王家に仕える刀
エルピーラ王国王室にて・・・
聖薔薇騎士団、そして聖薔薇騎士団と心を同じくする者たちによって王家に対して反逆を開始してから数分後、王室警備兵達は慌ただしく準備をしていた。
王室警備兵は基本的に室内での戦闘をするための装備をしている。
しかしながら今回は侵入者の迎撃ではなく侵入してきた聖薔薇騎士団、そして聖薔薇騎士団と心を同じくする者たちを王室へと侵入させない事であり今の装備では侵入を妨害出来ない。
なので今王室警備兵達は分厚いタワーシールド、そしてタワーシールドの間から攻撃するための長槍を持って陣形を組んでいる最中だ。
鈍重なタワーシールド、間合いが長く取り回しがきかない長槍では室内戦は不利なのだが・・・タワーシールドと長槍をバリケードのようにする事で侵入を防ぐのが目的だ。
『何こんな事に・・・』
『今は争っている場合じゃないだろ』
『国が二分してしまうかもしれないんだぞ・・・』
ぶつぶつと呟きながらも陣形を整え終えた王室警備兵。
長槍を構えようとしている最中にこちらに近づく音が聞こえてくる。
音が聞こえ始めた瞬間、直ぐさまに急いで長槍を構え迎え撃つ準備をする。
しかし奇妙な事に足音は一つ、しかも急いでいる様子はない。
『どういう事だ・・・』
『一人なのか?』
近づいてくる足音に疑問を持ち始める王室警備兵。
それもそのはずだ。今王城へと侵入しているのは聖薔薇騎士団とそして聖薔薇騎士団と心を同じくする者達であり、足音が一人というのはありえない。
一人で隠密で侵入して来たのであれば、音を立てるような事はしない筈だ。
『あらこの先は王室だと思っていたのですが・・・随分と警備が手薄なのですね』
そう言いながら王室警備兵の前に現れたのは一人の女性。
聖職者の服装に身を包み、赤い瞳に三つ編みの金髪の女性だが・・・その手には奇妙な形の杖が握られている。
何故こんな場所に、聖職者がいるのか疑問に思っている王室警備兵達。
それもそのはずだ。今は王城に聖薔薇騎士団、そして聖薔薇騎士団と心を同じくする者達と戦っている最中であり聖職者を王城に呼んでいる場合ではないのだ。
聖職者にこの暴動を収めて貰おうと誰かが呼んだのか?
それにしては王室に近いこの場所ではなく、今暴動が起きている正門に呼ぶのが合理的な筈だ・・・
『何故こんなところに・・・』
一人の王室警備兵が呟くと同時に・・・女性、アリセスは王室警備兵に向かい突撃し、その手に持っている杖を振るう。
一瞬ギョッとした王室警備兵達だったが、女性の細腕で振るわれた杖程度ではタワーシールドはビクともしない・・・筈であった。
けたたましい音と共に前方でガードしていた王室警備兵が後ろに吹き飛んでしまう。
杖の当たったタワーシールドを見ると、そこには大きくひしゃげたタワーシールドがあった。
明らかに女性の力ではないが・・・重要なのはそんな事ではない。
タワーシールドを持っていた王室警備兵が倒されたという事はもう一度その威力の攻撃がくるという事だ。
『もう一度く・・・』
仲間に知らせるよりも先にアリセスの攻撃を喰らってしまう王室警備兵。
数名の王室警備兵は長槍を手放し手に持っている刀を手にしてアリセスに向かって攻撃を仕掛ける。
タワーシールドを持っていた王室警備兵達も二度目攻撃で既にタワーシールドが意味がないと理解すると手放し、一斉に散らばりアリセスを拘束しようと展開する。
『貴様何者だ!?』
『いったい何が目的だ!』
『よくも仲間を・・・許せねぇ!』
敵意を露わにアリセスを捕らえる為に警戒している王室警備兵。
その王室警備兵に対してアリセスは微笑み、杖を触ると・・・杖の形が大鎌へと変化する。
『我が主人の目的の為に・・・死んでくださいね』
突如として杖が大鎌に変わった事に驚いている王室警備兵。
しかし驚いている間にもアリセスは行動を開始し、驚いている王室警備兵を斬り伏せる。
先ほどの杖からの攻撃ではなく、死角からの大鎌の攻撃を防ぎきる事は出来なかったようであり、他の王室警備兵も斬り伏せられてしまう。
『くそ!?この女強い!』
『シスター様が人殺しとかふざけているのかよ!』
『陣形を乱すな!大鎌なら間合いを詰めればこちらが有利だ』
