第44話『プロジェクトマネジメントはベテランだよ~?』
「いや、ぬるっと始めようとしてるけど――」
「おまえら……目、こえーよ」
「セレスはちゃんと、七海おねえちゃん押さえといて」
『……そうですね』
『小凪さんが喋るたびに、発狂しそうですし』
『ママ』
『申し訳ありませんが、拘束させていただきますね』
『これもディレクターの仕事です』
「うん」
「私も、いつ理性が壊れるかわかんない」
セレスはパチンと指をはじくと、七海を椅子に鎖でぐるぐる巻きにした。
――異様な "3すくみ" の光景。
ため息をつきながら、七海を監視するセレス。
小凪をニコニコと見守る七海。
おびえる幼女――もとい、小凪。
およそ、新作ゲームのコンセプトを決める会議の光景ではなかった。
『んんっ! えー、準備が整いました』
『ので! そろそろ会議を始めましょう!』
『(……私がしっかり進行しないと)』
『いいですか?』
『ゲームコンセプトと一言で言っても、組み合わせは無数にあります』
『さっき小凪さんが例えで言ってくれた、ゲームコンセプトのようにですね』
『まずは、プレイヤーが遊んでくれそうな "ゲームジャンルから案出し" しましょうか』
『格闘ゲームとか、シューティングゲームとかですね!』
『小凪さんは、どんなゲームジャンルが好きですか?』
「えっ、ボクから?」
「うーん、改まって聞かれると困る」
『小凪さんが今まで遊んだ中で、ハマったゲームとかでもいいですよ♪』
「ハマったゲーム……ハマったゲーム」
「"ジュブナイルの仮面4" ……あ、でも特に2が好きだな」
「あとは、さっきも言った格ゲーの"BLOOD GEAR"」
「でも格ゲーならオンラインマッチ一択かなぁ」
「強いやつをボコさないと面白くないし」
『――なるほどです』
『"RPG" と "格闘ゲーム" ですね』
セレスは目をチカチカと光らせながら、ホワイトボードに案を書いていく。
その光景を見ていた七海は、首をかしげながら口を開いた。
「セレスちゃんは、好きなゲームとかあるの?」
『え!?』
『私ですか?』
「うん、そう。セレスちゃん」
「たぶんなんだけど、ゲームディレクターって好きなゲームを言えないと、ダメなんじゃないかなって思うんだ」
「おねえちゃんも、よく深夜に1人でゲームしてたし」
「――ふふ」
『なるほど』
『うーん、仕事柄あまりゲームしたことなくて……』
『――あ!』
『昔、ブランに貸してもらった "花シリーズ" ですかね! あれは好きです!』
『特に男勝りな車いすの女の子と、芸術家肌の無口な女の子が好きで……名前は確か――』
「セレスちゃん! ストップ!」
「コンプライアンス的にそこまでだよ!」
「うーん? 花シリーズ……知らないなぁ」
「ジャンルはなんなん?」
『恋愛ゲームですね』
『女の子と女の子の』
「セレスって、女の子好きなん?」
『え、えぇ……まぁ、はい』
『えへ、えへへ』
「笑い方、きも」
『んなっ!』
小凪の刃物のように鋭い口撃によって、セレスは床に切り捨てられた。
そんな様子を見ながら、なおも七海は首をかしげる。
「ねぇねぇ」
「セレスちゃんと、小凪ちゃんって友だちいないの?」
『……ウッ』
『い、いますし。友だちくらい』
「え、だって二人とも一人でやるゲームばっかりじゃない?」
「別に……友だちとかいらんし」
「学校のやつら、全員弱いんだもん」
「手加減したら怒るし……」
「相手になるのオンラインのやつらか、ママくらいだし」
「(へぇ……ママ、そうだったんだ)」
「……パパは? 遊んでくれなかったの?」
「パパ?」
「パパは……遊んでくれるけど、怖い」
「コンボとか全然できんのに、全部返されるし」
「何考えてるのか、全部読まれてる感じ?」
「――」
「あはは! うんうん、パパらしいね♪」
「で、セレスちゃんの友だちって誰なの?」
『えとえと、ぶ、ブラン……とか?』
「セレス」
「きっと、糸目のねーちゃんさ、友だちって思ってないよ?」
「うん、セレスちゃん」
「さすがにそれは、ブランちゃんが可哀そうだよ」
「小悪魔なの?」
『――はぅ!』
『なんですかなんですか、二人して!』
『私のことは、今はどうでもいいんですぅ!』
『それで、ママは何が言いたかったんですか?』
「あ、ごめんごめん」
「二人のプライベートが気になって、話が逸れちゃったね」
「えっと……ジャンルを決めるにしても、まずは条件を決めないと、"勝てる選択" ができないんじゃないかと思うんだ」
「特設ワールドに、複数のゲームが同時に並ぶわけで、ジャンルが被ったりとか、想定しているプレイヤー層に差があると不利になったり」
「とりあえず、ユイシェンちゃんとリーベルちゃんに聞いてみるのどうかな?」
『ママ……流石に手の内を、明かしてくれると思えないのですが』
「あはは、セレスちゃん」
「聞くのはタダだよっ♪」
「昔、ママがおねえちゃんに言ってたんだ」
「ディレクターは即行動って」
『……ママと凪さんのお母様の教え』
『わかりました!』
『ダメもとで、聞いてみます!』
セレスは七海に促されるまま、二人にチャットを送る。
――ピロン。
数秒も経たず、メッセージが返ってきた。
――――――[CHAT LOG]―――─────
> セレス@日本 管理AI:二人は何作るんです?
