
ヤザンを投げ飛ばし、マヤが駆け寄る。
セイグランの炎が燃え上がる。青と赤、消えぬ永遠の炎が巨大な球となり、アズロンに放たれた。
マヤは水を操り、足元を滑らせてバランスを崩させる。その隙に炎が直撃する。
火炎が包み込む!
だがアズロンは炎の中で嘲笑した。
「俺より強いだと?これが限界か?」
マヤは止まらず、水の大矢を放つ。
アズロンは驚き、跳び上がり、火球を素手で受け止めた。
セイグランは目を見開く。
「なに…!?どうやって…!」
マヤが叫ぶ。
「くそっ…失敗か!」
その瞬間、ヤザンがアズロンの目前に現れ、渾身の不意打ちの拳を叩き込んだ。
アズロンは吹き飛び、生徒たちは衝撃に包まれた。
こうして章は終わる――ヤザンの予想外の一撃が、戦いを覆した。