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イザン:血の継承  作者: Salhi smail


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114/154

力と危険の兆し

扉の全てが、歓迎のため開かれるわけではない…

ある扉は、来る者を“包囲”するために開かれる。

政略の宮殿では、

最初に掲げられるのは剣ではない、

微笑である。

しかし最も危険な戦争は…

相手に「ここには戦争などない」と信じ込ませようとする時、

始まるのだ。


カゴーラ宮殿 ─ 執政の間

アルマーザ使節団到着の数分前、カゴーラ宮殿の執政の間は囁きに満ちていた。

高座の玉座に座ったカゴーラ総督は、円卓を囲む将軍たちを見下ろしている。

一人の将軍が焦燥気味に言った。

「彼らの存在は不愉快です。もし我々の領内で調査を始めれば、我々が統制を失ったように見えます」

別の将軍が答える。

「彼らに“事態は既に収束した”と納得させるのが最善です。“闇の大地”に入った者は死んだ、と。調査する理由などありません」

三人目の将軍が狡猾に微笑んだ。

「闇の大地は、入った者を返しはしない。奴らを一歩も動かさずに帰らせてみせます」

短い沈黙が流れ、総督がようやく口を開いた。

「アルマーザとは敵対したくない…しかし、彼らに我々の内情を探られても困る」

そして計算された静けさで言った。

「客人として迎え入れよ…そして自ら去るように仕向けよ」

その時、衛兵の声が響いた。

「アルマーザ使節団、到着」


宮殿の入口

ラカンが先頭に立ち、アルダとアドナンが続く。その後ろに騎士団の面々:

