イザンの評判
壊れた者が皆――
壊れたままじゃない。
中には――立ち上がる者もいる。
――かつてのままではないが。
小屋への帰還
風が通り過ぎる――
静かに。
山々は沈黙している。
「ガルフ」が小屋の前に降り立つ。
誰も口を開かない。
イザンが最初に降りる。
ゆっくりと歩き――
立ち止まる。
リンが彼を見る。
「……イザン……」
返事はない。
キナンは黙って見守る。
一瞬――
イザンが振り返る。
キナンを見る。
「……ここで終わるとは思えない。」
声は静かだ――
だが今回は、芯があった。
キナン:
「……お前は?」
短い沈黙――
「……止める。」
山頂
イザンは登る。
一歩……また一歩……
頂へ。
座る。
目を閉じる。
静寂が戻る――
だが以前とは違う。
呼吸が整い――
わずかに重くなる。
内側で何かが――
まだ揺れている。
周囲の空気が微かに震える。
爆発ではない――
制御しようとする力。
「……まだ……」
かすかな囁き。
別の場所――シグラン
闇。
シグランが立っている。
目を閉じたまま。
やがて――
開く。
「……一つ……」
沈黙。
「……二つ……」
彼の気配が揺れる――
今度ははっきりと。
「……消えている。」
ゆっくりと顔を上げる。
「……生きていたか。」
冷たい笑み。
「……いい。」
手を伸ばす。
「……行け。」
魔獣たちが動き出す。
「……もっと見せてみろ。」
遠くの街
日常。
市場。
笑い声。
子供たち。
――そして。
揺れ。
「……何だ?」
咆哮。
地面が震える。
混乱が始まる。
魔獣が街へ侵入する。
「撃て!」
爆発――
しかし効かない。
巨大な魔獣が迫る。
人々を追い詰める。
子供たち。母親たち。
少年の目が見開く。
「……母さん……」
その瞬間
上空から――
閃光。
一瞬で――
魔獣の首が落ちた。
沈黙。
人々が空を見上げる。
イザン。
「ガルフ」の背に立つ。
目は静かに定まっている。
その首に手を置く。
「……来るな。」
跳ぶ。
戦闘
着地。
消える――
現れる。
一撃――
魔獣が倒れる。
別の一体――
真っ二つに裂ける。
イザンの動きは正確。
だが――
呼吸が重くなる。
一歩――
わずかに遅れる。
それでも――
止まらない。
数瞬で――
再び静寂。
魔獣は倒れ、
砂煙が収まっていく。
だが――
イザンは動かない。
呼吸が重い。
ドクン。
止まる。
ドクン……ドクン。
手がゆっくりと上がり、
胸を押さえる。
痛み。
傷ではない――
もっと深い。
鼓動が強まる。
目がわずかに細まる。
「……またか……」
視線を落とす。
指先。
指輪。
静かだ。
だが――見返しているようだった。
沈黙。
痛みは消えない。
むしろ――広がる。
指がわずかに力を込める。
「……あとどれくらいだ……?」
閃光。
回想(暗黒の地)
闇。
果てのない大地。
重い空気。
若いイザンが立っている。
疲弊している。
その前に――
異形の存在。
その目は――人ではない。
声は低く響く。
「……違う、イザン。」
沈黙。
「……その力は……」
一歩近づく。
「……お前のものではない。」
視線が指へ――
指輪へ向く。
「……使うたびに……」
止まる。
「……お前の心臓が代価を払う。」
イザンは黙る。
「……限界を越えれば……」
闇が揺れる。
「……寿命を削る。」
重い沈黙。
さらに近づく。
「……もし指輪を外せば……」
一瞬。
「……解き放たれる力は……」
大地が裂ける。
「……お前だけでは済まない。」
沈黙。
「……周囲すべてを巻き込む。」
イザンの目がわずかに見開く。
「……理解したか?」
沈黙。
イザンは答えない。
だが――拳を握る。
断絶。
現在へ
手を見る。
見えない何かを数えるように。
痛みは――
わずかに引く。
イザンはまだ指輪を見ている。
呼吸は安定しない。
やがて――
握りしめる。
「……まだだ。」
顔を上げる。
目は再び静まる。
だが――
奥底は揺れている。
振り返る。
再び戦いへ。
無敵の者ではなく――
一歩ごとに代償を払う者として。
呼び声
「……イザン?」
止まる。
振り返る。
少女。
「……ネスリン?」
近づく。
頭に手を置く。
「……無事か?」
「……怖かった……」
沈黙。
「……リンは?」
「……置いていってない……大事な用があるって……」
「……会いたい……」
彼を見る。
「……連れていって。」
一瞬――
「……ああ。」
名が広がる
その日――
多くの街で
魔獣が倒れた。
そして残った名は――
イザン。
崇拝の瞬間
ある街で――
人々が近づく。
一人の男が跪く。
「……あなたは神だ……」
沈黙。
イザンが見る。
「……立て。」
「……俺は神じゃない。」
低い声。
「……ただの人間だ。」
一歩前へ。
「……人を救世主にするな。」
沈黙。
「……誰かに価値を決めさせるな。」
人々は黙る。
「……生き延びたいなら――」
止まる。
「……立て。」
深い沈黙。
今回は――
誰も跪かなかった。
シグラン(反応)
闇の中。
シグランが目を開く。
気配がひび割れる。
「……面白い。」
冷たい笑み。
「……今回は……送らない。」
一瞬。
「……俺が行く。」
アルマザ
「また一つの街が救われた。」
「同じ人物だ……」
「イザン……」
緊張が広がる。
ハマンは窓の前に立つ。
「……力だけじゃない……」
沈黙。
「……人を目覚めさせている。」
拳が握られる。
「……それが一番危険だ。」
帰還
夕暮れ。
「ガルフ」が戻る。
リンが待っている。
ネスリンが降りる。
「……リン!」
走り――
抱きつく。
リンは微笑み、
強く抱きしめる。
「……会いたかった……」
その後ろで――
イザンが立つ。
無言。
だが――
呼吸はまだ乱れている。
その目は――
遠くを見ていた。
「……止める。」
第138話・終わり