大鎌のアリセスに対して間合いを詰める為に突撃する王室警備兵。
間合いを詰められ王室警備兵の攻撃がアリセスに当たる瞬間・・・アリセスに手に持っている大鎌が再び変化する。
『なに・・・』
『かわされ・・・まずい!』
『上・・・だと』
アリセスの大鎌は槍へと形状を変化させ、槍を地面に勢いよく打つけることで大きくジャンプして天井に槍を突き刺して王室警備兵の攻撃を回避する事に成功したアリセス。
突然の出来事に対処することが出来なかった王室警備兵。
刀が届く距離よりも高くにアリセスがいるので攻撃出来ずにいる。先ほど持っていた長槍であればアリセスを串刺しにすることが出来るのだが・・・戦闘中にそんな暇はない。
それ以前にアリセスが先に行動したのだから・・・
『遅すぎるですね』
天井に付き刺さっている槍を引き抜き、また再び大鎌に変化させ王室警備兵に襲いかかる。
一瞬にして間合いが変わるアリセスの攻撃に対処することが出来なかった王室警備兵が次々と倒され・・・そして最後に残ったのはアリセス一人になってしまう。
『これで任務完了。後は任せましたよ』
アリセスが独り言を呟く・・・と同時に空間に亀裂が入りガラスの様に割れると中から一人の女性が現れる。
王城に存在する王族だけが入る事が許される一室にて・・・
王家を影から支える者たち『影の守護者』は結集していた。
集めたのはもちろん国王であるエルレド・ファングラッツ・ロメテウス・エルピーラ国王であり、全員国王に対して深々と頭を下げている。
『よく集まってくれた我が影よ』
床に伏せている国王が身体を起こし、影の守護者に対してお礼を言う国王。
国王は床に伏せてしまってからというもの少し痩せ細り、顔色も悪くなってしまっている。
今は第一王子であるエックス・エヴァグラッツ・アウレウス・エルピーラ第一王子に政権を委ねているが、未だにその権力は健在であり影の守護者を召集する権利は国王が持っている。
影の守護者とは古くから王家に仕える者達であり、この者達は王に忠誠を誓っている者達だ。
絶対に裏切らず、そして忠実に任務をこなす。無論王家のためであれば汚れ仕事もして来た連中だ。
国王が王国最強の騎士であるヴァーミリオンよりも自身の妻、愛人、自身の子よりも信頼している連中であり、指折りの強者が揃っている。そしてその指折りの強者の中でも一際異彩を放っている者が一人。
銀髪のショートヘアー、王国では珍しい褐色の肌に黒の瞳。
まだ、あどけなさが残っているが瞳には力強い意思が感じられる。そんな女性だ。
重厚、堅牢な鎧に身を包み、その鎧は目立つ白と銀が混ざっている。
何故かその鎧は右肩から下は装備していないが・・・
彼女の名前は魔導六刀が一振り・・・『沈みゆく鎖刀』
王国が所持する魔導六刀の一本だ。
『お前達に命じる・・・速やかにソイルを処刑せよ』
自身の娘であるソイルを処刑する事を命じる国王。
その言葉には何の悲しみも、何の哀れみも、何の怒りも感じらない・・・ただ単純にそこら辺に生えている草でも引きちぎるように影の守護者に命じる。
影の守護者は全員、誰一人として意見を言うことなく頷き肯定する。
しかし、この中で納得していない者が一人・・・ライフルは納得していないようだ。
『国王・・・お言葉だが何故ソイルを処刑するのだ?』
『今この王城で何が起きているのかわかっているな?』
『当然知っている』っと頷き肯定するライフル。
『だったらわかるだろ・・・王家に仇なす愚か者を生かしておくつもりはない』
『実の娘だぞ・・・』
『実の娘だろうが関係無い!』
強い口調で否定する国王。
実の娘でも容赦しないその姿は正に王であり、国を思っての行動なのか?それとも自身の権力が揺らぐからなのか・・・
『・・・それともう一つ、ソイルが狂信していたという女性。マリアとか言っていたな』
国王の言葉に肯定するように頷くライフル。
他の影の守護者もライフルに同調するように頷く。
ソイルがマリア・・・マリアティアスに狂信していたというのは、この場の全員が知っている事実だ。
ただ・・・マリアティアスがどのような人物なのか?どのような姿をしているのかはライフルを含め影の守護者は知らない。
