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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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37 女だけの村

「おい、昨日の『海神(わだつみ)の試練』の中継見たか!?」



「見た見た! タクミの野郎、マーメイズを酸素ボンベがわりにしやがって!」



「あんなに嫌がってるマーメイズに、無理矢理させるなんて……最低のクズ野郎だ!」



「でもさ、あれってマーメイズがすすんでやってるようにも見えなかった?」



「そんなわけねーだろ! 『マーメイズから無理矢理空気を奪う、鬼畜タクミ!』ってテロップが出てただろ!」



「あ、そういえばそっかぁ……」



「しかも途中でモザイクがかかってただろ!? タクミが無理矢理マーメイズをハダカに剥いたんだ!」



「観ててびっくりしちゃった! 魔力のない平地族(グランドラ)って、あそこまで野蛮だったなんて!」



「ああ、ありゃやりすぎだ! マーメイズのファンたちが、あの島を特定して殴り込んで、タクミを八つ裂きにしてやるって息巻いてるよ!」



「でも、ざまあみろだよな! 途中で海が荒れて、タクミのやつ流されてやんの!」



「きっと海神(わだつみ)様のお怒りにふれたのよ!」



「あんなヤツがミューティ様と結婚して、国王になるなんて……神様もありえないって思ってる証拠だろうな!」



「タクミだけ、あのまま死んじまえばいいのになぁ!」



「まったくだ! アッハッハッハッハッ!!」



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 俺の死を願う会話が、海の向こうで交わされているとは夢にも思わず……俺の意識は、再び暗黒の海のなかをさまよっていた。


