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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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32 アイドル漂流記

 水没したジェットコースターに乗ってるみてぇに、青い世界がグルグルまわっていた。



「……て! ……さまっ! ……ま……!」



 遠くで若い女の声がする。

 それもひとりじゃない、複数だ。



「……してっ! しかりしてっ! 旦那様っ!」



「ど、どうしよう!? このままじゃ旦那様、死んじゃうぞ!?」



「旦那様、とっても苦しそう……!



「そうだ! 水を飲ませてあげるってどう? いいっしょ!?」



 俺は、混濁する意識の中で、必死に叫びをあげた。


 ……ま、待てっ! いま俺は、水の中にいるんだ……!

 ……ただでさえ苦しいのに、水なんて飲まされたら……!


 しかし、俺の思いは声にならなかった。



「そうだね! 旦那様が炎に飛び込んだときも、ボクたちのお水で元気になってくれたんだ……! お水をあげれば、元気になるよねっ!」



 ……ま……待て……!


 俺の唇が塞がれ、ごぽごぽという音とともに喉に水が押し込まれる。

 まるで、足をひっぱられて深海に引きずられているようだった。


 こっ……このままじゃ……マジで……死んじまうっ……!!


 俺は力の限り、身体をよじらせて暴れた。


 うっ……ぐわあああああああああっ!!



「あっ!? 少しだけど旦那様が動いた! 動いたよ!?」



「きっと、ミューティの水が効いたんだ!」



「旦那様……元気になったのかなぁ?」



「そうに違いないっしょ! もっと、もっとやって! ミューティ!」



「……うんっ!」



 さらに水が追加される。


 俺の身体が、腹の中に鉛でも詰め込まれたかのように、ずっしりと重くなった。

 もがいてもあがいても、水底に引力があるかのように沈んでいく。


 俺はこの世界に来て初めて、隣り合わせになった死を意識していた。


 大勢のテロリストと戦っても、銃を向けられても、秘奥義を受けても、両手を縛られてコロシアムに参加しても……死神の影すら見えなかったのに……!

 今では俺の足首に絡みつく、死神の骨ばった手が、ハッキリとわかるんだ……!


 ぐううううううっ!! 死んでたまるか……!! こんな所で死んで……たまるかよぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!!


 俺は全身をメチャクチャに動かして、意識をムリヤリに引きずり戻す。



「ぐっ……げほああああああああああっ!?!?」



 大量の水を口から噴出させ、俺はようやく地獄の淵から這い上がった。



「わあっ!? だ、旦那様の口から、お水がいっぱい……!?」



「すげー! 噴水っていうか、ミューティの水芸みてー!」



「も、漏れないようしなくて、大丈夫かなぁ?」



「そうだ! 水がなくなっちゃったらヤバいっしょ!?」



 またとんでもないことを言い出したので、俺は口元に伸びてきた手をガッと掴んだ。



「げほっ! ごほっ! ぐほっ! お……お前ら……俺を殺す気かっ……!」



 俺はマーライオンのごとく、水を吐きながら起き上がる。

 おちおち寝てられやしねぇ……!



「だっ……旦那様が、気がついた!?」



「やっ……やったぁーっ!」



「よかった……旦那さまぁーっ!」



「私たちが助けてあげたおかげだよねっ!」



 四方向から同時に抱きついてくる女たち。


 俺は、なおも口からダラダラと水を垂らしながら……これまでのことを思い返していた。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 四人組のアイドルグループ『マーメイズ』。

 水のミューティ、炎のフォティア、風のアネモス、地のセリリム。


 彼女らは『リンドール学園』でもアイドル的存在だったんだが、まさか本物のアイドルだとは思わなかった。


 俺の修学旅行の次の同行者に選ばれ、俺に会うためにダリス・バンディに来ていたらしい。

 そこでファンたちに見つかって、歌をせがまれ……急遽、街の中でゲリラライブを始めたそうだ。


 ファンを満足させると同時に、街中で派手に歌っていれば、俺に気づいてもらえるだろうと考えたらしい。

 そして狙い通り、俺はマーメイズと合流した。


 その後、彼女らに案内され、俺は海沿いに停めてあったクルーザーみたいな船に乗せられた。


 これは『婚礼の船』というらしい。

 マーメイズたちの出身である『タラッティア王国』の伝統的な船で、この船でひと晩を過ごした男女は夫婦として認められるそうだ。


 マーメイズの狙いは『婚礼の船』で俺と一夜を明かし、名実ともに婚姻関係になることだった。

 学院にいたときは、ずっと俺がのらりくらりとかわしてきたので、とうとう強硬手段に出たようだ。


 だって彼女らは、四人いっぺんに夫婦の契りを交せと迫ってくるんだぜ?