国王は知っているが、彼らは公には行動出来ないからだ。
『ソイルはその女がいないと騒いでいたようだが・・・その女を見つけ次第私の前に連れて来い』
『実の娘は処刑するのにか・・・』
一瞬、ライフルの方を見た国王だが、ライフルを無視して話始める。
『ソイルが狂信したという人物に興味があるのでな・・・更に言うと我が国を混乱に陥れたのだ。その身で償ってもらなければ割に合わないだろ?』
不適な笑みを浮かべる国王。
その瞳は欲望に満ちている瞳であり、国王になってからも強欲に欲している。
『それでは探しに行って来い』
国王の命令で一斉に移動し始める影の守護者
ライフルも同様に移動を始めるが・・・地下から地上へと出るための扉が近づくにつれて異変に気がつく。
その異変とは・・・
『人の気配がしない?』
『王室警備兵はいったい何を・・・』
人の気配がない事に気がついた影の守護者。
この地下へと続く階段・・・というよりも地下と地上を繋ぐ扉周辺を警備している王室警備兵の気配が感じられないのだ。
無論この地下への扉が王家の地下に通じているということは極一部の人間しか知ってはいなく、王室警備兵もこの扉が地下へと通じているということは知らない。
ただ単純に王から警備していろと言われているだけなのだから。
彼らは警備ともう一つ、囮として使われる。彼らは知らないが・・・影の守護者は彼らを利用し、この扉に近づこうとしている人物がいないか探っているのだ。
しかしその囮として使っていた王室警備兵の気配がない・・・それはつまり扉付近で何かあったという事に他ならない。
『全員警戒を怠るな・・・非常事態かもしれん』
一人の影の守護者が扉の前に近づき、耳を当て扉越しに外の音を聞こうとする。
『・・・何かいっ』
扉から外の音を聞こうとした瞬間、扉が大きくひしゃげる。
何事かと思い後ろに下がる影の守護者。
更にもう数回扉に衝撃が伝わり・・・扉に亀裂が入る。
扉は分厚くはないがそれでも鉄で出来ている扉であり、開けるならともかく破壊するのであればかなりの労力を有するはずなのだが・・・
『見ぃつけた・・・』
扉に入った亀裂から此方を覗く瞳・・・一瞬で危険を察知したライフルと黒の守護者だが、どうやら一足遅かったようだ。
けたたましい音と共に扉が破壊され侵入してくる。
『見つけましたよ影の守護者』
そう言って中に入ってくるアリセスとクチルギ。
両名共に聖職者の衣装を身に纏い、アリセスの手には大斧。
クチルギの右手には細長い槍を持っている。
『アリセス。あれが・・・』
『えぇ、そうです。あの子が・・・』
アリセスが指差す先にいたのはアリセスと同じ魔導六刀の一振り・・・沈みゆく鎖刀。
自身と同じ人間によって造られた刀であり、人智を超えた力を持っている者だ。
そしてライフルもまたクチルギから同じ雰囲気を感じ取ったのか、クチルギを警戒するように後ろに下がる。
『さて・・・あなた達のお相手は私が』
『あんたの相手はクチルギが相手をするよ』
黒の守護者の相手はアリセスが、そしてライフルの相手はクチルギだと宣言する・・・よりも早く影の守護者がアリセス、そしてクチルギに向かって攻撃を開始する。
手に持っている短刀を投擲してくる影の守護者。その短刀には滑りと輝く物が塗られている。
どう考えても毒物であり、危険な香りが漂っている。
『危ないですねぇ・・・しかし、この程度では』
投擲してきた短刀を大斧から取り扱い安い槍へと変化させ迎撃するアリセス。
迎撃されたことに驚いた影の守護者であったが、アリセスとクチルギを倒すために直接攻撃に移行して斬りかかる。
『貴殿方の相手は私だと言っていますよね』
クチルギに対して攻撃をしようとしていた影の守護者に対して、文字通り横槍を入れるアリセス。
その隙にクチルギは黒の守護者の後ろを通り過ぎ、ライフルに向かって攻撃する。
攻撃される事を読んでいたのかライフルは余裕でかわすことに成功し・・・クチルギから逃げるようにしてこの場を去る。
それに対して追いかけるクチルギ。
影の守護者の数名もクチルギに対して追い討ちするように短刀を投げ・・・ようとした瞬間に先ほど仲間が投擲した短刀が腕に刺さる。
