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偵察

 バルエラ竜王国と人間の国との国境にある山脈にて・・・


 バルエラ竜王国と人間の国々との間には巨大な山脈が存在しており、徒歩や馬等をしようしても山脈を越えるのは難しいと言われている。

 しかしながら風の属性魔導師であれば山脈を越えることも可能だ。

 変化する気圧に対して風の属性魔法を使用すれば大丈夫なのだが・・・人間が自らの安全圏を離れ、危険区域である結界外へと出て行くことなどないので誰も山脈を越えた事はないが・・・

 しかしながらその山脈を風の属性魔法を使わずとも越せる者達も存在する。

 彼らの種族は竜人(ドラグニル)

 人間よりも強靭な肉体も持つ彼らであれば人間では不可能な気圧だとしても活動できる。

 そして今彼らは山脈を越え人間の国・・・エルピーラ王国へと侵入しようとしていた。

 部隊は二部隊・・・ジェイロス率いる強行偵察部隊とフィヘイン率いる隠密偵察部隊。

 強行偵察部隊の人数は合計で三十名、ジェイロスが選抜した面々であり実力は折り紙つきの竜人(ドラグニル)だ。

 隠密偵察部隊の人数は合計で十名、強行偵察部隊の三分の一しかいない。

 しかしながらフィヘインを含め部隊の大半はハッカから派遣された部隊であり、隠密を重視した構成になっている。

 残りの数名はフィヘインと同じようにあの結界の崩壊を目撃した面々、つまり研究員であまり戦闘能力には期待できないが・・・


『本当に結界が無くなっているなぁ・・・』

『信じていなかったのですか?』

『いや・・・そうじゃぁねぇけど・・・あんなに壊れなかった結界が壊れたのはどうも信じられなくてよぉ』

『まぁ・・・無理もないですけどね』


 ジェイロスとフィヘインが会話をしていると、先行して偵察を行っていた部隊が戻って来る。

 一様強行偵察部隊ではあるが、それでも偵察を行うのは長年バルエラ竜王国・・・というよりも竜人(ドラグニル)は人間との交流がなかったのでどのような感じになっているのかという確認の為に偵察していたのだ。


