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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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150/151

分かたれる戦争

象徴的な導入


すべての戦争が、剣と剣がぶつかる瞬間に始まるわけではない。


時に——

一人の男が街から離れることを選んだ時、

その街が自分と共に燃え落ちないようにと願った時、

戦争は始まる。


そして時に、

運命は二つの道へ分かれる。


ひとつは、怪物へ向かう道。

もうひとつは、なぜ自分たちが闇の標的となったのかさえ知らない者たちを守るために残る道。


その日、

アルマザが向き合っていたのは、一人の敵ではなかった。


千年の結果だった。


そして、そこにいるすべての心は、

叫びが始まる前に、

自分の立つ場所を選ばなければならなかった。


アルマザ郊外 — 門が燃え上がる前


郊外の人々は、

まだ戦争が届いたことを知らなかった。


人々は狭い石造りの路地を走り、

子どもを抱え、

震える手で家の扉を引き閉めていた。


東門に近い一角で、

小さな壁が砕けた。


そこから現れたのは、

兵士たちが訓練で知っていたどの魔物とも違うものだった。


長い体。

ねじれた四肢。

病んだ沈黙へ開かれた口。


それは咆哮しなかった。


その必要がなかった。


存在そのものだけで、

子どもたちに泣き方を忘れさせるには十分だった。


木製の荷車のそばで、老人が倒れた。


立ち上がろうとした。

だが魔物が彼の方を向いた。


そして飛びかかった瞬間——


その前に、炎の線が爆ぜた。


無秩序な爆発ではない。


赤く鋭い一線が、

魔物と老人の間の地面を切り裂いた。


魔物は止まった。


石畳の道の上に、

アドナン・カグチが現れた。


彼は動じず立っていた。

手を伸ばし、

その目は魔物だけを追っていたのではない。


逃げる方向。

民間人の位置。

そして門との距離を読んでいた。


鋭い声で言った。


「魔物を追うな」


背後の隊が振り返る。


アドナンは続けた。


「門から引き離せ」


その背後で、大地が重く沈んだ。


アルダ・ツシマが一歩前へ出た。


声を荒げなかった。


その必要もなかった。


彼は手のひらを地面につけた。


短い石壁が盛り上がる。


道を塞ぐためではない。

民間人と魔物を分けるためだった。


静かに言った。


「アドナン、炎で押し返せ」


彼は門を見た。


「俺が通さない」


マヤは二度目の命令を待たなかった。


手を上げると、

割れた壺や道の水路から細い水の糸が集まった。


それらは老人と近くの子どもに巻きつき、

魔物の進路から引き離した。


アスマは低い壁の縁へ上った。


風が彼女の髪と衣を揺らした。

そして目を閉じる。


「家々の裏に第二の動きがある」


すぐに目を開いた。


「違う……一つじゃない」


表情が凍る。


「波だ」


ナダは両手を上げた。


そこから穏やかな光があふれる。

攻撃の光ではない。

崩れかけた衛兵たちの呼吸を支える光だった。


はっきりした声で言う。


「私を見て」


一人の兵が震えた。


ナダは繰り返した。


「闇を見ないで」


アミールは短い雷の軌跡で飛び出した。


小型の魔物のそばに現れ、

雷の鞭で打ち据える。


彼は最初に止める者になりたかった。


だが魔物は倒れなかった。


むしろ予想よりも速く、彼の方へ振り向いた。


アドナンが叫んだ。


「アミール!」


炎の線がアミールの前に落ち、

魔物を後退させた。


アドナンは鋭く言った。


「速さは目立つためにあるんじゃない」


アミールは歯を食いしばった。


アドナンは続ける。


「速さとは、誰かが死ぬ前に届くことだ」


アミールは答えなかった。


だが手の周りの雷が変わった。


派手さは薄れた。


より鋭く、集中した。


ライード・カグチが横から飛び込んだ。

拳は熾火に包まれていた。


その顔には怒りが浮かんでいた。


魔物への怒り。


リクザへの怒り。


ニムルードへの怒り。


そして、カグチの名が災厄の道に関わっていたという事実への怒り。


アドナンは彼を見ずに、

まるで読んでいるかのように言った。


「盲目の炎で恥を洗うな、ライード」


ライードは一瞬止まった。


アドナンは言った。


「人を守ることで洗え」


ライードは黙った。


そして足を地面に突き立て、

短い炎の衝撃で魔物を逃げる人々の道から弾き飛ばした。


