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中央浮遊都市戦

 バルエラ竜王国に女神セラフティアス率いる天軍が攻め込んでから数分後、四教天使が攻め込むのを見計らってマリアティアスもまた中央浮遊都市へと密かに侵入していた。

 無論バルエラ竜王国の首都である中央浮遊都市には選りすぐりのエリートが勢揃いしており、奇襲を仕掛けたのにも関わらずに戦況は思うように進んでいない。

 一体一体の竜人(ドラグニル)が強いというのが最大の理由なのだが、それと同等に各竜人(ドラグニル)の連携が上手だというのも原因の一つだ。

 互いに互いの欠点を補うようにして戦っているその姿は、数々の修羅場を潜り抜けて来たからなのであろう。

 攻め込んでいる天使達も数は竜人(ドラグニル)よりも多いのだが・・・やはり練度が違う。

 そんな戦いが繰り広げられている中で、マリアティアス達は竜人(ドラグニル)の目を掻い潜りとある場所へと来ていた。

 その場所とは中央浮遊都市に存在する地下飛空挺発着所と言われている施設であり・・・現在は修復作業をしているところだ。

 この地下飛空挺所はかつて翼無き者(ボロクロ)が反旗を翻し、最初に攻め込んだ場所だ。

 まぁ・・・その反乱は仕組まれた物であり、仕組んだ犯人であるルーシャは既にマリアティアスと共にこの場にいる。

 今は女神セラフティアス率いる天軍が攻め込んできてしまったが為に、復旧作業は止まってしまっている。

 敵と戦闘中であるのにも関わらずに復旧作業をしているということはありえなく、現に地下飛空挺発着所には最低限の警備兵を残して地上で戦っているのだが・・・その警備兵達は既に事切れてしまっている。


『やっと侵入することができましたが・・・流石はバルエラ竜王国の首都を守る竜人(ドラグニル)ですね。なかなか強い』

『まぁ・・・僕ほどじゃないけどね』

『それは・・・そうですね』

『あの竜王とかと言う竜人(ドラグニル)の次に強いんだよね』

『竜王・・・オール・ディストピア・バルフロン・マリッジは別格の強さだからねぇ・・・ねぇ本当にあのオールを倒せるの?』

『勿論ですよ。貴女が協力してくれれば』


 そう言いながらルーシャの方を見るマリアティアス。

 どうやらマリアティアスには最強の竜人(ドラグニル)である、オール・ディストピア・バルフロン・マリッジに勝つ手段があると言うのだ。

 マリアティアスとルーシャは一度オールと戦い・・・そして逃げてきたという事実がある。

 あの時は何とかオールから逃れることが今度は確実に勝敗がつくまで戦うと決めている。

 その為にもルーシャの協力が必要なのだが・・・どうやらルーシャはマリアティアス以上にやる気なようだ。


『勿論協力するよ・・・だってあの時の気分がもう一度味わえるんでしょ?』


 期待の目線をマリアティアスに送るルーシャ。

 ルーシャの言っているあの時の気分とは、オールと対峙した時にマリアティアスとルーシャが起こした奇跡にも等しい竜法・・・竜法秘伝・竜融血装のことだ。

 竜法秘伝・竜融血装を使うことによってマリアティアスとルーシャは一つになり・・・あの最強の竜人(ドラグニル)であるオール・ディストピア・バルフロン・マリッジの攻撃を幾度も防ぐことができた。

 つまりマリアティアスとルーシャの力を合わせればオールに対抗することが可能ということなのだ。

 今まで絶対に勝つことが出来ないと思っていた相手と互角に戦える。

 そのことはルーシャのみならず、戦いの中で生きている者であれば誰だって共感できるはずだ。

 しかしながら竜法秘伝・竜融血装には欠点が存在する。

 まず第一に竜力の消費が大きく長時間の戦闘にはあまり向いていない。

 その次にマリアティアスとルーシャはあの時以降、竜法秘伝・竜融血装を使っていないということ。

 そして何よりも・・・マリアティアスにかけられた呪いによって傷つけることができないというのが最大の欠点だ。

 マリアティアスはとある呪いにより他の生物を傷つけることができない。

 これは絶対的な事実であり世界の法則、天に唾を吐くと自らに帰ってくるのと同じなのだ。

 だが世界の法則が乱れてしまったのあればどうだろうか?

