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絶望と疑惑の狭間で

隠された秘密 ― 木々の間の影


ラカンとシャーメルは薬草店を出た。

シャーメルは箱を手渡しながら言った。

「これをイェザンに持っていけ。食後に小さじ一杯ずつ、三日間与えるんだ。その後は一週間、完全に休ませろ。そして次の一週間は軽いジョギングをさせろ。その後、チームの訓練に参加させるといい。」


ラカンは驚いたように言った。

「随分と医学に詳しいのですね…将軍シャーメル殿。」


シャーメルは静かに微笑み、答えた。

「もう将軍ではない。ずっと前に辞任した。」


ラカンの目が大きく開かれた。

「何だって?知らなかった…」


シャーメルは真剣に遮った。

「どうでもいい。それにイェザンのことを聞きたいのはわかっているが、今は答えられない。大事なのは、私が言った通りに世話をすることだ。いずれ…彼が本当は誰なのか分かる時が来る。」


ラカンは一瞬ためらい、問いかけた。

「だが…どうしてイェザンの異変を知っていた?」


シャーメルは足を進めながら答えた。

「彼が倒れた時、私は塔にいた。」

そして立ち止まり、顔を向けた。

「言った通りにすればいい。」


「わかった…」ラカンはまだ戸惑いを残しながら答えた。


フラッシュバック ― 試験終了後


主催委員会は、森の試験場から負傷者を回収するため、特別部隊を派遣した。

その一隊が恐ろしい現場に到着した。


全身が焼け焦げた死体、そして首を一撃で切断された死体。

兵士たちは動揺し、一人が後ずさりしながら言った。

「信じられない…こんなことが?子供たちがやったはずがない!試験に侵入者でもいたのか?」


別の兵士が装置を確認しながら答えた。

「監視装置は何も検出していない…今のところ異常なしだ。帝国の調査隊を待つしかない。」


だがその時、木々の陰から一人の謎めいた人物が現場を見下ろしていた。

冷たい目で死体を見つめ、嘲るように言った。

「くだらない…こんな雑魚ども、無惨に潰されたか。」


そして不気味に笑い、低くつぶやいた。

「間違いない…これはザランの力だ。やはり見誤ってはいなかったな。ラザンの息子、強いじゃないか。」


彼が指していたのは――シーグランだった。


調査隊が現場に到着すると、兵士たちは周囲を完全に封鎖した。

隊長は濃い髭を蓄えた男、検察官ダリウス。彼は屈み込み、真剣な眼差しで死体を観察した。


助手が木板に記録を取りながら言った。

「隊長、この一体目は…骨まで焼き尽くされています。まるで内側から炎に焼かれたようです。二体目は…首が一撃で切断されていました。」


ダリウスは膝をつき、焼け焦げた死体の灰を指先でつまみ、じっと見つめた。

「この炎は普通ではない…こんな高熱は見たことがない。肉が蒸発するほどだ。」


次に首のない死体に目を移し、切断面を触りながら言った。

「切り口は鋭く、乱れがない。剣を振り回したものではなく、一撃で正確に斬られている。これは熟練の戦士の技だ…子供の仕業ではない。」


助手たちは顔を見合わせ、不安げに言った。

「ですが…試験の参加者は皆、訓練中の少年たちです。こんな力を持つ者がいるでしょうか?」


ダリウスはゆっくり立ち上がり、厳しい声で言った。

「参加者の中に秘められた力を持つ者がいるか…あるいは侵入者が紛れ込んだかだ。」


そして助手に視線を送りながら言った。

「届いた名簿の中に、シーグランという少年がいる。ラザン一族の血を引いている。」


助手は驚き、震え声で言った。

「ラザン一族?あの、常人を超えた肉体制御と力で知られる一族ですか?」


ダリウスは鋭い眼差しでうなずいた。

「そうだ。もし彼がその血を継いでいるなら、この惨劇の犯人でもおかしくない。」


彼は手を振り上げ、命じた。

「死体を都に運べ。参加者全員の詳細な報告書を作れ。そしてシーグラン・ラザンを直ちに召喚せよ。」


希望の光 ― 調査の報せ


イェザンは深い絶望に沈み、思考も会話もできず、ただ重苦しい沈黙が部屋を満たしていた。


ドアをノックする音。

マヤがためらいがちに入ってきた。

「こんにちは、イェザン…」


だがイェザンは反応しない。虚ろな瞳は虚無に沈んでいた。


外にはシーグランが立ち尽くしていた。プライドと過去の敵意が彼を止めていたが、胸の奥で抗えない衝動が動き、彼は扉を押し開けた。


「やあ、シーグラン。」マヤが慌てて声をかけた。


彼は答えず、ただイェザンを見つめる。沈黙が重く流れ、マヤも言葉を失った。


イェザンはゆっくりと顔を上げ、シーグランを見据える。

その目に宿っていたのは、かつての彼とは違う、深い絶望の色。空虚そのものだった。


その時、またドアがノックされた。

ラカンが入ってきて、思わず呟いた。

「なんて重苦しい空気だ…」


だが彼は微笑み、前に進んだ。

「だが私は光を灯すために来た。」


イェザンに近づき、温かな声で言った。

「イェザン…その目を二度と見せるな。私は救いを持ってきたんだ。」


マヤが驚いて尋ねた。

「どういう意味ですか?」


ラカンは小瓶を取り出しながら言った。

「君たちは私の子のような存在だ。見捨てることなどできない。これはイェザンに希望を取り戻す薬だ。」


そしてマヤに向き直った。

「何か食べさせたか?」


マヤは首を振り、悲しげに答えた。

「いいえ…持ってきた食事も手をつけず、私が持ってきたリンゴさえ食べませんでした。」


ラカンは静かにため息をつき、優しく言った。

「わかった…イェザン、まずは何か食べろ。そしてこの薬を飲むんだ。必ず希望を取り戻せる。」


イェザンは心ここにあらずだったが、「希望を取り戻す」という言葉が耳に届いた。

顔を上げ、震える声で尋ねた。

「本当…未来にまた、あなたと訓練できるのですか?」


ラカンは力強くうなずいた。

「できる。」


その瞬間、イェザンの心に光が差し、笑みがこぼれた。マヤも歓喜の声を上げ、シーグランでさえ小さな微笑みを浮かべた。


だがドアが再び開いた。

厳しい顔の男、検察官ダリウスが現れた。


「シーグラン・ラザン…同行してもらう。」


ラカンが即座に問いただした。

「どういうことだ、検察官殿?」


ダリウスは冷徹に答えた。

「試験中に発見された事件の調査だ。」


「事件…?」ラカンが目を細める。


「三体の死体が見つかった。ひとつは全身焼失、ひとつは首を斬られ、もうひとつは引き裂かれていた。」


その言葉に、ラカン、イェザン、マヤ、そしてシーグランさえも凍りついた。

衝撃が部屋を包み込み、物語は幕を下ろした。

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