ワイルは混乱しながらも、

両手を地面へ向けた。


小型の魔物たちの足元に霜が広がる。


完全に凍らせたわけではない。

だが、子どもたちの一団が逃げるには十分な遅れを生んだ。


震えながらつぶやいた。


「全部は分からないけど……」


そして顔を上げる。


「これを通しちゃいけないことだけは分かる」


二つの壁の間の影で、

アナス・コラミが消えた。


ほんの一瞬。


次の瞬間、

彼はマヤへ迫っていた魔物の背後に現れた。


手から伸びた黒い糸が、

魔物の脚に絡み、

突進を断ち切った。


低い声で言う。


「闇は、あいつだけのものじゃない」


マヤは一瞬だけ彼を見た。


そして再び民間人へ目を戻した。


その場にいる誰もが理解していた。


これは大波ではない。


ただの最初の牙だった。


廊下 — アルマザ王宮


王宮では、

静寂の方が騒音よりも残酷だった。


ハスミは言葉を止めた。


気配は分かれた。


ひとつは首都へ向かう影。

もうひとつは、イザンの糸を追う災厄。


廊下の端から、

イザンの姿は消えていた。


逃亡のような完全な消失ではない。


彼が残した影が、

そこに留まる理由を失ったかのようだった。


ラーカンはすぐに顔を上げた。


「……イザン!」


だがその場所は空だった。


ハマンが一歩前へ出る。


「止まれ」


それが誰へ向けられた言葉なのかは分からなかった。


離れていったイザンへか。


自分自身へか。


それとも、予想よりも速く動き出した災厄へか。


そして彼がさらに一歩踏み出す前に、

背後から静かな声がした。


「止まりません」


廊下が凍った。


視線が振り返る。


廊下の端、

柱のそばに一人の若い女性が立っていた。


声を荒げてはいなかった。


目に見える武器も持っていなかった。


それでもその存在は、将軍たちでさえ振り向かせた。


その美しさは奇妙なほど静かだった。


見られることを求める美しさではない。


むしろ場所そのものを黙らせる美しさだった。

まるで、命令しか知らない王宮に、優しさそのものが入ってきたかのように。


マヤは気づかぬうちに彼女を見つめていた。


ナダは動けずにいた。

自分の氏族の光とは違う光を見たかのように。


アミールは理解できなかった。


ワイルは少し口を開け、

そして後悔しそうなことを言う前に閉じた。


アナス・コラミは静かに彼女を見た。


それからハマンを見た。


最高司令官の顔が変わったからだ。


彼が振り向く前に変わった。


まるでその声を、

存在を認めるより先に知っていたかのように。


ハマンは低い声で言った。


「……リン」


その名は、廊下に隠されていたものが突然扉を開かれたかのように響いた。


アミールが囁く。


「……リン?」


ライードはアドナンを見た。

だがアドナンも答えを持っていなかった。


リンは彼らを見なかった。


彼女の目は、イザンが消えた方角へ向いていた。


言った。


「私も彼と行きます」


ハマンがついに彼女へ振り向いた。


その目は厳しかった。


だが厳しさの奥に、別のものがあった。


恐怖に似た何か。


「駄目だ」


リンは退かなかった。


静かに言った。


「彼は私の兄です」


その言葉が廊下に落ちた。


マヤが突然顔を上げた。


「……あなたの兄?」


ナダが囁く。


「……シグランに姉がいるの?」


ワイルは、空中に散らかった秘密を整理しようとするように手を動かし、

小さく囁いた。


「……前話からまだ立ち直ってないんだけど」


誰も笑わなかった。


ラーカンがゆっくりと言った。


「……事態はさらに複雑になっていくな」


ハマンは冷たく言った。


「お前にこの戦いの居場所はない」


リンは彼を見た。


「戦いになる前に、私は彼の人生にいるべきでした」


その言葉の後に訪れた沈黙は、

どんな返答よりも重かった。


ハマンは声を荒げなかった。


だが拳が閉じられた。


「お前は兄を見られないかもしれない」


リンは動かなかった。


ハマンは続けた。


「兄の顔をした何かを見るだけかもしれない」


マヤが凍りついた。


リンは瞬きもしなかった。


「たとえ彼が私を分からなくても……」


一瞬沈黙する。


「私は彼を知っています」


ハマンは彼女へ一歩近づいた。


「お前を殴るかもしれない」


リン。


「分かっています」


ハマン。


「ためらわないかもしれない」


リン。


「分かっています」


ハマンは歯を食いしばった。


「違う。お前は分かっていない」


沈黙。