『報告します!人間の村を発見いたしました・・・ですが人間の姿は確認出来ず、その変わりに・・・』

『その変わりに?』

『疫病の狂天使がいました』

『疫病の狂天使か・・・』


 偵察してきた竜人(ドラグニル)から人間の発見は出来なかったが、その変わりに疫病の狂天使の存在を確認出来たようなのだが・・・フィヘインの表情が曇る。

 別に疫病の狂天使は竜人(ドラグニル)にとって強敵とはなりえないが・・・疫病の狂天使は時としてありえない行動や、特殊能力を持っている者も存在する。

 なのでこの偵察・・・特にフィヘイン達の隠密偵察をする方にとっては不安材料にしかならない。

 排除してしまえば問題はないのだが、当初の目的と違うのは否めない。


『大丈夫だぜフィヘイン。その為に俺達が存在するんだからよぉ!』

『そうですね。ジェイロス様・・・お願いできますか?』

『もちろん問題な・・・』

『お、お待ちくださいジェイロス様!』


 問題ないと言おうとしたジェイロスに割り込むようにして、偵察に行っていた竜人(ドラグニル)が声を荒らげて遮る。

 自身の会話に割り込まれたことによって不快感を抱いたジェイロスだが・・・とりあえず偵察に行っていた竜人(ドラグニル)の意見を聞くことにする。


『そ、その・・・疫病の狂天使なのですが・・・何か妙なのです』

『何か妙とは?』

『はい。フィヘイン様その村なのですが何も破壊されていなかったのです』

『何も?疫病の狂天使がいたのにも関わらずにですか?』

『はい。何も破壊されてませんでした。間違いありません』

『おいおい!そりゃおかしいぜ・・・疫病の狂天使は見境なく破壊する。獣みてぇな存在は筈だろ?』


 ジェイロスの言う通り疫病の狂天使は見境なく破壊する。

 世界全てを怨んでいるように見境など存在せず誰であれ、どんな強者であれ、どんな高貴な身分でさえも襲う存在。

 現に、バルエラ竜王国へと侵入・・・迷い込んできた疫病の狂天使は竜人(ドラグニル)に対しても見境なく襲って来たのだから。


『何か妙ですね・・・何か・・・』

『ほ、報告します!』

『何事です!?』

『何事だ!?』

『人間の国から疫病の狂天使が接近しています!』

『数は?』

『目視で確認できる疫病の狂天使は合計で十八体!その中には奇妙な疫病の狂天使も確認できております!』

『戦闘は必須か・・・俺が達が殲滅する!お前達はどうする?』


 そう言われて考え込むフィヘイン。

 疫病の狂天使との戦闘は今回の偵察内容には含まれていない。

 戦闘はあくまでも人間達に対しての戦闘であり、こちらが仕掛けることによってどのような武器、魔法、どのような戦術によって戦うのかを見極める為の戦闘をする予定だ。

 なのにも関わらずに疫病の狂天使・・・知性などが感じられない、獣のような化け物と戦闘してもあまり意味がないのだ。

 作戦も、戦術も存在しない、ましてや戦い方も多種多様な疫病の狂天使との戦闘は対策という対策は取れない。

 なので、出来るだけ戦闘は避けて体力、竜力共に温存した方が良いのは言うまでもないのだが・・・こちらが気付かれてしまった以上戦闘し、出来るだけ早期に倒した方がいい。

 騒げば騒ぐだけ、人間達に発見されるリスクが大きくなるのだから。

 そしてフィヘイン達、隠密偵察部隊であれば戦闘をジェイロスの部隊に任せてるのも良いし、この騒ぎに乗じて隠密偵察部隊が先行して偵察に行くのも一つの手だ。

 数秒程度悩んだフィヘイン出した答えは・・・


『気になる事があります。なので私達の部隊はここで貴殿方と別れ、別行動をさせていただきます』

『了解したぜ・・・俺達もこっちに来ている疫病の狂天使をぶっ潰した後は個別に行動させてもらう』

『了解しました・・・御武運を!』

『任せろ!この俺様が自らの動くんだ必勝しかありえないぜ』

『・・・本当は戦いたくて仕方なかったのでは?』

『そ、そんな事はないぜ・・・じゃ、俺様はもう行くぞお前達!』


 ジェイロスは自身の部隊を率いて疫病の狂天使の討伐に、フィヘインも自身の部隊を率いて偵察へと向かう。


『さぁお前達・・・暴れるぜぇ!』

『疫病の狂天使なんぞ捻り潰してくれる』

『久しぶりの戦い・・・心が踊るなぁ!』

『あんたは翼なき者(ボロクロ)との戦いに参戦してなかったからね』

『まぁ、翼なき者(ボロクロ)程度じゃ相手になりませんし・・・』

『ここなら思いっきり竜法をぶっ放しても問題ないんですよね』

『あぁ問題ねぇ・・・なんせここは人間の国なんだからなぁ・・・』


 口々に戦えることへの喜びを露にし、各々の武器を構え疫病の狂天使と激突し、竜法が飛び交う。

 火や水、風や土の属性竜法が疫病の狂天使に直撃するが・・・一体の疫病の狂天使によって全て防がれる。

 その疫病の狂天使は通常よりも少し小柄な・・・人間の子供程度の大きさしかないが、その疫病の狂天使の世界全てを怨む咆哮によって掻き消えてしまったのだ。


『四属性全ての属性の無効化だと!?』

『こいつは厄介・・・どうしますジェイロス様?』

『竜法が効かないなら・・・別の手段で倒すだけのこと』


 そう言いながらジェイロスは背中に背負っている大剣を構え、その疫病の狂天使に向かって突撃しようとするが・・・小柄な疫病の狂天使を守るように周囲にいる疫病の狂天使が展開する。


『邪魔な連中だ・・・お前達!』

『はっ!』

『道を切り開け!』

『了解!』


 自身の部下を周囲にいる疫病の狂天使と戦闘させ、道を切り開くうように指示をする。

 各々の武器を構え・・・ついに疫病の狂天使とジェイロス率いる竜人(ドラグニル)が激突する。

 人間とは違い双方共に空を飛ぶことが出来るので必然的に空中戦となり、竜人(ドラグニル)達はその速度を生かして一撃離脱の攻撃を仕掛ける者、ゼロ距離インファイトを仕掛ける者や逆に、疫病の狂天使と距離を取り自身の武器である長槍を使って間合いに入らせないような戦いをする者もいる。

