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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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07 キスの嵐

 愛用のアーチェリーを突きつけられたシャラールは、豆鉄砲を食らったような顔をしていた。



「ええっ!? この状態で矢なんか射れるわけないでしょ! バッカじゃないの!?」



 俺の目の前で、これが見えないのかといわんばかりに、ピッタリとくっついた手を揺さぶる。

 元はといえばお前がやったことだろ……と喉まで出かかったが、なんとか飲み込んで、



「でも、左手は使えるだろ。俺が右手で弓の本体を押さえるから、狙うのと弦を引くのをお前がやるんだ」



「ふたりがかりで射るの!? サーカスじゃあるまいし、そんなのできるわけないでしょ!?」



 シャラールはひたすら及び腰だ。

 ウダウダ言ってる間に、チャラ男はどんどん遠ざかっているのに……。


 しょうがないので俺は、ヤツにとってのカンフル剤を入れてやることにした。



「やってみねぇとわからねえだろ! それとも何か!? Aランクってのは万全の状態じゃねぇと何にもできねぇのか!?」



「そ……そんなことないけど……って、Fランクに言われたくないわよっ!!」



 言葉の途中、シャラールの眉毛がキッと吊り上がる。

 いつもの強気が戻ったようだ。



「そうだ、お前はAランクだ。だからこのくらい、簡単だろ?」



「くっ……や……やってやろうじゃないのっ!!」



 シャラールは俺の手からアーチェリーを引ったくると、折りたたまれていた本体をガシャン! と開いた。



「アンタはアローレストの下にあるリムを持って!」



 いきなり専門用語が飛び出したので俺は戸惑ったが、弓本体にある、矢をつがえる台の下側を持てという意味だった。

 言われたとおりにすると、シャラールは弦をぐぐっ、と引っ張った。


 引き絞ったまま、アーチェリー本体にあるサイトで狙いを定めている。

 背後にいる俺がまるで壁であるかのように、身体を預けながら。


 チャラ男は、俺たちが通ってきた中央通りを這い逃げていた。

 俺たちが来る途中に倒した雑魚どもに引っかかりつつではあったが、もう街の外まで来ている。


 これを外せば、二発目をつがえるより早く、ヤツは街から出ていってしまうだろう。

 だから……なんとしても決めなきゃならねぇ。


 それはシャラールも百も承知のようで、外せないプレッシャーを感じているのか……背中ごしに心臓の高鳴りが伝わってくるほどだった。

 俺は、緊張でピンと張り詰めている長い耳にささやきかける。



「……落ち着け、お前ならできる」



 俺は、腰にまわしているほうの手を、シャラールのヘソの下あたりに当てる。

 するとシャラールの身体が、温泉に浸かったみたいに弛緩していくのがわかった。


 『ヒート・ハンド』。血流を手に集中させ、手を温かくするツボ。

 そして温かくなった手で『丹田』のツボに触れたんだ。


 丹田は、温めると副交感神経の働きを良くして、リラックスさせる効果がある。



「ん……あったかい……お腹が……ぽかぽかする……」



 気持ちよさそうなシャラールの声。

 すくめるように張っていた肩が、ゆっくりと降りる。

 無駄な力が抜けたようだ。



「そうだ……いつも通りにするだけでいいんだ。また見せてくれよ、テロリストの頭を撃ち抜いた、お前の腕を……」



 こんな時だというのにシャラールは、フフッと笑った。



「しょうがないわねぇ……アンタは物覚えが悪いんだから……今度こそ、しっかりと頭に焼き付けときなさいよ、アタシの華麗なる射的を。……いくわよっ!」



 シュバッ! と小気味よい音とともに放される弦。

 街の大通りを、引き裂くような風切音とともに飛んでいく矢。


 弧を描いて飛翔する様はまるで、一度高く飛び上がって、エモノに急降下する猛禽類のようだった……!