> リーベル@アメリカ 管理AI:FPSでござる!
> ユイシェン@中国 管理AI:愚
> セレス@日本 管理AI:は?
ユイシェン@中国 管理AIさんがチャンネルから退出しました。
────────────────────
『ぐっ……一文字ってなんなんですか! もう!』
『ユイシェン、少しは素直になったと思ったら』
「あはは」
「まぁまぁ、リーベルちゃんの所が分かっただけ儲けものってことで♪」
「ユイシェンちゃんの所は、予測できる?」
『うーん、ワールド:中国は "旧時代" から "MMO" の文化なので、多人数協力型ゲームでくるんじゃないかと』
『アメリカも予測通りでしたね』
『FPS――First Person Shooter、いわゆる一人称視点 銃撃戦ゲームは、アメリカのお家芸のようなものなので』
「ふんふん」
「それじゃあ、ジャンルはそれ以外で考えた方がよさそうだね!」
「あとは、遊んでくれる人が多い方がいいんじゃないかな?」
『確かに……両ジャンルとも男性プレイヤーが好む傾向にありますね』
『女性プレイヤーも取り込めると良さそうです』
『ママ、ありがとうございます!』
『では、改めてジャンル案出しの条件をまとめますね!』
────────────────────
【新作ゲーム ジャンル条件】
①MMO、FPS以外
②プレイヤーターゲットは男女を想定
────────────────────
『男性プレイヤーは、"ホシ娘" で引き込む手法はおよそ把握しています』
『女性プレイヤーの傾向は……もっと案を集めた方が良さそうですね』
『うーん……あ、そうです!』
『ちょっと、ヌルとエンプ、ブランも呼びますね』
「あ! セレスちゃん、ちょっと待ってー!」
「せっかくだからさ、一人一人、私たちが行くのはどうかな?」
「小凪ちゃんの紹介も含めてね♪」
「ゲーム作りのことはよくわからないけど、プロジェクトマネジメントはベテランだよ~?」
「なんせ研究で、3年くらいマネジメントもしてたし」
「プロジェクトメンバーと一人一人、コミュニケーションをとるのも意外と大事なんだぁ」
「意見を取り入れると、すごーくやる気になってくれたりね♪」
「なぁなぁ……どっか行くん?」
置いてけぼりになっていた小凪が、セレスの裾をちょんちょんと引っ張る。
二人で話をどんどん進めていたためか、また置いて行かれると不安になっているようだった。
『……か、かわいい』
『(食べたい気持ち……分かるような気がしてきました)』
「……なに見てんだよ」
『んんっ! いえ、なんでもありません!』
『小凪さん! あなたはもう開発メンバーの一員なんです』
『今から、一緒にゲームを作るおねえちゃんたちに会いに行くのですがいかがですか?』
『一緒に行きましょう♪』
「開発メンバー……へへ」
「いく! いきたい!」
『良かったです!』
『では早速、エンジニア:ヌルのところからです』
『小凪さん、こちらへ♪』
『よいしょっと……』
セレスはウキウキの小凪を抱きかかえると、ヌルの所へ歩を進めた。
「……セレスちゃーん?」
「私の鎖! そのままだよ!?」
「私は開発メンバーじゃないの~?」
「おーい!」
―第45話につづく―
わっしょいわっしょい♪ せーぶうわがきです!
今回七海が縛られておりました(´・ω・`)
えぇ、第18話で凪も縛られておりました。
もはや姉妹揃ってのお家芸となってしまいましたねw
こんな姉妹ですが、どうか!どうか暖かい目で見守ってあげてください。
七海が縛られるような行動をしてしまったのも、もはや凪さんを見て育ったからだと思ってるんです。
なんせ、7年ほど凪さんの背中を見て育ったわけなので。
凪さんのせいなんです!よろしくお願いします!
というところで、セレスたちがどんなゲームを創るのか、是非に楽しみにしていただけると嬉しいです~(∩´∀`)∩
(ちなみに、現実世界でもゲームコンセプトとか企画をする際に、会議の進め方はだいたいこんな感じで余計なちゃちゃが入りながら進行していきますw)




