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薔薇騎士の狂信者VS朱亡星の騎士

 各陣営が激戦を繰り広げている最中、ソイルもまた負けられない戦いをしていた。

 戦っている相手は元王国最強の騎士ヴァーミリオンなのだが・・・今は最早その面影はない。

 対マリアティアスように改造されたヴァーミリオンは、その体内に反魔導物質を埋め込んでいるのだが・・・今は違う。

 女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)がマリアティアスと戦うと宣言して後、自らの身体に埋め込まれている反魔導物質を無理矢理取り除いたのだ。

 本来であれば致命傷なのだが・・・その身体を改造されたヴァーミリオンは違った。

 反魔導物質を取り除いた瞬間に身体に複数の魔法陣が浮かび上がり、身体を覆い尽くし・・・様々に魔化されたヴァーミリオンが出てきたのだ。

 まず何よりも驚くべきなのはその大きさ。

 身長は先ほどよりも倍以上に大きくなり、それに見合うように膨れ上がった筋肉。

 筋骨隆々、剛強無双という言葉があまりにも似合うようになったヴァーミリオン。

 複数の魔法陣と魔法陣を血管のように繋ぎ、強化している身体能力に身体の五感も、痛覚以外の五感を強化し、更には手に持っている大剣はヴァーミリオンと同等の大きさになっている。

 切れ味も鋭くなっているのか太陽からの光を受け、光輝くその姿はまさに業物という他は無いと実感させる。

 そんな人外になってしまったヴァーミリオンに対して、戦っているソイルもまた人外の存在だと言えなくもない・・・

 ヴァーミリオンとソイルとのリーチの差は約三倍以上。

 戦うのであればどう考えても懐に潜り込んで戦わなければならない。

 幸いにもソイルは体格が小さいので小回りのきく戦いで徐々にではあるが、ヴァーミリオンに攻撃を当てている。

 しかしながら致命傷を与えることができてはいなかった。


『化け物が・・・』


 一旦距離を取ろうと後退したソイルなのだが・・・ヴァーミリオンが追撃してくる気配はなく、逆に何故か大剣構えている。

 低く腰を落とし、大剣を上段に構えているその様子は待ち伏せのようにも思えるが・・・ソイルには違って見えた。


(あの構えは・・・)