追いかけようとした影の守護者が毒に犯されたらしく、持っている短刀を手放してしまう。
『さて・・・貴殿方には話ていただきましょうか』
そう言いながら影の守護者と対峙するアリセスであった。
王国南部、疫病の狂天使と戦闘繰り広げられている地区にて・・・
帝国、王国、魔法国からなる連合軍と疫病の狂天使との戦いは未だに続いている。
即席の連合軍でありながらも共通の敵、更に連携という言葉が存在しない疫病の狂天使が相手であるが故に初めて連携を組む相手でも予想以上にスムーズに戦いが出来ている。
しかし・・・疫病の狂天使の数が予想以上に多く、更にその疫病の狂天使の中に思わぬ強敵がいたため連合軍は苦戦を強いられていた。
そしてその強敵との激闘の末に帝国士団団長ジュラ・レイジスト・ウルエイオは敗北・・・死んでしまった。
強敵である疫病の狂天使と相討ちという結果になってしまい、遺体は残念な事に回収は出来なかったが・・・
『日に日に疲労が目立ってきたな・・・』
王国軍から派遣されている一人の騎士がぼやくように天を仰ぐ。
今は疫病の狂天使との戦いがなく、小休止となっているが為に騎士は支給されている煙草に火をつけ一服している最中だ。
王国軍は三カ国の中で一番多くの人員を派遣しており、一人一人の疲労も他の二カ国よりも疲労が少ない為にまだ元気な騎士も中にはいるが・・・他の二カ国、特に帝国の騎士からは疲労の色が多く出てきてしまっている。
自身の国を疫病の狂天使によって蹂躙され、自分たちの皇帝すらも安否がわからない状態での戦闘は焦り、不安、そして恐怖によって気が狂ってしまう騎士も多くはなかった。
そんな最中、帝国最強の騎士である帝国士団団長ジュラ・レイジスト・ウルエイオの死亡というのは余程堪えたのであろう、帝国の騎士の中には疲労からなのか戦闘を終えて直ぐに眠りに着く者もいる。
そんな帝国軍とは対象的に魔法国からの援軍は気楽な連中が多くいる。
何故そんなに気楽でいられるのかというと・・・魔法国が疫病の狂天使に狙われるという事がまず無いという事が彼らが気楽でいられる最大の理由だ。
帝国は言わずものがな疫病の狂天使を殲滅しなければ自身の国を取り戻す事など夢の又夢であり、殲滅以外の選択が無いのも事実だ。
王国は疫病の狂天使の大軍が攻め込んで来るという事は今のところ確認出来ていないが、少なからず疫病の狂天使が王国に侵入し、王国軍との戦闘を余儀なくなってしまう。
そんな二カ国に対して地理的に考えても、疫病の狂天使が侵入するという事はまず無く更には魔法国は比較的王国、帝国によりも疫病の狂天使が出現率が低いのも原因だ。
『おや?王国の騎士様ではないでしょか?どうされたのですこんなところで?』
王国の騎士が煙草をふかしていると・・・数名の魔法国、魔導師が近づいて来る。
あまり疲労していなく、気軽に・・・ショッピングでもするかのように歩いている様子はとても戦場にいるような雰囲気ではない。
何故彼らがそのように気楽でいられるのかというと・・・王国、そして帝国は強制的に軍を派遣しているのに対して魔法国は自主的に疫病の狂天使と戦っているからだ。
王国は軍に属している者達、特に王国南部を中心に召集されこの場に派遣されている。
帝国は動ける者・・・子供以外の者達でなる即席軍での戦闘。
それに対して魔法国から軍は自主的に参加を募りこの場にいる。
なので魔法国の軍の中には正義感から戦闘をする者、特に理由も無く暇潰しに戦闘に参加する者、そして自身の魔法の威力を確かめに戦闘に参加する者など、理由が王国や帝国に比べて緩いのが現状だ。
その為か少なからず、王国、帝国の軍と衝突することもある。
そして現に飽きたとう理由で、魔法国に存在する四大魔法機関に属する最高位魔導師の四名の内の一人のヴェルピルスは魔法国へと戻り、同じく四大魔法機関に属する最高位魔導師の四名の内の一人ジルータも用事があるという理由でつい先日魔法国へと帰ってしまった。
今この戦場にいる魔法国の魔導師はいつ帰ってしまうのかわからず、そして正直なところ個人個人で戦う趣向が多いために連携は上手くいっていない。
そしてそれは王国の騎士の目の前にいる魔法国の魔導師にも言えることだ。
『少し・・・考え事だよ。王国は今頃何をやっているのかとね』