 いちどに四人を相手にしろだなんて、そんなハーレム王みたいなこと、ホイホイできるわけないだろ?


 どうやらマーメイズは仲良し四人組としても有名らしく、何をするにも一緒らしい。

 寝食はもちろんのこと、トイレや風呂までいっしょに入るらしい。


 でも……だからといって、初体験まで一緒にしなくても……。


 とはいえ俺も、覚悟を決めた。

 今宵、マーメイズを女にすると……!


 ここまでされて尻込みしてたんじゃ、男がすたる……!

 なんたってこの修学旅行で俺は、男になるって決めたんだからな……!


 そしていよいよという時になって、『婚礼の船』は高波に襲われた。

 俺たちの一夜を祝福するかのように、ずっと静かだった海が、手のひらを返したように暴れはじめたんだ。


 あっさりと船は転覆し、俺たちは海に投げ出された。


 陸上であれば、俺が彼女らを守ってやれたんだが……海上となれば話は別。

 彼女らは海棲族(マリネリア)で、水中でも呼吸ができるんだ。


 だから俺は、ひとりで溺れちまった。

 暗い海に飲みこまれ、沈んでいくうちに……俺の意識も藻屑となって、消えちまったんだ。


 ……そして、今に至る。


 俺は生命保険にも入ってねぇのに、よってたかって嫁たちに殺されかけた。

 溺れてた直後だってのに、さらに水を与えられ続け……いよいよヤバかったんだが、なんとか自力で意識を取り戻したんだ。


 俺とマーメイズは、南国の島みたいな所で、砂浜に打ち上げられていた。

 あたりに人の気配はまったくない。



「……ここがどこか、わかるか?」



 アイドルたちの柔肌を感じながら、俺は尋ねる。



「ううん、わかんない……!」とミューティ。



「知らねぇーよ! それよりも大丈夫か?」とフォティア。



「そんなこと、どーでもいーじゃん!」とアネモス。



「ううっ……よかったですぅ……!」とセリリム。



 有用な情報はなにひとつ得られなかった。

 しょうがないので、俺はひとまず彼女らを落ち着かせてから、島の探索をすることにした。


 海のほうは、一面のエメラルドグリーンが広がっている。

 他の島や船の姿は見えない。


 昨晩までの荒れようが、ウソのように静まり返っている。

 貸し切りのビーチみたいで、遊びに来たんだったら最高のロケーションだ。


 転覆したボートがどこかに浮いてないかと思ったんだが、水平線の向こうまで見渡してみても、それらしきものはない。

 気づいてみたら、俺の荷物であるリュックもどこかに行っちまった。


 まぁ、この島が実は陸だったり、または人が住んでいるような所だったら、別に見つからなくてもかまわねぇんだが……こういう時に漂着するのって、だいたい無人島だったりするんだよなぁ……。


 イヤな予感はすぐに的中した。

 俺たちはほぼ一日かけて島をぐるっと一周してみたんだが、誰とも会えなかったんだ。


 それどころか、まわりの海に島影すら発見することができなかった……!


 ヘトヘトになって元の場所に戻ってきたころには、もう水平線の向こうに陽が沈むところだった。



「だ……旦那様……もう動けないよぉ~!」



「は……腹へったよぉ、旦那様~!」



「く……暗くなってきました……! 怖いです、旦那様……!」



「ああっ、旦那様、マジねむい~!」



 こりゃ、ひょっとして……いままでとはだいぶ違うピンチなんじゃねぇか……?


 エサを求める雛鳥のように、ピィピィと弱音を吐くマーメイズを見下ろしながら……俺はそんなことを思っていた。

次回、アイドルたちとサバイバル…!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
『 ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?』
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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