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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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29 結闘の儀、決勝戦決着

 ゴルヌイの不正が暴かれた瞬間から、観客たちのどよめきが止まらなくなった。

 台風の目にいる俺は、全方位からする風鳴りのようなヤジを聞いていた。



「な……なぁ、今たしかにゴルヌイ様が言ったよな……?」



「ああ、間違いねぇ……ゴルヌイ様の声だ……!」



「タクミクンに夜這いの濡れ衣を着せて、タクミクンが負けるように仕組んだって!?」



「そういえば、大会中はずっとタクミクンに不利なことばっか起こってたよな……? それがまさか全部、ゴルヌイ様が仕組んだことだったなんて……!?」



「そのうえこの決勝では、タクミクンに毒を盛ったって言ってたぞ!?」



「たしかに決勝が始まっても、タクミクンは一歩も動かずに……あっさりとゴルヌイ様に吊り上げられてたよな……?」



「そういや変だな!? タクミクンはガルトゥスの千人斬りを楽々かわしてたし、チャリオットに追いつくくらい素早かったんだぞ!?」



「じゃあ本当に、毒のせいで動けなくさせられてるのか……!?」



「そうだ、思い出してみろよ! 大会前にタクミクンが拘束を解かれようとしたときも、ゴルヌイ王子が反対してたよな……!? やっぱり、ゴルヌイ王子なんだよ!!」



「い……いくらこの闘技場では、勝ったものが強いからって……そりゃ、やりすぎだろ……!」



「やりすぎどころじゃねぇ……汚ねぇ……汚ねぇよっ!!」



「俺たちはたしかに勝利を至上としてるが……正々堂々と闘うプライドまでは、捨ててねぇぞっ……!!」



「アイツはそのプライドを捨てたんだ……!! 俺たち高原族(ハイランド)の面汚しだっ……!!」



「そうだそうだ!! ゴルヌイ! てめぇ、見損なったぞ!!」



「タクミクンをはなせっ!! そして正々堂々と勝負しやがれっ!!」



 闘技場内が、かつてないほどの殺気に包まれる。

 真実に気づいた観客たちは、最前列に殺到してゴルヌイを罵倒している。


 ゴルヌイはあたふたと見回し、狼狽していたが……ついに最後の本性を現した。



『……静まれっ! 静まれ静まれ静まれ静まれっ!! 静まれぇぇぇぇぇぇーーーいっ!!!』



 まるで懐から印籠でも出しそうな勢いで、罵声をかき消す。



『不正を告発できるのは、闘技の合間にある休憩時間のみ……その決まりを知らんのかっ……!? すでに決勝戦は始まっている!! このまま俺様が勝てば、俺様のしたことは問われずに結闘の儀は終わるっ!! そしてそのまま、俺様が国王となるのだっ!!』



 ゴルヌイは俺を吊り上げたまま、ぐるりと身体を回して観客席に見せつける。



『それを知ってもなお、俺様に刃向かうヤツは……罵るがいい!! だが覚えておけ!! すぐにこの男のように、じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ!!』



 ゴルヌイの一喝を受け、観客たちは潮が引くように席へと戻っていく。

 俺は、その背中に向かって呼びかけた。



『なあ、立ち向かおうぜ……理不尽だと思うんだったらよぉ……』



 立ち止まり、振り向く観客たち。



『このクソ野郎は、たったいま権力によって、不正を握りつぶしたんだ……。それを指摘するヤツは殺すって、お前らを黙らせたんだ……理不尽極まりねぇよなぁ……』



 俺の声は、首絞めによって喉が圧迫されているせいか、かすれていた。



『そんな理不尽に、お前らは尻尾を巻いて逃げるのか? 俺が知る高原族(ハイランド)は、そんなんじゃなかった……! ドラゴンを前にしても、先陣きって突っ込んでいくような、勇敢な種族……! か弱き他の種族をハガネの身体で守り、一歩も退かない誇り高き種族……!』



 引き返そうとしていた観客たちが少しずつ、最前列に戻ってくる。



『この闘技場だってそうだ……! 権力などではなく、力こそがすべて……! 力こそが秩序じゃなかったのかよ……!? だからこそ俺は、敬意を払って身を投じた……! 俺は俺の信じる力を振り絞って、戦った……! 他の参加者もそうだったはずだ……! それをこのクソ野郎は、汚したんだ……! コイツは、高原族(ハイランド)という種族を汚したんだ……!!』



