14 旅のお供(3)
セシルに対する違和感を一旦置いて、アームは羊皮紙を取り出して彼女へ見せる。
「ロベルト・カナン・ギークラドナ侯爵の身柄確保?」
極僅かにしか知られていないカナンの本名が国王認可の書類に記されている。
「罪状は他国への情報漏洩?まさか、あり得ない」
普段のカナンはちゃらんぽらんな一面があるものの、本当は生真面目で国に対する忠誠心も厚い。何より、セシルの面倒を完璧に見ていられる時点で優秀な国の犬なのである。国家の宝とも言える『砦の魔女』の秘密を守れる者しか、激甘に見えてかなり厳格なあの父は採用しないのだから。
カナンを、ひいてはセシルを陥れる企みがあるのか。
「俺たちもあり得ないって思っている。だがギルドとして国の命令に逆らうことは得策じゃない」
アームは渋い顔で言った。
「分かった。カナンを引き渡す時、私も一緒に行くわ」
引きこもりで人嫌いのはずの砦の魔女が言った言葉にアームとトランジスタは顔を見合わせる。
「俺たちも使える伝を総動員して調べている。だから早まったことはしない方がいい」
トランジスタが真剣な様子で言った。
それには満面の笑顔でセシルは頷く。
「私はともかく、あなた達に迷惑をかけるのはカナンも望むところではないでしょうから、それなりに大人しくしているわ。セシルも目立つのは後々困るでしょうし」
最後の方は独り言に近い呟きだった。
公営傭兵ギルドは国家を超えて連携している世界共通のギルドである。
とは言え、設置された地域の、引いては国家の特色を色濃く反映する組織でもある。
私設ギルドと違うのは忠誠を誓う相手はギルド所属の戦士たちというところである。お互いに裏切らない。それが彼らの暗黙の了解なのだ。
例え仕事で敵味方に分かれて戦っても、最終的には殺し合いは行われていないのである。
お互いの身を守る為に行動できるのがギルドの傭兵たる所以だ。
その誇り高いギルドの傭兵を従えて、うら若い娘、つまりセシルは買い物に興じていた。
「お嬢さん、もうそろそろ終わりにした方がいいんじゃないかい」
トランジスタがうんざりしたように言う。
手には山ほどの菓子箱。街で有名な菓子店は全て回ってきたと言っても過言ではない。
ケーキから焼き菓子、ゼリーや飴に至るまで、あらゆる種類の菓子を網羅している。
「そうねえ。まだ夕食のおばんざいやチーズも買っていないし」
買い物の成果を運んでいる大男たちはうんざりしたような表情だ。