 今この世界の法則は乱れてしまっている。

 その原因はこの世界に存在しないはずの天使の降臨・・・というよりも女神セラフティアスの降臨によって世界の法則は変わってしまった。

 その時既にマリアティアスの呪いは女神セラフティアスによって解呪されており、もう既に戦える身体になっている。

 なのでもう既に竜人(ドラグニル)にも攻撃することが可能で・・・この地下飛空挺発着所で警備をしていた竜人(ドラグニル)はウォーミングアップがてらにマリアティアスが倒してしまっている。

 圧倒的・・・というよりは虐殺に近かったが。

 そんなこともあり、ルーシャはマリアティアスに期待しているが・・・それでもオールの強さを知ってルーシャからすれば倒せるのかという疑問があるようだ。


『えぇ、もち・・・』

『マリアティアス様?』

『静かに・・・』


 急に周囲に静かにするように指示を出すマリアティアス。

 魔力の感度を強め・・・更に探知能力を上げる。

 数秒の沈黙と共に閉じていた瞳を開く。


『上での戦闘が激しくなってきていますね』

『そうなのですか?』

『えぇ、どうやら女神セラフティアス様があの力を使ったようですね』

『女神セラフティアス様ねぇ・・・あの魔力とも竜力とも違う力ってなんなの?』

『気になりますか?』

『まぁね・・・多分僕以外にも気になっていると思うよ?』


 ルーシャが周りにいるアリセス達を見るように促し、マリアティアスがアリセス達を見る。

 アリセスやエール等は表情を上手に隠してはいるが、魔導六刀の面々・・・特にヘルやクチルギはセラフティアスのことを疑問に思っているようだ。


『少し待ってくださいね・・・どうやら此方に近づいてきている竜人(ドラグニル)はいないようですなので、女神セラフティアス様が使う力について説明しましょうか』


 女神セラフティアスの使う力・・・それは魔力とも竜力とも違う力であり、女神セラフティアスはこの力を神力と言っている。

 無論女神セラフティアスはこの神力の他にも魔法を扱うことができるが、神力は女神セラフティアスの切り札と言ってもよい力だ。

 神力はどちらかと言うと呪法に近い力で、女神セラフティアスを信仰する大天使、天使達の信仰を糧にする発動させるものなのだ。

 そしてその女神セラフティアスは神力を自由自在に扱うことができ、神力によってこの世界の法則をねじ曲げるような出来事を幾度も起こすことができる。

 しかしながら神力は信仰力と同じで、女神セラフティアスを信仰する者がいなければ使うことができないとう欠点がある。

 今は信仰する者が多いので大丈夫であろうが・・・もし、この戦争で負けるようなことがあれば女神セラフティアスは信仰する者を失い、その力が失われてしまうのは必然だと言える。