『ええいっ!! 黙れ黙れ黙れっ!! 部外者の貴様が、きいたふうな口をっ!! それ以上、民を惑わすことは……この次期国王である俺様が許さんっ!!』



『……許さなきゃ、どうするっていうんだ……?』



『もう、なぶり殺しはやめだ! このままニワトリのように、絞め殺してくれるっ!!』



『俺……謁見場で言ったよな、その筋肉は飾りか、って……。お前の飾りの筋肉で、俺を殺せんのか……?』



『ぬうううっ!? 言わせておけばっ!! 今すぐに……! ぬっ……ぐぐぐぐぐぐっ……!!』



 両手をニギニギして、俺の首を雑巾みたいに絞ろうとするゴルヌイ。

 俺の喉元から、ギシギシと金属が軋む音がする。



『なっ……なぜだっ!? なぜ締め上げているのに死なんっ!? ……ハッ!? そうか! これも貴様の、ツボというやつか……!』



『……違げぇーよ、お前……鎧を頑丈に作りすぎたんだろ……? 篭手の指が曲がってねぇぞ……』



『ああっ!? そ……そうであった……! 篭手の指は、真綿の絞首台の形に調整させたんだった……! だ……だが……それが何だというのだ……! 貴様の寿命が、ほんの少し伸びただけ……! 首吊り状態の貴様は、俺様に手出しはできまいっ!! それにどのみち、この強固な全身鎧の前には、貴様のツボ押しなど無力……!! 特注の鋼鉄で、寸分の隙間もなく作らせたのだ……!!』



『ああ、なるほど……それでタキシード柄に塗ってまで、そんなバカみたいな鎧を着てたのか……目の付け所は悪くねぇよ、なんたって盾や鎧は、ひと手間増えるからな……』



『ひと手間、だとぉ!?』



 そうこぼすゴルヌイの鎧が、



 ……ドッ……バァァァァァァン……ンッ!!



 粉々に爆散する。

 ゴルヌイは腰をぬかさんばかりにビックリして、俺の首をついに手放した。


 久しぶりに地面を踏みしめた俺は、咳払いをして、喉の調子を確かめる。



「よ……鎧が……い、一瞬で……!?」



 まるで悪夢でも見ているかのように、震えているゴルヌイ。


 俺は拡声棒に向かって……いや。

 例の、悪趣味な半裸に戻ったクソ野郎に向かって、言ってやった。



『……ほら、ひと手間だろ?』



「なっ……!? なぜ貴様は、動けるんだっ!? 毒を……ウェナーから毒を受けたのではなかったのかっ!?」



『ああ、ウェナーからたしかに、毒は受けているよ。だが、とっさにツボを突いて、毒がまわるのを遅くしたんだ』



「なっ……!? ということは……動けないように見えたのは……まさかっ!?」



『そう……ただの芝居だ。お前を油断させて、いい気にさせて……自白を引き出させるためのな』



 俺は、しっかりとした足取りでヤツに向かう。



「ひっ……ひいっ!? 来るなっ、来るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」



 ゴルヌイは俺に背を向けて逃げようとしたが、すぐにすっ転んでいた。



「あっ……脚が……う……動かねぇっ!?」



『ああ……ひと手間ついでに、ドレイン・リジェルのツボを突いておいたからな』



「ど……ドレイン・リジェル……?」



『下半身を麻痺させるツボだよ。もう、足の指も動かねぇだろ? ……それだけじゃねぇ、男性機能も不能になってるハズだ』



「え……えええっ!?」



 泣きそうな声で、股間を確かめるゴルヌイ。



『お前が力づくで不幸にしてきた、99人の女に許しを乞え。全員がお前を許したら、麻痺を治してやるよ……あ、ひとつ言っとくけど、その麻痺は医者や魔法じゃ治せねぇから』



 俺はそれだけ言って、ゴルヌイに背を向けた。

 すぐに背後から、ズリズリと這いずるような音が追いかけてくる。



「ひぃぃぃぃ~っ! た、タクミクンさまぁ~! どうか、どうかお許しおぉぉ~! 不能になるのはダリス・バンディでは最下層……物乞いにも馬鹿にされちまうんですぅぅ~! だから、不能だけは許して……! 許してくださいぃぃぃぃ~っ!!」



 周囲の嘲笑にもめげず、エサをねだる犬のように俺のまわりを這いずりまわるゴルヌイ。

 本当に犬になったみたいに転げまわったりして、なりふり構わず俺に媚を売っている。


 敗戦処理のスタッフが引き取りに来るまで、そのみっともない曲芸は続いた。

次回、ダリスの王に……!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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