 それに対して疫病の狂天使はやはり知性があるような戦いをする者は少なく、ただ我武者羅に特攻してくる者が多い。

 ただ中には知性があるのかテクニカルに竜人(ドラグニル)の攻撃を避けたり、こちらの様子を伺っているのか距離を取っている疫病の狂天使も存在する。


『あいつは・・・』


 チャンスを伺っていたジェイロスなのだが・・・少し後方にこちらの様子を見ている疫病の狂天使に気がつく。

 疫病の狂天使は知性がないと言われているのにも関わらずに相手の動きを観察しているようであり、気を伺っている感じだ。


『あの疫病の狂天使・・・何か妙な・・・仕掛けてみるか』


 ジェイロスはその鋼の翼を羽ばたかせ距離を詰め・・・大剣で一刀両断。

 する筈であった・・・


『かわし・・・』

『ぎぃぃぃぃぃがぁぁぎゃぁぁぁ!』


 ジェイロスの一太刀を紙一重でかわした疫病の狂天使が咆哮をあげて攻撃を仕掛ける。

 それほど速くもなく、そして重くない疫病の狂天使の攻撃はあっさりとジェイロスにかわされ・・・ジェイロスの尻尾が直撃し地面に激突する。


『・・・なんだ?俺の一撃をかわしたのは見事だが、尻尾に反応出来ていなかったぞ?』


 ジェイロスの攻撃に反応出来なかった疫病の狂天使を横目に、今度は厄介な小柄な疫病の狂天使に狙いを定める。


竜人(ドラグニル)の力見せてやるぜ』


 一気に距離を詰め、小柄な疫病の狂天使に攻撃を仕掛けるジェイロスだが、その行く手を疫病の狂天使が遮る。


『やっぱりあいつがこの疫病の狂天使達の核か・・・疫病の狂天使が連携のような行動を取るとは意外だが仕方ねぇ!』


 ジェイロスと疫病の狂天使の激突し・・・そしてジェイロスの大剣が弾かれる。


『な!?その皮膚・・・』


 自身の大剣を弾いた疫病の狂天使の皮膚を見て驚くジェイロス。

 その理由は先程まではなんともなかった疫病の狂天使の皮膚が鋼色に変色してしまっているからだ。

 何故先程まで普通だった疫病の狂天使の皮膚が鋼色に変色してしまっているのかジェイロスが観察していると、疫病の狂天使の鋼色の皮膚が元の・・・屍人のような色へと戻ってゆく。


