6.VSホッキョクグマ その2
パワー無し、防御力紙以下、スタミナちょっと。
だけど私にはセンスがある。スピードもある。
この瞬間、少なくとも私とシロクマの距離であれば、私は多くの物を感知できるらしい。
あらゆる事象を把握して計算することができれば、過去も未来も全部分かってしまうって、なんか理科の先生が言っていたことがある。
多分そういうことなのだろう。
シロクマの視線、重心の移動、見えないところでも皮膚や筋肉の動く音、血流の変化――。
「なんか分かり過ぎてちょっと気持ち悪い!」
「なにがキモいだって!」
ズドンッ!
シロクマの大振りのパンチ。かなり速いけど、十分避けられる。
問題点は、体力がないこと。
なんかもうめっちゃ疲れてる! 身体が重い! 息が切れる! 手足が思うように動かない!
出来るだけ、小さい動きで、出来るだけ休みながら避けているけど、それでもこのままじゃ確実にシロクマの餌になる!
うう。捕食されるのって、さっきのシャチにやられる感じと同じなのかな。
バーチャル世界だってわかるけど、食べられる感覚ってすごい気持ち悪いんだよね。それは避けたい。
「はんっ! だいぶ避けてっけどよぉ、もう限界なんじゃねえか?」
大正解。
シロクマさんも大振りの攻撃が当たらなくて息が上がってるけど、私より先に倒れることは絶対にない。
息が上がるって言うより、エンジンが上がって来たって感じの方が近いもんあれ。
「弱肉強食、弱肉強食ぅ! てめえは弱っちいが、弱い奴にしては頑張ってんな」
「あ、どうも」
「冥土の土産に、俺の大技を喰らわせてやるよ」
「結構です!」
「遠慮すんなってぇ!」
大技ってなに! 空飛ぶ鯱とか、手が鉄の熊ってだけでも変なのに、そんな訳の分かんないことまで出来るの!?
どこがリアルな動物世界だよお!
――大気圏を突き抜ける隕石のように
――鉄の拳が赫く燃える
【 サードレベル「北極彗星」 】
――隕石は大地を破壊し
――その熱で全てを溶かす
「……おいおい、これはどーゆーことだ?」
「えへへ、死ぬかと思ったぁ」
氷の大地が抉れて大きなクレーターが出来てるけど、私は何とか生き延びた。
この大地の全てが氷で出来ていたら、あの攻撃でやられてたかもしれないけど――
私は硬い岩の陰に隠れて、爆発にも似た攻撃を何とか回避できた。
とはいえ……
「あはは、熱すぎ。体力全部持ってかれちゃったみたい。羽の一枚も動かせないや」
「……正直、舐めてた。すげえな、てめえ。だが、わりいな。弱肉強食は変わらねえ。お前を食う」
「それがアニマルユートピアのルールなんだね」
「そうだ。嫌だったら引退したって構わねえが……俺はまたてめぇとヤリ合いてぇ」
「私も……次は一対一で勝てるようにしたいな」
「――はっ?」
ズゴンッ!
「はあああああああ!?」
大地が割れ、開いた穴に落ちていくシロクマ。
彼が力いっぱい地面を叩いたから出来たこと。
『ワワワッ! シオンちゃん大丈夫!? これで良かったの!?』
『うん、みっちぇるちゃんありがとう。みっちぇるちゃんが周りを掘ってくれたから、ちゃんと狙い通りの場所に穴が開いたよ』
ボコッ
みっちぇるちゃんが地面から顔を出した。抉れた地面を見て驚いてる。私だって驚くよ、わかる。
「デモモ、よくわかったね。あたしがどこにいるかとか、どこを掘ればいいとか」
「うん。なんだろうね。なんか、見えたんだ」
隣に寄り添うみっちぇるちゃん。小さい生き物二匹が肩を寄り添っている。
うん。アニマルユートピア。変なゲームだけど、ちょっと楽しいかもしれない。