「お前が知っているのは、雨の中で泣いていたシグランだ」


彼は地平の方を見た。


「だが今来ているものは……」


声が低くなる。


「泣かせていたすべてを埋めることを覚えた何かかもしれない」


リンは一瞬だけ目を伏せた。


そして言った。


「なら、まだ埋められていないものがあるかどうか、見に行きます」


ハマンはすぐに返せなかった。


その言葉は、彼が隠そうとしていた場所を突いたからだ。


ラーカンの許可


ラーカンが一歩前へ出た。


「最高司令官」


ハマンはすぐには彼を見なかった。


ラーカンはわずかに頭を下げた。

その地位への敬意であって、

恐れではなかった。


「行く許可をください」


ハマンは言った。


「駄目だ」


ラーカンは退かなかった。


「イザンがいます」


沈黙。


「シグランもいます」


ハマンが彼を見た。


ラーカンは続けた。


「結局のところ……二人とも私の前を弟子として通りました」


廊下の沈黙がさらに張りつめる。


「もし一方がもう一方を殺すのなら……」


彼は止まった。


「私はここで壁を守るだけではいられません」


ハマンは長く彼を見た。


そして言った。


「二人とも、お前の弟子か……」


その声はさらに重くなった。


「そして二人とも、我々の過ちの結果だ」


ラーカンは否定しなかった。


ハマンは続けた。


「この戦いに感情の居場所はない」


リンが彼を見た。


ラーカンもまた。


その言葉そのものが遠い過去から戻ってきたかのようだった。

幼いシグランの腕についた血を携えて。


ハマンはそれを感じた。


だが退かなかった。


言った。


「だが、どうしても感情が必要だというのなら……」


彼は止まる。


「……それを死の理由ではなく、災厄を遅らせる理由にしろ」


そしてラーカンを見た。


「行け」


ラーカンは顔を上げた。


ハマンは言った。


「感情で目を曇らせるな」


ラーカンは静かに答えた。


「今度は……」


彼は止まった。


「感情こそが、私たちを道具にしないために残されたものです」


ハマンはその返答を気に入らなかった。


だが拒まなかった。


リンを見る。


「もし彼がお前に手を上げたら……」


リンは遮った。


「分かっています」


ハマンはさらに冷たく言った。


「いや。お前は分かっていない」


そしてより低い声で付け加えた。


「だが、分かることになる」


マヤは残る


リンが動いた。


ラーカンがその後を追う。


マヤは反射的に一歩進んだ。


「……ラーカン先生」


ラーカンは振り返らずに足を止めた。


マヤの声は、かろうじて保たれていた。


「私も行きます」


今度はラーカンが彼女へ振り返った。


その目に冷たい拒絶はなかった。


痛みを知っている目だった。


「マヤ」


彼女は答えなかった。


ラーカンは言った。


「アルマザには、お前の水が必要だ」


マヤは窓の方を見た。


遠くで、

もう一つの気配が街へ近づいていた。


アーセル。


リクザ。


そして魔物たち。


マヤはイザンを思い出した。


地が燃えても誰も泣かない場所。


彼女は手を握りしめた。


そしてゆっくり涙を拭った。


言った。


「私は残ります」


全員が彼女を見た。


マヤは顔を上げた。


「もしイザンが、人々を守るためにシグランを遠ざけたのなら……」


彼女は止まった。


「私たちがアルマザを落としたら、その意味がなくなります」


ハスミは黙って彼女を見た。


そして頷いた。


ラーカンはかすかに笑った。


誇らしげで、

悲しい笑みだった。


マヤは彼を見た。


「でも……」


ためらう。


そして言った。


「連れ戻してください」


沈黙が少しだけ柔らかくなった。


「たとえ、もう私たちと座れなくても……」


痛みを飲み込む。


「連れ戻してください」


ラーカンは約束しなかった。


言葉で希望を売る男ではなかったからだ。


ただ言った。


「努力する」


それが彼に言える、最も誠実な言葉だった。


防衛命令


ハスミが一歩前に出た。


その顔は再び将軍のものになった。


「驚くのは終わりだ」


隊の視線が彼へ向いた。


「危険は、もはや城壁の外だけにあるのではない」


彼はアドナンとアルダを見た。


「お前たちは避難と門の防衛を指揮しろ」


アドナンは即座に頷いた。


「了解」


アルダは静かに言った。


「穴は塞ぎます」


ハスミはマヤを見た。


「マヤ・ハスミ。民間人と負傷者を頼む」


マヤは胸に手を当てた。


「はい」


「アスマ。城壁の上へ。すべての波を到達前に見つけろ」


