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決戦前・・・

 マリアティアスがアリセス達にメッセージを送ってから数日後・・・メッセージ通りにマリアティアスはアリセス達の元へと戻って来た。

 姿形はアリセス達の元から居なくなる前のマリアティアスと同じなのだが・・・その魔力量、身に纏うオーラがまるで別人になってしまっていたのだ。

 しかしながら雰囲気はいつものマリアティアスであった為にそれほど取り乱したりした様子ではなかった。

 マリアティアスは帰って来るなり、一通りアリセス達と会話をした後に自室に閉じ籠ってしまい・・・今に至る。

 日数にして三日間が過ぎようとした頃・・・マリアティアスは自室から出てきた。

 いつもと変わらないマリアティアスとして・・・


『あの・・・マリアティアス様それは・・・?』

『これですか?その前に食事にしませんか?お腹が空いてしまったので』


 マリアティアスの言う通りにアリセス達は食事をする準備を始め、数分後に様々な種類の料理が出てくる。

 その中にはアリセス達が食べた事のないような異国の食べ物も存在している。

 白くパンよりもふわふわした丸い形をした食べ物。中には肉と野菜を混ぜた物が入っており、食べた瞬間に肉汁が溢れ出る。

 鳥を揚げた食べ物には特製のソースをかけて食べればより一層美味しく、魚介・・・海老と呼ばれている物を赤いソースで炒めた物。ソースはピリ辛で、食欲をそそる美味しい香りが鼻をつく。