 まぁ・・・そのようなことを女神セラフティアスがさせる筈がなく、既に手を打っているが。


『なるほどねぇ』

『そんなち・・・』


 ヘルやルーシャが感心していると、不意に巨大な振動が伝わり・・・そして天井が崩壊する。

 何が起きているのか理解できなかったアリセスやエール達だが、マリアティアスは即座に魔法を発動させて降り注ぐ瓦礫を防ぐ。


『天井が・・・』

『落ちてきましたね・・・まぁ、別に問題ないですけど邪魔ですね』


 そう言い終えるとマリアティアスは魔法を発動させ、瓦礫を水と風属性魔法で細かくして防御魔法に乗っていた瓦礫を退ける。


『マリアティアス様上を』


 エールが指示を出した先にいたのはマリアティアス達を見て驚愕している数体の竜人(ドラグニル)がそこにはいた。

『何故そんな場所に』っとでも言いたげな表情の竜人(ドラグニル)だが、余所見をしている隙をつかれ天使達の魔法が直撃してしまった。


『戦場で余所見をしてはいけませんねぇ』

『マリアティアス様、ここは私が』


 エールが両腕に単刀を持ち、竜人(ドラグニル)に狙いを定める。

 マリアティアスの指示があれば何時でも殺せる準備をしていたエールなのだが・・・どうやらマリアティアスの考えは違うようだ。


『ごめんなさいねエール・・・』


 突如、エールを後ろから抱き締めるマリアティアス。

 いきなり抱きつかれてしまったことに驚いたエールは、最早自分が何をしたらよいのか、わからなくなってしまったようであり、硬直してしまった。


『ま、マリアティアス様・・・』

『エールの熱意や、やる気はわかるのですがここは私に任せてくださいませんか?』


 エールを抱き締め、そっと耳元で囁くマリアティアス。

 しかしながら、マリアティアスに抱きつかれてしまったことによって気持ちが昂ってしまったエールには、最早マリアティアスの言っている内容が理解できないようだ。

 その証拠に頬を赤らめてしまっており、耳まで赤くなってしまっている。


『マリア様・・・お言葉ですがエールには聞こえていないようですよ』

『顔を赤くしちゃって、可愛いところもあるんじゃないですか』

『う、羨ましい・・・』

『いいなぁ・・・』

『でもマリアティアス様それは悪手では?手の内はなるべく隠してはおいた方がいいのではないのでしょうか?』


 頬を赤らているエールを他所に、ソイルはマリアティアスが戦うことには反対なようだ。

 それもその筈。

 今のマリアティアスは、今までのマリアティアスとは違いその能力は圧倒的に強化されていて、魔力の向上は勿論、魔力の質もより濃厚になっているからだ。

 それにマリアティアスは今の今まで敵を攻撃することはなかった。

 まぁ・・・攻撃できなかったというのが最大の理由なのだが、これまで敵対してきた者達は攻撃を無効化させることを目的として戦ってきた。

 相手を殺すことを目的とした攻撃と、相手を無効化させることを目的とした攻撃とでは使う魔法が異なることは必然・・・つまり攻撃することが可能となったマリアティアスの攻撃手段等を相手に知られることをソイルは危惧しているのだ。

 相手がどんな方法で、どのような手段で攻撃してくるのであれば対策はできる。

 魔導師であればどのような属性を使うのかわかるだけも、わかるというのは大きい。

 なのでソイルはマリアティアスが戦うのには反対なのだが・・・どうやら当の本人はその事気にしてはいないようだ。

 何故ならその手に金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を持っていたからだ。


『奴らから見えないようにしてしまえばいいのですよ』


 そう言い終えるとマリアティアスは金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を発動させ・・・周囲にいる竜人(ドラグニル)、天使を根こそぎ金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)で作り出した茨の牢獄で捕らえる。

 マリアティアスによって周囲からは完全に見えないように隔離されてしまった竜人(ドラグニル)と天使達。

 突如として起こった出来事に、何がどうなっているのか理解出来ていない両軍なのだが・・・マリアティアスは金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を操り竜人(ドラグニル)に攻撃を仕掛ける。


竜人(ドラグニル)に攻撃を仕掛けた?』

『この茨ってあの方・・・女神セラフティアスに認められたという人間がやったのですか?』

『これ程の質量を一気に・・・あの女性達は何者なのでしょう』


 マリアティアスに対して疑問を抱いている天使達であったが、竜人(ドラグニル)だけに攻撃しているのを見て援護しようと魔

 法を放とうとするが・・・その魔法が放たれることはなかった。

 魔法を放とうとしていた大天使、天使達はマリアティアスが金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を操作して開けた穴から茨の牢獄の外へと強制的に出されてしまった。

 マリアティアスが水の属性魔法で大天使、天使達を泡で閉じ込め、風の属性魔法で移動させたこともあり、大天使と天使達は無傷だ。

 そして大天使、天使達を脱出させた後は茨に空いていた穴は閉じてしまった。


『私達の援護はどうやら必要ないようですね』

『そうですね・・・まぁ、敵の数が減るというのは良いことなのですが、流石に目立ちますね』

『あ、集まって来てますよ』

『あの人間本当に味方ですか?これでは周囲の戦力がここに集中してしまいかねませんよ』


 大天使、天使達が口々にマリアティアスの作り上げた茨の牢獄に疑問を投げ掛ける。

 マリアティアスが金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を使って作り出した茨の牢獄は、確かに周囲の竜人(ドラグニル)を巻き込んで閉じ込めてしまった。

 これにより少なからず竜人(ドラグニル)の戦力は低下したのだが・・・問題なのはその大きさだ。

 周囲にいる竜人(ドラグニル)を根こそぎ茨の牢獄に閉じ込めたと言っても、取りこぼしは少なからず出てしまうのは仕方のない事なのだが・・・その取りこぼした竜人(ドラグニル)が援軍を呼んだことによって周囲には竜人(ドラグニル)が接近している状況となってしまっている。

 マリアティアスの作り上げた茨の牢獄が大天使、天使達の予想以上に大きく目立ってしまっているからであり、結果的に竜人(ドラグニル)の注意を引いてしまったようだ。


『どうしま・・・』


 どうすればよいのか戸惑っていた大天使、天使だがその状況を見ていたかのように女神セラフティアスから伝令がくる。

 内容はその場からの即時離脱で、接近してくる竜人(ドラグニル)はマリアティアスに任せるという内容だ。

 少々マリアティアスに任せるという内容に疑問を持った大天使、天使達だが・・・女神セラフティアスの言うことを信じない者はいないので、多少の疑問を持ちながらもマリアティアスに任せこの場を後にするのであった。