 構えてから数秒後・・・大剣を降り下ろすヴァーミリオン。

 明らかに後退したソイルには届かない距離なのだが・・・それを覆すようにヴァーミリオンの降り下ろした大剣から衝撃波が生じる。

 それは正しく砲弾のような威力であり、更に並大抵の物であれば破壊して突き進んで行く。

 その証拠にヴァーミリオンの直線上にあった瓦礫は一掃され、更に地面を抉ってしまった。

 残念ながらソイルに当たることはなく、ヴァーミリオンが構えた瞬間に逃げていたので無事だ。

 屈強な体格と並々ならぬ筋力、そして魔化した影響により衝撃波となって襲いかかるというのは、正に剣士にとっては度肝を抜くような感じなのだ。

 剣士は魔導師に比べて剣一本、もしくは複数の武器を用いて接近戦を主軸にして戦う。

 遠距離から攻撃されてしまったのであれば正直、太刀打ちは難しいかもしれないが、それでも接近戦では魔導師と剣士であれば剣士の方に軍配が上がる。

 接近戦を行う魔導師だったとしても魔力の消費、魔力の維持、そして何よりもその魔力の扱いに慣れなければ話にならない。

 更に剣士と同じ土俵で戦うのであれば剣士特有の足運びや、視線誘導、剣術に至るまで習得しなければ上位の剣士にはまず勝てない。

 雑兵程度であれば作り出した魔法の剣で問答無用に斬り殺せるが、上位の剣士となれば当然魔化された鎧やルーンが刻まれた鎧に剣を持っていることが多い。

 一撃で殺せれば問題は無いが・・・戦闘になってしまった場合、魔導師ではまず勝つことは不可能に近い。

 つまり接近戦が主軸の剣士が遠距離攻撃をしてくるというのは、常識ではありえない攻撃方法なのだ。

 まぁ、今のヴァーミリオンの方が常識を逸脱してしまっているが・・・

 そんな常識を逸脱したヴァーミリオンの攻撃を何故ソイルが避けれたのかと言うと・・・ソイルが新たに手にした力『真理の答え』が原因だ。

 ソイルは戦闘時のみだが、相手の攻撃手段、威力、攻撃範囲、そして魔法や特殊な物であればその特性を瞬時に見抜くことができるという能力を会得している。

 これは剣士や魔導師だけではなく、暗殺者、武術家にも適用する。

 ソイルに殺意を持つ者全員が効果対象という恐るべし能力なのだ。

 魔導師であれば魔力を溜めた瞬間に次に放つ魔法がどんな魔法か瞬時に理解できる。

 剣士、武術家であれば次に何処に攻撃するのか、暗殺者であれば何処に潜んでいるのか、どんな武器を使いどのように殺してくるのかがわかるようになる。

 つまり相手よりも確実に先手を撃つことができ、回避することもできる。

 ソイルはこの能力を駆使して圧倒的な能力を持っているヴァーミリオンと戦う事ができるのだ。


『大技を放った後は隙ができると言いますが・・・』


 遠距離技を放った後、一直線に向かって走りだし隙だらけなヴァーミリオンに向かって攻撃を繰り出す。

 一撃必殺の突き・・・狙いは勿論心臓。

 隙だらけの筈であったのだが・・・ヴァーミリオンはその巨体を見事に操りダメージを最小限に抑えることに成功した。

 骨まで到達してはいないようで、直ぐ様にソイルに向かって突撃する。


『意外と素早い・・・ですが私の方が上手ですよ』


 突撃をかわしたソイルだが、反撃することなく距離を取り・・・その瞬間ヴァーミリオンを中心に斬撃の風が吹き荒れる。

 ヴァーミリオンが大剣を使って薙ぎ払ったことによって起きた技だ。

 通常の攻撃範囲よりも更に広範囲に斬る技・・・それによって周囲の瓦礫が鋭利な刃物で斬られたかのように崩れ落ちる。


『予測できていたとしてもこの威力・・・流石に一筋縄ではいかないですね』

『ぐっ・・・ぐぃぃぃ・・・』


 かわされた事が余程悔しかったのかヴァーミリオンが声をあげ、怒りの表情を露にする。

 そして再び構え・・・


『剛・上斬波!』


 先ほどよりも速く、そして威力が跳ね上がった衝撃波がソイルに向かって襲いかかる。


『速度を上げたとしても無駄・・・多少負荷がかかりますが仕方ありません』


 ソイルは数秒瞳を閉じる。

 戦闘において瞳瞑るということは・・・つまり数秒ではあるが何も見ないということに他ならない。

 命のやり取りをしている最中にそのような事をすれば当然あるのは死・・・

 一瞬足りとて油断できない筈だ。

 だがソイルはこの状況で瞳を閉じる・・・それは必要なことであり、やらなければならないことなのだ。


『幻歩・波紋一刻・・・』


 消えそうな、小さな声で呟くソイル。

 そんなソイルに容赦なくヴァーミリオンの放った剛・上斬波が襲いかかる。

 先ほどソイルのいた場所の地面は抉れてしまい、周囲の瓦礫は衝撃波で散り散りに吹き飛んで行く。

 ソイルは避けられなかったと確信したのか、ヴァーミリオンの表情が怒りから嬉しそうな表情に変わっている最中・・・その表情は驚きの表情へと変わっていく。


『ば・・・かな・・・』


 驚きの表情で呟いたヴァーミリオンの目の前には倒した筈のソイルが其処にはいた。

 しかも傷を負っている様子はない。

 つまり無傷だ。

 先ほどよりも速く、威力も上がっているのにも関わらずかわされたことに驚きを隠せないヴァーミリオンは、もう一度攻撃を放とうと構える。

 そんなヴァーミリオンに対してソイルはゆっくりと歩んで行く。


『ぎぃぃぃ・・・剛・上斬波!』


 自らの攻撃が通じないという怒りからなのか?それとも恐怖からなのか?

