揺れる王国
べリアス城に存在するとある館。
この館はソイルがマリアティアスの為に改造した館であり、そして今は・・・ソイルを幽閉するための館として機能している。
今のソイルはとても第二王女としての扱いはされていない。
両腕を拘束され、両足には自由に動く事が出来ないように重りが付けられ、そして目隠しさせられている状況だ。
ソイルが拘束されてから三日以上が経過してしまっているが・・・未だにソイルの力が、少しは衰えているがそれでも人を殺すだけの力が残っているからであり、自由に野放しにしてしまうと虐殺しかねない精神状態であるがゆえにこうして拘束されてしまっているのだ。
無論この事は秘密であり、ソイルが幽閉されているということは王城内にいる人物しか知らない。
第二王女の気が狂い、自身の部下、メイドを虐殺してしまったという事が世間に広まってしまえば途端に王家の評判が悪く、もしかすれば地に落ちてしまうかもしれないのだ。
しかも今は帝国を壊滅させたと言われている疫病の狂天使戦っている最中であり、王国と魔法国、帝国の残存勢力で作られている連合軍にも予算を割かなければならない状態・・・つまり王国は資材、そして財源共に辛い状況に陥ってしまっているのだ。
さらに帝国からの難民が少なからず略奪等という行為を行うこともあり、警備の方も強化せざるおえない。
今は疫病の狂天使との戦闘中であり、王国の民には少なからず負担をしてもらっている。
そんな中で第二王女が拘束されたという事が民に知れ渡ればどうなるのか・・・第二王女ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラはその美貌だけではなく、勇敢に戦うその様は民からの評判もかなり良く、そしてソイルの組織である聖薔薇騎士団の評判もまた良好だ。
ソイルが虐殺行い、拘束されてからは疫病の狂天使の討伐に行かせるのではなく、警備の方を行ってもらっているが・・・それもどうなるのか。
不安が不安を呼び体調不良となってしまった国王に代わり、第一王子であるエックス・エヴァグラッツ・アウレウス・エルピーラ第一王子が政治を行っている。
幸いな事に状況が状況な為に不安を漏らすような輩がいないのが良いことだが・・・
『状況は芳しくない・・・』
つい愚痴を漏らしてしまったエックス。
国王に代わり政治の代行を行っているエックスだが、本来は外政を担当する事が多く、はっきり言って国王より内政が安定していない。
仕方のないこと事だが、それでも貴族達を何とかまとめて行っている状況だ。
『王子は国王に代わり良くやっておられますよ。まぁ、私は政治などに関しては余り詳しくはないのですが』
そう言いながらエックスの愚痴に答えるヴァーミリオン。
王国、というよりも王族に仕えているヴァーミリオンだが、今は国王が伏せてしまっているが為にエックスに仕えている。
『確かに、貴方は政治には詳しくはない・・・』
話している最中に扉がノックされ、話を中断させられてしまったエックス。
エックスに仕えているメイドが確認のために扉から出て行き、扉の先から聞き慣れた声が聞こえてくる。
『この声は・・・』
声の主が誰なのか理解したヴァーミリオンだが、頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がる。
その理由はこの声の主がエックスとはあまり仲が良くないと噂されている人物だからだ。
そしてヴァーミリオンが考えている最中に扉が開けられ・・・スペード・ワルビエルムス・ニガラスが室内へと入ってくる。
入ってきたスペードに対して即座に敬礼をするヴァーミリオン。
しかしながら何故スペードがエックスに会いにきたのかは謎のままであり、ヴァーミリオンを困惑していた。
『どうしたんだい我が弟よ。お前が私の私室に来るとはどんな風の吹き回しだい?』
少し、嫌味かかった言い方でスペードに挨拶をするエックス。
そんなエックスに対してスペードもまた嫌味かかった言い方で返答する。
『なぁに・・・少し気になる情報を耳にしたものでなぁ。是非兄上にも伝えた方がいいと思いましたので』
『ほぉ・・・それは興味深い。それでその話と言うのは?』
『その前に少し人払いをしてはいただけないでしょうか?何に分まだあまり世間には広めたくないものでして・・・』