アスマは頷いた。


「ナダ。衛兵は気配の影響を受ける。恐怖に足を止めさせるな」


ナダは言った。


「支えます」


「アナス」


アナスが目を上げた。


ハスミは言った。


「影はお前に任せる」


アナスは笑わなかった。


「了解」


そしてアミール、ライード、ワイルを見る。


「アミール、一人で突っ込むな」


アミールは目を細めたが、反論しなかった。


「ライード、怒りは作戦ではない」


ライードは拳を握った。


そして緩めた。


「ワイル、奴らの足元を遅くしろ」


ワイルは強く息を吸った。


「やっと分かる命令が来た」


ハスミは将軍たちへ振り向いた。


「アーセルとリクザは子どもたちの相手ではない」


沈黙。


「我々が受け止める」


リクザの名が出た時、

数人の将軍の顔が変わった。


未知の敵ではなかった。


知っている名だった。


かつての仲間。


壁の向こうではなく、

本来なら共に壁の上に立つべき男だった。


ハマンは地平を見た。


「ならば、シグランの影を街へ入れるな」


そしてラーカンとリンを見る。


「行け」


リンは待たなかった。


ラーカンがその後を追う。


ハマンは一瞬だけその場に残った。


そして動いた。


イザンへの道


ラーカンはイザンの痕跡を追って走っていた。

リンはその隣にいた。


彼女は戦いを追う者のようには走っていなかった。


兄に残された最後の糸を追う者のように走っていた。


ラーカンは横目で彼女を見た。


顔立ち……


確かに。


シグランに似たものがあった。


目の鋭さ。


顔の線。


何か深いものを隠しているような静けさ。


だが、彼女の周りの空気はシグランとは違った。


シグランは空気に圧力を残す。


一方でリンは……


違っていた。


静かで。


温かく。


安心させるものだった。


ラーカンは心の中でつぶやいた。


つまり、これがシグランの姉か……


そして彼女を見ながら続けた。


似ている……だが、心は似ていない。


リンは彼を見なかった。


目は道を見ていた。


だがラーカンは、なぜか分からないまま、

彼女の隣を走ることが危険を増やすのではなく、

少しだけ和らげているように感じた。


その背後で、

ハマンは無言で動いていた。


誰かを追う男のようには走っていなかった。


道を知る影のように動いていた。


そして突然——


ほんの半瞬、足を止めた。


その目が遠くを向く。


気配。


シグラン。


イザンの糸へ、予想より早く到達した。


ハマンの顔が変わった。


大きくではない。


だがラーカンが気づくには十分だった。


ラーカンが言った。


「最高司令官?」


ハマンは答えなかった。


拳を握る。


そして低い声で言った。


「……遅れた」


リンの心臓が凍った。


「何が?」


ハマンは彼女を見なかった。


「……奴はもう、彼に届いた」


それ以上彼女が尋ねる前に、

ハマンの気配が爆ぜた。


騒がしい炎ではなかった。


空気そのものを屈服させるような、苛烈な圧力だった。


そしてハマンは飛び出した。


一瞬で、

二人の前に出た。


次の瞬間には、

消えていた。


リンは反射的に立ち止まった。


ラーカンは吹きつけた風圧から顔を守るため腕を上げた。


周囲に砂塵が舞い上がる。


短い数秒の間、

ハマンが残したのは、道に刻まれた焦げた痕跡だけだった。


ラーカンは歯を食いしばった。


「……見かけ以上に速いな」


リンは彼が残した痕跡を見た。


そして壊れた声で言った。


「シグラン……」


ラーカンは彼女に立ち止まることを許さなかった。


「動け」


彼は道を見た。


「ハマンがあの速さで向かったということは……」


沈黙。


「イザンは、もう一人ではないということだ」


リンは一瞬だけ目を閉じた。


そして再び走り出した。


今度は、

兄だけを追っているのではなかった。


血と血が出会う前の、

最後になるかもしれない瞬間を追っていた。


アルマザの門 — 影の到達


東門に、

第二波が到達した。


第一波とは違っていた。


今度は、

魔物だけではなかった。


アーセルが先頭にいた。


その目は虚ろだった。


体は戦いを知る者の硬さで動いていた。

だが魂のすべてがそこにあるわけではなかった。


その隣に、

リクザが現れた。


体の周りに病んだ雷がちらついていた。


彼らが知るリクザの雷ではなかった。


ひび割れ、

端が黒く染まり、

まるで雷そのものが熱病に侵されたかのようだった。


一人の将軍が一歩前に出た。


「リクザ!」


