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帝国首都襲撃

  スペルオーネ帝国・帝国首都ダグマオーネ


  シエン・ユネルメンス・フェール・ゼナーガ王弟が首都ダグマオーネを去ってから数日後、体調が良好となり、書記長セロン・ラッシュラック・ウルドロスから帝国の現状を聞いているリプロ。

  しかしながら体調が良好となったのにも関わらずにリプロの悩みの種は尽きていなかった。

  なぜなら自身の弟であるシエン・ユネルメンス・フェール・ゼナーガが、部隊を率いて帝国南部へと赴いたからだ。

  しかしながら帝国南部へと赴いたとされているシエンから数日経過しているのにも関わらずに未だに音沙汰がないのだ。

  確かにリプロは帝国南部へと部隊を派遣するのを拒否し、数名による偵察の方が重要だと判断してシエンと意見が対立していた。

  まさか部隊の派遣をリプロが床に伏せている時に強行するとは思わず、まさに寝耳に水の出来事だったのだ。


『だいたいわかった・・・しかしセロン何故シエンは私に連絡を入れないのだ?』

『わかりません・・・ただ、シエン様の部隊には私の部下も同行しております。異常があった場合は直ぐ様に戻ってくるように命令していたのですが』

『部下に裏切られた・・・もしくは何らかの方法によって戻って来られないということはあるか?』

『彼らが私を裏切るとは思っていません。しかし人である以上絶対無いとは言い切れません。それに私がシエン様の部隊に派遣した人数は合計で20名、彼らは全員野人(レンジャー)の職に付いていますので全員が全員戻って来ないのは・・・ありえませんね』

『お前の部隊が集合していたときに奇襲をされたというのは?』

『お言葉ですが皇帝陛下、私の部隊各騎士団に紛れて任務を行うように指示しております。全員が一ヶ所に集合するという愚行はしていないと考えられます』

『なるほどなるほど・・・そうなるとやはり何者かが意図的に情報を遮断している可能性があるな』

『皇帝陛下その何者かとは?』

『明確にはわからん・・・だが、このところ帝国南部から人の流れがなく、帝国南部から情報という物が一向にこちら側に流れて来ないのは異常と言う他にない。もしこの事件を引き起こした人物がいるとしたら・・・疫病の狂天使を操っている可能性があるな』

