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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第1章 テロリストが来たから本気出す!
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16 最終決戦

 法力科の棟を出た俺は、中央の城の階段をのぼっていた。

挿絵(By みてみん)

 どこまでも続く、石造りの螺旋階段。


 手動式の昇降機もあるのだが、この城もテロリストに占拠されているので使わずにおいた。

 囲まれでもしたら、逃げ場がないからな。


 城内にある職員室などはきっと囚われの先生たちがいることだろう。

 順次、解放してくことも考えたんだが、それよりも一気に本丸に攻め込むことにしたんだ。



「ねぇ、ホントにテロリストの大ボスがこの上にいるの?」



 ずんずん進む背後から、シャラールの声が追いかけてくる。



「ああ、間違いない」



「ずいぶん自信たっぷりなのねぇ、バカのクセして」



「アケミは昔から、一番高いところにあがりたがるんだ。このリンドール学園で一番高いのは、この城の屋上だ」



「そのアケミってやつも、相当バカっぽいわねぇ」



 俺とシャラールは最初は雑談するほど余裕があったのだが、階段があまりにも長かったので後半のほうはふたりして無口になってしまった。


 ちなみに同行者はシャラールのみだ。

 クーレ先生とスジリエについては、各棟で怪我人が出つつあったので、救護班の応援に行ってもらった。


 しばらくして、俺たちは城の屋上にたどり着く。

 狭くて無機質だった灰色の壁から一気に解放され、広大な夕暮れが広がった。


 ゴルフ場みたいなだだっ広い土地に、英国風の庭が広がっている。

 かなり高い位置にあるのか、雲がすぐ近くを流れている。まるで空中庭園だ。


 普段この庭園は生徒たちの憩いの場らしいが、Dランク以下の生徒は立入禁止なんだ。

 だから、俺がここに来るのは今日が初めてだ。


 本来はダメなんだろうが、今は非常事態だから別にいいよな、と思いつつ足を踏み入れる。

 床は一面の芝生で、中庭よりもしっかり手入れされている。独特のデザインで刈り込みが入っていた。


 奥のほうに、サーカスかと思うような過美で巨大なテントが建っている。

 閑静なる庭園には似つかわしくない景観破壊。俺は間違いない、と核心した。


 大きく開いたテントの入り口には、アラブの石油王かと思うようなムダに豪華な内装が見えた。

 バカでかいソファがあり、何者かがひとりで横たわっている。


 周囲には、孔雀の羽根みたいな団扇で扇ぐ、部下のテロリスト。

 近づいていくと、俺の気配を察した部下が警戒体制をとろうとする。


 が、ソファの人物に押しとどめられていた。

 きっと、アイツが大ボスなんだろう。


 大ボスは気怠(けだる)そうに身体を起こすと、背中にたたえる翼を背伸びでもするかのように大きく開いた。



「す……天空族(スカイエン)じゃない……!」



 ハイキング中に熊にでも遭遇したかのように、素っ頓狂な声をあげるシャラール。


 天空族(スカイエン)……空にある天空の島に住むという種族だ。

 剣術に長け、魔法も得意。背中の翼で自由に空を飛べるうえに、美形揃いという、非の打ち所がない種族だ。


 他の種族を見下しているようで、地上に降りてくることはほとんどない。

 そのため、幻の種族といわれているらしい。


 俺も教科書では見たことがあったんだが、実物を目の当たりにするのは初めてだ。


 ソファの人物は足を組んだ。古代ギリシャのキトンみたいな服の裾から、生足が大胆に覗く。



「……おひさー……タクミ」



「ああ、ひさしぶりだな、アケミ」



 俺が応じると、アケミはキャバ嬢みたいに盛った髪をかきあげた。

 これ見よがしに、派手なアイシャドウに彩られた瞼をパチパチさせる。



「あれー? なにそれ、タクミって、いつからウチにタメ口きけるようになったんだー?」



「俺とお前はもう、会社どうしの間柄じゃねぇからな」



「あれれー? タクミ、地雷踏んだときに言ってなかったっけ? 『一生アケミ様の奴隷になりますから、助けてください~』って」



「それは……前世かぎりの約束だ」



「ハァ? 意味わかんないんですけどー? そんなのいつ、誰が決めたの? ウチ、ゼンゼン聞いてないんですけどー?」



「そ、それは……」



 俺が言葉に詰まっていると、背中をバンと叩かれた。



「ちょっとタクミ! なに相手のペースに飲み込まれてんの!? いつもの余裕はどうしたのよ!?」



 シャラールから心配されてしまうほどに、俺は冷静さを失っているらしい。

 アケミに睨まれてからだ。手のひらに汗がじっとりとにじみ、脚が震えだしたのは。


 もう、アイツは取引先の専務じゃねぇ。ただの男と女じゃねぇか。

 でも、どうしても、かつての嫌な思い出が邪魔をしやがる……!


