風が導いた邂逅
イーゼンは袋をしっかりと背負い、振り返らずに歩き始めた。
しばらくして、スカイが静かに空中に浮かびながら後ろから付いてくる。
とある国の国境付近には、緑の畑が広がり、人々が灼熱の太陽の下で働いている。
農夫たちは土の上にかがみ込み、女たちは水を運び、子供たちは麦の穂の間を駆け回る。
イーゼンは突然立ち止まり、その光景を黙って見つめる。
一人の農夫が両手を空に上げ、呪文を唱えるように祈る。太陽が彼らの作物を慈しみ、豊かな収穫を与えてくれるように。
イーゼンは彼らから目を離さずに言う:
「スカイ…なぜあの男は太陽に頼るんだ?」
スカイは静かに答える:
「あの人たちは、太陽が命を与える神だと信じているのです…だから助けを求める。」
イーゼンはしばし沈黙し、それから言う:
「それは理にかなっているのか?」
スカイはかすかに微笑む:
「私たちにとっては…おそらく違うでしょう。
でも彼らにとっては…それが希望にしがみつく唯一のものなのです。」
イーゼンは黙り込み、そして呟く:
「誰にでもそれぞれの理屈がある…でも、どれが正しいんだ?」
スカイは答えない。
ただ畑で働く人々を見つめる。
静かなひとときが過ぎる。
そしてイーゼンは再び歩き始め、低い声で言う:
「多分…世界中を見れば、答えがわかるかもしれない。」
——
イーゼンとスカイはしばらく歩き、周囲の畑には静けさが漂う。
突然、馬の嘶きが聞こえ、素早く近づいてくる。
一団の追いはぎが土の道を疾走してくる。
その一人が畑を見て笑う:
「見ろよ、あの農夫たち…欲しいものを持ってそうだ。」
イーゼンは少し立ち止まり、片目だけでその声の方を見る。
スカイは彼のオーラの変化に気づく。
「何か?」
答えの前に、馬たちが畑に突入し、作物を踏み荒らす。
一人の農夫が慌てて走り寄る:
「おい!そんな入り方はやめてくれ!作物が台無しだ!」
追いはぎの一人が笑い、彼の服を引っ張る:
「何言ってんだ?黙って金出せ!」
別の者が母親のそばにいる小さな子供を掴む。
母親は叫びながら走る:
「子供を離して!」
彼女は強く殴られ、地面に倒れる。
他の農夫たちは怖気づいて後退するが、一人が震えながら進み出る:
「お、お願いです…子供だけは…」
追いはぎは冷たく言い放つ:
「うるさい。金を出せ。」
農夫は絶望的に:
「何もありません…私たちは貧しいんです。この作物さえ地主のものです…」
首領は横に唾を吐く:
「なら役に立つものを取るまでだ。」
彼は子供ともう一人、母親の後ろにいる少女を指す:
「こいつらを売り飛ばす。奴隷としてな。」
農夫は叫び崩れる:
「頼む!私の子供たちだ!」
「黙れ!」
その時——
奇妙な静けさが訪れる。
馬たちが落ち着かなくなり始める。
そして背後から深い声が響く:
「子供たちを離せ…そして去れ。」
追いはぎたちは凍りつく。
首領が怒って振り返る:
「誰だ?関係ないことに関わるな!」
イーゼンは彼らの後ろに立っていた。頭を垂れて。
そしてゆっくりと顔を上げる。
次の瞬間——
集団は馬から落ちる。まるで巨大な圧力が地面ごと引きずり込んだかのように。
馬たち自身も恐怖に襲われるが、イーゼンから放たれる静かなオーラが徐々に彼らを落ち着かせる。
首領が顔を上げる…そしてイーゼンの目と合う。
体が凍る。
生涯感じたことのない恐怖。
よろめきながら後退する:
「わ…私どもは…行きます…すみません…」
手下を連れ、素早く逃げ去る。
道中、一人が恐る恐る尋ねる:
「なぜあんなに逃げたんですか?」
首領は震える汗を拭い:
「わからん…だが、あんな人間の恐怖は生まれて初めてだ。」
——
畑に戻る。
農夫たちが恥ずかしそうに、感謝しながら近づく。
一人が頭を下げる:
「ありがとうございます、お方…あなたが私たちを救ってくださいました。」
イーゼンは彼らを黙って見つめる。
そして背を向ける…何も言わずに歩き去る。
スカイが後に続く。一人の子供が母親にささやく:
「お母さん…あの人、英雄だったの?」
しかし彼らを救った男は、すでに畑の彼方へ消えていた。
——
カグラとアルマーザを結ぶ道。
アルマーザ分隊は重い沈黙の中を戻っていた。
誰も話さない。
それぞれが自分の思いに沈み…見たものを受け入れられずにいる。