 揚げ物らしいのだが、アリセスや先程マリアティアスが作った物とは違う揚げ物がテーブルに並べられる。

 その揚げ物は様々な種類の野菜に、魚介が揚げられている。ソース・・・と言うよりはトロみの少ないソースに付けて食べるようだ。

 何処から仕入れたのかは不明だが、米と言われて物を使った料理には様々な具材が一緒に炊き込まれていて、大きめの釜に入っている。

 チーズとトマトと呼ばれる物を薄い生地に広げ、焼いた食べ物はチーズの風味とトマトの酸味がベストマッチする食べ物。

 油に調味料と香辛料を加え、その油の中に魚介や、野菜を入れて作り上げた食べ物。

 スープはアリセスとエールが作った濁ったスープではなく、透き通ったスープが並べられている。

 どの食べ物も今まで見たことも聞いたこともない食べ物は確かであり、どんな味がするのか?どんな食感なのか想像も出来ない料理に周りの面々は興奮を隠しきれない様子だ。


『それではいただきましょうか』


 マリアティアスの言葉を聞いた瞬間、全員がそれぞれに一斉に食べ始める。

 それはアリセスやエールも例外なく、ガツガツと食べているが・・・それ以上のにガルは最早一心不乱という言葉が相応しいように食べている。


『お、美味しいですマリアティアス様』

『こんな料理食べた事がない・・・不思議な味・・・』

『美味しいねお姉ちゃん』

『そうだねアイカ』

『これはなんとも風味豊かな』

『この前に飲んだスープよりも私はこっちの方が好きかな』

『あっつぁぁ!?に、肉汁が・・・』

『んぁ!?チーズって伸びるんだ』

『かっ・・・辛い・・・』

『皆さん良い食べっぷりですね。まぁ・・・私もですが』


 マリアティアス達が楽しく食べている様子は微笑ましく、その姿は大家族の食事風景そのものだ。

 特に美味しそうに食べているのはガルであり無我夢中で食べている。しかしながら辛い物は苦手なようだ。

 まぁ・・・それ以上にマリアティアスは数多く食べている。

 食べる速さは普通と変わらないのだが・・・マリアティアスは自分で作った料理の半分以上平らげてしまった。

 そして食事をし終えたという事は・・・次はデザートの時間だ。

 マリアティアスが用意したのは多種多様なデザートであり、その中には王国貴族や、一般平民程度では食べたことも見たこともない物が多数存在している。

 苺をふんだんに使ったタルト。クリームチーズと生クリームを組み合わせたケーキには特製のベリーソース。

 チョコレートのケーキは少し苦めの大人の味に仕上がっていて、それを応用したチョコレートプリンは逆に濃厚な甘さになっている。

 クッキーの種類はバター、チョコレート、ナッツなどがある。

 冷たい食べ物も存在し、一口口にすれば甘さがと冷たさが口の中に広がる。

 こちらも種類は豊富で、バニラと呼ばれている物やチョコレート、ミントと呼ばれる良い匂いのする物も存在する。

 そんな多種多様な美味しいデザートを前にしたアリセス達はまた食欲が湧いてしまったようであり、全員が出てきたデザートを平らげる。

 デザートは別腹と言うことだ。

 そして全員がデザートを食べ終え、食器を片付け終わった後・・・マリアティアスを中心に集まる。

 マリアティアスの前にはスーツケースの様な物が置かれている。


『さて・・・お腹もいっぱいになった事ですし、そろそろ皆さんにお話ししましょうか。私の最終目標について・・・』


 そう言われて全員が息を呑む・・・

 マリアティアスと全員が合わなくてなってしまってから一週間以上が経ち、その間マリアティアスが何処で何をしていたのかという事はわかっていない。

 自らの主人であるマリアティアスが何をしていたのかという事を知りたいのは、仕える者としては当然のであろう。


『まず我々は残りの魔導六刀を集める必要があります』


 そう言われて魔導六刀の一振りである蠢く虐刀(ヘル・ザ・リッパー)朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)名もなき(ガル・ヘルティスト・)偽刀(シーザー)の三名を残りの面々が見つめる。

 魔導六刀と言う名の通りにヘルと同じようにして作られた存在は残り三名存在がこの世界に存在している。

 その内の一人は王国で会っている。

 名前は『沈みゆく鎖刀(ライフル・ザ・ロック)』。

 一度はマリアティアス側についたが、あの王国での大事件により行方不明になっておる。

 そのして残りの魔導六刀は魔導国に所属しており名前を・・・『獣ずる牙刀(ネスク・プロ・モスア)』と『廻る忍刀ディライ・ノフェーラ・オーダー』。

 容姿まではわからないが、この二名いる事は確認出来ているということだ。


『なるほど・・・だったらヘル達の出番なのかな?』


 ヘルの言葉を肯定するように頷くマリアティアス。


『不幸にもクチルギ達と同じように刀になってしまった者達・・・』

『ガル達と同じように食べる喜びを知れば世界が変わる』

『それ以上に重要なのは復讐だよ!今まで散々利用されたんだから』

『いや・・・それよりも真実を知らせる方が先じゃない?』


 ヘルやクチルギ、ガル達が残りの仲間について話していることを楽しそうに眺めているマリアティアス。

 他の面々は思うところがあるのかマリアティアスの前に置かれているスーツケースを見ている。


『マリアティアスさまその中に入っているのは・・・』

『彼らに対抗する為に生み出した物です。これから先はこれが必須ですので』


 そう言い終えるとマリアティアスはスーツケースを開ける。

 すると中には人数分の指輪が入っていた。

 指輪には真っ赤な六角形の宝石がはめ込まれていて、その宝石の中にもう一つ小さな宝石がはめ込まれている。

 見る限りかなりの品であるのは明確であり、超一級品である事は直感的に理解出来る。


『これは・・・』

『指輪ですが・・・ただの指輪ではないですよね』

『えぇ、ソイルの言う通りこの指輪はただの指輪ではありません』


 マリアティアスは指輪に風の魔法・風による浮遊(エアー・コマンド)を発動させて、全員に配る。

 まじまじと見ると、指輪にはルーンで刻まれた紋章があるのがわかる。


『この指輪には特殊な呪法を組み込んでおります。その能力は使用の自我を維持する物であり、その指輪を付けている限り自我を失うことはないです』

『自我を維持する呪法?』

『そうです。呪法の中には他者の感情を暴動させたり、支配する能力を持っている物がありますので、その対策ですね』

『この指輪が・・・』

『まぁ・・・それ以上にあの力・・・女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の力を防ぐのが目的です』