 俺はコイツの手で、何度も生命の危機に晒されてきた……!

 俺の頭にショットガンを押し当て、顔を厚底ブーツで踏みつけながら……コイツはいつも言っていた……!


 『生かしといてあげる』って……!


 そして、俺は刷り込まれてしまったんだ……!

 コイツに逆らったら、生きていけない、って……!



「ねぇ、タクミ、こっち来なよ。いつもみたいに犬のマネをしながら、ウチの靴をペロペロ舐めてよ。……聞いてんのかよ、オイッ!!」



 怒鳴られて、俺はビクッとなってしまった。

 飛び上がらなかったのが不思議なくらいに、ビビっちまってる。


 俺は、自然とアケミに向かって歩きだしていた。

 頭の中が空っぽで、もう何も考えられなかった。


 まるで、光に吸い寄せられる蛾みてぇだ……。


 後ろから、追いかけてくる音がする。

 ザザッ、と草の上を滑って俺の前に立ちふさがるシャラール。


 次の瞬間、強烈なボディブローが俺の腹を襲った。

 「ぐうっ!?」と息を吐いてヒザを折る俺の顔に、追撃の回し蹴りがキマる。



「ぐわっ!? ……な、なにしやがるっ!?」



 腫れ上がった頬を押さえながら、這いつくばる俺。

 むしろ蹴られて当然だとばかりに、冷たく見下ろすシャラール。



「……アンタは疑いようのないFランク男だけど、性根までFランクだとは思わなかったわ」



「な、なんだと?」



 コイツ、まだランクなんかを気にしてんのか?

 Fランク呼ばわりは慣れているつもりだったが、こんな時まで持ち出されると、さすがに腹が立ってきた。



「だってアンタ、嘘つきだし、気持ち悪いし」



「てめぇ……! 言わせておけば……! 俺のどこが嘘つきで、気持ち悪いんだよっ!?」



 つい怒りのままに、売り言葉を買ってしまった。

 不敵な表情のシャラールは、すぅーっと息を大きく吸い込んだかと思うと、



「わっ!! から!! ない!! のっ!?!?」



 と誘爆する爆弾みたいな怒鳴り声をあげやがった。



「だからアンタはFランクなのよっ!!! 理不尽な暴力には絶対に屈さないなんて言っといて、あんな女にヘコヘコして!!! そこが嘘つきだって言ってんのよっ!?!? それに喜んで靴を舐めに行くだなんて、そこが気持ち悪い、って言ってんの!!!」



 一方的にまくしたてたあと、はぁ、はぁ、と肩をいからせるシャラール。

 アケミの声が割り込んでくる。



「ねーねータクミー、どーでもいーけどさー、さっさとしなよー? ウチの機嫌がいいうちにさぁー、でないと……」



「……うるせえっ!!!」



 俺は、アケミの言葉を遮りつつ、立ち上がった。



「俺はもう、お前の奴隷じゃねぇ……!!」



 アケミは一瞬だけ、驚いたように目を見開いたが、すぐにいつものダルそうな半目に戻った。



「……えーっ、いーの? ウチにそんな態度とってー? この学園のヤツら、みんな殺しちゃうよー?」



「……やれよ」



「えっ」



「人質にした生徒たちは、俺がみんな解放した。部下をひとりしかこの屋上に置かなかったのは、お前の失策だな。この数なら、俺は絶対に負けねぇ……! 覚悟しろ、アケミっ……!!」



 俺は自分を奮い立たせるように、見栄を切る。

 しかしヤツの、誰に対しても虫ケラに接するような態度は揺るがなかった。



「ふぅーん、で? 言っとくけど、ウチは別にひとりじゃないよ? ……ほら、こうやれば……!」



 言いながら、唐辛子みてぇな長いつけ爪のひとさし指を立てる。

 すると、足元の芝生がまばゆい光を放った。


 目が眩んたあとに視界を塞いだのは、俺たちのまわりを取り囲む、テロリストたち……!

 いままでの講堂にいたテロリストたちを全部合わせたほどの、大群が突如として目の前に現れたのだ……!



「て……転移魔法……!? しかもこれだけの人数を、一瞬で……!?」



 ハイキング中に神隠しにでも遭ったかのように、泡を食っているシャラール。



「この学園にいる仲間が、いつだって駆けつけてくれるんだよ……キャハハハハハハハ!」



 俺とシャラールの間に、耳障りな馬鹿笑いが突き抜けていった。

次回、タクミは究極の選択を迫られる…!

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