スペードの含みのある言い方が気になったのか考え込む様子のエックス。
この場の空気を敏感に感じとったメイド達とスペードの護衛の者達は全員別室へと移動して行き、この場に残っているのはエックス、スペード、ヴァーミリオンの三名だけとなってしまう。
『申し訳ございませんがスペード様。私はエックス様方、王族に仕える身。同席させていただきます』
『貴様・・・騎士風情が何を言っ・・・』
スペードの発言に対して手を上げて止めるエックス。
『スペード・・・お前が急ぎ、自身で検討するよりも先に私に相談するということは余程の事なのであろう?』
『・・・あぁ。兄上残念ながら悪い事が続くとまた悪い事が起きるというのは本当のことだぞ』
『なるほど・・・ならしかないかもしれないな』
先ほどの悪い雰囲気は一体何処へ行ってしまったのやら、エックスとスペードは親しく話している。
その光景は正しく仲の良い兄弟そのものであり、とても今までのエックスとスペードの王城内での言い争いからは想像できないほどだ。
その光景に呆気にとられてしまい何も言えなくなってしまったヴァーミリオンだが、エックスの問いかけによって正気に戻る。
『し、失礼ですが・・・エックス様とスペード様は随分と仲がよろしいようで・・・』
『当然であろう兄弟なのだからな』
『腹違いとはいえ実の弟だぞ・・・』
『えぇぇぇ・・・嘘ですよね?』
思わず本音が口から溢れてしまうヴァーミリオンに対して声を揃えて『嘘ではない』っと答えるエックスとスペード。
困惑しているヴァーミリオンを他所にエックスとスペードは説明してくれる・・・今までエックスとスペードが仲の悪いようにしていたのは演技だと。
『な、何故そのような事を・・・し、失礼ですがそんな事をする理由は』
『理由などいくらでも存在する』
『例えば・・・王家に仇なす反乱分子を誘き出すため。貴族内に存在する派閥を知るということは重要だぞ』
『一つの視点からではわからない事は多いからな』
『まぁ・・・今はそんな事はどうでもいいさ。それよりも兄上、悪い事というのは聖薔薇騎士団の事だ』
『聖薔薇騎士団・・・今は王都の治安を守る為に派遣しているはずだが』
『その治安を守る筈の聖薔薇騎士団が数名行方不明になっている』
『なんだと!?』
『何故居なくなったのか、いったい何処に行ったのかは捜索中だが・・・なにぶん表立っての捜索が出来ないのな』
『何ということだ・・・』
スペードの報告聞き頭を抱えれしまうエックス。
聖薔薇騎士団の面々にはソイルが幽閉されていることはもちろん秘密であり、知らせてはいない。
さらにそのソイルがフレルを含めた数名を斬り倒した事が知られればどうなるのか・・・更に面倒ごとになるのは必然だ。
『更に悪い知らせもあるのだが・・・』
『まだ何かあるのか?』
『兄上には秘密にしていたのだが・・・俺はソイルの言っていた人物を拉致することに成功していたのだよ』
『何ですと!?スペード様いったい何故そんな事を・・・』
『俺にもいろいろと事情があるんだよ。まぁ、俺の名前が出る事はないと思うが・・・俺から見てもソイルの行動は以上だったからな』
『この際お前がそのソイルの言っていた人物を拉致したかしないかは別にどうでもいいとして・・・成功していたというのはどういうことだ』
『私が依頼した裏の住人・・・そしてそのソイルの言っていた人物が忽然と姿を消したよ』
『死体は?』
『死体も何も・・・そこに居たと痕跡すら何も残ってはいないそうだ』
『何もか・・・』
スペードが言うにはソイルの言っていた人物・・・マリアティアスを拉致した裏の住人と共にマリアティアスが行方不明となってしまったという事であり、更にはマリアティアスに関わった組織の者全員が行方不明とうことなのだ。
そしてソイル率いる聖薔薇騎士団の面々も数名が行方不明となってしまっている。
偶然というには出来すぎた事実であり、誰かが仕組んでいるとしか思えない。
しかしながら運の悪い事に今の王国には行方不明者を捜索するだけの人員はなく、そして時間もない。
『なので兄上に相談したのだがね・・・』
先ほどから考えているエックスだが、思いの外良い案が出ないのか頭を抱えたままだ。
ヴァーミリオンはいったい自分が何を出来るのかと考えていたが・・・何も出来ないと判断したのか黙ったままだ。
