03 タクミのステータス、オープン!
俺が図らずとも目の当たりにした、学校間イベントの『タワークエスト』。
これは複数の学校の生徒たちが集まり、学校間の垣根を越えて協力しあって『天空族の塔』を攻略する。
その功績をたたえあうために、副次的な要素として学校間の順位付けがある。
表向きはそうなっているようだが……そんな生易しいモンじゃなさそうだな、こりゃ。
各学校にはガラの悪そうなヤンキーどもがいて、ソイツらは他校の生徒を攻撃する役割を担っているようだ。
そして教師どもは、普段は手を焼いている彼らの問題行動を、この『タワークエスト』では全開にするよう煽っている。
自分の学校の順位をよくするために……この日ばかりはクズどもの行為を黙認するつもりなんだろう。
そのクズどもはというと、さっそく他校の生徒たちに向かってよからぬ視線を投げかけている。
ウチの『リンドール学園』のヤンキー軍団もそうだ。
俺の寮を建ててくれた大工のヤツらが、俺とも知らずにガンを飛ばしてきている。
俺は『タワークエスト』なんかにゃ興味はねぇ。
それに、血気盛んなヤツらが集まれば、多少の小競り合いもあるだろう。
少々のヤンチャであれば、俺は何も手出しをするつもりはなかった。
だが、かなりタガが外れたヤツらもいるということがわかっちまった以上……そうも言ってられそうにねぇな。
ああっ、しょうがねぇな……ちょっとばかし、首を突っ込ませてもらうとするか。
……なんてことを考えているうちに、俺の番がやってきた。
『次、命の泉学園! えっと……壺仮面……さん?』
一瞬俺が呼ばれたとは思わず、スルーしそうになったんだが……デッチあげた名前を思い出し、ステージ走っていく。
途中、花道を作っている生徒たちのヒソヒソ声が聞こえた。
「『命の泉学園』……? 知ってるか……?」
「いや、知らねぇな。今回初出場みたいだ」
「でも、見た感じ、生徒はアイツしかいねぇ……引率の教師すらいねぇぞ」
「『タワークエスト』の出場要項では、生徒ひとりでも参加は可能みたいだが……ひとりじゃどうしようもねぇだろうな」
「いや、わからんぞ……! ひとりで『タワークエスト』に参加するなんて、よっぽどのバカか、かなりの手練れに違いない……!」
「なるほど、一応チェックだけはしておいたほうがよさそうだな……!」
俺を見つめていたいくつもの瞳が、厳しいものに変わるのを感じていた。
リンドール学園の前を通り過ぎようとした途端、何者かがビシッと指さしてくる。
「ああーっ! アイツ、アタシにぶつかってきた変態! こんな所にいたのね! アンタも『タワークエスト』に参加するんだった、覚えてなさいよっ! 塔の中で会ったらひどいんだから!」
「ちょ、落ち着いてください、シャラールさん!」
まわりのヤツらか取り押さえられながらも、がなりたててくるエリートスナイパー様。
俺がヒヤヒヤした思いでステージに駆けあがると、アナウンスが続いた。
『あなたが壺仮面さんですね! 笑う壺のマスクをかぶってるなんて、まさしく『壺仮面』って感じですね! 今回初出場となる、生命の泉学園の生徒さんです!』
俺の背後にあるスクリーンには、俺のマスク顔がどアップで映し出されている。
ステージ下には大勢の参加生徒たちがいて、誰もが俺に注目していた。
「ニヤけた壺のマスクなんて被りやがって、気持ちの悪いヤツだ……!」
「でも服装は、普通のワイシャツにズボンだな……装備らしきものは何も身につけてないようだが……」
「きっと使用武器がバレないように、どっかに隠してあるんだろう」
「鎧すら身に着けてないとは、徹底しているな……」
「顔を隠し、武器も隠し、防具も隠しているとは……これは、かなりの策士……! ひとりの参加とはいえ、侮れんぞ……!」
「アイツの公開情報としては、ステータスしかないってわけか……!」