女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)・・・あの力はいったい何なのですか?』

『それに王国の地下にいたあの化け物・・・あれも関係しているのですか』

『あれらは全て元は一つだったのですよ。そう・・・絶対なる力を持っている女神、セラフティアスの一部なのです』

『女神セラフティアス・・・あの化け物じみた力を持っている奴のことですか?』


 ソイルの殺意ある問いかけに対して頷き、肯定するマリアティアス。


『あの力は正しく人智を越えた力であり、一度動き始めれば世界を更地にすることが可能な力です・・・』

『・・・破壊するのですか?』

『破壊は不可能ですね・・・そもそも私はその力を女神セラフティアスに返す為に行動しているのですから』


 そう言われて息を呑むこの場の面々。

 それもそのはずだ。

 あの絶対的な力を持っている女神セラフティアスと自らの主人であるマリアティアスが知り合いだという事に驚きを隠せないのだ。


『それを返したらどうなるんだ?』

『クチルギ達はどうなるんです?』

『選ばれた者は女神セラフティアスの作り上げた理想郷・・・黄金世界の優夢都で暮らすことは確実ですね』

『選ばれた者・・・マリアティアス様私達はその中に含まれるのですか?』


 全員が息を呑みマリアティアスの言葉を聞き逃さないように、耳に全神経を集中させる。

 そしかし・・・そんな問いかけに帰って来たのは意外な答えであった。


『含まれるのか含まれないのかは私もわからないですね・・・しかしながら私の目的は以前として変わらないのですから』

『いったい何時からその事を考えていたのです?』

『貴女方と出会う以前ですね・・・それで皆さんに決めもらいたいのです』


 マリアティアスは全員が自分に視線が集中しているのを確認すると・・・はっきりと大きな声で全員に聞こえるように言う。

『それでも私に付いてくるのか?』っと。


 その問いかけに対して全員は声を一つにして答える。

『私は既にマリアティアス様にこの身を捧げた存在。その事は以前変わりなく、そして未来永劫その答えは変わらない』っと。


『後に引き返すことなどもう出来ませんよ?』


 マリアティアスの問いに全員が答える。『引き返す時は既に過ぎている』っと。


『その言葉を聞き安心しました』

『マリア様には悪いですが我々は自らの意思でマリア様の為に仕えているのです』

『そうです。マリアティアス様に導かれた時から決めている事なのです』

『ありがとうございます皆さん』


 マリアティアスがお辞儀をして全員に感謝の意をします。


『まぁ・・・私の描く未来と女神セラフティアス様が描く未来とは少し違いますが』


 マリアティアスは周りに聞こえないように呟くのであった。



 あれから数日後・・・マリアティアス達は集めた情報を元に作戦を練っていた。

 あの日あの時襲撃してきた魔法国の魔導師達が何故王国に攻め込んで来たのか?

 何故あんな武装をしていたのか?あの国はどうなってしまったのか?をエールとヘルメスとクチルギは魔法国への侵入捜査。

 ソイルとガルの二名は王国が今どのような状況になっているのかを調べていた。


『なるほど・・・それは流石に不味い状況ですね』


 マリアティアスは集め終わった情報を整理している。

 その過程で今までやろうとしていた作戦を変えざるおえなくなってしまったようだ。


『魔法国の魔導兵に、竜王国の兵・・・流石に全面戦争とは行ってはいないようですが不味い事態ですね』

『そうですね・・・王国に内乱をさせるように仕組んだのよいのですが、まさかあれが原因であの結界が壊れるとは・・・』


 マリアティアスの言っている結界とは女神セラフティアスが作り上げた結界であり、人間を他の種族から守る為に張り巡らされている超巨大な結界だ。

 それがマリアティアスがいなくなっている時に破壊されてしまったのだ。

 誰も、マリアティアスや最強の竜王であるオールでさえも破壊することが出来なかった結界が破壊されてしまったことに驚きを隠せないマリアティアス。

 それによって竜王国の兵・・・竜人ドラグニルが攻め込んでしまったのだ。

 流石に全軍で人間の国に攻め込んでくる事は今のところないが・・・それも時間の問題と言える。

 その事で急速に手を打たなければならないと判断したマリアティアスは竜王国と戦争状態である国々・・・

 ドワーフとダークエルフの連合国家エルメダ連合国、エルフの王国ウルマイト王国、人魚、魚人達が住まうアクモア海洋都市国家連合に情報を提供し、竜王国に戦争を仕掛ける事に成功した。

