9.目標
ゲームとは目標が設定されており、プレイヤーはそれをクリアするために行動するものを指す。
必ずしもすべてのゲームがそうだとは言わないけれど、目標設定があるゲームがほとんどだ。
アニマルユートピアにも目標設定が存在しているが、必ずしもそれをクリアする必要はない。
目標に縛られず、自分が思うまま自由に動物の世界で生きたっていいのだ。
好きに生きて、その体験がスコアとして記録され、時には称号としてステータスに反映される。
【 称号「駆け出し狩人」を得ました 】
魚を連続で10匹捕食した際に手に入れた称号だ。獲物の位置を捕捉しやすくなるそうだが、大きな変化はない。
称号を集めることも目標として良いだろう。
ボスエネミーを倒すことを目標にしてもいいだろう。
レベルアップを頑張ることだっていいだろう。
ちなみにみっちぇるちゃんは、地下深くに自分の街を作ることを目標にしているらしい。
完成するまでは秘密だそうなので、見せてもらっていない。
私は何を目標とするか。私がアニマルユートピアを始めた理由は――
【 エネミー「神速鯱」を捕捉しました 】
――特にない。
ただ純粋に、ゲームを楽しみたかった。
だから、私は――このゲームを楽しむことを目標とする。
「楽しむことは! 楽することじゃない! 出来ないことに挑戦してこそのゲームでしょ」
高速飛行中のオルカ。私に気づいたのか、真っ直ぐ飛んでくる。
5、4、3、2、1……!
回避!!
【 エネミー「神速鯱」が去りました 】
「だめだあ! 避けることで精一杯だよぉ!」
先日戦ったホッキョクグマはオルカとガチンコでぶつかり合って生き残れるらしい。
けれど、オルカの体当たりには耐えられず吹き飛んでしまうみたいだ。
捕食されたり、死んだりするとデスペナルティが課せられる。
通常は一定時間のステータスダウンだけど、連続で死ぬとレベルダウンのペナルティに発展することがある。
命を無駄にするような戦法はゲームシステム上そこまで推奨されていないのだ。
ファーストレベルに達した私は、感覚器官――特に触覚を強化して、風の動きや空気の振動を羽毛でキャッチすることが出来る。
そのお陰で、最初のログインで捕食された以外でオルカに食べられたことはない。
ただ、「島喰鯨」や「岩鰐」みたいな待ち伏せタイプには気を抜いていると食べられてしまう。
あいつら隠れるのうまいんだもん。
てか、クジラは無理。なんか島みたいな流氷があるからって探索してたら丸ごとクジラだったとか無理。気づいた時には逃げる時間ないもん。
あ、これ、食われる、って思ってから食われるまで恐怖が永遠に続くから、二度と会いたくない。
「あ、どうも」
「おやぁ。ペンギンさんですか、こんにちわぁ」
「蛇さんですか。北極に爬虫類って、なんか奇妙な感じしますよね」
「ですねぇ。でもそれがワルコネの良いところですからねぇ」
「そうですねぇ」
「はぁい。でわぁ――死ねっ」
毒液ビーム!?
寸前で回避っ!
後ろの岩が溶ける! って岩鰐じゃん! 一撃で死んでるけど!?
え、やば。
「あれまぁ、これを避けますかぁ。いいですねぇ。楽しくなりそうだぁ」
「私は楽しくないけどねっ!」
そう言いながらも、私の心臓はどうしても高鳴ってしまっていた。




