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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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16 赤ちゃんになった少年

 ♪ ねんねんしてね かわいいぼうや


 ♪ ママのおむねに みをまかせ


 ♪ ただよいながら ねむりましょ


 ♪ あなたのねがおは たからもの


 ♪ せかいのみんなの たからもの



 ……どこまでもやさしい子守唄が、耳をくするぐる。

 まるで梵天で、耳かきされてるみたいに心地いい。


 どこまでもやわらかい感触が、頬に当たる。

 吸いつきたくなるような、もちもちした感触。


 俺は赤ちゃんに戻って、母親の腕に抱かれたような気分になっていた。

 世界中から甘やかされているみたいな、身も心もとろける感覚に包まれている。



「……うふふ……よく眠ってまちゅね~」



 微笑みとともに、俺の頬に手があたる。大きくてふっくらしている手。


 ふと、まろやかな眠りから覚め、うとうとしながら瞼を開ける。

 紗がかかった視界……吐息がかかるほどの距離に、お月さまみたいに俺を見下ろす顔があった。



「……あ、タクミくん、おっきしましたか……?」



 聞き覚えのある、実におっとりした声に……俺は心地よく意識を取り戻す。

 そして、



「うわあっ!? クーレ先生っ!?」



 俺の身体を抱いていた存在から、反射的に飛び退いた。


 すぐさまあたりを見回して、いまの状況を確認する。

 昔のヨーロッパ鉄道みたいな、木造の個室部屋にいた。


 ……そうだ、俺は列車に乗ってたんだった。


 ハイラウト王国の戴冠式を終えた翌日、スジリエは名残惜しそうにしつつも修学旅行へと戻っていった。

 同じくペットになったロロリエは、リンドール学園の入学を希望し、スジリエについて行った。


 俺は俺で修学旅行を再会すべく、ハイラウト王国を出た。

 ツルリエやペタリエなどの王族連中からは引き止められたが、「後は任せた」とだけ言って出てきた。


 俺が次の目的地に定めたのは、ハイラウトから少し離れた所にある『ダリスの国』。

 高原地帯にある高原族(ハイランド)たちの国だ。


 高原族(ハイランド)ってのは、身長2メートルがザラの大柄な種族。

 長いことちびっこばかり見ていたので、今度は巨人たちを見に行きたくなったんだ。


 目的の『ダリスの国』までは、魔力で動く列車『エールーカー』に乗って向かってたんだが……途中で風景にも飽きて、ついウトウトしちまった。


 そして気づいたら……クーレ先生に抱っこされてたんだ。


 クーレ・メディケ先生……『リンドール学園』の保健医。

 高原族(ハイランド)特有の大きな身体で、しかもナイスバディ。


 胸が大きすぎてボタンが止められず、いつもはだけているブラウス。

 むっちりとした太ももで、いつもピチピチなタイトスカート。


 わがままにも程がある身体をしてるんだが、上から白衣を羽織っているので、ギリギリ先生の(テイ)を保てている。

 だが逆に……白衣のせいで余計にエッチに見えている気がしなくもない。


 しかも服装はかなり大胆なのに、顔は人の良さそうなタレ目のメガネっ娘。

 ゆるふわに編んだロングヘアとあわさって、ギャップが半端ないんだ。


 ……俺は、対面でシートに座っている、クーレ先生を見やる。

 体勢は抱っこの形で固まっていて、俺が突然立ち上がったのにビックリしたのか、眼鏡越しの瞳を真ん丸にしていた。



「な……なんでクーレ先生が、ここに?」



 俺が尋ねると、クーレ先生の驚き顔が、キョトンとしたものに変わる。

 そして何かを思い出したのか、さらに花開くような微笑みに変わった。



「クジで当たったの! スジリエさんから『ダリスの国』に向かってるって聞いたから、途中の駅まで転送してもらって、タクミくんと一緒の列車に乗ったんだけど……タクミくんが眠ってたから、つい抱っこしたくなっちゃって……」



 いたずらがバレた子供みたいに、テヘヘ、と笑うクーレ先生。


 そう……そうなんだ、この先生は抱きつきグセがあって、しょっちゅう生徒を抱っこしている。

 身体がデカいから、どんな生徒でも赤ちゃんみたいになるんだよな。


 それはさておき、クジで当たったってことは……俺の次のパートナーは、クーレ先生ってことか……。



「『ダリスの国』はわたしの故郷だから、いろいろ案内させてね!」



 クーレ先生は立場的には引率のはずなんだか、まるで遠足に行く子供みたいにはしゃいでいる。

 でもまあ、故郷なんだったらちょうどいいか。



「そうなんですか、それじゃちょうどいいや、案内のほうよろしく頼みます」



 続けざまに、俺の腹が鳴った。まるで「こっちも頼む」といわんばかりに。

 俺は気まずい気持ちで腹を押さえたが、クーレ先生はそれすらも嬉しそうだった。



「うふふ、もうお昼だもんね。お弁当作ってきたの。さ、座って座って!」



 クーレ先生は、自分の太ももをポンポンと叩く。



「え……もしかして、そこに座るんですか?」



「うん! タクミくんをヒザ抱っこして、ゴハンを食べさせてあげるのが夢だったの! いつもはお嫁さんやメイドさんたちがいるから、言い出せなくって……いい機会だから、お願い……ねっ?」



 学園にいる時からそうだったんだが、この先生は、事あるごとに俺を赤ちゃん扱いしたがる。

 いつもはギューッって抱きしめてくるくらいなんだが……ふたりっきりになっている今、歯止めがきかなくなってるようだ。


 でも、せがまれるような上目遣いを向けられて、俺は断るに断れなかった。

 まぁ……普段から先生にはお世話になってるし、抱っこくらい別にいいか。


 まわりから『Fランク』って呼ばれてバカにされてた時でも唯一、『タクミくん』って名前を呼んでくれてたしな。


 だが、その前に……どうしても正してもらわないといけない所がある。



「あの……先生、ヒザ抱っこはいいんですけど……胸だけはしまってもらえませんか?