 まぁ・・・予定通りとはいかずにあまり戦果は期待できないが。


『まだ最強の竜王であるオールが出てきていないのは幸いですね』

『あのマリア様が作り上げた結界にまだ閉じ込められているのではないでしょうか?』

『そうですね。あの霞が消えていないと言う事はそうなのでしょうね・・・怖くて近づきたくはないですので確認も出来ませんし』


 そう言いながらマリアティアスはアリセスの入れてくれた紅茶を飲む。

 マリアティアスの隣には焼きたてのクッキーがあり、時折食べているのを羨ましそうに見ているガル。

 時折マリアティアスがガルに向かって餌付けするようにクッキーを投げているが・・・


『そんなひおほろしかったのれすか?』


 マリアティアスから与えられたクッキーを食べているガル。

 そんなガルに対してもう一度クッキーを投げようとした時・・・扉が開けられ、エール達が入ってくる。

 エール達は長らく外で活動していた為に、帰ってくるなり船にある浴槽に入っていて今出てきたようだ。


『お風呂上がりにジュースはどうですか?』


 そう言いながらアリセスはジュースをそれぞれに手渡し、みんなが席に座って飲んだり、身体を冷ましたりしている。


『ちょうど全員集まりましたね』

『そうですね。それでどうするのですマリア様?』

『何か良い作戦があるのですか?』

『良い作戦ではないですね・・・まさか魔法国がそんなことになっていようとは』

『流石にクチルギも驚きました。まさか国が浮いているなんて・・・』


 エレメンティア魔法国・・・鉱石が多く採掘されている国であり、そして魔法技術が盛んな国と言うのは昔の話であり、今は違う・・・

 今は国の全ての人間が女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の魔力によって支配されてしまい、傀儡のようになってしまっている。

 女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の人ならざる力によって魔法国の技術は爆発的に進んでしまい、そして遂に国その物を浮遊大陸に変えてしまったのだ。

 流石に浮遊大陸に侵入する事は出来なかっので遠くから、感知されない距離からの情報収集しか出来なかったが・・・


『攻め込むにしても空中にあるのでしたら面倒ですね』

『どう考えても隠密行動は無理ですね』

『多分ですが女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の命令で風の属性魔導師が周囲を警戒しているでしょうね』

『確認は出来ませんでしたがそうでしょうね・・・』


 浮遊大陸となってしまった魔法国に侵入する手段は、必然的に空を飛んでからの侵入となる事になってしまう。

 陸路で移動することが出来ないという事は、なんの障害物の無い空を移動することだ。

 そして今は女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)によって魔法国が支配している。

 女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の能力は視界を、聴力を、嗅覚、痛覚を共有し、そして知識までも共有することが出来る。

 それにより魔法国の兵に見つかった瞬間、女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)に伝令されるということになるであろう。

 直接確認した訳ではないので仮説ではあるが・・・


『一人に見つかってしまったらお終いというのは・・・』

『マリアティアス様、無効化は出来ないのですか?』

『雑兵程度なら問題はありませんが・・・問題なのは』

『四大魔法機関に属する最高位魔導師の四名ですね』


 ヘルメスの問いに同意の意を示すマリアティアス。

 エレメンティア魔法国には四大魔法機関という物が存在し、そしてその魔法機関には四人の最高位魔導師が存在している。

 火の魔法局局長・ヴェルピルス。水の魔法局局長・アクララ。土の魔法局局長・ウルガン。風の魔法局局長・ジルータ・・・それぞれが最高位魔導師であり、そして魔法の知識も豊富な四人。