かつての仲間は…完全に別の者になっていた。
ようやくアルマーザ首都に到着。
ラカンが止まり、疲れた声で振り返る:
「今日はここまでだ…家に帰って休め。」
隊員たちはゆっくりと散っていく。
一方、ラカン、アドナン、アルダは司令部へ向かった。監察官ダリウスの執務室だ。
彼らは扉の前に立つ。
ノックをする前に——
内側から声がする:
「入れ。」
三人は素早く目配せを交わし、中へ入る。
そして凍りついた。
部屋の中には監察官ダリウスだけではなかった…
最高指揮官ハマンが窓辺に立っていた。
重い沈黙が部屋を支配する。
ダリウスがようやく口を開く:
「あれは…本当にあの者だったのか?」
沈黙。
そしてラカンがゆっくりと答える:
「はい。」
その瞬間——
ハマンのオーラが一瞬だけ炸裂する。
凄まじい圧力が部屋を満たし、空気が重くなる。
アドナンとアルダの体は本能的に強張る。
そして…オーラは現れた時と同じように消えた。
ハマンが荒く、そして静かな声で言う:
「あの者は…去る時、どんな様子だった?」
ラカンは唾を飲み込み、重い声で答える:
「生まれてこの方…あのようなオーラを持つ人間を見たことがありません。」
沈黙。
ダリウスが衝撃を受けてささやく:
「まさか…彼のオーラはもしかして——」
「黙れ。」
ハマンは声を荒げずに遮ったが、その一言で全員が沈黙した。
彼はゆっくりとラカンの方を向く。
「今、どこにいる?」
ラカンは少し目を伏せる:
「わかりません…消えました。」
長い沈黙。
そしてハマンが冷たく言い放つ:
「下がれ。」
誰も逆らわなかった。
三人は黙って部屋を出た。
ハマンは窓辺に残る。
眼下の首都の灯りを見つめながら。
そして低く呟く:
「賢者ハルンでもなく…リースでもなく…私でもなかった…
そうか…彼こそが…リースの息子か。」
——
——フラッシュバック:遠い昔——
賢者ハルンの書斎は静かで、夕日に包まれていた。
八歳のハマンは、リースの隣で高い書棚の間に座り、読書をしていた。
リースが突然立ち上がる。
「すぐ戻る。」
そう言って走り去る。
ハマンの目が光る。古びた黒い革の書物が、高い棚にまるで隠すように置かれているのに気づいたのだ。
周りを見る…誰もいない。
彼は手を伸ばし、苦労してその本を引き抜く。
無造作に開く。
古い文字で書かれた一節が目に飛び込む:
「千年前、我らが祖は暗黒の地に入った…そして別の者として戻った。
かつてない力を持ち、そのエネルギーをアルマーザの諸部族に伝えた。
しかし時が経つにつれ、力は部族間で秩序なく分裂した…そして弱まった。
彼は自らの侵入を隠した…
だが千年後…別の者が入るだろう。
その第一条件は…ジラーンの血。」
幼いハマンの目が驚愕に見開かれる。
その瞬間——
書斎の扉が開く。
リースが戻ってきた。
ハマンは慌てて本を閉じ、何事もなかったかのように元の場所に戻す。
リースは何も気づかずに座る。
しかしその瞬間から、ハマンの目つきは変わっていた。
——
——現在に戻る——
ハマンは宮殿の窓辺に立ち、拳を握りしめる。
低く呟く:
「私でもなかった…私の息子シーグランでさえもなかった…
そうだ…あれこそが…あの日から恐れていた者。」
——
最高指揮官ハマンの宮殿
宮殿は静かだった。しかしその静けさは重い。
シーグランがゆっくりとした足取りで入ってくる。肩は落ち、目は虚ろだ。
誰にも挨拶せず、誰も彼に目を向けない。
無意識のうちに、彼は訓練場へ向かう。
立ち止まる。
古びた木製の柱の前に。
足が止まる。
記憶が蘇る——
——フラッシュバック:訓練場——
イーゼンがゆっくりと顔を上げる。
その視線がシーグランを捉える。
一瞬——
シーグランの目が見開かれる。
体が硬直する。
イーゼンから放たれる悍ましい圧力——それは攻撃のためではなかった。
ただ、そこに“在る”だけで十分だった。
イーゼンの右目、傷ついたその瞳は、冷たく——一片の躊躇も宿していなかった。
シーグランは空気が消えたように感じた。
足が動かない。
イーゼンは彼の横を通り過ぎる——
何も言わず。
触れもしない。
ただ…通り過ぎる。
シーグランは立ち尽くす。
石化したかのように。
——
——現在に戻る——
シーグランの拳が震える。
呟く:
「俺は…何をしていたんだ…?」
