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『魔物が支配する世界に転生したら、小指サイズの妖精でした ~HP5の最弱スタートから、進化と「魅了」で生き延びます~』  作者: ゆっきー
第3章:深緑の支配者編

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第19話:孤独な守護者

「もう二度と、壊させない」 灰色の空の下、ルナはボロボロになりながらも立ち続けます。 かつての故郷を守れなかった後悔を、今、目の前の小さな若芽への献身に変えて。 迫り来る魔物の群れ。枯渇する魔力。 誰もいない静寂の中で、孤独な守護者の戦いが始まります。

 灰色の空の下、私は今日も膝をつき、祈るように両手をかざしていた。


「――『グロウ・ライト(聖なる成長)』」


「――『タイム・アクセル(時間加速)』」


 習得したばかりの光魔法と時空魔法を同時に発動する。  

私の体から魔力が奔流となって溢れ出し、目の前の小さな若芽へと注がれていく。  

精神を削る作業だ。額から脂汗が流れ、指先が痺れる。  

それでも、私は止まない。


「もっと……もっと大きくなって。お願い……!」


 私の願いに応えるように、若芽は淡い光を放ちながら、ミシミシと音を立てて茎を伸ばし、新しい葉を広げていく。  

かつての世界樹のような巨木には程遠いけれど、今では私の背丈ほどまで成長した。


 ガサッ……。


 背後の茂み(といっても、焼け焦げた低木の残骸だ)から、不穏な音が聞こえた。  

私は魔法を中断し、荒い息を吐きながら振り返った。


 そこにいたのは、腐肉を漁るハイエナのような魔物『コープス・ドッグ』の群れだった。  

世界樹の若芽が放つ純粋な魔力に引き寄せられてきたのだ。  

結界が失われた今の里は、魔物たちにとって格好の餌場になってしまっている。


「……また来たのね。懲りない連中」


 私は立ち上がり、若芽を背に庇うように翼を広げた。  

連日の魔力供給で、MPは残りわずか。体もボロボロだ。  

でも、私の瞳から闘志が消えることはない。


「グルァッ!!」


 魔物たちが一斉に飛びかかってくる。  


私は右手の平を突き出した。


「――『ウィンド・ブラスト』!」


 突風を巻き起こし、先頭の一匹を吹き飛ばす。  

しかし、その隙に左右から別の個体が牙を剥いて迫る。


 ガブッ!  


私の左腕に鋭い牙が食い込んだ。  


激痛が走る。  


でも、私は悲鳴を上げない。この程度、心を殺して耐えればいい。


「邪魔……よッ!!」


 私は噛みつかれた腕を振り払い、至近距離から左目の魔眼を発動させた。  『トワイライト・フェアリー』の固有スキル、光と闇の複合魔法。


「――『カオス・フレア(混沌の火)』」


 紫色の炎が炸裂し、コープス・ドッグを瞬時に炭へと変えた。  

残りの魔物たちが怯む。  

その一瞬の隙を見逃さず、私は風のように駆け抜け、残りの敵の首を次々とナイフで切り裂いた。


 ◇


 戦闘が終わる頃には、日はすっかり暮れていた。  

私は若芽の根元に力なく座り込んだ。  

腕の傷がズキズキと痛む。白いドレスは泥と血で汚れ、自慢の羽も端が欠けてしまっている。


「はぁ……はぁ……」


 かつて魔物に怯えて逃げ回っていた私が、今では一歩も退かずに戦っている。  

誰も褒めてくれない。誰も助けてくれない。  


孤独だ。  


でも、不思議と寂しくはなかった。


 サワサワ……。


 背後の若芽が、労るように私の肩に葉を擦り付けてきた。  


温かい。  


そこには確かな命の鼓動がある。


「大丈夫だよ。私は負けない」


 私は若芽の幹を優しく撫でた。  

この子が育てば、きっとまた結界が張れる。そうすれば、散り散りになった他の妖精たちも帰ってくるかもしれない。  

ティタお姉ちゃんたちが守ろうとしたこの場所を、今度は私が守り抜くんだ。


 私は痛む体に鞭打ち、再び魔力を練り始めた。  

眠っている時間なんてない。  

私が倒れたら、この希望も終わってしまうのだから。


「……見ててね。明日は、もっと高くしてみせるから」


 月明かりの下、傷だらけの妖精女王は、たった一人で守り続けていた。  

その姿は痛々しく、けれど誰よりも気高く、美しかった。


【現在のルナのステータス】

種族: トワイライト・フェアリー

Lv: 5(UP!) HP: 200 / 650 MP: 50 / 900

状態: 疲労困憊、孤軍奮闘 守護対象: 再生中の世界樹(成長度:10%)

お読みいただき、ありがとうございました。 ドレスは汚れ、自慢の羽もボロボロ。 かつての無垢なルナを知っている読者様にとっては、見ていて胸が締め付けられるような回だったかもしれません。 けれど、傷だらけで若芽を庇う彼女の背中は、どんな時よりも大きく、気高く見えました。


一人で背負い、一人で戦う。 そんな彼女の孤独な努力が報われる時は、果たして来るのでしょうか。 次回、いよいよ物語は最終回を迎えます。 ルナの旅路の結末を、ぜひ最後まで見届けてください。

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