 ヘルメスも一度しか会ってはいないが自身と同様、もしくはそれ以上の魔導師だと判断している。

 情報を共有出来ているという事は直ぐ様これらの存在が駆けつけるということが容易に想像でき、無論出会えば戦闘は必須だ。


『私達では勝てないのですか?』

『一対一・・・相性を考えれば問題ないのですが』

『そう上手くいきませんよね』

『国が相手ですからね・・・』

『しかし・・・手がないわけではないですがね』

『さっきから聞いているけど・・・ヘル達も魔法国に行くんだよね?』

『えぇ、そうです。ヘル達には同じ魔導六刀を説得・・・もしくは力づくでお願いしますね?』

『それはわかってるんだけど・・・その仲間が魔法国にいるの?』

『まぁ、確定ではないですが確立は高いと思いますよ』


 マリアティアスはそう言いながら風による浮遊(エアー・コマンド)を発動させてジュースを飲み、口を濡らす。

 ヘルやクチルギは少しつまらなさそうにしているのは戦いが無いからなのか・・・


『退屈なのですか?』

『まぁね・・・今までずっと戦ってきたからね、こんなに長い間戦わなかった事はないからね』

『こんなにって・・・まだ十日も経っていなのですけどね?』

『ヘルにとっては十日でも退屈なの』


 ヘルとソイルの会話を微笑ましく見守っているマリアティアス。

 すると何処からともなく音が聞こえ始める。

 何かのアラームのような音なのだがマリアティアスが驚いている様子はない。


『マリア様これは・・・』

『どうやら時間が来てしまったようですね』

『時間とは・・・』


 マリアティアスは席を立ち、そしてアリセス達もマリアティアスとの後をついていく。

 するとその先にあったのはこの船、聖飛艇・オラクルロードの秘密である呪術石が組み込まれた部屋だ。


『この部屋に何か・・・』

『さて皆さんには覚悟を決めてもらう必要があります』

『覚悟とは?』

『これからこの船はあの浮遊大陸となった魔法国へと突撃を仕掛けます』

『風の属性魔導師に探知されると言っていたのを忘れたのですか?』

『覚えていますよ』

『だったら・・・』


 マリアティアスはヘルメスの問いに答えるように呪術石に触れる。

 マリアティアスと全く同じ姿をした呪術石にマリアティアスが触れた瞬間・・・その呪術石に繋がれている数多の魔法陣が光出す。


『こ、これは・・・』


 いきなり魔法陣が光り出した事に驚いているアリセス達を他所にマリアティアスはその魔法陣を動かして起動させる。


『このままでは感知されるのでしたらそれ以上のスピードで近づけばいいだけのことです』


 大きな音と共にこの部屋以外の全てに物が動き出す。


『この船を組み替え・・・高速船へと変形させています』


 マリアティアスの言葉通り、飛行艇である聖飛艇・オラクルロードが変形し始め・・・姿形がまるで違う形に変化していく。

 風の魔導石によって浮遊していた飛行艇は、その浮力に使用していた風の魔導石の他に後方に風の魔導石と火の魔導石が組み込まれる。

 それはさながらジェット機ように変化する。

 そして変化した機械に血管のように張り巡らされている魔法。

 この張り巡らされている魔法は水と土の魔導石を使っている魔法であり、触れた瞬間魔法が発動し、防御するような仕掛けになっている。


『さて・・・この船がジェット機に変わるまで後数分かかります。それまで作戦について話しますね』

『こんなことが・・・』

『それに気になることもありますからね』

『王国のアレですか?』


 エールに言われて頷くマリアティアス。

 王国の地下から突如として現れた巨大な化け物・・・マリアティアスの防御魔法を貫通し、辺りを一瞬にして更地にしてしまうほどの閃光を放つ事が出来る化け物。

 マリアティアス自身でさえも死を覚悟しなければならない力を持っていた化け物であり、最も警戒すべきなのだが・・・その化け物が消えたのだ。

 いったい何時?どのようにして消えてしまったのかは不明だが、偵察に行ったソイルとガルからいないと報告を受けている。

 肉塊に触手が生えているような化け物がどのようにして消えたのかはわからない。

 移動した形跡が見当たらないのだ。

 それに知性があるのか?それとも無いのかが不明な存在である化け物・・・確認出来ないとはいえ消滅したとは考え難い。

 とりあえず後回し、魔法国へと攻め込むのが先決だとマリアティアスは判断したのだ。


『それで作戦ってなんなの?』

『ガル達もそれに加わればいいの?』

『もちろんです。私の見立てでは貴女達の力は必要ですので』

『終わったら美味しいご飯が食べたいのですが・・・』

『それよりもクチルギは復讐がいいなぁ・・・帝国は無くなったけど魔法国にもクチルギの事情とか知っているのがいるんだよね?』

『居ると考えるのが妥当ですね。魔法国にも魔導六刀は存在しているのですから』

『話は纏まりましか?とりあえず時間も残り少ないのですからマリア様作戦についての説明をお願いします』


 アリセスに促され、マリアティアスは全員にこれから行う作戦について説明するのであった。


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