『あぁ!?何がどうなって・・・突然色が変わったと思ったら元に戻ったぞ?』


 混乱しているジェイロスなのだが・・・先程の疫病の狂天使はジェイロスをじっと見たまま動かずにいる。

 その様子はジェイロスが次に何をしようとしているのか観察しているようであり、とても破壊衝動の塊である疫病の狂天使の行動とは思えない感じだ。


『・・・考えても埒がねぇか』


 そう呟くとジェイロスは再び大剣を構え・・・疫病の狂天使に向かって攻撃を仕掛ける。


『本当は人間達と戦う為に温存するはずだったが・・・テメェは特別だ!』


 自身の背丈と同等の大剣をまるで小枝でも振るうように扱い、ジェイロスは先程とは打って変って高速の斬撃を疫病の狂天使に向かって浴びせる。

 その高速の斬撃に反応が出来なかった疫病の狂天使がズタズタに切り裂かれる・・・はずであった。


『おいおい、この斬撃に反応・・・いや反応なのか?』


 ジェイロスによって切り裂かれたはずの疫病の狂天使なのだが・・・切り裂かれた箇所が全て鋼色に変化し、ジェイロスの高速の斬撃を受け止めたようだ。

 大剣の魔導石を使って、大剣その物の重さを変化させることによって重い一撃から連撃へと転じたジェイロスなのだが違和感を覚える。

 その違和感確かめる為に再び連撃を喰らわせ、そして最後に自身の拳を使って疫病の狂天使に一撃をお見舞いする。

 連撃は耐える事が出来た疫病の狂天使なのだが、急遽大剣から拳へと攻撃が変わってしまったが為に反応出来ずに顔面にジェイロスの拳を受けてよろけてしまう。


『ぎぃぃぃぃぃぎゃぁぁぁ!』


 顔面を殴られて激怒したのか疫病の狂天使が咆哮を上げてジェイロスを威嚇するが・・・ジェイロスには無意味なようだ。


『なるほど・・・なるほど・・・どうやらてめぇ斬撃や、打撃に対してかなりの耐性があるようだな?』


 ジェイロスの問いかけに答えたのか、はたまた無意識なのか・・・疫病の狂天使は咆哮を上げる。

 そしてジェイロスは自らの大剣を手放し・・・柔道家のようなポーズを取る。


『斬撃や打撃が通じないのであれば別の方法を取るまで・・・』


 ジェイロスが翼を羽ばたかせ疫病の狂天使に突撃し、そして疫病の狂天使の腕を掴む。

 疫病の狂天使は掴まれまいと抵抗したが、武術の心得を会得しているジェイロスに拳を簡単にあしらわれてしまい、疫病の狂天使は思いっきり地面へと叩き落とされる。

 地面へと叩き落とされた疫病の狂天使は再び空中へと浮上しようとしたが、そうさせまいとジェイロスが思いっきり踏みつけ疫病の狂天使が地面にめり込む。

 踏みつけられた箇所は鋼色に変色してはいるが、地面の方が疫病の狂天使よりも柔らかいからだ。


『ぎ・・・が・・・がぁ・・・』

『まずは両腕からへし折ってやる!』


 ジェイロスが技をかけ・・・疫病の狂天使から『ベキベキ』っと嫌な音が聞こえてそして『ベキリッ』っと疫病の狂天使の腕が折れる。


『・・・片腕でよかったか?まぁ・・・今度は本番だ!』


 片腕を折り、もう片腕の腕を掴みそして疫病の狂天使を自身の肩に担ぐと・・・背骨を折るように渾身の力を込める。

 力が加わった箇所は鋼色に変化するが、そんな事はお構い無しにジェイロスは更に力を込め・・・


『が・・・がが・・・グッ』

『ぶっちぎれろぉぉぉぉ!!』

『ぐ・・・ごぼっ・・・』

『だぁぁあぁ!らぁぁあぁ!!』


 ベキベキと音が響きそして・・・腕をへし折った時より更に大きな音が響き渡り疫病の狂天使から噴水のように血が溢れだす。

 鮮血を浴びながらジェイロスは、へし折った疫病の狂天使をボロ切れのように投げ捨て周囲を見渡す。

 すると周囲には疫病の狂天使を倒し終えた竜人(ドラグニル)達が、最後の標的である小柄の竜人(ドラグニル)に狙いを定めている。

 全員無事・・・とは言えないがそれでも一体も欠けることがないのは流石だと言える。

 ジェイロスも鮮血を拭い、空へと羽ばたき最後となってしまった小柄な疫病の狂天使を見据え・・・周囲を囲んでいる竜人(ドラグニル)と息を合わせ、一斉に攻撃を仕掛ける。

 そして呆気なく小柄な疫病の狂天使はその命を終えてしまった・・・いくら咆哮によって竜法を無効化出来たとしても素の戦闘力、そして数で負けていては意味がないのだから。


『さて・・・お前達!予定と違うがこれから俺達は更に進軍する!』


 疫病の狂天使を倒し終えた竜人(ドラグニル)達は歓喜し、そして真なる目標である人間の国に向かうべく飛んで行くのであった。



 エルピーラ王国東部都市ウル・ラキエス・・・

 東側の都市の中でも一、二を争う大きな都市であり、エルピーラ王国の経済基盤の一つだった都市なのだが・・・今は違う。

 疫病の狂天使の進軍と共に都市では戦闘が勃発してしまい、そして・・・今は人が住まう事が出来ない廃墟と化してしまった。

 しかしながらその廃墟に似つかわしくないものが複数確認出来ている。

 それは地面を、石畳を裂くようにして生えている木であり、何か神聖な雰囲気を漂わせている木だ。

 青々と茂った葉に真っ赤な果実を実らせているその木は一本や二本ではなく、確認出来るだけでも五十本は確認でき、そして中には建物を破壊して生えているのか、屋根瓦を貫通している大木も存在しており、その木全てに真っ赤な果実が実っている。


『なんなんですこの木は・・・』

『まだ真新しい感じですが・・・全くもって不思議ですね』


 ウル・ラキエスへと到着したフィヘイン達は奇妙な木を不思議そうに見ている。

 それもその筈だ。

 バルエラ竜王国に存在しない不思議な木・・・地面を、石畳を引き裂いて生えてきたのも気になるが、それよりも気になるのはその真っ赤な果実だ。


『禁断の果実・・・どうしますかフィヘイン様』

『取らない方がいいでしょうね・・・勘ですけど嫌な予感がしますよ』

『私もそう思います・・・研究者としは不適かもしれませんが』

『それよりもこの都市は人間の国では比較的大きな都市ではないのですか?』

『そうだと思いますが・・・既に疫病の狂天使に滅ぼされてしまったのでしょうか?』

『それにしては・・・死体が無いのが不思議ですね』


 そう言いながら周囲を確認する研究員の竜人(ドラグニル)

