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武龍伝  作者: とみぃG
83/222

82 協力依頼

『狭苦しいところで恐縮ですが、こちらへどうぞ』


村長に案内されリュウ達は客間へと通された。

客間に通されるとリュウは挨拶をした。


『そういえばまだ名乗っていませんでした。失礼しました。

私は北の大陸のマキワから来ました。伯爵のタイラ・リュウと申します。同行の者はエルフのエリンとフェアリーのメアリーです。

二人ともここに来るにあたっては族長の命を受けております』


先ずは立て込んでいて自分を名乗らなかった非礼を村長に詫びた。


『タイラ伯爵の事はエルフの長老からの書簡で存じ上げております。我村だけでなく他でも支援をいただいているそうで感謝の言葉もございません。エルフとフェアリーの方ががご一緒ということはその事にも関する事とお見受けします』


『はい、先日ここにいるフェアリーの里も魔族の仕業で混乱に陥れられました。今回ドワーフでは死者は辛うじて免れることが出来ましたが、フェアリーでは手の施し様がなく帰らぬ命も少なからずありました。我々の到着がもう少し遅ければここもどうなっていたか判りません』


『そうでしたか。あなた様程のお方でも施せぬとは。我等は幸運に感謝せねばなりませんな。

特に息子のイワンは瀕死の重傷だったと聞きました。こうして元気に話せるのは伯爵殿のお蔭です』


『まったくもって。村をまとめる役の私が皆と離れてしかも命を落としていたとあれば末代までの恥となるところでした。

父や私だけでなくこの村の者全てがあなたに感謝しております。

この村に用あってお越しと聞きましたが、私達に出来る事なら何なりとお申し付け下さい』


村長と息子のイワンは今回のことでリュウには多大な恩があるので自分達で可能な限りの協力を惜しまぬことを伝えた。


『はい、ここへは一つの計画があって来させていただきました。

その計画を実現するにはドワーフの皆さんの協力が不可欠なのです。


計画とは、北と南の大陸を結ぶ地下トンネルの工事計画です。

具体的にはここに描かれている設計図をご覧いただけるとわかりますが、そう全長40キロメートルで最大深さが地上から2500メートルの深度まで到達します。このトンネルと南と北の双方から掘り始めて中間地点で合流するものです』


リュウの説明に想像もしていなかった村長親子は目を丸くして驚いた。


『なんと、その様な壮大な計画を・・・このドワーフには到底実現出来るものとは思えませんが・・・』


職人としても経験の長い村長が自分達の技量を測って計画の達成の困難を危惧した。


『ご心配には及びません。掘削機をはじめとする工事道具や工法などは私の国で既に確立しております。

安全性を確保するため、掘削は機械を使って行います。発生する土砂の搬出や外壁の施工など細かい部分を職人の方にお願いする形となります。工数は200人で3か月の工期を見込んでいます。


南北のトンネルを繋げるには測量が重要な鍵となります。寸分狂わぬ測量が出来なければ南北のトンネルが繋がることはありません』


村長達はリュウの言葉が俄かに信じられなかった。恩人の言うことなので信じたかったのだが、信じるための知識があまりにも不足していたからだ。


『何か仰っていることが夢物語の様に感じられます。大変失礼とは思いますが、我らドワーフの知識では想像すらも出来ません』


『わかりました。では具体的に見ていただく方がいいかと思います。作業に携わる方にも全員予め見てもらった方がいいですね。

職人の方は集める時間もあるでしょうから、今は村長さんとイワンさんに見てもらいましょう。この部屋では出来ませんので外へ出ましょう』


リュウは村長の家から少し離れた空き地へと移動した。


『これは掘削機の1/20のサイズのものです。これを遠隔操作で動かします』


ミニチュア版の掘削機をリュウはコントローラーで操作した。

掘削機は地面に向かってドリル部分を回転させながら突き立て地面深くへと潜り込んだ。


『おお!なんとすばらしい!この様な技術は見たことがありません魔力か何かで推進しているのでしょうか?』


強く反応したのはイワンだった。彼の職人魂がその原理を知りたがっていた。


『はい、これは魔導具の一種で核となる部分に賢者の石を用いています。これを魔力で遠隔操作しているという仕組みになります』


親子は賢者の石という言葉に腰を抜かす程驚いていた。

北の大陸だけでなく南の大陸でも賢者の石とは幻の存在で目にした者など到底いるはずもない代物なのだ。


『賢者の石の名前が出てくるとは・・・正に神に近しいお方であればこそなのでしょうね』


『あとは穴の開いたトンネルの壁面を固める工事ですが、これらを使います。


この砂の様なものはセメントといいます。これを砂と石と水を加えて配分すると乾いた後で石の様になります。この状態をコンクリートと言います。強度を持たせる為に鉄の棒を格子状に組んだものにコンクリートを塗り固めます。通常の建築物であればこれだけでも数十年は耐えれるのですが、今回はかなり深くに施工しますので強度が必要となります。海底付近ということで塩による浸食も考慮しないといけません。


そのために先程の材料にこの土を混ぜます。これは北の大陸にある魔の森の土です。特殊な魔力成分が含まれており、これで造られたコンクリートは強度は通常の10倍以上になります』


リュウはそれぞれの材料を見せながら実際に配合をして目の前で固まらせてみた。自然乾燥だと数日は掛かるがリュウの時間操作で一瞬で完成させた。


『おお!なんと硬い!まるで石・・・いや、石よりも硬いぞ、これは』


イワンが塗り固められた壁面を手で叩いてみる。叩くというより殴っているという程の強い力だったが当然ビクともしなかった。


『これらの技術は全体のほんの少しに過ぎません。今回の計画ではいくつもの最新技術の投入によって実現させます』


『いやはや、こんな技術が実用化されているとは、すばらしい!』


ドワーフは職人だった。リュウの説明した技術を興奮醒めやらぬ状態で聞き入っていた。


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