シグラン、マーヤ、アスマ、ラーイド、アーナス、ンダー、ワーイル。

彼らの足取りは確かだが、目は宮殿の隅々を探るように動いていた。

アドナンが唇を動かさずに囁く。

「歓迎に必要な数より、兵士が多い」

ラカンが静かに答えた。

「力の誇示だ…あるいは警告か」


執政の間

重厚な扉が開かれ、使節団が入場する。

カゴーラ総督が立ち上がり歓迎の言葉を述べた。

「アルマーザの指揮官諸君、ようこそ。御身方の来訪は我が国の誉れです」

ラカンが恭しく一礼する。

「温かい歓迎に感謝いたします」

一同着席し、短い形式的な挨拶が交わされた後、総督は早速本題に入った。

「御身方の来訪の理由は承知している。協定を破り“闇の大地”に入った者がいると…」

将軍たちが一瞬視線を交わし、一人が言葉を継いだ。

「だが率直に言おう…あの地に入った者は戻らぬ」

別の将軍が微笑みを浮かべて付け加える。

「おそらく、事態は始まる前に終わっている」

ラカンはしばし沈黙し、静かだが敬意を込めた口調で言った。

「それでもなお、詳細が必要です。入った者の外見特徴を」

短い沈黙が流れた。

すると一人の将軍が嘲笑うように笑い出した。

「外見?ただの少年だ。そして今となっては…もう何も残ってはいまい。闇の大地は骨さえ残さぬからな」

何人かの将軍からかすかな笑い声が漏れた。

しかし、アドナンの目が細くなった。

アルダは無言で拳を握りしめた。

一方ラカンは静かなままだが…今度の声には微かな鋭さが宿っていた。

「たとえ少年であろうと…国の運命を変えることがある」

重い沈黙が広間を支配した。

遥か遠くで…

一人の少年が、彼らの知らぬ世界で、自らの運命を変えつつあったのだ。


シーン ─ 領域の訓練

宮殿の喧騒や政略の囁きから遠く離れ、魂のささやきのみが届く闇の大地の深淵にて…

イーゼンはかすかな白い霧に囲まれた円の中に座っていた…直前の戦闘訓練の影響で息は乱れ、体は疲弊していたが、大師は彼の前に微動だにせず立っていた。

大師の声、イーゼンにのみ聞こえるその重なり合う声が響く。

「これまでに汝が学んだ力は…敵を見てから使う力だ」

そして続ける。

「だが、もっと深遠な力がある…敵が汝を見る前に、己の掌中に捉える力が」

イーゼンはゆっくりと顔を上げた。

「“領域(ドメイン)”…か?」

大師がうなずく。

そして突然、全てが変わった。

大地も空も霧も消え去り、イーゼンは果てしない白い虚無の中に立っている自分を見出した。

「これが…俺の領域?」

大師の声が返ってくる。

「まだ違う。これは単なる虚無だ。真の領域とは…汝自身が押し立てる“世界”である」

突然、動きもなく一匹の魔獣が目の前に現れた。

イーゼンは攻撃を試みたが、体が重くなった…空気そのものが彼を縛り付けるようだ。

大師の声が再び響く。

「今、汝は我が領域の中にいる」

見えない圧力がイーゼンの胸を押し潰し始めた。呼吸は困難になり、考えることさえ負担に感じられる。

「領域の中では…敵は汝の体だけでなく、汝の精神と意志をも攻撃する」

イーゼンはひざまずき、抵抗を試みる。

「もし汝の領域が強くなければ…触れられることなく敗北する」

イーゼンは叫び、圧力を破ろうとエネルギーを解放した。

一瞬だけ…

虚無が揺れた。

大師が静かな声で微笑んだ。

「良い…理解し始めたな」

イーゼンは膝の上に崩れ落ち、苦しそうに息をした。

「でも…それを習得するには、どれくらいかかる?」

答えは冷たく、率直だった。

「汝が汝自身を、敵が汝を理解する以上に理解するまでだ」

遥か遠くで、ウドゥクの存在たちが静かに見守っていた。

一人が囁く。

「この人間…進歩が速い」

別の者が答える。

「強くなるために戦っているのではなく…弱いままではいられないから戦っているのだから」

一方、大師は静かにイーゼンを見つめていた…

真の試練は…まだ始まってもいなかった。


シーン ─ カゴーラ宮殿 (続き)

