↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第1章 テロリストが来たから本気出す!
17/101

17 逆転、逆転、また逆転

 俺とシャラールは、一瞬にしてテロリストたちに囲まれてしまった。

 転移魔法と呼ばれる、物質を瞬間移動させる魔法によるものだ。


 それで気づいた。庭園の芝生が、魔法陣の形になっていることに。

 魔法陣があれば、魔法使いはより大きな力を発揮できるんだ。


 この世界に来た俺は「指圧師」という職業(ジョブ)になったが、アケミは魔法使いなのか……!



「どーお、タクミ? これでもまだ、ウチに逆らうつもりー?」



 人ごみの向こうから、アケミの声が届く。

 アイツは、よく通る声をしてやがるんだ。



「いくら強がっても、もー無理だよねー? キャハハハハハハハ!」



 能天気に笑ってやがる。

 せっかくだから俺も、一緒になって笑ってやった。


 シャラールも最初は驚いていたが、運ばれてきたモノたちと顔をあわせ、ニンマリと笑いだす。

 つられてまわりも笑いだしたので、アケミの笑みが消えた。



「なっ……なにがおかしーの? 意味わかんない。笑ってる場合じゃないと思うんですけどー? それとも、頭おかしくなっちゃったー?」



「まだ、わかんねぇのか……? おいみんな、道を開けてくれっ……!」



 俺は、アケミにわからせるため、周囲にむかって号令をかける。


 テロリストたちは俺の言葉に反応し、ざざっ、と整列。

 アケミまでの花道を作ってくれた。



「え……? なんで、タクミの言うことなんか聞いてんの……?」



 ポカン、としているアケミ。



「たしか転移魔法って、運ぶためのモノを思い浮かべなきゃいけねぇんだよな? それも、これだけ大勢だ。お前は仲間の顔じゃなくて、服装で思い浮かべたんだろ?」



 そこまで言って、アケミは気づいたようだ。



「ま……まさか……!?」



「そう。俺は助けた生徒たちに、テロリストの服を奪って着るように指示しておいたんだ……ソイツらをお前は、転送魔法を使ってここに運んだ、ってわけだ……!」



「なっ、なんでウチが、転送魔法を使うって知ってんの……!? 仲間の記憶は消してあるはずなのに……!」



「……なるほどな、それで尋問してもわからなかったのか……」



 最初から疑問だったんだよな、テロリストをどうやって送り込んだのかが。

 この学園にもいちおう守衛はいるし、高原にあって見晴らしが良いから、千人もの武装集団が近づいてきたら、気づかないのはおかしいと思ってたんだ。


 てっきり守衛を買収でもしてるのかと思ったが……転送魔法が使えるのであれば、誰にも見つからずに大勢の人間を、同時に四つの科棟に送り込むくらいわけないよな。



「まぁ、なんにしても……お前は俺の仕込みにまんまと引っかかって、さらに不利な状況になっちまったってわけだ……!」



 俺は花道を歩きながら、アケミに迫る。一歩近づくたびに、ヤツの顔に青みが増しているのがわかる。

 ヤツの拠り所である唯一の仲間は、団扇を放り出して隅のほうで震えていた。



「う……うそ……!? た……タクミがこんなに頭のいいヤツだったなんて、知らなかった……! マジ信じらんないんですけど……!?」



 とアケミはすっかり色を失っていたが、



「…………なーんてね! タクミにしちゃよく考えたじゃん!」



 すぐに飄々とした態度に戻った。

 圧倒的不利な状況にもかかわらず……!



「強がるのはよせ……! この人数差で、お前に勝ち目はねぇぞ……!」



 俺が凄んでみせても、アケミはどこ吹く風だ。

 それよりもネイルのほうが気になりはじめたようで、手元に視線を落としている。



「ハァ……いい加減、学習したらー? 前の世界でも、一度もウチに勝ったことなかったじゃん。赤ちゃんプレイしてるキモい中年みたいに、ウェェンウェェン、ってウチにいつも泣かされてたの、忘れたのー?」



「今度は、俺がお前を泣かせてやるよ……!」



「あーあ、久々に会って、せっかく少しはやさしくしてあげようかと思ったのに……もーいいよ」



 アケミは不機嫌そうに立ち上がると、またひとさし指をたてた。

 足元が、先程よりも激しく光を放つ。


 寸間の後に感じたのは、牢獄の中に閉じ込められたような、絶望的な重圧だった……!

 黒い生け垣が、俺と仲間たちを取り囲んでいる。その正体は、おびただしい数の兵士たちだった……!


 千人はいる俺たちを遥かに上回る、何万もの軍勢が突如として神出……!

 一歩も動くどころか、あっという間もなく完全包囲されてしまう……!


 しかもラフな格好ではなく、禍々しいデザインの全身鎧に身を包み、死神の鎌のようなおぞましい武器を手にしている……!

 明らかにエリートといえる、重武装のテロリストたち……!


 瞬時にして俺たちは、アメリカ軍に囲まれる百姓一揆さながらの危機に追い込まれてしまった……!

 孔明ですら慌てるレベルの、絶対的窮地……!



「ウチが転送魔法で持ってこれるのって、べつにこのガッコにいるヤツらだけじゃないんだよねぇー。ウチがたいした警護もなしでココにいた理由、これでわかったー?」



 俺は、ぐっ、と歯を食いしばる。

 最後の意地だ。前の世界でアケミを喜ばせていた、絶望の表情なんかしてたまるか。



「あれぇ? タクミ、強がっちゃってんのー? 以前のタクミなら、とっくの昔にオシッコもらしてるのにー。飼い主に媚びる犬みたいに、ウチが喜ぶような情けないことを全力でやって、必死に媚びてくるのにー! かわいくなーい!」



 アケミはプンスカしながら、立てていたひとさし指に続いて、中指と薬指を立てた。


 すると……信じられないことがたて続けに起こった。


 晴れていた夕暮れ空を、あっという間に雷雲が覆い、庭園に暗い影を落とす。

 そして雷光走る雲の中から、空飛ぶ帆船のような巨大な赤竜が現れ、鷹揚な羽ばたきとともに庭園を見下ろしたのだ。


 モンスターのなかでも最強の部類に入る、赤竜(レッド・ドラゴン)……!?