 四つ足で逃げる野良犬は、頭上から襲いかかられているとも知らず、俺たちのほうに振り向いて叫ぶ。



「残念でしたぁ~っ! もう何をやっても無駄でぇ~っす! ペンペン! 今度は魔法使いのママから大砲を奪ってきて、この街を取り囲んでやっからよぉ、覚悟しとけ! この街ごとお前らを焼き払って……はぐっ!?」



 捨て台詞の途中で、眉間に矢が突き立った。

 チャラ男はお尻ペンペンのポーズのまま、動かなくなる。


 矢の行く末を見守っていた、広場の民衆たちは……海が割れる奇跡を目にしたかのように立ち尽くしていた。



「あ……当たっ……た……!」



「う……ウソ……だろ? この中央広場から南門まで、800メートルはあるのに……!?」



「普通に撃っても当たらねぇ距離を、それも、ふたりがかりで……!?」



「ううん、ふたりがかりだからこそ当たったのよ! 見たでしょ? あの見事なダンスを! あのふたりは、一心同体なのよ!」



「愛か……!? 愛の力だというのか……!?」



「でも、そうじゃなきゃ、説明がつかねぇよ! あの神業みたいな射的を見ただろ!?」



 倒れたチャラ男のまわりに集まっていた、南門の民衆たちも人波となって押し寄せてくる。

 さっきまで、強制労働させられていた人たちだ。



「やっぱり……! アンタたちがやったんだなっ!?」



「すげえ!? あんな遠くから、一発で仕留めたのかよっ!?」



「五人衆を指一本で倒しただけじゃなく、弓の扱いまで長けているとは……!」



「やっぱり救世主だ! アンタ……いや、あなた様がたは、この街の救世主だっ!!」



「救世主さまっ!! 救世主さまーっ!!」



「この街は救世主さまによって再び自由になった……! おふたりに感謝の気持ちを込めて、胴上げだ、胴上げをしようっ!!」



 いつの間にか街中の人たちが集まってきていて、俺とシャラールを持ち上げる。

 俺とシャラールは手を繋いだまま、いつまでも宙を舞うことになった。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 そのあと解放パーティが行われ、俺たちはごちそう攻めにあい、ダンスパーティもとり行われた。