 ヴァーミリオンは再び剛・上斬波を放つ。

 狙いは勿論ソイルであり・・・ヴァーミリオンの放った剛・上斬波が直撃する。

 数秒後・・・土煙が晴れた後に現れたのは、先ほどと同じ傷一つ負っていないソイルが其処にはいた。

 歩みを止めることなく進んで行くソイル。

 一度ならず二度までも攻撃が通じていない様子のソイルに対して、恐怖を覚えたヴァーミリオンは次なる一手を打ち出す。

 ソイルに狙いを定めるのではなく、全方位を広範囲に攻撃する絨毯爆撃のような攻撃に打って出ようとしている。

 腰を低く落とし・・・大剣をまるで居合い斬りのように構える。

 そして溢れでる怒気と殺意。

 ヴァーミリオンの放つ事ができる最高最速の剣速、全方位をカバーするために、自らの魔化された力を最大限にはっきできるように脱力する。

 息を止め、感覚を研ぎ澄まし・・・そして解き放つ。

 ヴァーミリオンの周囲1キロメートルを無差別に斬り裂く斬撃。

 射程範囲にあった瓦礫は斬られ、砕かれ、そして吹き飛んで行く。

 無論ソイルもまた巻き込まれてしまった。


『これ・・・で・・どう・・・だ?』


 急激に急速に力を使い果たしたのか、ヴァーミリオンは肩で息をしている。

 そんな中でもヴァーミリオンは敵であるソイルの姿を探し・・・そして見つける。

 武器を構え・・・ヴァーミリオンに向かって狙いを定めているソイルを。


『絨毯爆撃のように広範囲に攻撃できる手段を持っているというのは意外でしたよ。まぁ、予定よりも体力を消費できたので問題ありませんが・・・六機斬波!』


 下段、中段、そして上段からそれぞれ二連の斬波を繰り出すソイル。

 ほぼ同時の六連攻撃。

 それも先ほどヴァーミリオンが放ったのと同じように斬撃を衝撃波として飛ばす技だ。

 ヴァーミリオンのように一点集中高威力の剛・上斬波とは違い威力は弱いが・・・それでもヴァーミリオンからしたら予想外の攻撃だ。

 迫り来る六機斬波を回避することが不可能だと判断したヴァーミリオンは大剣を構え・・・そして六機斬動とヴァーミリオンの大剣がぶつかる。

 けたたましい音を立て・・・ソイルの放った六機斬波が断ち斬られてしまった。

 しかしながら砕けた散った六機斬波の破片がヴァーミリオンを斬りつける。

 それはまるで硝子の破片が降り注ぐような感じだ。

 多少の斬撃であれば今のヴァーミリオンにとって何も問題はない。

 だが、いくら筋肉を付けようと、身体を鍛えようとしても鍛えることができない部分は存在する。

 それは瞳や鼻、口や耳といった部分であり、鍛えようとしても鍛えることは不可能。

 マリアティアスと対峙していた時のヴァーミリオンであればフルプレートであり、頭部もガードしていたが・・・ソイルによって破壊されてしまっいるので今は腕でガードしている。

 確かに瞳や口を守ることは重要なのだが・・・それはソイルの予想通りの行動をしているのに過ぎなかった。


『ちかっ!?』

『残念・・・もう手遅れ』


 ソイルはガードしていることで無防備となってしまっている脇に攻撃する。

 目的としては、そのままヴァーミリオンの腕を斬り落としてしまいたかったようなのだが・・・現実はそう上手くいかず、ヴァーミリオンの分厚い筋肉と魔化されたことによって阻まれてしまった。


『なんて筋肉・・・』

『ぐぅぅぅあぁぁぁぁ!』


 怒りに満ちた表情でヴァーミリオンは大剣を振るい、ソイルを倒そうと攻撃を仕掛ける。

 その攻撃をしゃがむことによって回避するソイル。

『ぶんっ』っという擬音と突風がソイルをかすめ、そして今度は横からの斬撃ではなく、縦からの斬撃が襲いかかる。


『化け物が・・・』


 圧倒的な筋肉から繰り出される攻撃は、扱うには大きすぎる大剣を自在に操り・・・そしてソイルの命を刈り取るために近づく。

 当たれば一撃必殺。

 盾を持っていようともその盾ごと一刀両断してしまいそうな攻撃を、何度もかわしながら攻撃を繰り出すソイル。

 決して致命傷ではないにしろ着実にダメージは蓄積し・・・そしてついに一瞬ヴァーミリオンの動きが鈍る。


(今だ!)