『疫病の狂天使を操る・・・そのような事が可能なのでしょうか?』

『お前もわかっているだろ・・・この世界に絶対無いということは無い。魔法、魔導具、呪法・・・この世』


  リプロが話している途中で言葉を止める。

  何事かと疑問に思い周りを見渡して見ているセロンだが、部屋にはこれと言って不振な点や、何かが起きているという様子は見当たらない。


『皇帝陛下どうしたのですか?』


  セロンの問いかけに答えることはなく、考え事をしているリプロ。

  その考え事が的中したのか部屋の扉が開けられ、一人のローブを着こんだ女性、老婆が護衛を連れて入ってくる。


『魔婆・・・』

『取り込み中失礼しますじゃ皇帝陛下』


  皇帝であるリプロに対してあまり敬意ある態度ではない老婆の女性。

  年齢としは60以上・・・現帝国で最も長生きしている女性であり、水の属性魔導師兼皇帝陛下の相談役の女性だ。

  そして帝国で最も有名な占い師でその名前をシュエ・パールシェールズ・スヴェイレス又の名を魔婆と言われている。


『何かあったですか魔婆様?』

『書記長・・・お主の送り出した部下は全員死んだぞぇ』

『なんですと!?』

『儂の占いにそう出たわい。まぁ・・・その事は別に問題はないのじゃが』


  セロンは自分と皇帝であるリプロにしか話していない部下の話をシュエが知っていて驚いているが、リプロはその事を気にしている素振りはない。

  セロンはシュエとはあまり面識がなく、数回あったことがある程度でそこまで親しい訳ではない。

  シュエの実力は知ってはいたが自分のことを占い、それが的確に命中するとは思っていなかったからだ。

  それも極少数・・・実質二名にしか知らせていない情報を知っているのは流石だと言える。


『それで?魔婆が私の元に来るということは・・・先ほどの、セロンの部下の全滅以上に不味い出来事が起きているのか?』


  そう言われて皺々の顔に更に皺を寄せて、神妙な表情となったシュエが深くため息をつき言葉を発する。

  内容は・・・数日、早ければ数時間後にこの帝国首都・ダグマオーネが壊滅するかもしれないと言うことだ。

  その内容を聞き、リプロとセロンは同時に深いため息をついてしまう。

  もしその事が事実なのであれば忌々しき事態であり、どんな手段を使っても阻止しなければならないからだ。

  どんなに犠牲を払っても、どんなに卑劣な手段を使ってもだ。


『なるほど・・・魔婆それでこの都市が滅びる原因はなんだ?』

『儂の占いによると・・・数十体の疫病の狂天使によって滅ぼされてしまうのぉ』

『疫病の狂天使・・・』

『その疫病の狂天使なのじゃが・・・その中の一体が化け物並み、最早災害に匹敵するほどの強者じゃ』

『災害級ですと!?』

『しかしながら・・・明確に帝国が滅んだ訳ではないのじゃよ』

『どういうことだ魔婆?』

『儂はその災害級の疫病の狂天使を見て数分後からの未来が見えんのじゃ・・・』

『見えない?』

『何者かに占いを妨害されたのですか?』

『いや・・・念のために儂は数回占ったのじゃが結果は何度やってみても同じじゃよ。災害級の疫病の狂天使が出現してから先は真っ暗・・・何も存在しておらぬ』

『つまり?』

『災害級の疫病の狂天使の出現によって儂が死んでしまったということじゃな』


  その皺々の顔で笑ってみせるシュエ。

  しかしその笑いは乾いた笑いであり、心の底から笑ってはいなかった。

  それもその筈だ。これから自分が死ぬと言われて心の底から笑っていられる人間など滅多にいないからだ。


『魔婆の言うことを信じよう・・・最大級の警戒をす・・・』


  リプロが言い切るよりも早く地鳴りが響き渡り・・・それと同時に複数名の悲鳴が響き渡る。


『何事だ!』

『お前達!外に赴き状況を把握しに行って来い!』


  セロンの命令に従いシュエを護衛していた数名の騎士団が外に赴き、状況把握の為に行動する。

  そして戻って来た騎士団と共に外に赴くリプロ達。

  そこには言葉では言い表せない・・・巨大な化け物が降臨していた。


『なんだ・・・あれは?』

『まさか・・・魔婆様が言っていた災害級の疫病の狂天使とはあの・・・疫病の狂天使ですか?』


  セロンの問いかけに無言で頷くシュエ。

  そしてシュエの占い通りに都市では数体の疫病の狂天使が暴れており、悲惨な状況になってしまっている。

 

  災害級の疫病の狂天使・・・その正体は疫病の狂天使と言っても疫病の狂天使らしき姿形ではない。

  その災害級の疫病の狂天使には疫病の狂天使に見られるような死人のような青白い肌は存在せず、また血で出来たような枯れ枝のような翼もなく、血で出来た天使の輪も存在してはいない。

  しかし、人間ではありえない。人間の手によって創造された物ではないと容易に創造出来る。

  何故ならその災害級の疫病の狂天使は巨大であり、大きさにして50m級はある程の大木のような姿なのであるのだから。

  地面を貫き生えている大木に、人の上半身が付いている感じだ・・・木で出来ているが。

  人間の頭部らしき物はあるのだが・・・顔に必要なパーツ、目、鼻、口、耳と言った基本的なパーツは何一つなく、のっぺらぼうのようだ。

  そして顔とは対照的に、その身体には無数の・・・蕾のような物が付いている。

  遠くからでよく見えないが・・・どうやら背中にばその蕾と繋がっている枝のような物が存在している。

  枝と言っても普通の大木程度の大きさはあるようだが。


『皇帝陛下今すぐに地下にお逃げください!』

『分かっている・・・あの化け物相手では私では何も出来そうにないからな』


  そう言っているリプロの横で神妙な表情のシュエ。

  何か思う事があるようだ。


『皇帝陛下・・・あの化け物相手では並大抵の騎士団、魔導師では相手にならんじゃろ・・・儂はあやつの解放した方がよいと進言するぞ』


  そう言われて少し考え込み・・・決定したように動き出そうとした時、何かが飛来してくる音が聞こえ隣にいたシュエが崩れ落ちる。

 