 誰も怯えることのない楽しいダンスパーティで、俺たちもせがまれて再びダンスを披露した。


 ……最初はひとり旅だったはずの俺の修学旅行は、思いがけないパートナーを得て、そのうえ想像だにしていなかった派手な初日となってしまった。


 パーティを終えた俺たちは、街のホテルの一番いい部屋に泊めてもらうことになった。

 シャラールが側にいるのも慣れてきたはずだったのに……部屋にふたりっきりになると、急にドキドキしちまった。


 部屋に入った途端……なぜかシャラールは、俺の頬を思いっきりつねってきた。



「いててててててて!? な、なにすんだよっ!?」



「アンタ……アタシの身体に触って、勝手にツボを押してたでしょ?」



「それは、お前のためを思って……! いててててててっ!?」



「アンタがアタシの身体をどうこうしようだなんて、百万年早いのよっ!!」



「じゃ、どうすればよかったんだよっ!? ……いててててて! 痛いって!」



「今後は……! あら、血が出ちゃった」



 ようやくつねるのを止めたシャラールの手は、血まみれになっていた。



「お前がつねったから、チャラ男に斬られたときの傷が開いたんだよ! せっかく治りかけてたのに……!」



「グチグチうるさいわねぇ! また治せばいいだけでしょ、治せば! ちょっとそこに座りなさい!」



 俺はシャラールに押されて、側にあるキングサイズのベッドに無理矢理座らされる。



「治すって、どうやるんだよ? 傷薬でもつけんのか?」



「いいからじっとしてなさい。動いたらブッ飛ばすわよ」



 物騒な言葉とともに、シャラールの顔が近づいてきたかと思うと、



 ぴちゃ……



 生あたたかいものが、俺の頬に触れた。



「な……なに……してんだ……?」



森林族(フォレスタ)の唾液には……んっ……ケガを治す力があるのよ……こうやって、傷口を舐めれば……すぐに治るわ……」



 俺の頬から、ぴちゃぴちゃ音がする。

 まるで子猫から、頬についたミルクを舐め取られてるみたいな……妙な感覚だった。


 シャラールの舌が、俺の唇の端にたどり着くと、



「そうね……せっかくだから……」



 なにがせっかくなんだろう? と思う間もなく、続けざまに柔らかいものが唇に触れた。



 ……ちゅっ



 シャラールの宝石じみた瞳が、すぐ目の前にあり……吐息が感じられ……どこまでも柔らかいものが、唇に押し当てられている。



「んんっ!?」



 俺は何が起こったのかわからず、石のように固まっていると、わずかに唇が離れ、



「ふぅ……1点ね。Fランクって、キスも下手なのね……。せっかくだから、アタシが鍛えてあげるわ」



 そして、有無を言わせぬ二度目のキス。



 ……ちゅっ。



 俺のファーストキスは、レモンの味だったが……セカンドキスの二度目は、ほろ苦くて甘い、チョコレートみたいな味だった。

 シャラールは食後のデザートとして、チョコレートアイスを食べてたから……たぶんその味なのかな、と思った。


 シャラールは、スイートな吐息とともに唇を離すと、



「……んん、2点ってとこかしら……全然だめね……」



 息継ぎするだけの短い時間をおいてから、



 ……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。



 三度目、四度目、五度目のキス。三連発だった。

 俺はキスの味がわかるくらいには、落ち着きつつあったんだが……これにはまた冷静さを奪われてしまった。



「……うぅん……5点……下手ねぇ……まだまだいくわよ……」



 ……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。再びキスの三連発。

 はふぅ、と息継ぎをしてから、長めのキス。



 ……ちゅうぅぅ~っ……!



 唇を食べられてしまいそうな、吸い付くキスだった。

 俺はもう、されるがままだった。



「……9点……進歩がないわねぇ……。あ、そうそう、10の倍数は、ディープキスだからね」



 そしてまた、吸い付かれる。

 ……ちゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう~っ!

 このまま殺されても、いいと思った。


 吸血鬼にさらわれた村娘のような気分になっていると、ようやく唇を解放される。



「ぷはあっ……10点。……もう、アタシにばっかりさせてないで、アンタのほうからもしなさいよ」




 まるで熱を図るように、額をコツンとぶつけてくるシャラール。

 その顔は上気していて、瞳はトロンとしていた。まるで熱があるみたいに。


 でも、きっと……俺も同じような顔をしていたに違いない。

 俺は奪い返すように唇に吸い付き、そのままベッドに押し倒す。



「ん……む……! きゃふっ」



 シャラールは俺に組み敷かれるような体勢になったが、抵抗してこなかった。

 立場逆転とばかりに上から覆いかぶさり、熱烈なベーゼを降らせる。



「んっ……!」



 ちょっと苦しそうにしながら、瞼をきゅっと閉じたので……唇を離してやると、



「……はふぅ。……そう、だいぶ上手くなったわ……でもまだまだ、11点……んむぅ」



 途中で我慢できなくなって、再び唇を塞ぐ。

 まるでそうするのが当たり前で、離れているのが異常みたいに、俺はシャラールを求めた。


 20回目。ディープキスのときに、舌を差し入れる。

 シャラールは自らの舌を絡めて、歓迎してくれた。


 舌どうしをしばらくたわむれ合わせたあと、唇を離すと、ちゅぽん、と音がする。

 ふたりの唇は、唾液の糸で繋がっていた。



「ん……20点ってとこね……まだまだ赤点……」



「それはいったい、何点取れば合格なんだ? ……80点か?」



「バカ、そんなわけないでしょ……今日はアンタが……そうね、1000点取れるまでやるからね」



「せ、1000点って……んんっ」



 首筋に回した手で抱き寄せられ、俺とシャラールは21回目のキス。


 キスを1回するたびに、点はひとつずつあがっていった。

 どうやら今夜は、1000回キスをしろってことらしい。


 100点を越えたあたりで、俺はシャラールの首筋にキスをした。

 色っぽい吐息とともに、白い喉がのけぞって、俺はあるものに気づく。



「これ、なんだ……こんなの、あったっけ……?」



 シャーラルの首のまわりには、紋章のようなものが浮かび上がっていた。

 できそこないのチョーカーみたいなデザインなんだが……今までこんなタトゥーみたいなのはなかったはずだ。


 すると、シャラールは嬉しそうな、残念そうな、よくわからない溜息をついて、



「あーあ、アンタの印、ついちゃったじゃない……どうしてくれんの……責任とんなさいよね……」



「印……? 印ってなんだ?」



「……そんなこと、女の子に聞くなんてヤボよ……罰として、マイナス100点。さぁ、また0点からやりなおし……」



 綺麗な鎖骨まで、桜色に染めながら……シャラールはいたずらっぽく微笑んだ。

次回、どうしようかまだ決めてません…!

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