スペード自身もどうするべきか考えていると・・・扉がノックされヴァーミリオン率いる『朱星の導き』に属している騎士が入ってくる。
エックスとスペードが同席している事に若干驚いた様子だが、直ぐ様に自身の上司であるヴァーミリオンに報告する。
この騎士は帝国に派遣された者であり、報告の内容は勿論帝国で戦っている疫病の狂天使の事についてた。
内容を要約すると疫病の狂天使の進軍スピードが以上に速く、そして数も予想以上に多いということだ。
それにより連合軍の面々もかなりの被害になっている。
『なるほど・・・連合軍と疫病の狂天使との戦闘はまだ続くと』
『そのようで・・・今のところ王国へと侵入してきている疫病の狂天使は少ないから良いのですが、数が増えるにつれてもしかすればヴァーミリオン様率いる主力部隊も戦うかもしれません』
『魔法国はどう出る?増援の軍は出してくれるのか』
スピードの問いかけに対して首を横に振る騎士。
『まだ、魔法国からの返答はないということか・・・』
魔法国は帝国、王国よりも北方に領土を持つ国であり、疫病の狂天使の被害は最低限と言われている。
災害級の疫病の狂天使の大量発生・・・原因は未だにわかっていないが帝国と国土を接していないからか疫病の狂天使が魔法国に侵入して来たとう事は聞いたことがない。
そもそも疫病の狂天使が魔法国に侵入するのであれば必ず王国の領土を横断しなければならないので、王国の軍が疫病の狂天使と戦う事が多くなってしまっている状況だ。
明確に疫病の狂天使が魔法国を狙っているのであれば王国軍も何かしらの手立てはあるが・・・
言葉・・・と言うよりも感情という物が存在するのか怪しい疫病の狂天使なのだから戦うのも大変なのだ。
『魔法国に使者でも送った方がよいのか・・・なんだ?』
『騒がしいですね』
『何かあったのか?』
外が騒がしくなるのを感じ取ったエックス、スペード、ヴァーミリオン達は別室で控えていたメイドと今入ってきた騎士に命じて騒ぎの原因を探るように命じる・・・よりも早く事は進んでしまう。
『エックス様大変です!』
『何事だ!』
『王城の正門に数千人が・・・』
『いったい何の為に集まっている?』
『それが・・・』
『いや・・・兄上、ヴァーミリオン殿確認してきた方が良いと俺は思うぞ』
スペードの提案によって正門の見えるところまで移動するエックス、スペード、ヴァーミリオン達。
そして目にしたのは想像だにしない出来事が体現した様であった。
『この人だかりはいったい・・・』
正門に群がる数千名の人だかりを見て唖然となってしまっている面々。
そして王城上空を警備していた風の属性魔導師が面々がいることに気がついたのか降りてくる。
『エックス様、それにスペード様も・・・』
『これはいったい何の騒ぎだ?』
『説明してもらえるかな?』
挨拶もそこそこに説明を求めるエックスとスペード。
そして風の属性魔導師は説明してくれる・・・正門に集まっている数千の人だかりは聖薔薇騎士団団長ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラ第二王女の解放を要求しているというものであり、この人だかりの中には聖薔薇騎士団の面々もいるということだ。
確かに風の属性魔導師が言うように聖薔薇騎士団の面々もちらほらと見えている。
今は王城の警備をしている警備兵と小競り合いをしているようだが・・・いつその感情が暴発してしまい暴動となってしまいかねない状況だ。
しかし今の精神状態のソイルを解放してしまうとどうなるのか・・・
『くそ!?いったい何がどうなっているんだ!』
公にはしていないが聖薔薇騎士団の面々にはソイルは病に伏せてしまっていると説明しているので大丈夫だと思っていたのだが・・・どうやらそうもいかないようだ。
『ソイル様に合わせて見てはどうでしょうか?』
何も知らない風の属性魔導師がソイルを解放してはどうかと提案する。
『今のソイルは誰にも会いたくないと言っている。国王にさえ会いたくないと言っているのに会わせる訳にはいかないぞ』
『し、しかしそれでは・・・暴動に・・・』
『それ以上は言わなくていい・・・私が説明してくる』
そう言いながら歩いて行くエックス。
スペードはこの場に残るが、ヴァーミリオンはエックスの護衛としてついて行く。