「れ……レッドドラゴンだぁーっ!!」



「あ……アイツが呼んだのか!?」



「レッドドラゴンを飼いならすなんて、あえりえねだろっ……!?」



「に、逃げろ! 逃げろっ! 逃げろぉーーーっ!!」



 襲来した恐るべきモンスターに、俺の仲間であるテロリストたちは悲鳴をあげ、パニックになって逃げまどう。

 無理もない。あの竜が口から火炎(ブレス)を吐けば、この広い庭園ですら火の海となってしまい、全てを消し炭に変えてしまうからだ。



「うるっさいなぁ……少し黙れっつーの」



 アケミが庭園の出入り口のほうをピッと指さすと、ジャンボジェットのような稲妻が城のてっぺんに突っ込んだ。



 ドガァーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!



 爆音とともに城の上部が砕け散り、尖塔が崩れ落ちてきた。

 倒壊したガレキに、庭園の出入り口は塞がれてしまう。


 後門は絶たれ、前門は赤龍……!

 そのうえアケミの攻撃魔法は、魔力科で戦ったボスとは比較にならないほどの破壊力……!


 生徒たちは完全に戦意喪失しており、テロリストに捕まっていた時の状態に戻っていた。

 いや、もっと酷いかもしれない。悲鳴すらあげられず、ただただ震えている。


 皆、この世の終わりのような、絶望に打ちひしがれていた……!



「これってさぁ、ウチの力のほんの一部なんだよねー。ホンキ出しちゃってもいいけど、このガッコ、なくなっちゃうよ? いいの? ホンキ出しちゃっても」



 アケミは俺を見据えながら続ける。



「でもさ、タクミがウチの言うことを聞くんだったら、許してあげてもいーよー?」



 すぐさま、背後からヤジが飛んできた。



「た……タクミ! 言うこと聞いてやれよ!」



「お前が言うこと聞けばいいんだったら、簡単じゃねぇか!」



「アケミ……様の目的はタクミなんだろ!? だったら俺たちが犠牲になるのはおかしいだろうが!」



「そうだそうだ! 俺たちまで巻き込むじゃねぇーよ!」



「だいいち、相手は天空族(スカイエン)だろ? 神にいちばん近い種族に、勝てるわけねーじゃねーか!」



「お前、法力科でチヤホヤさえて、自分が神になったとか勘違いしてんじゃねぇーのか!?」



「あのアケミさんこそ本当の神よ! タクミくんが強いのはわかるけど、神に勝てるわけないじゃない!」



「お願いだから、迷惑かけないで! 死ぬならひとりで死になさいよ!」



「アンタたち、最低ねっ……! タクミに助けてもらっておきながら、タクミを売るだなんて……!」



「タクミくんは負けないよぉ、だって指一本でわたしを助けてくれたんだもん!」



「わたくしも、飼い主であるタクミ様を信じます……!」



「みんな、旦那様を応援しよっ……!」



 俺をかばってくれる声も中にはあったが、大半は俺に降伏を求めるものだった。

 そして巻き起こる、負けろコール。



『タークーミ!!! まーけーろ!!! タークーミ!!! まーけーろ!!!』



 背後から手拍子とともに、怒声が俺を責め立てる。

 その様を、公開処刑を観覧する女王のように、見下ろすアケミ。


 女王は俺が口を開こうとしたのを察し、パッ、と手をかざす。

 すると民衆は、ピタリと静まりかえった。



「……すればいいんだ?」



「んー? なあに? タクミー?」



 大仰な動きで耳に手を当て、聞き返してくる女王。



「俺は、なにをすればいいんだ?」



 俺の言葉に、女王は嫌らしく口の端を歪めた。



「あーあ、最初っからそう素直に言えばいいのにー。もっと早く言えば、靴ペロペロだけで許してあげよーかと思ったけど……やーめた」



 うつむいた女王の顔に、どす黒い影がさす。



「……こっち来いよ、クズ。テントの中に入んな……。今度こそ、二度と刃向えないように調教してやっからよぉ……。手始めに、マジ犬な。ウチの魔法で身体はそのままで、精神だけ犬っころに変えてやんよ……!」



 俺は、無言で女王に向かって歩みを進める。

 絞首台の階段を登る、死刑囚のように。



「ま、待ちなさいっ!! タクミ……!!」



「おい、シャラールを押さえろ! アケミ様の邪魔をさせるな!!」



「ちょ、アンタたち、何やってんのよっ!? あんなヤツにいいようにやられて、悔しくないのっ!? は、離しなさい!! 離しなさいっ!!」



「うるせえっ! これで全部、丸くおさまるんだ! タクミが、アケミ様の犬になれば……!」



「だめっ……! 行っちゃだめっ! タクミ……!! タクミ、タクミ、タクミ……!!! タクミぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーっ!!!!!」



 俺は背後からの絶叫を聞きつつ、女王のテントに招き入れられた。


 すると、女王の付き人だったテロリストが、そそくさと入り口を閉じる。

 外界から遮断したあと、「ごゆっくり……」と言い残して、テントから出ていった。

次回、タクミは犬になってしまうのか…!?

↓新作公開しました! 読んでいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
『 ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?』
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります! ⇒ 小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。