第37話『セレス……アタシに二言はないよ』
――凪の突如としての乱入。
会場のモニターには "誰!?" という文字で、びっしりと埋め尽くされていた。
セレス、ユイシェンも目を見開き、ただ茫然と立ち尽くしている。
「ムハハハ!」
「……皆さん、アタシが何者なのか気になっているようで」
「アタシこそ!」
「"ワールド:日本" の大人気ゲーム "ホシ娘" の~?」
「プロデューサー! あ~んどぅ! ディレクターだぁ!」
「愛しさと切なさを込めて、 凪Pって呼んでくれ☆」
ビシッとしたフォーマルな服装で、凪はピース――きゃぴきゃぴと挨拶をした。
誰がどう見ても、ふざけている光景。
しかし、会場全体が一人の "クリエイター" から目が離せなかった。
「ん~? なになに?」
「……ふむふむ」
「って、コラァ!」
「誰が "キツイ" だっ!」
「お前らどうせアレだろ!」
「そこに居る美少女AIが同じことしたら、可愛いって言うんだろ!?」
「うむ! 可愛いよなぁ!」
「激しく同意! 禿同だ!」
「だがしかし!」
「今日は、可愛い美少女を一緒に愛でるために出てきたんじゃあない!」
「一つ……重大発表だ」
急に声のトーンを落とした凪に、コメント欄は静まり返る。
まるで舞台の観客のように、全員が次の "一言" を固唾を呑んで待っていた。
場の空気は、完全に凪に掌握されている。
「"ワールド:日本" は~……」
「新作大型タイトルの開発を発表しまーす!」
この一言に、コメント欄が一気に燃え上がる。
「ふっふっふ」
「皆さん、温かい反応をありがとう!」
「じゃあ次のお楽しみは……開発チームの発表だ!」
「参加するのは――もちろん! "ホシ娘" のクリエイターAI陣!」
「皆さん」
「コラボフェスで、管理AI セレスの開発現場潜入映像は見たと思う」
「そう!」
「あの可愛い子ちゃんたちだ!」
「そして、プロジェクトマネージャーは "ワールド:日本" 管理AI セレスが担当する!」
「皆さんに見せれる情報が整い次第、セレスを通して配信していくから楽しみにしていてくれ!」
「あっはは!」
「ありがとう! ありがとう!」
「凪Pからの重大発表は以上だ!」
「それじゃあ、また会おう!」
「ばいばーい☆」
「あ、"ホシ娘" も引き続き遊んでくれよなっ♪」
いたずらっぽい笑顔とともにピースサインを決めると、凪はステージの奥へと姿を消した。
スポットライトがゆっくりと落ちていく。
"8888" のコメントに包まれながら―― "ワールド:日本&中国" コラボフェスは、華やかにその幕を閉じた。
***
「ねぇねぇ、ごめんて~!」
『ぷいっ』
『まったくもう!』
『凪さんはまた、私に言わずに勝手なことを!』
"ホシ娘" のハウジングモード。
凪が作った木造テラスの上で、二人は肩を並べて腰を下ろしている。
凪はセレスにすがるように抱きつきながら、何度も謝罪をしていた。
「だって、お前に言ったら止めてたろ?」
『当たり前です!』
『凪さんは……この電脳世界のエラーのような存在なんですよ?』
『プレイヤーの前に姿を現すことで、この世界の管理者に見つかる可能性も高くなります』
『デリートされてしまったら、どうするんですか』
『――』
『ここで言ったこと、忘れちゃったんですか?』
『……アタシの傍にいてくれって』
『妹さんの件もです』
『二人で守るって言ったじゃないですか』
『だから私……がんばったのに』
ぐっと堪えるセレスの目元を見て、凪の胸に痛みが走る。
そっと手を伸ばし、彼女の頬を撫でるようにして涙をぬぐった。
「ごめんな」
「――でも、こうするしかなかった」
「前に、七海から聞いたんだ」
「"ワールド:日本" の消滅期限が1年早まったろ?」
「あれの原因」
「自分がセレスの中にいることを勘づかれた可能性がある」
「一緒に消そうとしてるってな」
「今回、確かに "ワールド消滅" は回避できた」
「だが、今後、別の手で来る可能性が十二分にある」
「だから、お前を消させないように先手を打った」
「あの場にいたプレイヤー全員を味方につけてな」
「七海との記憶を取り戻した、お前さえ再構築されなければ何とかなる」
「それにアタシが、そう簡単に "殺される" わけないだろ?」
「何度だって――何度だって這い上がってきてやる」
「守ってやる」
「お前を、七海を」
『本当……ですか?』
「セレス……アタシに二言はないよ」
震えるセレスの手。
凪は、大事なものを包み込むように、そっと握る。
セレスの口から、かすかな声が漏れた。
伝わってくる――凪の温度、凪の想い。
静寂の中、二人の距離がそっと縮まる。
そして唇を重ね合わせる。
約束を交わすように――何度も、何度も。
『んっ……凪、さん』
「――逃げんな……セレス」
『……はい』
『……ぬ、主ら』
『そんな関係じゃったんか』
下から覗き込むように、"デア・エクス・マキナ" がヌッと姿を現す。
『は!?』
『ちょ――いつからいたんですか!』
『……はぅぅぅ』
『"ぷいっ" の辺りじゃな』
『始めからじゃないですか!』
『――あ"あ"あぁぁぁ』
『いや……邪魔しては悪いと思っての』
『その、なんじゃ』
『皆で、打ち上げを始めておるから呼びに来たんじゃが』
『一通り終わってから、来ても良いからの!』
『あ、AIで良ければ、子も授けるからの!』
『あー!』
『もういいです! いいですから!』
『凪さん!』