沈黙。
「強くなったと思った…不可能をやってのけた…」
声が荒くなる:
「それなのに…なぜ奴はまだ数段も先を行くんだ?! 」
血管が浮き出る。
「あの負け犬が…!」
柱を力一杯殴る。
ひび割れ…そして折れる。
背後から静かな声:
「どうだった?」
シーグランが凍りつく。
振り返る。
ハマンが立っている。
シーグランの頭が無意識に下がる。重い沈黙が二人の間に落ちる。
そして低い声で言う:
「まるで…あなたと対峙しているようでした。」
ハマンはしばらく彼を見つめる…そして静かに背を向ける。
「自分を責めるな。」
シーグランは驚く。
初めて…叱られなかった。
「訓練を続けろ。」
そして去り際に、振り返らずに言う:
「少なくとも…お前は姉のように、私の言葉に背かなかった。」
シーグランは衝撃を受け、立ちすくむ。
顔を上げるが、ハマンはすでに宮殿の中へ消えていた。
訓練場に一人残される。
呟く:
「姉さん…リーネ…今どこに…?」
長い沈黙。
そして苦々しく呟く:
「ちくしょう…俺は…」
拳を握りしめる。
「あなたを裏切った…あの残酷で…非情な父に従うことで…」
彼は崩れた柱の間で、一人立ち尽くす。
——
遠く離れた——とある国境の丘陵地帯
草の生い茂る小さな小屋が眠っている。
扉がゆっくりと開く…ナーシリーンが忍び足で抜け出す。
背後を慎重に見て、子供らしい悪戯な笑みを浮かべる。
「今日は…私が師匠のために狩りをするんだ…自慢してやる!」
小さな弓を抱え、谷へと走る。
岩陰に身を潜め、ナーシリーンは静かに見張る。
水辺で巨大な野ウサギたちが草を食んでいる。
弓を引き絞り…目を凝らす。
「この獲物は私のもの…」
矢を放つ。
一匹に命中する。
だが倒れない。
ゆっくりと顔を上げる…そして彼女の方を向く。
目つきが凶暴に変わる。
ナーシリーンは一歩後退する。
「な、なんで倒れないの…?」
野ウサギが彼女に向かって突進する。
——
その近くで…
イーゼンとスカイが川辺で水を汲んでいる。
イーゼンは岩に腰掛け、静かに水を飲む。
スカイが尋ねる:
「首領…どちらへ向かわれるのです?」
イーゼンは静かな声で答える:
「行き先は…運命の導くままに。」
スカイは瞬く:
「運命…?どういう意味です?」
イーゼンは彼を見ずに:
「風に身を任せろ。」
スカイは頭を掻き、軽く笑う:
「最初の答えの方がわかりやすい気もしますが…」
そして突然、止まる。
イーゼンが片目を開く…何かを感じ取ったかのように。
——
谷では…
ナーシリーンが恐怖に後退する。
岩に足を取られ、倒れる。
顔を上げる…
巨大な野ウサギの群れが彼女を取り囲んでいる。
彼女の悲鳴が谷に響く。
——
小屋で…
リーンが入ってきて叫ぶ:
「ナーシリーン?どこにいるの?」
立ち止まる。
弓がない。
目を見開く:
「まさか…無茶をする子ね!」
全速力で谷へ向かう。
——
谷では…
野ウサギたちが少女に襲いかかる。
ナーシリーンは恐怖で目を閉じる。
その瞬間——
無音の空気の一撃が通り過ぎる。
野ウサギたちが次々と倒れる。
突然の静寂。
ナーシリーンがゆっくりと目を開ける。
「なに…?」
顔を上げる。
黒い外套の人物が彼女の前に立っている。
黙って。
謎めいて。
微動だにしない。
——
リーンが木々の間を走る。
突然…
胸を圧迫する重いオーラを感じる。
一瞬立ち止まる。
「このオーラは…!」
そして再び走り出す:
「耐えて、ナーシリーン!」
——
再びナーシリーン。
目の前の男に見惚れる。
「も、もしかして…助けてくれたの?ありがとう!」
答えはない。
その時、スカイが到着し、少し息を切らす:
「これはまた…首領は何マイルも先の危険を感じ取るのか…」
イーゼンはナーシリーンを見つめる。
突然…
遠い記憶が目をよぎる。
幼い子供…森…恐怖…誰かに救われる。
同じ光景。
同じ眼差し。
現在に戻る。
その瞬間——
リーンが到着する。娘の前に立ちはだかり、叫ぶ:
「子供に触るな!」
イーゼンが彼女の方を向く。
彼らの目が合う。
一瞬の沈黙。
まるで、ずっと昔からこの顔を知っているかのように。
リーンが緊張してささやく:
「この方…感じていたオーラの主は…?」
沈黙が場を支配する。
——
第117章 終わり