「ステータスによっては、要注意人物になるかもしれんな……! おいみんな、ヤツのステータスオープンを見逃すな!」
緊張高まるなか、ついに俺のステータスが発表される。
『では……壺仮面さんのステータス、オープン!』
冒険者ランク
F- - -
ステータス要約
敏捷性は高いが、それ以外は村人なみ
冒険推奨階
1階
推奨職業
村を全滅させられて助けを求めに王様の元に走る、手負いの『村人F』
……。
…………。
………………。
水を打ったような沈黙が、室内を包む。
直後にステージ下から、どわわわわーーーっ!! と大爆笑が押し寄せてきた。
「ぎゃははははははははは! ぎゃーっはっはっはっはっ! Fランク! Fランクかよっ!」
「しかも、- - -だってよ!」
「冒険者ランクの中でも、最低中の最低ランクじゃねぇか!」
「アレって、冒険者じゃなくて、適正外なんじゃねぇの!?」
「いや、適正外はF-のはずよ!」
「ってことは適正外よりさらに下ってことか! あんな低ランクがあるなて、知らなかったぜ!」
「ひゃはははははは! それに冒険推奨階が1階だってよ! 1階は展示場だろ!?」
「観光客相手のフロアだよ! モンスターなんて一匹も出ねぇとこだ!」
「マジ!? きゃはははははは! ってことはアイツ、ガチで村人じゃん!」
「ぎゃーっはっはっはっはっ! おい! 村人がこんな所に来てんじゃねぇぞーっ!」
「村に帰って、道案内でもしてろーっ!」
「これからお前のこと『村人F』って呼ばせてもらうぜーっ!」
ヤジを飛ばしてくる生徒たち。
教師どもは浮浪者でも見るかのように、眉をひそめていた。
「はい、みなさん、よく見ておくのです……! がんばらなければ、あのような落ちこぼれになってしまうのですよ……!」
「学校を卒業したからって、誰もが冒険者になれるわけじゃない……! アイツみたいに、村人にしかなれないヤツだっているんだ……!」
「まったく……! ウチの学校の生徒じゃなくてよかったよ……!」
「あんなのがいたら、足をひっぱられまくって……ランキング最下位間違いなしだ……! 想像するだけでおぞましい……疫病神みたいな落ちこぼれだよ……!」
「ああ、わかったぞ! アイツが隠していたのは顔でも装備でもねぇ……! 村人っていう職業だったんだ!」
「ひひひひひひひひひ! そういうことか! 要注意人物なんて言ってソンしたぜ! くっ、苦し……笑いすぎて、苦しっ……ひぃーっひっひっひっひっひっひっ!」
俺は『指圧』によって身体に変化を及ぼし、ダメージを与えたり、逆に治したりする『指圧師』という職業だ。
この世界には指圧とか、マッサージとかいう概念がないせいで……『指圧師』はこの世で俺しかいないらしい。
俺が『リンドール学園』に入学するときに校長に言われたんだが、この世にひとりしかいない職業は評価できないということで、学校でのランクは最低の『Fランク』にさせられちまったんだ。
でもその扱いは学生の時だけで、冒険者になったら変わるのかと思ってたんだが……まさかさらに下がっちまうとはな……。
俺は延々と続く嘲笑に包まれながら、マスクの後頭部をボリボリ掻いていた。
その後、『F- - -』という烙印が押された身分証と、タワーバンド受け取って、ステージを降りる。
嘲りの花道をくぐり、そのまま出口へと向かった。
他校の生徒たちはライバルのステータスを確認するため、まだ残るようだ。
去り際、「おっ、村人F! 村に帰るのか!? じゃあなーっ!」とヤジが飛んできて、さらなる爆笑をさそっていた。
次回、タワークエスト開始!
それと新作小説を掲載いたしました。
本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。
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