『えっと、あの、その……私、先に行ってるので!』
セレスは恥ずかしさに耐えきれず、走ってどこかに行ってしまった。
残される凪と、"デア・エクス・マキナ"。
二人は、顔を見合わせひとしきり笑った。
そして、凪は、困ったような笑顔で続ける。
「マキナちゃん」
「コラボフェスの時の発表、手伝ってくれて、ありがと」
「――そして、ごめんな」
『――カカ』
『仕方あるまいて』
『ゲームディレクターは "諦めがとーっても悪い人種" なんじゃろ?』
「あはは」
「覚えてたか~」
「そう! 諦めがとーっても悪いんだ!」
『――凪よ』
『楽しみにしておるぞ』
「はいはーい」
二人は顔を見合わせて、また笑った。
***
『ズルいですぞ、ズルいですぞ!』
『ボクを除け者にして!』
『えっと……リーベル』
『なんであなたがいるんですか?』
『コラボフェスの打ち上げに、あなたは関係ないですよね』
『Oops!』
『辛辣なワード――バット、そんなところがよきでござる……ハァハァ』
『――きも』
"ワールド:アメリカ" 管理AIのリーベルは、一升瓶を抱きしめながら悶えていた。
そんな彼女を、ゴミを見る目で距離を取るセレス。
『まぁまぁ、そう言うでない。セレスよ』
『MAUは本来ギリギリ1,000万人達成じゃったが、50万人ほどオーバーしておったじゃろ?』
『リーベルが配信切り忘れで、"ミラー配信" 状態になっておったのが原因じゃて』
※ミラー配信=他者の配信を、自身のチャンネルで配信すること
『Oops!』
『配信切り忘れ……またやってしまったでござるよ』
『バット! そんなことは気にすることナッシング!』
『はぁぁぁぁ……セレス氏のアイドル衣装、エンジェルのようなボイス、艶めかしいダンス……ファンタスティックでござった♪』
『そして、終わった後の滴る汗』
『太ももに挟まれたいデスティニーでござった』
「わかるぅぅぅ!」
「リーベルちゃん! アタシたち、同志だな!」
「今からでも遅くない!」
「アタシたちのデスティニーはすぐそこにある!」
「山があったら登る! セレスの太ももがあったら飛び込む!」
『oh! 凪氏!』
『イッツクール♪』
『失礼しマース!』
『こ、コラァ!』
『失礼しないでください!』
『ぶひっ……ぶひぃぃぃ♪』
『ん?』
『そう言えば、凪氏』
『凪氏から、セレス氏のフレグランスががが』
『――ふん、いかがわしい』
凪とセレスの関係に勘づき、ユイシェンが、毒を吐く。
そんなユイシェンは、"デア・エクス・マキナ" にベッタリとくっついていた。
『ユイシェン…………反抗期は終わったんですか?』
『それどころか、甘えん坊になって』
『やらぬぞ』
『余のモノだ』
『いえ、要りませんし』
『どうぞ、もらってください』
「あっはっはっは!」
「なんだ、この百合百合空間!」
「天国じゃんかよ~♪」
「ん?」
「――イ"っ」
ベロベロに酔っぱらって、高笑いしていた凪が頭を押さえる。
『……?』
『凪さん、大丈夫ですか?』
『頭……いたいいたい、ですか?』
「ん~、飲みすぎちゃったみたいだなぁ」
「名残り惜しいが、今日はもう先に休ませてもらおうかな♪」
『ククッ……人類はひ弱よな』
『んなっ!』
『ユイシェン!』
『私の恩人に酷いこと言うのは、聞き捨てなりませんよ!』
『ふん、いかがわしい』
「あはは、仲良くなぁ」
「んじゃ! みんな、おやすみ~」
凪は自室に戻り、ベッドへ身を沈めた。
ドア越しに響く笑い声や言い合いは、まるで子守歌のようだった。
その響きに微笑みながら、凪は静かに眠りについた。
***
"ワールド:日本" 消滅を乗り越えた次の日。
世界は何事もなかったかのように、いつも通りの景色が展開されていた。
だが、その日、凪は姿を現さなかった。
『はぁ……凪さーん!』
『また二日酔いで、寝坊ですか~?』
『いい加減、仕事してくださ――』
ベッドの上に居たのは、金髪ショートの年端もいかない少女。
見慣れたダルダルの白シャツは、まるで布団のように彼女の体を覆っていた。
「誰だよ。お前」
―第1部・完―
物語は第2部へ。
――――――――To Be Continued
どうも!せーぶうわがきです!
第1部! ここに! 完結です!!!
37話……え? 切りが悪い?
えへ、えへへ、大変申し訳ありません(´っ・ω・)っ
だがしかし!わたくし!凪とセレスのキスシーンが書けて満足です。
その後も百合全開にさせていただき、色んな百合を展開できたのではないでしょうか。
もっとくれ?
任せてくだサーイ(∩´∀`)∩どんどんいくぜぇぇぇ?
これより、第2部ということで心機一転、更にこの世界をお届けしていこうと思っております。
ですので、第2部も是非によろしくお願いいたします!
と、その前に、幕間ということで2話ほど書かせていただけると嬉しいです。
もちろん、"第2部につながる" とても重要な伏線となっておりますので、是非に!
(凪の過去、セレスのサイドストーリーをお届けしようかなと思っております)
あ、そうでした。
凪とマキナの会話ですが、覚えておりますでしょうか。
えぇ、そうです!第11話のセリフとなります!
では!
次のお話でお会いしましょう(∩´∀`)∩
--------------
P.S.
よろしければ!
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