独り言のような呟く王国の騎士。
『あぁ・・・そう言えば知ってますか?』
王国の騎士の独り言のような呟きに対して反応を示す魔法国の魔導師。
特に用事もなかった王国の騎士は話に食らい付き・・・そして魔法国の魔導師から嫌な知らせを知ってしまう。
『それは本当なのか?』
『えぇ、間違いありません。私もその事が気になって現地へと行きましたから』
『聖薔薇騎士団が撤退・・・』
『疫病の狂天使との戦闘があったのでしょう。彼女達が拠点にしていた村は最早壊滅・・・しかしながら遺体は埋葬されていたようでしたので全滅という事はありえないでしょう。彼女達は単独で行動していましたのでその様子だと此方には情報は届いていないようですね?』
『まぁ・・・な』
『しかし聖・・・』
王国の騎士と魔法国の魔導師が話をしていると急に辺りが騒がしくなり始め・・・戦闘が始まってしまう。
『おちおちお喋りも出来ないとはね・・・』
『聖薔薇騎士団の情報ありがとう!私は戦いに向かう』
それぞれの戦闘が始まり始めた後方・・・王国と帝国との国境沿いによりも更に北にある森林区画にて。
王国の領土であるが王国、帝国の人間は誰一人として近寄ろうとしない森林。
別名『首狩りの森』には気味の悪い・・・おぞましい噂が流れているので誰も近寄ろうとしないのだ。
首狩りの森には魔女がいる・・・そんな噂は付近に住むものであれば知っていて当然であり、国王、帝国でも知っている人間も多数いる。
何故この森が首狩りの森と言われ、そして魔女が住んでいると言われているのかというと・・・この森に近づく人間は誰であれ、そして千差万別に首から上がない状態で発見されてしまっているからだ。
老若男女、身分なども関係なしにだ。
そして何よりもこの森に近づき・・・行方不明になった者は生きて帰った者はいない。
そんな噂が流れ始めてからというもの、近づく人間がめっきり減ってしまった森を見上げる二人の少女。
左右非対称な翼に天使の輪・・・聖職者の衣装に身を包んだエリカとアイカであり、エリカの手のひらから
純黒の炎が燃え上がり森に向かって放たれ森が炎上・・・するよりも先にエリカの放った純黒の炎が斬られる。
一刀両断・・・正にその言葉通りに斬られた純黒の炎、そして更に追い討ちするようにして細切れになってしまう。
『やっぱりお母さんの言っていた通りだね』
『そうだねアイカ。やっぱりお母さんはすごいね』
『何者だ・・・お前達は?』
人が立ち入らない首狩りの森にエリカとアイカに話しかけるもう一人の人物。
暗がりから姿を現したのは女性であり、その雰囲気は異様であり異質・・・
黒いローブを身に纏い、何故か水着のような格好をしている。
そしてその腕からは銀色に輝く物・・・鎌のように反っている刃物が皮膚を貫くようにして出ている。
人間ではありえない姿形であり、明らかに人外だ。
『明らかに人ではないな・・・何者だ!』
『貴殿方が言うのですか?』
どちらとも人間ではないありえない力を持っている両名。
しかし・・・その両名の間に割って入るようにして現れるもう一人の少女。
まだあどけなさが残る・・・年齢としては13・・・14歳程度の年齢らしき少女。
黒髪のショートヘアーに、真っ赤な真紅色髪が混ざっており、緑色の瞳をしている。
聖職者が着ているような服装をしてはいるのだが基本的な黒、下はロングスカートになっていてその両脇に銀の糸で刺繍されているのか十字架が描かれている。
そして服装、年齢よりも眼を引くのはその異形の右腕である。
赤く、血液のように巡っている紫色の模様・・・指に当たる部分の先端が鋭くなっており、そして剃刀のようになっていて、肩から腕にかけて黒いの鎧を着ている。
『やぁ・・・貴殿方が王国に存在するもう一振りなの?』
『そうだと思うよ』
もう一人の少女・・・ヘルが突如として現れ、エリカとアイカが対峙している女性を見つめる。
突如として現れたヘルに驚いた様子であり・・・その瞳はヘルの右腕を凝視している。
『なら話は早いね・・・ヘルの名前は蠢く虐刀人間によって造られた魔導六刀の一振りだよ』
ヘルは狂喜にまみれた瞳と共に自身の右腕を突き出す・・・




