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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
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05 ダンスパーティ優勝、そして……

 噴水のまわりを回遊魚のように、一定の方向に向かって踊り続ける若い男女たち。

 その間をぬって、俺はシャラールをリードする。ふたりのダンスのはじまりだ。


 つないだ両手を広げて優雅に回ると、シャラールの金色のツインテールがなびき、フェアリーテイルのような燐光があとを引いた。



「わぁ……きれい……」



「なんて、華麗で優雅なの……」



「誰……? この街の人じゃないよね……?」



「きっと、どこかの貴族のお嬢さんよ……」



 周囲の羨望のまなざしが集中する……といっても、話題の中心はシャラールだ。

 まぁ、コイツは容姿端麗が多いとされる森林族(フォレスタ)のなかでも、群を抜くほどの美形だからな……無理もねぇか。


 俺だって、未だにコイツに直視されるとドキッとするし……こうしてダンスしてるときも、まるで妖精の王女みたいなオーラがある。



「……あら、アンタ、なかなかやるじゃない」



 長い耳をピコピコさせながら、楽しそうに踊りあそばされる王女様。

 身に余るお褒めの言葉をいただいた。



「まだまだこれからだ……そらっ」



 俺は華奢な腰をぐっと抱き寄せて、さくらんぼのように色づき始めた頬に、顔を寄せる。

 意図を察したのか、シャラールはイナバウアーみたいに身体を大きくのけぞらせた。


 そのまま仰向けになって、空を泳ぐかのように……地面から両足を浮かせるシャラール。

 支えとなるのは、腰に回している俺の手だけ。

 ちょっと間違えば背中から地面に叩きつけられる、危険な大技だ。


 でもそれが効いたのか……それまでヒソヒソ話くらいだった周囲の声が、歓声へと変わった。



「ええっ!? うっそぉ……!」



「街のダンスで、あんなすごい技が見られるなんて……!」



「男のほうがちょっとでも間違えば、大怪我するぞ……!」



「きっと男の人を、信じてるのよ……!」



「ああっ、素敵……! お互いを心の底から信じあっている……本当のパートナーなのね……!」



「わたしも、あんなパートナーがほしい……!」



 もはや踊ることも忘れて、俺たちのダンスに見とれる参加者たち。

 それは主催者であるボスも同じだったようで、瞳孔の開ききった目で俺たちを凝視している。


 ヤツは最初は、成金趣味っぽい金色の椅子にふんぞり返って眺めていたのだが……俺たちのダンスで前のめりになり、ついには興奮が抑えきれない様子で立ち上がっていた。



「すっ……すげええええええええええーっ!! マジ、マジやばくねぇぇぇぇぇぇっ!?」



 やたらハイテンションで叫んだあと、



「はいっ、決まりぃーっ!! そこのペア、優勝っ!! マジ優勝っ!! もう、ぶっちぎりで……!! おい、こっちあがってこいよ!!」



 指をクイックイッとやって、俺たちを呼ぶ。


 シャラールはまだ踊り足りないようだったが、俺はなだめつつステージの上にあがった。

 なんたって俺たちは踊りに来たわけじゃなくて、ダンスにかこつけてボスに近づくのが目的だったんだからな。


 ステージで俺を迎えてくれたのは、他のペアからの盛大な拍手と、ボスのチャラ男だった。



「スゲーよマジで! 超イケてんじゃん! ……兄ちゃんのほうはまぁ、あんまりイケてねぇけど……」



 俺を頭のてっぺんから足のつま先まで、品定めするようにジロジロ見るチャラ男。

 金髪のウルフカットに、黒いジャケットを着ているホストみたいなヤツだ。


 ……なんでこういう人って、先の尖った靴を履きたがるんだろうね?

 でもそんな格好しているのに弾帯とガンベルトを巻いていて、腰にサーベルを差しているのがアンバランスだ。


 俺のファッションチェックを適当に終えたチャラ男の興味は、シャラールに移る。



「こっちのギャルは超イケてんじゃん! このダンパはさ、俺のセフレ兼ダンスパートナーを探すためにヤッてんだよね! アンタならセフレどころか本命にしてやんよ!」



 言うなり、ぐいとシャラールの腕を掴んだ。

 その瞬間、脊髄反射のような罵倒が、ギャルマウスから飛び出す。



「誰がアンタなんかと! アンタなんか、本命どころか大穴以下よ! その汚い手を離しなさいっ! でないとその脚へし折って、出走停止にしてやるわよっ!!」



 こんな時のシャラールは、実に語彙が豊富だ。

 でも、チャラ男には効かなかった。むしろ喜ばせてしまったようだ。



「おおっ!? うぃーねぇー!? じゃじゃ馬ほど、乗りこなす楽しさがあるってもんだ! 無理矢理またがって、こう……!」



 さっきからチャラ男は、シャラールの腕を力ずくで引っ張っているのだが……シャラールの手は俺とくっついているので、抱き寄せられずにいる。

 そうとも知らずに、下ネタとともに夢中になって腰を振っていた。


 しばらくして、ようやく気づいたようだ。



「……って、何やってんだよ!? 手ぇ離せよ、オイ! ……もしかしてウケ狙いかぁ? スベってんだよ!」



「俺は、なんにもしてねぇよ……」



 俺は、くっついて離れないほうの手の指を、ワキワキさせながら続ける。



「でも残念だったな、コイツはどうしても、俺から離れたくないんだってよ」



 そして奪い返すように、シャラールを引っ張って抱き寄せる。

 「きゃっ」と小さな悲鳴とともに、チャラ男の手を離れて俺の胸に飛び込んでくるシャラール。



「それに、あいにく俺も……コイツを離す気はねぇんだ」



 俺の胸の中で、息をのむ声がする。



「えっ……ええっ!? た、タクミ、あああ、アンタ、いきなりナニ言って……そりゃ、アタシだって……でも……心の準備が、まだ……」



 俺の胸の中で、うろたえる声がする。



「って、そうじゃない! い、いや……そ、そうよ! アンタみたいな種馬に乗るくらいだったら、たとえ貧相でも、タクミのほうがまだマシよ!! で、でも、本当はどっこいどっこい……どんぐりの背比べなんだからね!!」



 シャラールはひとりでアタフタしたあと、よくわからない罵声を浴びせた。

 その言葉がよっぽどショックだったのか、チャラ男の日焼けした顔はみるみるうちに赤くなっていく。


 さっきは怒らなかったのに、俺と同レベルだと言われて怒るだなんて……失礼じゃねぇか?



「この俺が、こんなキメぇの以下だとぉ!? ビッチがぁ! 死ねよっ!!」



 なおも唾を飛ばしながら罵倒するシャラールに向かって、一歩踏み込んでくるチャラ男。

 俺はとっさにシャラールの身体を下がらせ、半身で覆うようにしてかばった。



 シャキィィィィィーーーーーーーーーーーンッ!



 直後、チャラ男のサーベルが一閃する。


 俺の頬から、パツンと弾けるような音がした。

 そして、あたたかくてどろりとした感触が、アゴを伝う。


 斬られちまったみてぇだ……だがそんなことは、どうでもいい。

 俺は、ヤツを視線で殺すつもりで、ギロリと睨みつける。



「……テメェ……思い通りにならねぇ女を斬ろうとするだなんて……男の風上にも置けねぇヤツだな……!」

次回、ラブシュート炸裂!

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