『この騒ぎはなんだね!?』
エックスは目の前に集まっている面々に向けて聞こえるように言い放つと、ソイルを解放しろと言っていた面々達が一斉に静まり返りエックスの話を聞く姿勢に入る。
『このべリアス城の正門で何故こんな騒ぎが起きているだ!誰かが説明できる者はいないのか?』
スペードの問いかに対して一歩前に出てきたのは聖薔薇騎士団の一人で、風の属性魔導師が言っていたように聖薔薇騎士団団長ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラ第二王女の解放だと豪語する。
その事に対して勿論エックスはソイルは病に伏せてしまっている。そして今は誰にも会いたくないと事を告げるが・・・どうやら聞く耳を持ってはくれないようだ。
『貴女も聖薔薇騎士団ですよね?ソイルが病に伏せているのは知っているはずなのでは?』
『ソイル様が病に伏せてしまっているとして・・・だからといって我々聖薔薇騎士団にも会わせていただけないのはおかしいのではないでしょうか?』
『ソイル自身が誰にも会いたくないと言っているんだ。仕方のないことであろう』
『一目見るだけも・・・お声を聞くだけもいいのです』
『そうです。私を救ってくださったソイル様に一言お礼を言いたいだけなのです』
『何故いけないのですか?』
『や、やっぱり噂は本当なのですか!?』
『噂だと・・・』
エックスが首を傾げるていると、集まった面々のなから一人の聖薔薇騎士が出て来て言い放つ。
『私達聖薔薇騎士団を解体しよう』としていると・・・
『そんな事はない!聖薔薇騎士団を解体しようとしている事実などないぞ』
『では何故ソイル様に会うことが出来ないのですか?』
『だから・・・いや・・・』
エックス口論していると後ろからヴァーミリオンが遮るようにして立つ。
その理由はエックスと口論していた聖薔薇騎士がエックスに触れようとしたからだ。
『言葉が過ぎるぞ・・・王子に対してなんだそんな言い方は!』
『おいヴァーミリオンお前・・・』
ヴァーミリオンが話を遮った事によってややこしい状況になってしまい混乱した状況になってしまう。
そしてその事を皮切りに一斉に口論になり始める。
溜まっていた不安が爆発したのか強い口調で口論する聖薔薇騎士に集まった面々。
それに対して王城警備兵もまた手をあげる訳にはいかないので持っている盾で侵入を防いでいる状況だ。
『おいおい・・・なんだか数が増えて来てはいねぇか』
『まずいぞこの状況・・・エックス様はどうするつもりなんだよ』
『俺の彼女もソイル様信者なんだが・・・まさかこの中にはいないよね』
『国王が床に伏せてしまった今じゃ・・・やっぱり若いエックス様では無理なのか』
そんな事を警備兵達がぼやいていると急に風斬り音がなり、そして・・・
『きゃぁぁあぁぁぁぁ!』
『いやぁぁぁぁ!』
『ひ・・・あっ・・・うっ・・・』
悲鳴が聞こえてくる。
何事かと驚き動揺している警備兵、そしてエックスにヴァーミリオン。
すると続けざまに悲鳴が集団の中から聞こえてくる。
『なんだ!』
『何がどうなっているんだ!?』
『悲鳴・・・何故?』
何が起きているのか困惑しているエックス、ヴァーミリオン。
騒ぎの方に向かって行くと・・・そこには矢で撃ち抜かれた聖薔薇騎士団、そして抗議に参加していた女性がそこにはいた。
心臓を一発。見事な腕前でありそして明確な殺意を込められた矢は続けて更に人々を貫く。
それはエックス、ヴァーミリオンの目の前で起こり、そして助けるよりも早く息途絶えてしまう。
悲鳴と悲鳴がこだまし、逃げ惑う集まった人々。
それに対して集まった聖薔薇騎士団はエックス、ヴァーミリオンに明確な敵意を表すと同時に帯刀している剣を引く抜く。
『お、お前・・・これが王国の答えか!』
『自らの意見に賛同しない国民は切り捨てるのか!?』
『こんのぉ・・・外道が!』
『貴様ら王家には人情という物が存在しないのか!』
『ヴァーミリオン様・・・貴方を信用していたのに』
どう考えても王国側からの攻撃であり被害は聖薔薇騎士団、そして集まった人々にしか出ていない。
矢が飛んで来る方向を考えるとどう考えても王城からの狙撃だ。
『ま、待てお前達落ち着け、落ち着くんだ!』
冷静さを失ってしまったエックスが、敵意を剥き出しにしている聖薔薇騎士団に対して落ち着くよう促そうとする。