『魔婆!?』

『魔婆様!?』


  崩れ落ちたシュエを抱き抱え、傷口を見て唖然としてしまう。

  心臓付近に深々と短剣が突き刺さり、ドクドクと溢れでる鮮血は止まる気配はなく間違いなく致命傷だ。

  リプロが自身で所持していた治療液(ポーション)を飲ませる。

  この治療液(ポーション)は超貴重薬草、薬品を合成して作られた治療液(ポーション)で、帝国の皇帝であるリプロでさえ数える程度しか持っていない貴重な物だ。

  その貴重な治療液(ポーション)をシュエに飲まそうとするが・・・


『こ、こんな老いぼれに・・・使うことはないですじゃ・・・』

『シュエ!』

『占い・・・の結果じゃからな・・・』


  そう言って息を引き取るシュエ。

  確かにシュエの占った通りに災害級の疫病の狂天使が出現後、数分で息を引き取ってしまう。


  その惨状を遠く・・・この都市の教会で覗いている二人・・・アリセスとエールがリプロ達の行動を観察している。

  そしてシュエの心臓付近に突き刺さっている短剣はエールの短剣だ。

  人間の、それも女性の肩では到底届く事がない距離なのだが・・・エールならば可能なのだ。


『さて・・・マリア様の言う通り邪魔な占い師は排除しましたから次は・・・』


  アリセスがエールと次はの作戦について話していると・・・災害級の疫病の狂天使に近づいて来る人影が見えている。

  その影は数えるだけで数十名・・・全員が全員帝国魔導団専用のローブを来ていて空を飛ぶ・・・風の属性魔導師の連中だ。

 

『どうやら予定通りに帝国魔導団が来たようですね』

『なら予定通りに行う。帝国魔導団団長はアレに任せて』


  そう言って災害級の疫病の狂天使に目線を送るとちょうど攻撃しようとしている最中であり、魔方陣が展開し・・・魔法が放たれる。

  一人は火の属性魔法を、また一人は風の属性魔法、そしてもう一人は水の属性魔法、土の属性魔法の四属性魔法が多数放たれ災害級の疫病の狂天使に直撃・・・するはずであった。

  災害級の疫病の狂天使に直撃するはずであった四属性の魔法は、突如として地面から出現した木々によって防がれてしまう。

  かなり分厚いのか防いだ木々が地面に落下すると、直撃した建物の屋根に穴が空いてしまう。


『何なんだあの化け物は・・・』

『我々の魔法を防いだ・・・意志があるのか!?』

『そんな事はどうだっていい・・・団長どうしますか?』


  そう言われて考え込んでいる人物に話しかける一人の魔導師。

  話しかけられた人物の名前はディズ・エンドルフィン・オーカルス。

  帝国に所属するの魔導師ではその名前を知らない人物がいないほど有名な・・・帝国魔導団団長その人だ。

  年齢にして40歳。茶髪のロングヘアーに茶色の瞳の男性であり、伊達男という言葉が相応しい男性で屈強ではないが引き締まった肉体をしている。

  彼が使える属性魔法は火と風の二重属性魔法(デュアルエレメンティア)であり、彼と数名の風の属性魔導師によって今、災害級の疫病の狂天使に攻撃した面々を(エアー)による浮遊(コマンド)で浮かせている。

  火の属性魔法に風の属性魔法を加えることによって一気に火力を上げる事が可能であり、攻撃力特化と言われていて範囲殲滅を得意としている。

  帝国魔導団専用の建物で部下達と打ち合わせをしていた時に地鳴りに気付き、急いで外に出向くと災害級の疫病の狂天使、そして数体の疫病の狂天使が都市で暴れているのを目撃し、直ぐ様に数名の部下と共に迎撃に出たのだ。

  数体の疫病の狂天使は風の属性魔導師に命じて近くにいる警備兵、騎士団、魔導師達に任せてディズと数名の部下は災害級の疫病の狂天使の討伐に向かい、攻撃を開始したのだが・・・どうやら一筋縄ではいかないようだ。