 クーレ先生はいつもはちきれんばかりのブラウスで、谷間をこれでもかと覗かせてるんだが……今はなぜかボタンが全部外れていて、ブラまで露出している。

 しかもフロントホックが外れかかってて、今にもポロリしそうになっていた。


 自分の胸元に視線を落として、「あっ」と声をあげるクーレ先生。



「タクミくんが眠ってるときに、わたしの指をしゃぶってたから、お乳がほしいのかなと思って……つい……」



 何が「つい」なんだろう。

 もしかして、寝てる俺に授乳しようとしてたんだろうか。



「添い乳はクセになっちゃうって言うから、迷ったんだけど……毎晩してあげればいいかと思って……」



 添い乳はクセになるって……そりゃ本物の赤ちゃんの話だろう。


 それに予想するに、迷ったのはほんの一瞬だけだと思う。

 ウキウキとブラウスのボタンを外す姿が、目に浮かぶようだ。


 この人は教育者のクセして、やりたい盛りの青少年にそんなことをしたらどうなるか、想像できないんだろうか。

 いくら俺でも、理性の限界ってモノがあるんだぞ……。


 俺はつとめて平静を保ちつつ、クーレ先生に注意する。



「……なんでもいいですから、ちゃんと服を着てください。でないとヒザ抱っこさせてあげませんよ?」



「ま、まって、すぐ着るから、ヒザ抱っこさせて、ねっ?」



 クーレ先生は俺の顔色を伺うように、あわてて居住まいを正した。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 それから俺は、クーレ先生のヒザの上という特等席で、クーレ先生の特製弁当を食べた。

 正確には、食べさせてもらったんだが。



「はい、タクミくん、あーんしましょうねぇ~」



 言われたとおりに口を開けると、タコさんウインナーが運ばれてくる。



「ちゃんと噛めまちたか~? はぁい、ごっくん~。えらいえらい、ちゃんとごっくんできまちたね~」



 タコさんウインナーを咀嚼し、胃に落とした俺の頭を、ナデナデしてくる。



「次は何がいいでちゅか~? 卵焼きがいいでちゅか~?」



 俺はいつ赤ちゃん言葉に突っ込もうかと思ったが、あまりにクーレ先生が幸せそうにしているのでタイミングを逸してしまった。


 先生と生徒というより、お母さんと赤ちゃんみたいな関係性になっちまったが……クーレ先生の手料理は抜群のうまさだ。

 列車に揺られながら食うというシチュエーションも手伝って、最高の昼飯となった。


 本当に赤ちゃんに食べさせるようなゆっくりペースだったので、だいぶ時間がかかってしまったが……俺は昼食を終える。

 先生のヒザから立ち上がって、対面の席に移動しようとしたんだが……ガッチリ抱きしめて離してくれない。



「おなかぽんぽこりんになりまちたね~、おいしかったでちゅか~?」



 嬉々として俺の腹をさすってくる、クーレ母さん。



「あの、お母……じゃなかった先生、そろそろ赤ちゃん言葉をやめて、普通に話してもらえませんか?」



 俺がそう言うと、先生はまるで反抗期の息子から暴言を吐かれたみたいな顔になった。



「ええっ、そんな……!」



「そんな風に、ショックを受ける所じゃないでしょ。それよりもこれから行く国について教えてください。でないとこのヒザ抱っこもナシにしますよ?」



「うっ、わかりましたぁ。……では、右手をごらんくださぁい」



 クーレ先生は渋々と、観光案内を開始してくれた。

 示してくれた窓ごしには、連なった山々が遠くに見える。



「あの山が、目的地の『ダリスの国』でぇす」



 『ダリスの国』は、男の国と呼ばれる『ダリス・バンディ』と、女の国と呼ばれる『ダリス・フェミナ』に分かれている。

 未婚の男性は『ダリス・バンディ』に、未婚の女性は『ダリス・フェミナ』に住まないといけないそうだ。


 さらに未婚の女性は20歳までに一度結婚しないといけない決まりらしく、いま18歳の先生は親から「結婚しろ」と口うるさく言われているらしい。



「里帰りするのは久しぶりだから楽しみなんだけど、パパに会うのだけがちょっと憂鬱なの……だって、わたしがいる間に結婚させようとするんだもん」



 クーレ先生はいつも穏やかな笑顔を浮かべていて、みんなを癒やしてるんだが……この時だけは、歯医者を控えた子供みたいに暗い顔をしていた。

 どうやら、よほどイヤなイベントらしい。



「じゃあ、俺と結婚するってウソついちゃえばいいじゃないですか」



 俺は冗談めかして言ってみる。

 するとクーレ先生は、雷に反応したリスみたいにピクンと顔をあげた。



「……えっ、いいの?」



「先生がイヤじゃなけりゃ、俺はぜんぜんいいですよ。そのほうが先生と遊ぶ時間も多く取れそうだし」



「じゃ、じゃあ、パパがしつこかったらお願いしちゃうかも……! でも、タクミくんのお嫁さんになれるんだったら、ウソじゃなくてもいいけど……うふふっ!」



 花のような微笑みを取り戻す、クーレ先生。

 俺の心にまで花を咲かせてくれるような、素敵な笑顔だった。


 こんなんで喜んでくれるなら、安いもんだ……と俺は思っていた。

 だが、この約束によって後々、とんでもないトラブルに巻き込まれることになるなんて……つゆほども思いもしていなかったんだ。

次のお相手はクーレ先生にしました。

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