「……ゲホッ! ゲホッ! ゲホォッ!!」


 今度は俺にトドメを刺そうとするヤツはいなかったので、なんとか自力で水を吐き出せた。


 そして、硬い床に寝かされていることに気づく。

 焼けた砂浜ではなく、ひんやりとした木の床だ。


 仰向けになっている俺の視界は、まだおぼつかない。

 ただ、上空は抜けるような青空ではなく、網カゴのような屋根で覆われているのだけはわかった。


 少し休んだあと、のろのろと身体を起こし……ここはどこかと確認する。


 俺は、木でできたオリの中に閉じ込められていた。

 鳥カゴのように丸い牢獄の外には……ジャングルを切り開いてつくった、部族の村のような景色が広がっている。


 褐色の肌の女どもが、遠巻きにこちらを見ていた。

 草木を加工して作ったような衣装を身にまとう彼女らは、この村の住人だろう。


 ……だんだん状況が、つかめてきた気がする。


 どうやら俺は、見知らぬ村のど真ん中にいて……そこで鳥カゴに入れられ、愛玩動物のように晒し者にされているようだ。



「あれが、男の人……!?」



「あっ、気がついたよ……!」



「怖い……こっちを見てる……!」



「マリリン様に、知らせなきゃ……!」



 海棲族(マリネリア)らしき村の女の子たちは、まるで男を見るのも初めてのように怪訝そうだ。

 牢屋に近づこうともせず、かなり離れたところでヒソヒソと噂話をしている。


 いったい、何なんだよ……と思っていると、ひとりの女が牢屋の前に立った。


 厳しい顔でまっすぐ前を見る、中年のオバサン。

 茶色い髪を三つ編みに束ね、顔には威圧的なフェイスペイント、毛皮で作ったビキニを身にまとっている。


 俺はオバサンのことを、アマゾネスみたいなヤツだな……と思うと同時に、コイツがこの村のボスか……と直感していた。

 名前はたぶん『マリリン』。



「……穢れし生き物のタクミよ、話は姫君たちからすべて聞いた」



 マリリンは、表情と違わぬ冷徹な声をしていた。

 視界に入れるのも穢らわしいことばかりに、俺のほうを見ようともしやがらねぇ。


 でも、そんなことはどうでもいい。

 『姫君たち』と聞いて、俺はとっさに身体を起こす。



「マーメイズは無事なのか?」



「……ああ。女である彼女らは、この村では歓迎だ。むしろ、穢れし生き物である貴様自身の心配をするんだな」



「ここは、女だけの部族ってことか……」



 どうりで、村を見渡しても女しかいねぇわけだ。



「貴様と姫君たちは、我が男子禁制の島に漂流してきたようだな。浜辺に焚き火の跡があった」



「ああ、そうだ。てってきり無人島だと思ってたんだが……こんな村があったとはな」



 島のまわりをぐるっと回っただけだったから、まさか内陸に集落があるとは思わなかった。

 俺は「で?」と言って続ける。



「俺とマーメイズは、これからどうなるんだ?」



 するとマリリンは不快そうに、太い眉をクッと吊り上げた。



「姫君たちと、穢らわしき貴様を一緒にするな。本来であるならば、そのまま海の藻屑にしてやったところを……姫君たちが懇願するから、助けてやったのだ」



 忌々しそうに言われちまったが、俺は身振り手振りつきで、右から左へと受け流す。

 囚われの身であるにもかかわらず、挑発的な態度をとっちまうのは俺の悪いクセだ。



「そうかそうか。じゃ、マーメイズは歓迎されてるとして……俺をどうするつもりなんだ?」



「殺す……と言いたいところだが、姫君たちの悲しむ姿を見るのは本意ではない。貴様にはボートをくれてやるから、この島を出ていけ」



 俺は返事のかわりに両手をあげて、大げさに肩をすくめてやった。



「そういうわけにはいかねぇなぁ……ハネムーンで嫁を見捨てて逃げる旦那が、どこの世界にいるっつーの」



 するとマリリンは、俺の言葉の何かが気に障ったのか……ギロリとした灰色の眼で、俺の頭頂部のあたりを睨みおろしてきやがった。

 かなりの上から目線……しかしそれ以上は、俺の挑発に乗ってくることはなかった。



「……そうか。ならば一生そこにいろ」



 そのまま背を向け、集落のなかでも大きめの家へと去っていくマリリン。

 俺は、ふたたびゴロリと寝転ぶ。そして考えにふけった。


 ……ダリス・バンディみたいな男の蛮族だらけの集落だったら、問答すらせずこの檻を破壊して、マーメイズを助けに走るんだが……。


 原始的ながらも秩序のありそうな集落と、住んでいる女どもの身なりを見るかぎり、マーメイズは無事だろう。

 マリリンは王女だって知っているようだったから、本当に歓待を受けているかもしれない。


 だから、焦って助け出すこともなさそうだ。

 それに、なんだかキナ臭い感じがずっとしてるんだよな……。


 『婚礼の船』に乗ってからの、不自然に荒れた海。

 それと同じことが、また起こったんだ。


 海の中で、マーメイズが一糸まとわぬ姿になった直後……俺たちは突然発生した高波に押し流されちまった。

 それは、瞬きほどの一瞬だった。高波があんな急激に起こるなんて、自然現象ではありえねぇ。


 それに……せっかくのトップアイドルのハダカ、ぜんぜん見れなかった……。

 あんなシチュエーションで拝めるなんて、滅多にねぇことなのに……。


 ……あ、いやいや、それは別にいいんだ。

 それよりも、肝心なところで二度も海が荒れるだなんて、偶然にしちゃできすぎている。


 なにか陰謀めいたものを、感じずにはいられない。

 ミューティが王女だという点に、何かヒントがありそうなんだが……。


 なんにしても……今暴れちまったら、なんにもわからねぇまま終わっちまう気がする。


 マーメイズが安全なんだったら、もうちょっとこの状況に付き合ってみるものいいかもしれないな。

 そうしてりゃいつか、真実のしっぽがチョロリと姿をあらわすはずなんだ。


 ……よし、決めた。

 今回はのんびりやることにしよう。


 なんたって今回は、国家規模の民衆を敵にまわしてるわけじゃねぇから、焦ることもないんだ。

 この集落にいる女どもを、全員敵にまわしたとしても……百人程度だろうからな。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 なんて気楽に考えてたんだが、それからの囚人生活はけっこう大変だった。

 村の真ん中にいる広場で、いろんな拷問を受けたんだ。


 それはなぜかどれも、俺とマーメイズを天秤にかけるかのような責め苦ばかりだった。


 まずはマーメイズの前に立たされ、俺が避けようものならマーメイズが打たれることになるという、原始的なムチ打ちから始まった。


 逆さ吊りにされたままナタを渡され、俺がロープを切れば今度はマーメイズが吊るし上げになるという仕掛け。


 高いところにある焼けた鉄棒を掴まされ、手を離して下に降りるとスイッチが作動、マーメイズが閉じ込められた檻のなかにトラが入るという、凝った仕掛けに至るまで……バラエティに富んでいた。


 「もうやめてぇ!」とか「旦那様、手を離して! ボクたちはどうなってもいいから!」なんていうマーメイズの悲痛な声を聞きながら、俺は耐えた。


 ボロボロになって牢に戻され、人知れずツボ押しをして傷を癒やす毎日が続く。

 さて、いつ爆発してやろうか……なんて悶々もする日々だったんだが、いいこともあった。



「ケガは大丈夫? タクミさん……」



 というお決まりの言葉とともに、毎日俺にメシと薬を持ってきてくれるスリリスの存在だ。


 彼女は茶色いショートヘアの、小学生くらいの可愛らしい女の子。

 男というのは恐ろしい存在だと聞かされていたらしく、会ったばかりの頃は猛獣に接するかのようにおびえきっていた。


 メシも最初は炉端焼きみたいな板に乗せて、遠距離から配膳してくれてたんだが……だんだん慣れてきたようで、まるで餌付けされている野良猫みたいに少しずつ側に来てくれるようになったんだ。


 やがて言葉を交わすようになって、彼女は閉じ込められている俺を気づかうように、今日外で見たものなどを一生懸命話してくれるようになった。


 幼いころに脚を痛めたそうで、歩くのもやっとな彼女。

 この集落でもお荷物になっていることを感じ、誰もやりたがらなかった俺のメシ係に志願したらしい。


 集落で飼っているライオンの『ナミル』が唯一の友達で、傷だらけの身体をしているナミルと、今の俺を重ね合わせているようだった。


 そうしてさらに親しくなってくると、彼女は俺のメシの量が足りないことに気づいたのか、こっそりとオマケまでくすねてきてくれるようになった。


 まさしく心身ともに、俺を支えてくれる心のオアシス。

 それがスリリスという、控えめな花が咲いたような笑顔で微笑む、小さな少女だったんだ。


 ……俺はその笑顔を、どこかで見たような覚えがあったんだが、思い出せずにいた。

次回、タクミの指圧が炸裂する…!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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