『この疫病の狂天使を倒さない限り帝国に未来はない・・・各員覚悟を決めろ!全力でコイツを殲滅するぞ!各員散・・・』


  ディズが指示を出し終えるよりも早く・・・災害級の疫病の狂天使が動き出す。

  無数の蕾がなっているような背中から生えている枝が翼を広げるように展開する。

  その姿はまるで大木に蕾がなっているようではあるが・・・六枚の枝を広げたその姿は天使のようでもあり、両腕の部分にあたる木々が動き祈るような姿になる。

  神に祈るような態勢になった災害級の疫病の狂天使・・・

  何事かと誰もが動きを止め、見ていると・・・蕾が開く。

  大輪を咲かせた災害級の疫病の狂天使だが・・・大輪からは見えてはいけない者が見えてしまう。

  それはこの世界の絶望の権化・・・疫病の狂天使だ。

  大木に咲く大輪全てから疫病の狂天使が産まれ・・・一斉に世界を怨む産声をあげ、世界を怨む大合唱が帝国内へと木霊する。

  数にして50以上の疫病の狂天使が街へとくりだされる。


『なんということだ・・・』


  放心してしまっているセロンに、護衛の騎士団達。

  それもその筈だ・・・つい数分前まで何事もなかった街が一瞬にしてこの世の地獄へと生まれ変わってしまったのだから。


『お前達いつまで呆けているつもりだ』


  シュエの瞳を閉じて決意した瞳を宿すリプロ。

  放心状態になってしまっているセロンや騎士団の面々に命令を下す。

  数名の騎士団には現状把握と、現在戦っている騎士団への増援、そして帝国騎士団の参謀長であるエルロに部隊の編成、指示を出す。

  そしてリプロとセロン、数名の騎士団を連れて自身の城・・・地下室へと向かう。


 

 帝国帝都グラスチュアオーネ城にあるとある地下通路にて・・・


  帝国内でも数名の人物しか知らない・・・秘密の通路であり、今は皇帝であるリプロと書記長であるセロン、そして数名の護衛が共に歩いている。

  その護衛全員がローブを深々と被っており顔を見ることは出来ない・・・いやそもそも顔にあたる部分には帝国の紋章の入った仮面を着けているのでその表情を窺う事は出来ない。

  帝国に所属する騎士団とは纏うオーラがまるで違う・・・どちらかというと暗殺者と言った方がしっくりくる者達だ。

  彼らの名前はギル・オーネ・・・帝国に存在する暗部であり、その存在は基本的に秘匿され、表舞台に出てくる事はない組織だ。

  皇帝直属の組織であり、その存在は皇帝であるリプロ・デクリメンス・フォール・ゼナーガとその弟であるシエン・ユネルメンス・フェール・ゼナーガ王弟と特例でシュエ・パールシェールズ・スヴェイレスしかその存在は知られていない。

  彼らの任務は主に表舞台では出来ない・・・裏でしかやることの出来ないような仕事が主な任務であり、更にその任務とはもう一つ・・・帝国・・・いや人間の住む世界の秘密を守る任務だ。

  その任務とは・・・


『皇帝陛下我々はこれで』


  地下廊を数分歩き、たどり着いのは堅牢な守りに守られた分厚い扉の地下室であり、その扉には複数の魔導石がはめ込まれ異様な雰囲気の扉だ。

  そう言って護衛の連中は地下廊の暗闇へと消えて行く。

  彼らの任務はこの地下室の守りであり、この地下室に存在する者については詳しく知らない。

  いや知らされてはおらず、知ってしまうとこの世界から消える事を意味している。

  しかし何故そのような秘匿情報をセロンに見せるのかというと・・・セロンもまたリプロの信頼を勝ち取った人物だからだ。


『皇帝陛下この地下室には何が・・・』

『我が皇帝家が代々受け継いできた帝国の秘密・・・そして帝国の最大武力である一振りの内の一本だ』


  そう言って扉を開けて入った先に待っていたのは一人の女性が座って本を読んでいる。

  周りには複数の散乱した本が散らばり、そして周りにはぬいぐるみも複数散らばっている。

  周りに散らばっている本を良く見ると、彼女が見ている本は幼児向けの本であり・・・散らばっている本の中には難しい事が書かれた本は一切なく、とても彼女が読むような本では無いように思えるが・・・