 ソイルは武器を構え・・・左から右に向けて攻撃を放つ。

 その攻撃に一瞬遅れてしまったヴァーミリオンは大剣で受け流すのではなく、真っ正面から受けざる終えない状況となってしまった。


『二手・減偽斬!』


 ソイルの斬撃を迎え撃つために大剣を振るうヴァーミリオンであったが・・・その攻撃は空振りに終わった。

 空振りに終わったことに驚くヴァーミリオン。

 それもその筈、ヴァーミリオンの大剣の軌道とソイルの剣の軌道は交わる筈であり、剣と剣がぶつからなければならないは筈なのだ。

 しかし交わりもしなければ、剣と剣がぶつかる音も聞こえない。

 この理由が何なのか理解できていないヴァーミリオンだったが・・・その疑問の答えは既に目の前まできていた。


 二手・減偽斬・・・これは剣と足運びを併用して生み出される技の一つだ。

 手順としては剣を右手、または左手に持つ。

 剣の軌道は右手ならば左の下段から、左手ならば右の下段から振らなけれこの技は成立しない。

 この技は剣を振るうと同時にその剣を持ち手から手放し、そして別の手で拾い攻撃を放つという技である。

 故に二手・・・

 しかしながらそれだけではなく、ソイルの巧みな足運びによって一瞬、幻影のようにソイルを作り出して相手を惑わす。

 それにより本物のソイルは幻影よりも数歩後ろにいるが・・・ヴァーミリオンはそれに気がつくことができなかった。

 攻撃をかわした、もしくは受け止めたという動きをしたのにも関わらずに手応えなどは一切ない。

 そして気がついた時には時既に遅く・・・斬られてしまう。

 無論ヴァーミリオンもソイルの動きに反応できず斬られてしまった。


『ぐぎっ・・・き、さま・・・』

『・・・恐ろしいほどの生命力ですね。ですが既に私の間合いです』


 ソイルはいつの間にか剣を利き手に持ち替え・・・放つ最速の剣技。

 並大抵の人間では反応することができない剣速から繰り出される斬撃は、瞬きする間にヴァーミリオンに襲いかかる

 万全の状態のヴァーミリオンであれば対処する事ができるが・・・今のヴァーミリオンは傷を負い、そして疲弊してしまっている。

 ソイルの攻撃をかわそうとしてもかわせず、受け流そうとしても受け流せず・・・ヴァーミリオンは斬り裂かれる。

 腕を、肩を、足を、腹部を・・・そして胸部を。

 反応した時には既に斬られ、血飛沫が上がる。

 幾度も斬られたヴァーミリオンは・・・ついにソイルの剣撃に反応できなくなってしまった。

 其処から先は一方的・・・斬殺ショーの始まりであった。

 達磨落としの要領で斬られるヴァーミリオンの両足。

 ヴァーミリオンの持っていた大剣は何処か、ヴァーミリオンの手の届かない場所へと投げ捨てられていて目視できていない。

 逃げる足を失い、最大の武器である大剣も失ってしまったヴァーミリオンなのだが・・・それでもソイルに向かって攻撃を放とうと拳を振るう。

 大きく膨れ上がった筋肉から放たれる拳は、まるで巨石のようだが・・・その攻撃もまたソイルによって斬られる。

 これもまた 女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の呪法の影響なのであろう。

 明らかに致命傷であり、直ちに治療をしなければ数分もしない内に死ぬ傷を負っても尚も攻撃しようとして来るヴァーミリオン。

 その姿は正しく狂戦士。

 自らのその命尽きるまで攻撃しようとしてくるその様は正に異様・・・はっきり言って疫病の狂天使と何も変わらない。

 そんなヴァーミリオンに対してソイルは無慈悲に斬撃を浴びせる。

 その瞳には哀れみも、悲しみも感じられない。

 例え面識のある人間だったとしても今のソイルは決して躊躇など、情けなど一切しない。

 それはソイルが心に決めたことであり・・・マリアティアスに対しての忠義の証。

 絶対にぶれることのない決意の現れは・・・既に事切れてしまったヴァーミリオンに無慈悲に、無情に襲いかかる。

 ソイルも既にヴァーミリオンが事切れてしまったことには気がついていた。

 しかしながらソイルは攻撃の手を緩めない、ヴァーミリオンを肉塊にするまでそれは続いた。


『・・・これは流石に死にましたね』


 最早何なのかわからなくなってしまったヴァーミリオン。

 心臓らしき物をつつくソイル。

 確実にヴァーミリオンが死んだ事を確認したソイルはこの場を離れて行く。


『さて・・・マリアティアス様から頂いた治療液(ポーション)でも飲みましょうか』


 そう言いながらソイルは別の区画へと移動して行き・・・ある区画へとたどり着いた。

 この区画にソイルが来たのは偶然ではない。

 ソイルの第六感、世界を全てを怨んでいるような殺意を感じ取ったからこの区画へと来ることが出来たのだ。

 通常の民家のように偽装され、何も怪しい物はないっという事を象徴しているような、ありふれた民家なのだが・・・その地下は違っていた。

 そもそも魔機国の地下は異様に入り組んでいる。

 普通の民家に偽装されていたとしても地下に入ることができる扉などが隠されていることもあり、普通に地下へと入ることができる場所もある。

 だからと言ってその地下がどうなっているのかは、女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)にしかわからないが、それでもソイルは疫病の狂天使を隔離している区画へと辿り着いた。