『おい!天使達が撤退して行くぞ?』

『逃げたのか?』

『そ、それよりも問題なのは・・・』

『この茨だな・・・なんなんだこの茨は!?』

『攻撃して見ますか?』


 マリアティアスの作り上げた茨の牢獄を見て困惑している竜人(ドラグニル)

 茨の牢獄から何とか逃げることができた竜人(ドラグニル)も、突如として出てきた金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)が何故、何処から出てきたのか理解できていない様子なようだ。

 駆けつけた竜人(ドラグニル)の中には茨の牢獄に攻撃しようと言っている者もいるが・・・この茨の正体が不明である為に攻撃しかねている状況だ。


『この茨の中には我々の仲間もいるのだな?』

『は、はい!突如として出現しましたので・・・私は逃げるのが精一杯でした』

『お前を責めている訳ではない。寧ろよく逃げ延びてくれた』

『しかしいったい中で何が・・・』


 金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)で作り出された茨の牢獄にて・・・


 突如として閉じ込められてしまった竜人(ドラグニル)は最初は困惑していたが、茨に閉じ込められるとわかると一斉に攻撃をしていた。

 しかしながら金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)で作り出された茨の牢獄が破壊されることはなかった。

 複数の茨が折り重なるようにして竜人(ドラグニル)を閉じ込めており、一度は茨が綻び、破壊しても・・・直ぐ様に別の茨が補うようにして竜人(ドラグニル)の行く手を遮る。

 複数の竜人(ドラグニル)が四属性竜法を駆使し、多種多様な武器で攻撃を仕掛けても突破出来ずにいた。

 炎で熱せられ、冷水で冷やされ、逆巻く暴風で吹き飛ばされ、岩石を激突させても直ぐ様に再生し、斬られ、殴られ、突き刺されても綻ぶことがない茨の牢獄。


『くそが・・・何がどうなっているんだ!』

『突然閉じ込めらたぞ・・・』

『お前無事か!?』

『閉じ込められましたが無事です』

『なんなんだこの茨は・・・』

『俺にもわかんねぇよ・・・だけど敵の攻撃だろ』


 茨の牢獄に閉じ込められていた竜人(ドラグニル)であったが、突如として茨が開ける。

 先ほどまで閉じていた茨が開いたことによって動揺してしまった竜人(ドラグニル)なのだが・・・その動揺は更に広がる。

 何故なら開いたと思った茨が道のように一直線になったのだ。


『・・・誘っているのか?』

『だが何故この茨で攻撃してこない・・・』

『何かしらの理由があるのでしょうか?』

『話てもしょうがないな・・・俺は行くぞ!』

『私も続きます!』


 そう言いながら竜人(ドラグニル)は茨の牢獄の底へと向かって行くのであった。


 茨の牢獄の底・・・


 マリアティアスは金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を操って茨の牢獄を作り終えた後、ルーシャとの話し合いを終え・・・切り札である竜法秘伝・竜融血装を発動させていた。

 しかしながら最初に竜法秘伝・竜融血装を発動させた時とはその姿が変わってしまっていた。

 容姿としてはルーシャが成長したような姿ではなく、緑だった髪色は黒曜石を思わせるような黒髪に、金色だった瞳の色は右目の部分がルビーを思わせるような赤色に変化している。

 金色の角には変化がないのだが、頭の上には天使達と同じような天使の輪があるが・・・その天使の輪は機械仕掛けでできている。

 ルーシャを象徴する妖精のような四枚の翼の他に、その後ろに新たな機械仕掛けの四枚の翼。

 機械仕掛けの四枚の翼は直接背中から生えている訳ではなく、背中の真後ろに存在する金属質な輪に繋がれていて・・・何故か宙に浮いている。

 ルーシャの鎧のような尻尾の他にも金属質な輪からは鎖のような細長い・・・尻尾というには少し変わった物があり、全身を覆う機械仕掛けの鎧は更に強化されている様子だ。

 容姿はマリアティアスと似ているが・・・少々ルーシャとも似ている容姿をしている。

 しかしながら絶世の美女と言ってもよい美貌はそのままで、そしてスタイルもまた抜群だ。


『近づいて来てますね』


 そう言いながらマリアティアスは瞳を閉じる。

 すると先ほどまでの雰囲気が変わる。

 殺意を露にし、その両手にはいつの間にかルーシャの持っていた白金の刺妖・黒銀の斬妖を持っている。


『さて・・・僕もウォーミングアップがてら殺らせてもらうよ』


(構いませんよ。そのために交代したのですから)

(やっぱり最高の気分・・・ねぇ、ずっとこのままでもいいんじゃないの?)