カゴーラ総督が静かに手を振ると、従者たちが進み出て一礼した。

「客人にふさわしい饗宴を整えよ」

従者たちが素早く動き出す中、ラカンが一歩進み出て恭しく頭を下げた。

「総督閣下、ご厚意は感謝いたしますが、ご協力をお願いいたします。時間が限られております。闇の大地に入った少年の真相を、速やかに確認したいのです」

一人の将軍の表情が強張り、怒りで拳を握りしめた。

「ちくしょう…総督の招待をあたかも些事のように断るとは!」

しかし総督が僅かに手を上げると、将軍は即座に沈黙した。

総督は計算された静けさで微笑んだ。

「その件にはやがて至ろう。だが諸君はカゴーラの賓客だ。まずは賓客としてもてなすのが我々の務めである」

アドナンが落ち着いた口調で進み出た。

「この歓迎の仕方だけでも十二分です。これ以上ご負担をおかけしたくはありません」

一人の将軍の目が細くなり、隠しきれない微かな敵意のオーラが周囲に現れた。

後方で、シグランが自信に満ちた笑みを浮かべ、冷ややかに言い放った。

「どうやら、我々は気に入らなかったようだ」

微かな闇のオーラが彼の周囲に立ち昇り始めた。

緊張が高まる前に、アルダがシグランの肩に手を置いた。

「落ち着け…総督の宮殿内で敵対を宣言するつもりか?」

オーラは次第に収まったが、シグランの笑みは消えなかった。

その時、一人のカゴーラの指揮官が静かに光景を見ていた。総督に近づき、一礼して囁いた。

「閣下…あの狂暴な蛮牛を討ち果たした少年が…彼らの間にいます」

総督の視線がゆっくりとシグランへと向かった。

そして静かに呟く。

「あの少年か…ズラン」

一瞬沈黙し、続けた。

「最高指揮官ハーマンの息子…」

微かな笑みが彼の顔に浮かんだ。

「確かに…父に似ているな」

総督は一瞬彼らを見つめ、決意を隠した静かな口調で言った。

「よかろう…我々自らが、カゴーラと闇の大地を隔てる海岸まで同道しよう」

アルマーザの指揮官たちの表情が一変した。

ラカンが声を少し潜めて言う。

「これはまずい…」

アドナンが唇をほとんど動かさずに呟いた。

「狡猾だ…我々の一挙手一投足を監視したいのだ」

アルダは歯を食いしばり、苛立ちを抑えようとしたが、沈黙を保った。

しばらくして、ラカンが恭しく頭を下げた。

「感謝いたします、閣下」

総督は外交的な微笑みを浮かべ、振り返った。

「では…出発しよう」

広間の大扉が開かれ、一行は宮殿の外へと動き出した。

重い足音、張り詰めた沈黙、そして双方が理解していた。海岸への道程は…単なる同行ではない。

まだ表面化していない、隠された戦いの始まりなのだ。


闇の大地 ─ 領域の訓練

白い静寂が再びイーゼンを包み込んだ。

魔獣もいない。

音もない。

ただ静かな虚無だけ。

そしてイーゼンの前に、輝く霧から大師の姿が形作られた。彼には脚や足はなく、動く雫の塊が高次元の形を成しているようで、空気そのものが形を取ったかのようだった。

彼は立っているのではなく…

その場の一部であるかのように、安定して漂っている。

彼の声が空中に流れた。

「これまでに汝が学んだ力は…生き延びるための力だ」

そして動くことなく近づき、その存在が静かな水流のように虚無を滑った。

「だが“領域”こそが…戦わずして勝利させる力なのだ」

イーゼンは眉をひそめた。

「領域?」

大師が手を振った。

突然、全てが変わった。

白さが縮み、場所は霧の中に消えていく広大な暗い円へと変貌した。

イーゼンの前に巨大な生物が現れた。その皮膚は岩のようで、目は狂暴だった。

イーゼンは即座に突進した。

しかし、彼は止まった。

体が重くなった。

息が詰まった。

膝が崩れ落ちそうになった。

彼は叫んだ。

「何が起きている!?」

大師の声が静かに響いた。

「今、汝は“彼の領域”の中にいる」

魔獣がゆっくりと近づく中、イーゼンの体はさらに重くなり、空気そのものが彼を押しつぶすようだ。

「領域は…肉体的な力ではない」

大師が言った。

「生物が己の意志を押し立てる“空間”なのだ」

魔獣がさらに近づいた。

イーゼンは腕を上げようとしたが、筋肉が反応しない。

圧力が増す。

恐怖が胸に忍び寄り始めた。

大師の声が再び届いた。

「敵の領域に入れば…敵の土壌で、敵の条件で戦うことになる」

そして一瞬沈黙した。

「今こそ学べ…どうやってその地を己が地とするかを」

イーゼンは目を閉じた。

呼吸を整えた。

これまで経験した全てを思い出した。

恐怖。

痛み。

喪失。

生存。

そしてあることに気づいた。

圧力は外から来ているのではなく…

内側から来ているのだ。

イーゼンはゆっくりと目を開けた。

そして囁いた。

「ここは、俺の場所だ」

その瞬間、空気が震えた。

領域の圧力が砕けた。

魔獣は止まり、驚いた様子だった。

白い霧がイーゼンの体から漏れ始め、周囲に広がった。

足元の大地が固くなった。

空気が再び軽くなった。

今度は魔獣が一歩後退した。

大師の声に、初めて微かな満足の色が宿った。

「良かろう…」

彼は杖を上げた。

魔獣も世界も共に消え去った。

白さが戻った。

大師が言った。

「これは単なる始まりに過ぎぬ。真の領域には…心の清らかさが必要だ」

そしてイーゼンが口を開く前に─

遠方に微かな光が現れた。

光と雫で構成された、細長く優美な存在がゆっくりと近づいてきた。

大師の前で一礼した。

その声は水の微風のようだった。

「これが、その人間ですか?」

大師が答えた。

「そうだ」

その存在は興味深そうにイーゼンを見た。

「人間は、この地の敵ではないのですか?」

大師が静かに答えた。

「自身の闇を乗り越えた人間は…敵にはならぬ」

そして続けた。

「この地の守護者としての我々の務めは…心清き者を導くことであり、その者に扉を閉ざすことではない」

その存在はイーゼンに近づき、観察した。

「彼は疲れています…しかし、折れてはいません」

大師が軽く微笑んだ。

「故に…機会を与えられよう」

その瞬間、イーゼンは奇妙な感覚を覚えた。

あたかも闇の大地そのものが…彼の存在を認め始めたかのように。

そして大師が最後に言った。

「少し休め、イーゼン」

「次の試練は…汝の力を試すものではない」

そして白い地平線を見つめた。

「汝の“運命”を試すものだ」


闇の大地との境界 ─ 海岸沿い

正式な街道から遠く離れ、黒い樹木が絡み合う影のように広がる場所で、アズロンは高台の岩の上に座り、黙って地平線を見つめていた。

スカイが静かな足取りで近づき、言った。

「樹木に仕込んだエネルギーが…何か告げていませんか?」

アズロンはゆっくりと目を開けた。

「告げている…だからこそ心配なのだ」

スカイは遥か彼方の海岸を見つめた。

「首領…複数の気配がその場所に集まっているのを感じます」

アズロンの目がわずかに細くなった。

「ならば…カゴーラだけではないな」

一瞬沈黙し、続けた。

「他国の使節団もいるかもしれん」

スカイは少し躊躇い、そして言った。

「アルマーザの騎士団だと思いますか?」

アズロンが立ち上がり、その動きと共に周囲の影が揺れた。

「ああ…そしてそれは、事態が予想より速く動き始めたことを意味する」

そして静かに言った。

「行こう…何事が起きているか見届けよう」

スカイが手を上げると、眼前の空気が割れた鏡のようにひび割れ、時空に暗い裂け目が開いた。

二人はその中へと歩み入った。


反対側では、二人は海岸近くの影の中から静かに現れた。

そして彼らの眼前に、使節団が続々と集まっていた。

カゴーラ総督の一行が先頭に立ち、将軍たちと衛兵に囲まれている。

そしてその後ろに、アルマーザの騎士たち。

ラカンが先頭に立ち、指揮官と騎士たちが続く。

アズロンが微かに微笑んだ。

「ラカン…ここにいるのか」

しかしスカイは彼を見ていなかった。

彼の目は別の人物に釘付けになっていた。

シグラン。

数秒間沈黙し、ゆっくりと言った。

「首領…」

アズロンは視線をそらさなかった。

「何だ?」

スカイが、目を見開きながら言った。

「あの少年…シグランです」

「彼のエネルギーが変わっています」

さらに集中し、声を潜めて言った。

「彼のオーラ…似ています…」

アズロンの表情が強張った。

「何に似ている?」

スカイがゆっくりと言った。

「あの少年…イーゼンのオーラに似ています」

重い沈黙が二人の間に落ちた。

そしてアズロンが突然彼を振り向いた。

「何だと?」

スカイの視線はシグランから離れなかった。

「全く同じオーラ…あるいは、極めて近いものだ」

第114章の終わり

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