『・・・この扉ですね?』


 そう言いながら扉を斬りつけ破壊するソイル。

 すると扉破壊した瞬間から疫病の狂天使の叫び声が聞こえてくる。

 世界全てを怨むような叫び声は、人々を恐怖に叩き落とす絶望の象徴・・・

 しかしながら叫び声と同時に違う音も聞こえてくる。

 骨と骨とがぶつかり合う音や、金属と金属がぶつかり合うような音、何かを破壊するような破壊音や、爆発音などだ。

 更にそれだけではない・・・扉を入ったてから直ぐに気がつく血の臭いと焼け焦げた臭い。

 これらの情報を纏めると・・・この場所で何が行われているのかは明確に判断する事ができる。


『実験施設・・・しかし今女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)はマリアティアス様と戦闘中なはず』


 ソイルが実験施設らしき場所を進んで行くと・・・無数の機材が並べられている部屋に辿り着く。

 その部屋の中には研究員らしき白衣を纏った人物もちらほらと見られ、ソイルはその部屋の扉を斬り裂き部屋へと侵入する。


『・・・これは?』


 ソイルが侵入した部屋はソイルにとっては理解できていない様々な機材が並べられており、いろいろなスイッチやランプが点灯したりしている。

 書かれている文字だけなら理解することはできるが、それでも専門用語などを知らないソイルにとってはどのスイッチを押すとどうなるのか?どのランプが何を表しているのかはわからない。

 なのでソイルは機材を一通り見ただけで触れようとはせずに、研究員の一人を蹴飛ばす。

 しかし何の反応も示さない研究員。

 ソイルに蹴られた研究員も、そして近くにいる研究員も、誰一人として反応する気配はない。

 全員が全員虚ろな瞳をしているだけだ。

 座っている研究員もいれば、床に横たわっている研究員もいる。

 何かを途中で止めたのかその手に書き物や、試験管を持って研究員もいることから判断できるのは・・・女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)によって一時的に動きを止められているのだろうと判断できる。

 でなければソイルがこの部屋に入った瞬間に何かしらのリアクションをするだろうし、この部屋全体が囮だったとしても何もしてこないのはおかしな話だ。


『罠は今のところないっと・・・さてどうしましょうかねぇ』


 そう言いながら部屋を後にしたソイルは疫病の狂天使が争っているであろう部屋へとたどり着いた。

 部屋というには広く、実験施設と言った方が適切な場所には疫病の狂天使が互いに争っているのが視界に入る。

 大柄な疫病の狂天使もいれば、小柄な疫病の狂天使。

 剣を使っている疫病の狂天使もいれば、魔法を使う疫病の狂天使もおり、数多の疫病の狂天使が戦っている。

 人間の姿はいなく疫病の狂天使だけが戦っており、その中にはもう既に事切れた疫病の狂天使も見ることができる。


『同士討ちをさせている?何故?』


 部屋についている窓は疫病の狂天使が戦っている部屋全体を見ることができ、それによってソイルは疫病の狂天使が戦っているのだと判断したのだが、何故同士討ちをしているのか理解できていないようだ。

 それもその筈だ。

 仲間という概念が存在しているのか不明な者を、何故わざわざ同じ部屋に入れるというところにソイルは疑問を抱く。

 疫病の狂天使は同じ疫病の狂天使だろうと構わず戦う存在。

 どの種族、国からも疎まれている疫病の狂天使を何故女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)はこの部屋で戦わせていたのかとうと・・・それは疫病の狂天使の中でもより強者を見つけるためだ。

 しかしながらそんな事を知らないソイルは、疫病の狂天使が戦いをしている部屋の扉を斬りつけ・・・破壊する。


『・・・別に貴方達を助けるわけではないのですよ』


 ソイルが破壊した扉から溢れでる疫病の狂天使は魔機国へ解き放たれたのであった。



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