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アルマザの騎士たち - 最初の任務

翌朝、ヤザンは早く目を覚まし、顔を洗い、大きく息を吸い込んだ。まるで新しい一日、新しいページを始めようとしているかのように。

学校の食堂に入ると、焼き立てのパンの香りと温かな空気が彼を迎えた。カウンターの後ろには責任者であり料理人の女性が立っていて、ヤザンを見ると微笑みかけた。


—「おはよう、坊や……どんなに辛い時でも、いつも笑っていなさい。笑顔は食事を運ぶ前に、友を運んでくれるのよ。」


ヤザンは一瞬立ち止まり、その言葉が心に深く響いた。自然と唇に笑みが浮かび、静かに答えた。

—「そうします……ありがとう。」


彼は席に座り、小さく呟いた。

—「笑っていよう……少しでも自分を良くして、他人の目に映る自分も変えたい。」


ヤザンが朝食を食べていると、アナスが入ってきて、いつもの料理を注文した。彼は離れた場所に座ったが、目はヤザンから離れず、静かに、しかし戸惑いながら見つめ続けた。その胸の奥に、説明のつかない不思議な感情が芽生えていた。


ヤザンはその視線に気づき、穏やかに、そして真心を込めて微笑んだ。

アナスは慌てて視線を皿に落とし、鼓動を早めながら食事を続け、感じたものを無理に無視しようとした。


やがて、理論の授業の時間が訪れた。

教師ナシム・カザミが教室の前に立ち、誇らしげな笑顔と張りのある声で語りかけた。

—「みんな、よくやった!君たちは騎士試験で素晴らしい成果を収め、このアルマザ帝国と我らの学校に大きな栄誉をもたらした。私は本当に誇りに思う。さて……君たちはBランクを獲得した。今こそ、その証を授けよう。」


彼は手に丸い金属のバッジを掲げた。そこには「B」の文字が刻まれており、教室の光を受けて輝いていた。

—「このバッジを胸に付けること、それは君たちが正式に騎士の仲間入りをした証だ。」


生徒たちは次々と前に進み、誇らしげにバッジを胸に付けていった。教室はざわめきと笑顔に包まれた。


ヤザンは静かに座り、その光景を見つめていた。試験の時の記憶が蘇る。人前に立つこともできず、倒れてしまったあの瞬間……胸に苦い思いがこみ上げ、教師にバッジを求めるのをためらった。


その時、ナシムの声が教室に響いた。

—「ヤザン・ヴァドス!」


ヤザンは小さく震えながら答えた。

—「はい……」

ゆっくりと立ち上がり、ためらいながら前へ進んだ。


その瞬間、ナシムの脳裏に二日前の光景が蘇った。


ラーカンが彼にヤザンのバッジを渡していたのだ。

—「なぜ自分で渡さないんだ、ラーカン?」ナシムは訝しんで尋ねた。

ラーカンは小さな笑みを浮かべて言った。

—「彼は今、心が弱っている。だからこそ、仲間の前で君に渡してほしい。試験の時、観衆の前に立てなかった彼に……今こそ、この瞬間の価値を感じさせてやりたい。」

—「分かった……」ナシムは頷いた。


現在に戻る。ナシムは全員の前でバッジを掲げ、ヤザンの胸に自ら付けた。

—「よくやったな、ヤザン。」


ヤザンの胸に、温かい喜びが溢れた。他の者にとっては取るに足らない場面かもしれない。しかし彼にとって、それは世界そのもののように大きな出来事だった。初めて「除け者ではない」と感じ、受け入れられたのだ。彼の笑顔はもう仮面ではなく、心の奥底からのものだった。


やがて鐘が鳴り、授業が終わった。生徒たちはそれぞれの教師に導かれて訓練場へと向かった。


第三班が訓練場に到着した頃、やはりラーカンは遅れていた。

マイヤは唇を噛み、片手で顔を覆いながら道の方を見ていた。

シグランは腕を組んで座り、ヤザンは軽やかに腕立て伏せをしていた。


すると突然、ラーカンが姿を現した。

—「馬鹿者め!」彼はヤザンに怒鳴った。

—「一週間は軽いジョギング以外するなと言っただろう!」


ヤザンは驚いて立ち上がった。

—「す、すみません……先生。」


マイヤが不満げに言った。

—「先生、どうしていつも遅れて来るんですか?」


ラーカンは後頭部をかきながら軽く笑った。それを見てシグランは皮肉っぽく呟いた。

—「全く……生徒も教師もふざけた集団だな。」


だがラーカンは急に声を張り上げた。

—「だが今日は朗報だぞ!」


三人は一斉に真剣な面持ちになった。

マイヤの目が輝き、

—「わあ!」

シグランは微笑んで呟いた。

—「来たな……」

ヤザンも心の中で誓った。

—「これで……自分を証明するチャンスが来た。」


マイヤが尋ねた。

—「先生、どんな任務なんですか?」


ラーカンは説明を始めた。

—「まず任務の種類を説明しよう。Bランクから最高位Jランクまでの階級があり、それぞれに責務があるのだ。」


帝国の階級制度


何世紀も前に建国された帝国は、民を守り、秩序を保ち、栄光を拡大するため、厳格な階級制度を定めた。任務は村の警備から大軍の指揮まで、多岐にわたる。


Bランク – 初級兵(Beggar):盗賊から村を守り、小規模な護衛や伝令、簡単な巡回を担当する。

Cランク – 兵士(Corporal):小規模な敵集団との戦闘、隊商の護衛、捜索救助を任される。

Dランク – 軍曹(Deputy):新人兵を率い、待ち伏せや要人護衛、敵の動向調査を行う。

Eランク – 少尉(Ensign):部隊を率い、偵察や都市内の危機対応を指揮する。

Fランク – 隊長(Field Captain):中規模都市の防衛、反撃作戦、敵情報の収集を担う。

Gランク – 少将(General Major):大隊を指揮し、広範な軍事作戦を遂行する。

Hランク – 大佐(High Colonel):連隊を率い、大規模な戦略計画や兵站を管理する。

Iランク – 将軍補(Imperial Brigadier):複数の連隊を指揮し、遠征や占領地の管理を行う。

Jランク – 大将(Justicar / General):帝国軍の最高司令官。戦争の行方を決し、皇帝を守護する。


ラーカンは笑みを浮かべて付け加えた。

—「そして君たちに与えられた任務は、ある将軍へ公式の伝令を届けることだ。私が指揮を執る。」


マイヤが手を挙げた。

—「先生、一つ質問してもいいですか?」

—「いいぞ。」

—「先生の階級を教えてください。」


ヤザンは胸を高鳴らせ、シグランも耳を傾けた。


だがラーカンは軽く微笑んで言った。

—「今はまだ秘密だ。そのうち分かる時が来るだろう。」


シグランは小声で皮肉った。

—「どうせ……低い階級なんだろう。」


生徒たちは落胆し、マイヤがため息をついた。

—「ええ……なんでですか。」


ラーカンは笑顔で締めくくった。

—「さあ、帝国のギルドへ行って伝令を受け取ろう。行くぞ!」

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