 確かにその竜人(ドラグニル)が言う通り周りは廃墟となってしまっており 、その中には真新しい感じの傷も残っていて明らかに人間ではない物の傷や、足跡も残っている。

 疫病の狂天使が暴れたのは間違いないのだが、どう考えても死体が無いのは不思議だ。

 疫病の狂天使に死体を隠す事が出来る程の知識があるのかどうかは不明だが・・・それにしても全く死体が無いのはありえない話だ。


『全員逃げた・・・にしてはありえないですね』

『そうですね。おや?これは・・・』

『どうしましたか?』

『フィヘイン様これをご覧下さい』


 そう言ってフィヘインと共に行動していた竜人(ドラグニル)がある物に気がつく。

 それは真っ赤な宝石のような物なのだが、砕けてしまっている。

 拾いあげた竜人(ドラグニル)が水の属性竜法を扱う事が出来る竜人(ドラグニル)であったので、周りに落ちている欠片を拾い上げそして宝石に薄い膜を作り宝石を元々の形に近付ける。

 大きさ的には人の目玉程度の大きさの宝石なのだが・・・微かに魔力を帯びている。

 魔導石・・・と似ているが決定的な違いが存在する。

 それは・・・


『これは・・・魔導石?』

『魔導石・・・にしては妙なのですよ』


 そう言いながらフィヘインへと宝石のような物を手渡す竜人(ドラグニル)

 その宝石を受け取ったフィヘインだが触れてみて、竜人(ドラグニル)が言っていた事を瞬時に理解する。


『属性の力を感じられない?』

『そうなのですよ!この魔導石?っと言っていいんでしょうか?とりあえずこの魔導石からは属性の力が感じられないのです』

『お前は水の属性竜法を使えるな・・・他の属性が使える竜人(ドラグニル)に触れて見させてはどうだ?その属性を扱う物が触れれば何か微細な物でも気がつくかも知れないぞ?』

『流石フィヘイン様!了解しました』


 そう言って竜人(ドラグニル)は周囲を散策している土の属性竜法を使える竜人(ドラグニル)と、風の属性竜法を扱う事が出来る竜人(ドラグニル)に魔導石のような物を触れさせてみるが・・・双方共に答えたは同じ『何の属性の力も感じられない』っと言う。

 本来魔導石は何かしらの属性の力を得ており人工的、自然的に作られた物でも基本は四属性に分類される。

 中にはその四属性に全く該当しない魔導石も存在するが・・・

 竜人(ドラグニル)にとって魔導石という物は四属性に分類出来る物なのだ。


『やはり未知の魔導石ですね・・・魔力のみの魔導石です。その魔力は微々たる物ですが』

『なるほど・・・これがハッカ様が話していた未知の力という物ですね』

『そのようですね』

『この魔導石が人工的、自然的に出来たのかは別としてこの魔導石は回収対象ですね』


 そう言いながらフィヘインは懐から試験管を取りだし、魔導石を中に入れる。

 自分たちよりも未知なる力を持っている人間達に警戒心を露にしていると・・・一体の竜人(ドラグニル)がフィヘインの元に舞い降りる。

 その竜人(ドラグニル)は人間の子供を抱えていて、その人間の子供の表情は酷く怯えてしまっている。

 ボロボロの服装に痩せこけた手足は見るに耐えず、抵抗する気すらないのか?それとも抵抗するだけの体力がないのか?


