第36話『めちゃくちゃ……きゅーとデス♡』
――3月31日 某所。
『ハーイ! えっぶりわーん!』
『今日もボクの配信に来てくれて~?』
『さんきゅー♪』
『明日もボクの配信に来てくれるカナァ?』
『――ヒュゥ!』
『ハピハッピーでごっざるぅぅ♪』
『それじゃ! ユーたちのラッキーガール!』
『ワールド:アメリカ 管理AIの "リーベル・ルミナリア" !』
『これにて退散! ニンニーン☆』
"リーベル・ルミナリア" こと、赤髪の少女は軽やかに忍者のようなポーズを決めて、配信を締めた。
前髪で目元こそ見えないが、その笑顔は、スクリーン越しにも "自由" が溢れている。
『Oops! ぬぅわぁぁぁ!』
『もうセレス氏のライブ、始まっちゃってますぞ~!』
『どれどれ~? スイッチおーん♪』
『……Oh』
『めちゃくちゃ……きゅーとデス♡』
『セレス氏ぃぃぃ……ぺろぺろ』
***
二つの特設ステージの上空――無限に花火が打ち上がっている。
そこに金色を髪をなびかせながら、"デア・エクス・マキナ" が元気よくポップアップした。
『終了! 終了じゃ~!』
『チキ★チキ!』
『ワールド:日本&中国コラボフェス!』
『第二回戦は~……"ワールド:日本" セレスの勝利じゃー!』
『得票率は、セレス:54%! ユイシェン:46%とほんの紙一重じゃった』
『今一度、二人に温かい拍手をしてほしいのじゃ♪』
『途中、トラブルもあったようじゃが……良い子の皆、大丈夫かの?』
『体調不良になった者は、無理せず休むんじゃぞ』
─────────────────
なんか一気に体調良くなったな
やはり美少女は眼のHOYOー!
我が王……我が王……!
我が王に五感全部ダメにされたww
↑↑↑わかるww
はぁぁぁ、セレスたんのライブ最高だった
セレス氏の汗……ぺろぺろ
なんかヤバいやついるww
─────────────────
『――うむうむ!』
『皆、元気なようで何よりじゃ!』
『それでは、名残り惜しいがこのコラボフェスもフィナーレ』
『締めくくるとしようかのっ』
『勝者のセレス!』
『お主が締めの挨拶をするのじゃ!』
『ほれ、一歩前に出るがよい』
"デア・エクス・マキナ" がパチンと指を鳴らした瞬間、光に包まれたセレスが中央ステージへと召喚された。
『……』
セレスは目を閉じ、沈黙を貫いていた。
コメント欄も、その異様な光景にざわつきはじめる。
異様さの正体――それは、彼女がまだアイドル衣装のまま登場したことだった。
30秒、1分……コメント欄の緊張が最高潮に達しかけたその時――セレスがビシッと腕を振り上げる。
『みんなの心の声……聞こえるよ』
『まだまだ! この "お祭り"、 終わりたくないよねー♪』
『ふふ、声が小さいよー!』
『終わりたく……ないよね~!』
セレスの呼びかけにアンコールの文字が、一気にコメント欄を埋め尽くす。
セレスはニカッと笑うと、パチンと指をはじいた。
中央ステージに召喚された一人の少女。
キョロキョロと辺りを見回している。
『……んなっ。何事か』
『朽ち――セレス』
『どういうつもりだ』
小声で苦言を呈するユイシェンに、文字通り、目をキラキラとさせたセレスが耳元でささやく。
『ユイシェン』
『ふふ……お仕事です』
『敗者のあなたには拒否権はありません』
『それとも、全ワールド最大規模の管理AI様は、音痴ちゃんですか?』
『――貴様』
『余を愚弄するか』
『余は王』
『歌なぞ、児戯同然』
『だが……今回のコラボは勝負ぞ』
『民草は、余と貴様の勝負を見に来たのだ』
『そして、勝敗は決した』
『誰が手を取り合い、踊っている姿なぞ見たいものか』
ユイシェンは、うつむきながら吐き捨てた。
不貞腐れている幼い少女の頬に、そっと温かな手が触れる。
彼女が目にした光景――それはセレスの包み込むような笑顔だった。
『"デア・エクス・マキナ" のタイトルコール、聞いていませんでしたか?』
『"コ・ラ・ボ・フェ・ス" です』
『両ワールドの "お祭り" なんですから、私たちが盛り上げなくてどうするんですか』
『言わば、サプライズ演出というやつです♪』
『それに、コメント欄を見てください』
『――見ましたね?』
『ユイシェン』