危険だが、自らの前に出て説明する事によって聖薔薇騎士団の殺意を少しでも少なくさせるつもりなのだが・・・
残念ながら時既に遅く、エックスが前に出た程度では聖薔薇騎士団の殺意を抑えることは出来なかった。
そればかりか殺意の矛先がエックスへと向けら、罵倒されてしまうエックス。
そして王城警備兵の中には王城からの狙撃がエックスが指示したものだと思った者達もいるようで、一部のバリケードがなくなってしまい聖薔薇騎士団が王城内へと侵入する・・・と直ぐに又もや王城から狙撃されてしまう聖薔薇騎士団。
『きゃぁぁあぁぁぁぁ!』
『な!?やっぱり貴様!』
『戦えぬ者は後ろに下がれ!狙撃されるぞ』
『王城から狙撃されるぞ!』
一般人を後ろに下がらせる聖薔薇騎士団に対して、何をしていいのかさっぱり分かっていない王城警備兵。
ヴァーミリオンは狙撃されている聖薔薇騎士団、そして一般人を助けようとしたが・・・その間にエックスが狙撃されかねないので離れる事が出来ずにいる。
そしてエックスの近くにいる聖薔薇騎士団には狙っていないようで飛んでは来ていない。
(いったい誰が狙撃しているだ。それにこの状況・・・まずい。この場で私が引いた場合どうなるのか)
王城に戻ることも出来ずにいるエックス。
今この場で王城に戻ってしまった場合、エックスの今まで培ってきた人々からの評価、信頼が一夜にして崩れてしまう。
どうしようもない状況の中でも事態は悪化していき・・・ついに王城からの狙撃によって殺されてしまった人数は二桁に到達してしまった。
警備兵も飛んで来る矢を防ごうとはしてはいるが、聖薔薇騎士団との距離が遠いからか全く防ぐ事が出来ずにただ狙撃されている風景を見ているしかなかった。
『もう我慢出来ない。今すぐ城に入らせろ!私が狙撃している奴をぶっ殺してやる』
『そうだ!行かせろ!何故我々が王城に入る事が許されないんだ』
『そ、ソイル様を解放してください。私達にはソイル様が必要なのです』
『相手が貴殿方でも容赦はしません・・・己の正義の為に!』
『聖薔薇騎士団に栄光あれ!悪を許すな!』
『どけ王城警備兵!貴様らに正義の心はないのか!』
聖薔薇騎士団達の怒気、そして覇気に圧された王城警備兵が持っている盾を放り投げる。戦う意志がないと明確に示す為に。
『王子お下がりください・・・このままでは』
『お前は何を言っているんだ!この状況を放って置くとでも言うのか?』
『最早王子がいても意味はありません!暴動は我々が鎮圧します・・・』
『力ずくでか・・・』
『この暴動を止める為には仕方ありません』
そう言いながらヴァーミリオンも自身の大剣を手に取り、聖薔薇騎士団に向けて構える。
その行為に対して更に聖薔薇騎士団の殺意が膨れ上がる。
『我々に刃物を向けたぞ!』
『正義無き騎士に裁きを!』
『ソイル様を幽閉する悪に断罪を!』
膨れ上がった殺意は濁流の如く人々の感情を飲み込み、ヴァーミリオン率いる朱星の導きとの戦いを始める・・・
べリアス城内に存在する高台にて・・・
王城からの侵入者を発見するために設けられた高台であり、周囲を見渡すように出来ている。
そしてその高台にいる人物。
どす黒い殺意を具現化させたような弓は、光すら反射させず異様な雰囲気を醸し出していて、深く被った魔導師が着そうなローブを身に纏い、深く被っているから見えにくくはなっているが緑色の瞳が見えている。
ローブの隙間からは黒色の・・・聖職者が着ているような服を着ている。
『狙撃は終了しました・・・後はどうしますか?』
独り言、というよりも誰かと話している雰囲気なのだが・・・高台にはその人物しか生きている人は一人もいない。
周りには倒された高台の警備兵がゴミのようになっているだけであり、そして高台の下・・・入り口付近にはこの人物が作ったであろう結界が施されている。
その結界を破壊しようとしている王城警備兵がいるが・・・全くもって歯が立たない状態だ。
『わかりました・・・それでは私は撤退いたしますね』
そう言い終えると突如として吹き荒れる暴風。
室内にいるのにも関わらずに目を開けていられないほどの暴風は周囲に置いてある物を巻き込み、周囲一帯を吹き飛ばす。
そして気がついた時には既にそのローブの人物はいなくなっていた。