『フィヘイン様生き残りがいたようです』

『生き残りねぇ・・・子供が何か知っているのか?』

『それはわかんないですね。とりあえずどうしますか?』

『お前達・・・私とこの子だけにしてくれ』

『了解しました』


 怯えた子供と二人っきりになったフィヘイン。

 そんな怯えきった子供に対してフィヘインは優しく笑いかける・・・敵意はなく、殺意もない笑顔で。


『ここで何かあったのかお姉さんに教えてくれるかな?』


 フィヘインの優しい笑顔を向けられているのにも関わらずに未だに怯えている人間の子供、そんな子供の為にフィヘインは同じ目線となり話しかけようとしたその時・・・嫌な予感がフィヘインを過る。

『何故この子供は何も抵抗しないのか?』っと・・・


『何か・・・妙な・・・』


 フィヘインが感じた嫌な予感が直撃し、先ほどまで怯えていた子供の雰囲気が変わる・・・

 雰囲気が変わった瞬時、子供からは想像も出来ない殺意が溢れだす。

 それはまるで世界全てを怨んでいるような怒涛の殺意に当てられてしまったフィヘインが、思わず火の属性竜法を放つ。


『フィヘイン様!』


 異常事態に気がついた竜人(ドラグニル)が一斉に掛けよって来る。


『何があったのですか!?』

『さっきの子供は罠だ!あいつは疫病の狂天使が化けた者だ!』


 フィヘインが叫んだ瞬間、疫病の狂天使の身体からどす黒いコールタールのような粘液質な液体がドロドロと溢れだす。

 咄嗟に羽ばたき上空へと逃げたフィヘイン達が見たのは辺り一面を覆い尽くす漆黒・・・

 そしてその漆黒から出現する数十体の疫病の狂天使。

 いったい今の今まで何処に隠れていたのか不明だが、突如として出現した疫病の狂天使達に対してフィヘイン達が取る行動はたった一つ・・・逃げの一手だ。


『全速力で離脱します!』

『了解です』


 全速力で飛び立つフィヘイン達に対して、出現した疫病の狂天使も後を追うように飛んで行く。


『遅れた奴は置いてく!そして各自でバルエラ竜王国に戻れ!』

『わかりました・・・ならば私が囮となりましょう』

『なっ!?リエス?』

『だったら儂も囮となろうかのぉ・・・老人ではどのみち追い付かれてしまいかねんからのぉ』

『ログズじいさんが囮になるなら俺も行くぜ!』

『ログズにマルトトスお前達まで・・・』


 フィヘイン達数名を逃がすために三体の竜人(ドラグニル)が囮となるために疫病の狂天使に向かって突撃を仕掛ける。


大地の(アース・オブ)大爪(フラットタロン)!』

泡の濁流(バブルス・アルチャー)!』

風の結界(エアー・プラックネス)!』


 三体の竜人(ドラグニル)が竜法を放ち、疫病の狂天使を足止めをしようとするが・・・数体の疫病の狂天使が抜け出してしまう。


『抜け出して来たぞ!』

『意外にやるじゃねぇか・・・』

『やっぱりこうなるのかなぁ・・・』

『フィヘイン様後で会いましょうね』

『それじゃ行ってきますよ』


 フィヘインと共に飛んでいた双子の竜人(ドラグニル)が速度を落とし、疫病の狂天使の方へ飛んで行く。


『流石あいつらだけじゃ不安だな・・・俺も行くぜ!』

『・・・私は言ったぞ各自で戻れと』

『そうですね。なので早めに戻らせてもらいますよ』


 双子の竜人(ドラグニル)に続き、更に二体の竜人(ドラグニル)が疫病の狂天使に向かって飛んで行く。


『なんでついて来たの?』

『僕達だけで大丈夫なんだけど?』

『若僧が・・・お前達は天才なんだろ?だったもっと生きるべきだぜ』

『そうですよ。まぁ・・・殺られるつもりは毛頭ありませんが』


 四体の竜人(ドラグニル)が疫病の狂天使の目前で急旋回し四方に逃げる。

 その竜人(ドラグニル)を追うようにして数体の疫病の狂天使も後を追うようにして飛んで行き、ものの数秒で見えなくなる。


『彼らの為にも我々は戻らねばなりませんね・・・』

『そう・・・だな・・・』


 残り三体となってしまったフィヘイン達を追う疫病の狂天使の数は五体。

 武道派の竜人(ドラグニル)が三体もいれば五体の疫病の狂天使を倒すことは可能だ。

 しかしフィヘインはともかく、残りの二体は研究を専門の竜人(ドラグニル)であるが為にそれほどまで強くはない。

 正直なところ疫病の狂天使と戦ったことのない竜人(ドラグニル)では部が悪いと言える。

 しかし・・・そんなフィヘイン達の不安を吹き飛ばすような出来事が起こってしまう。


『フィヘイン様前を見てください!』

『あれは・・・増援か!?』


 フィヘイン達の進む方向に現れたのは数時間前に別れたジェイロス達の部隊だった。


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