『我々AIは、人類を?』
『……幸せにする義務がある』
『はい、よくできましたー!』
パチン――軽やかな音が響いた。
ユイシェンの周囲にふわりと光が舞い、衣装が一変する。
抵抗も抗議も、もう間に合わなかった。
間髪入れずに額を合わせ、データの共有が行われる。
『ふふ』
『歌えますか?』
『――ぐっ』
『誰にモノを言っておるのだ』
『余ぞ……当然であろう』
『よしよし。いいお返事ですね♪』
『では、幸せを届けに行きましょうか!』
『ふん』
中央ステージに立っているのは、二人の偶像。
お互い目を閉じ、支え合うように背中合わせる。
コメント欄も今か今かと、熱を加速させていく。
『みんな……今日は最後まで楽しんでいってね』
『これは私たちとみんなの "繋がり"』
『そして、未来へのアンサー!』
『"同期ハート☆アップデート"!』
***
熱狂のステージは、ひときわ高く舞い上がった光の粒子とともに幕を下ろした。
照明がふわりと落ち、暗転した舞台に、二人の微かな息づかいだけが残る。
『んっ……はぁはぁ』
『セレス、アドリブを入れすぎぞ……!』
『はぁはぁ……ふふ』
『そう言いつつ、ちゃんとついてこれたじゃないですか』
『"はなまる" 貰えるんじゃないですか?』
『"デア・エクス・マキナ" に♪』
『……』
『不要ぞ』
『本当ですかぁ~?』
『黙れっ……!』
─────────────────
うわぁぁぁ!!!!
生きててよかった……
二人とも尊い
握手会!where is どこ!?
Oops!セレス氏……ぺろぺろ
王の衣装ってさ……気付いた?
セレスたんの開発現場潜入配信のだよな
用意してたってコト……!?
─────────────────
コメント欄はもはや弾幕で、二人の姿が見えなくなっていた。
いつまでも途切れることがないコメントを見て、セレスは確信する。
小さく指を鳴らし、自分にだけ見えるようにウィンドウを開く。
────────────────────
【現在:2150年3月31日 MAU】
10,560,905人
【1,000万人未達成の場合:ワールド消滅】
※期限:2150年3月31日まで(2/14改定)
達成!Congratulations!
────────────────────
『(凪さん……それに、ママ!)』
『(やりましたよ)』
『ふふ……ふひ……えへへ』
ふと、肩が震えた。
それが笑いか、涙の前触れか、自分でもわからない。
セレスは小さくガッツポーズを決めると、ゆるんだ表情で遠くを見つめていた。
『(さぁ……もうひと踏ん張りです)』
『(今度こそ、このコラボフェスを終わらせましょう!)』
セレスは息を整え、カメラの向こう側にいるプレイヤーに届くように顔を近づけた。
そして、天高く両手を広げ、閉会の言葉を口にする。
『ワールド:日本、中国のみんなー!』
『本当に今日はありがとー!』
『私とユイシェン』
『そしてみんなとも、一つになれた……私はそう感じた』
『みんなはどうかな?』
『――ふふ、ありがと!』
『みんな大好き♡』
『それじゃあ! これで本当におしまいっ!』
『チキ★チキ!』
『ワールド:日本&中国コラボフェス!』
『終りょ――』
――ダンッ!
セレスが終了の言葉を継げようとした瞬間、ステージ全体が暗闇に包まれた。
しばらくすると、上空にステージが浮かび上がる。
そこに立っていたのは――白いTシャツに黒いジャケットを羽織った、金髪の女性。
「うぇぇい、はじめまして」
「ワールド:日本&中国の皆さん」
「凪Pですっ☆」
『――んなっ! 凪さん!?』
―第37話につづく―
どうも!せーぶうわがきです!
皆さん!次回37話!
ついに "第一部" 完結です♪
え?なんですか?
新しいキャラ出てきた?凪がなんか変なことしようとしてる?
本当に第一部終われるの?
ふふふ…………お、終われるよ(汗)。
ほ、本当だよ(´・ω・`)
最後の最後まで伏線を放り込んでいくスタイルのわたくし!
皆さん、今回のお話で言うと、プレイヤーのコメント欄注目ください。
変なやつが混じってますねw
どうぞ、遠慮なくコイツだろってコメント欄でつぶやいてください!
では、37話でお会いしましょう!