『皇帝陛下彼女は・・・』

『先ほど言ったろ・・・帝国の最大武力の一振りだよ』


  そう言って扉を閉め、扉をコンコンと叩くリプロ。

  その事に反応したのか女性は本を読むのを止めてリプロの元まで歩いて行く。


『こんにちはリプロ!きょうはクチルギのためになにかをもってきてくれたの?』


  元気よく・・・いや、帝国皇帝であるリプロに対して無邪気に話しかける女性。

  その表情は満面の笑みで、とても純粋な雰囲気の・・・子供がそのまま大人になったような感じだ。

  深緑色の長髪に褐色の肌、緑の瞳で可愛らしいワンピースを着ている。

  整った顔立ちに満面の笑みを浮かべる彼女はまさに夏に輝く太陽のようで、愛嬌のある可愛らしいという言葉が似合う女性だ。

  年齢としては10代後半なのだが・・・相応の言葉使いはしていないようだ。


『貴様皇帝陛下になんて口の聞き方をして・・・』


  女性を叱ろうとしたらセロンに対して手を上げて静止させるリプロ。

 

『皇帝陛下?』

『大丈夫だ書記長。彼女は特別だ・・・』

『・・・?』


  首を傾げ、何を言っているのか理解出来ていない女性。

  そんな女性に対してリプロは外に出て疫病の狂天使を倒すように命じて・・・外に連れ出し外に控えている暗部に引き渡す。

  リプロに命じられた女性は元気よく返事をして、リプロに手を振りながら地下廊へと消えて行く。


『彼女にあの・・・災害級の疫病の狂天使を倒すことが可能で?』

『出来るだろう・・・彼女ならば』

『それほどなのですか?』

『あぁ・・・今はゴタゴタで説明している場合はないが、後でお前に説め・・・ごほっ!うっぐぁ・・・』

『皇帝陛下!?』


  話の最中で、急に咳き込み初めてしまうリプロ。

  所持していた治療液(ポーション)を飲み少しは落ち着きはしたが・・・またいつ再発するかは不明である。


『皇帝陛下無理をなさらずに・・・少し休みましょう』

『書記長・・・すまないな』

『何を言っています皇帝陛下!家臣が主人に対して尽くすのは当然のことです!』


  そう言って自身の胸に掲げる帝国の紋章を叩く。

  その事が原因からなのかリプロの瞳からは一筋縄の輝く・・・涙を溢す。

  とある出来事が原因で体調が悪化してしまったリプロ。

  若くして皇帝の地位に着いたので他の組織、貴族からは疎まれているがそれでもなお圧倒的なカリスマ、政治手腕によって国を牽引して来たのは事実であり、そしてそれと同時に数多の反乱分子を処分してきたのも事実であり怨む者も多数いる。

  しかしそんな連中がいる中でも信頼出来る連中は存在する。

  書記長、セロン・ラッシュラック・ウルドロスならばこの秘密を知らせてもよいと言える程に信頼している。


『後は他の騎士団達に任せましょう』


  そう言ってリプロとセロン達も地下室を後にする。



 災害級の疫病の狂天使から世界を怨む大合唱が響き渡ってから数分後・・・

  帝国魔導団の命令を戦いを観察していたアリセスとエールだが、突然部屋の中の空間に皹が入る。

  ガラスが割れるように皹が入り・・・砕け散る。

  そして砕け散った空間から一人の女性・・・マリアティアス・V・ヘリエテレスが出てくる。

  この不可解は出来事はマリアティアスの発動させた魔法で、名前を天信転移・・・膨大な量の魔力を消費する代わりに転移を可能にさせる魔法であり、ある特定の場所に転移を可能にする魔法だ。

  無論マリアティアスのみがこの魔法を使え、他の魔導師が使おうとしても不可能・・・いや、この世界の魔法の概念としては絶対に不可能な魔法なのだ。


『お帰りなさいませマリアティアス様』


  マリアティアスが出てくると同時に膝をつくアリセスとエール。

 

『さて・・・どうやら順調に事が進んでいるようですね』

『はい。全てはマリアティアス様の予想通りに』

『しかしながら不足の事態には備えなければなりませんよ』

『わかっておりま・・・』


  アリセスが話している最中に爆音が響き渡り教会が揺れる。

  何事かと確認しに行ったエールが見たのは災害級の疫病の狂天使の片腕が燃え上がり炎に呑まれる瞬間であった。


『マリアティアス様・・・』

『流石は帝国魔導団団長やりますね』

『どうします排除いたしますか?』

『少し予定とは違いますが・・・まぁいいでしょう。多少のアクシデントは仕方ないことなのです』

『分かりました。では私達は・・・』

『えぇ・・・そちらは頼みますよ。さて・・・それではまた後に会いましょうか』


  そう言ってマリアティアス、アリセスとエールは疫病の狂天使の大合唱の中に走り出す。

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