返事はない。


将軍は拳を握った。


「これがお前に残ったものか?」


沈黙。


そして苦々しく言った。


「アルマザを裏切り……」


言葉を止める。


「氏族も裏切ったか」


リクザはゆっくり顔を上げた。


目は開いていた。


だが、その奥に完全に誰かがいるわけではなかった。


彼は答えなかった。


ただ体をわずかに低くした。

遠い命令が彼を動かしたかのように。


そして飛び出した。


黒い雷が地面を裂く。


同時に、

一人の将軍がエネルギーの障壁を上げて受け止めた。


衝突が門を揺らした。


遠くから、アミールが衝撃に目を見開いた。


「これが……リクザの雷?」


ナダが張りつめた声で言った。


「違う」


その手に小さな光が灯る。


「これは、雷を着た何かよ」


アーセルがアドナンへ向かって動いた。


だが届く前に、

別の将軍がその前に降り立った。


二人の最初の衝突だけで、

若い者たちの足元の地面がひび割れた。


アドナンが叫んだ。


「隊! アーセルとリクザに近づくな!」


ライードは反論しかけた。


アドナンはさらに強く叫んだ。


「これはお前たちが正面から戦う相手じゃない!」


そして魔物たちを指した。


「お前たちの相手は、あれだ」


アルダが幅広い石壁を立ち上げ、

三体の魔物がそこへ激突した。


マヤは水の波を送り、

民間人を防衛線の後ろへ押し戻した。


城壁の上からアスマが叫ぶ。


「北から第三波!」


ワイルは両手を地面に突き刺した。


脇道に霜が広がる。


「ここは通さない」


影の魔物がナダへ飛びかかった。


アナスが消えた。


次の瞬間、

その魔物は地面に倒れていた。


自分の影から伸びた黒い糸に縛られて。


ナダが振り向く。


アナスはその背後に立っていた。

目は門へ向けたまま。


低い声で言った。


「……良い闇じゃない」


そして再び消えた。


マヤは地平へ目を上げた。


そこにイザンはいなかった。


だが彼は、彼女のすべての判断の中にいた。


彼女は言った。


「彼が最大の災厄を遠ざけたのなら……」


水を自分の周囲に盾のように立ち上げる。


「私たちは、その影を街に入れない」


泣かぬ大地


アルマザから遠く離れた場所。


家も名も持たない広大な土地の上で、

イザンは高い岩の上に座っていた。


片膝を立て、

もう片方の足は地面につけている。


立てた膝の上に手を置き、

黒い外套が風にわずかに揺れていた。


敵を待っている者には見えなかった。


場所を選び、

あとは運命がそこへ届くのを待つ者のようだった。


家はない。


子どもはいない。


市場もない。


怯えた者たちが隠れる窓もない。


ただ硬い大地と、

重い空と、

罪なき者には聞かせるべきではない戦いを包み込めるほど広い沈黙だけがあった。


イザンは地平を見上げた。


気配が近づいている。


小さく笑った。


だがそれは、喜びの笑みではなかった。


「……思ったより早い」


遠くにシグランが現れた。


彼は急いでいなかった。


焦ってもいなかった。


まるで大地そのものが彼のために道を開けているかのように歩いていた。


闇は彼の背後にあるのではなかった。


彼の中から出ていた。


一定の距離で止まる。


岩の上に座るイザンを見た。


そして笑った。


「待っていたのか」


少し首を傾ける。


「自信がありすぎるように見えるぞ……小僧」


イザンはすぐには立たなかった。


岩の上から彼を見ただけだった。


「お前は遅れた」


シグランの笑みが少し広がる。


「アルマザに寄っていた」


イザンは静かに言った。


「俺がそこから出した」


シグランは低く笑った。


「救ったつもりか?」


イザンはゆっくりと足を地面に下ろした。


「違う」


そして立ち上がる。


「時間を与えただけだ」


シグランは長く彼を見た。


そして言った。


「時間?」


笑った。


「なんて慈悲深い」


彼はわずかに手を上げた。


周囲の黒い気配が広がる。


「では見せてもらおうか。その時間がどれほど持つのか……」


風が止まった。


遠い道では、

リンとラーカンが同じ場所へ向かって走っていた。


そしてハマンは、

焼けた影のように、

二人よりも速く近づいていた。


だがシグランが最初に到達した。


そしてイザンは、

泣かぬ大地の上で、

ついに立った。


彼は生還を待っていたのではない。


代償を待っていた。


第150話 終わり。

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