 興奮した様子のルーシャなのだが、ルーシャとは違いマリアティアスは至って冷静であった。

 確かにルーシャの言っている通り、あの時とは違い圧倒的に全ての能力が強化されている。

 身体能力もさることながら、あの最強の竜人(ドラグニル)であるオール・ディストピア・バルフロン・マリッジに匹敵、もしくは上回っているかもしれないほどの竜力と魔力。

 全力のオールとは言わないが、一度はあのオールの攻撃を退けた時以上に力が溢れ出てきているのであればルーシャが興奮しているのも頷ける。

 しかしながら竜法秘伝・竜融血装を維持するには膨大な量の竜力と魔力が必要なのだ。

 最初にルーシャと共にやった時とは違い持続力は増加しているが・・・それでも膨大な竜力と魔力が必要なのには変わらないのだ。


(残念ですが無理ですね・・・来ますよルーシャ)

(どうやら来たね・・・暴れていいんでしょ?)

(程々にお願いしますね。アリセス達もいるのですから)

(了解!)


 ルーシャがマリアティアスとの会話を終えてから数秒後・・・茨の牢獄に囚われていた竜人(ドラグニル)が誘導されるようにしてたどり着く。

 裏切り者であるルーシャと同じような翼に尻尾を持っている竜人(ドラグニル)・・・しかしながらその容姿や竜力はまるで別の物であるが故に一瞬躊躇する竜人(ドラグニル)

 だがこの状況・・・見知らぬ竜人(ドラグニル)に、周囲を茨の牢獄で閉じ込められているという状況で考えれば敵であると判断できる。


『殺るぞお前達!』

『了解です』

『て、敵なのでしょうか?』

『この状況で俺達の知らない奴だぞ・・・』


 ルーシャを視界に捉えると直ぐ様に竜法を放つ竜人(ドラグニル)

 しかしながら放たれた竜法は全て、ルーシャの放った竜法によって吹き飛ばされてしまう。

 圧倒的な暴風だけではなく、風の中には真空の刃が幾重にも存在していて攻撃してきた竜人(ドラグニル)が斬られてしまった。


『なかなかだね。でもやっぱり僕は・・・』


 ルーシャが竜力を身に纏い・・・羽ばたく。

 茨の牢獄という狭い空間にいるのにも関わらずにルーシャはその隙間を流れるように移動し、一瞬で竜人(ドラグニル)の元へとたどり着いてしまった。


『なっ!?』

『いつの間にか・・・』

『あの距離をどうやって?』


 一瞬の出来事にその場の全員が驚いてしまい、反応が遅れてしまった竜人(ドラグニル)

 だがその一瞬が命取りとなってしまった・・・

 一瞬にしてたどり着いたルーシャに斬りかかろうとしたが竜人(ドラグニル)であったが、その攻撃がルーシャに当たることはなく、その場の全員が斬られてしまう。


『ば・・・かな・・・』

『そんな・・・』

『い、一瞬で・・・』


 瞬きする間に斬られてしまった竜人(ドラグニル)・・・ほぼ全ての竜人(ドラグニル)致命傷であり、中には既に事切れてしまっている竜人(ドラグニル)もいる。

 最初の一撃で倒されていなかった竜人(ドラグニル)もいたが・・・

 反撃する間も、逃亡させる間も与えずにルーシャは更に畳み掛ける。


『弱いなぁ・・・こんなに竜人(ドラグニル)って弱かったけ?』


 高らかに、楽しそうに笑いながらルーシャ。

 ルーシャが竜人(ドラグニル)を倒し終えたと同時にマリアティアスとルーシャを竜法秘伝・竜融血装を解除し、マリアティアスとルーシャが別れる。

 どちらともに疲れている様子は無く、竜法秘伝・竜融血装を使用する前と変わらない様子だ。


『さて・・・なかなかのウォーミングアップになったのではないでしょうか?』

『僕としてはもう少しやりたかったけどなぁ・・・まぁマリアティアスがいいならそれでいいよ』


 金と銀の(ゴルド・シルバ・)魔蝶杖(ティルフィムガント)を使用して、操っていた茨を動かすマリアティアス。

 アリセス達と合流し、本丸である竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジを倒す為に動くのであった。

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